インボイス制度の「経過措置(80%控除)」とは?登録番号がない請求書の仕訳と消費税計算

インボイス制度が始まってから、経理担当者の手元には2種類の請求書が届くようになりました。

  1. 「T」から始まる登録番号がある請求書
  2. 登録番号がない請求書(免税事業者など)

「番号がない請求書は、消費税の経費(仕入税額控除)として認められない」
これは原則として正しいですが、急激な変化を避けるために「今のうちは8割だけ経費にしていいですよ」という特別なルールが存在します。

これが「経過措置(けいかそち)」です。
この記事では、登録番号がない領収書を受け取った時の、正しい処理方法と仕訳について解説します。

結論:時期によって「引ける割合」が変わる

番号がない相手への支払いは、以下のスケジュールで控除額が減っていきます。

  • 現在 〜 2026年9月30日まで
    → 消費税相当額の 80% を控除できる。
  • 2026年10月 〜 2029年9月30日まで
    → 消費税相当額の 50% を控除できる。
  • 2029年10月1日以降
    0%(一切控除できない=単なる経費になる)。

💡 経理担当者の対応
会計ソフトに入力する際、T番号がない相手には「控除80%(経過措置)」という専用の税区分を選択する必要があります。

目次

「80%控除」になると仕訳はどう変わる?

通常(100%控除)の仕訳と、経過措置(80%控除)の仕訳を比較してみましょう。
例:T番号のない個人タクシーに、税込11,000円を支払った場合

1. 税抜経理方式の場合(多くの会社)

消費税額(1,000円)のうち、80%にあたる「800円」だけが仮払消費税として認められ、残りの「200円」は経費(旅費交通費)に上乗せされます。

借方科目金額備考
旅費交通費10,200本体10,000円 + 控除できない税200円
仮払消費税800本来の税1,000円 × 80%

※会計ソフトで「課税仕入(控80)」などを選べば、自動的にこの計算をしてくれる場合がほとんどです。

2. 税込経理方式の場合

免税事業者などの場合、仕訳は変わりません。
(借)旅費交通費 11,000 / (貸)現金 11,000
ただし、消費税申告書を作成する際の計算で80%制限がかかります。

番号がなくても「100%経費」にできる特例

インボイス制度には、領収書(インボイス)そのものがなくても、帳簿への記載だけで100%控除が認められる例外があります。
これらは相手がT番号を持っていなくても全額控除OKです。

特例名称条件・内容
公共交通機関特例3万円未満の電車、バス、船舶など。
(※タクシー、飛行機は対象外!)
自動販売機特例3万円未満の自販機、コインロッカー、コインランドリー、ATM手数料など。
出張旅費特例従業員に支給する出張日当、宿泊費、交通費など。
(※社内規定に基づくもの)

これらに該当する場合は、会計ソフトで「経過措置(80%)」を選ばず、通常の「課税仕入(100%)」を選んで問題ありません。

よくあるミスと対策

ミス1:個人の店だからといって勝手に「経過措置」にする

個人事業主でもT番号を取得している人はたくさんいます。
「株式会社じゃないから番号ないだろう」と決めつけず、必ず領収書のT番号の有無を目視で確認しましょう。

ミス2:3万円未満なら全部OKだと思いこむ

以前の制度(〜2023年9月)では「3万円未満なら領収書なしでOK」というルールがありましたが、現在は廃止されています。
上記の「特例(電車・自販機等)」以外は、たとえ100円のボールペンでも、T番号がなければ「原則:インボイス保存必須(なければ経過措置)」となります。

⚠️ 「少額特例」を使える会社はラッキー
「2期前の売上が1億円以下」の中小企業であれば、1万円未満の支払いについてはインボイスの有無に関わらず100%控除できる「少額特例」が使えます。
自社が対象かどうか、顧問税理士に確認してみてください。事務負担が激減します。

まとめ

インボイス制度の経過措置期間(現在は80%控除)における実務ポイントは以下の通りです。

  • 領収書に「T番号」があるか必ずチェックする。
  • 番号がない場合、会計ソフトで「80%控除」の区分を選ぶ。
  • ただし、電車・バス・自販機(3万円未満)は番号なしでも100%OK。

会計ソフトの設定を間違えると、消費税を納めすぎたり、逆に少なく納めてペナルティを受けたりする原因になります。
「80%」の期間は2026年9月まで続きますので、今のうちに処理フローを定着させておきましょう。

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この記事を書いた人

会計・経理アドバイザー / 中小企業支援コンサルタント

経歴
大学卒業後、会計事務所で10年以上勤務し、法人・個人事業主の会計処理、税務申告、経理業務改善を多数経験。特に「勘定科目の設定・運用」に関して、企業規模や業種ごとに最適化したアドバイスを提供してきた。現在は独立し、経理の効率化や会計初心者向けの研修も実施。

専門分野
・勘定科目の選定・運用ルール作り
・会計ソフト導入と科目設定支援
・経理担当者の教育・研修
・中小企業の経営数字可視化サポート

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