法定福利費の勘定科目と仕訳|対象6費用・負担割合・福利厚生費との違い【2026年】

法定福利費は、健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険・労災保険・子ども子育て拠出金の会社負担分を計上する勘定科目です。対象6費用と保険ごとの負担割合、預り金を使った仕訳例、福利厚生費との違いまで整理します。

この記事でわかること

  • 法定福利費とは社会保険料・労働保険料などの「会社負担分」を計上する勘定科目だということ
  • 法定福利費の対象になる6つの費用(健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険・労災保険・子ども子育て拠出金の会社負担分)
  • 給与天引き→会社負担分の計上→納付までの仕訳例(預り金・法定福利費の動き)
  • 法定福利費と福利厚生費の決定的な違い(法律で義務か/会社の任意か)
  • 保険ごとに違う会社負担の割合(労使折半・全額会社・会社が多め)
  • 見落とされやすい「社会保険料は消費税が非課税」という論点と、労働保険の年度更新

公的情報源: 日本年金機構 厚生年金保険の保険料厚生労働省 雇用保険料率について国税庁 タックスアンサー No.6201 非課税となる取引

毎月の社会保険料は、預り金と法定福利費が入り組んで仕訳ミスが起きやすい部分です。給与計算から社会保険料の仕訳まで自動でつなげたい場合は、会計ソフトの活用も選択肢になります。

結論を先に書きます

法定福利費(ほうていふくりひ)とは、法律で会社に負担が義務づけられた社会保険料・労働保険料などの「会社負担分」を計上する勘定科目です。健康保険料や厚生年金保険料など、従業員のために会社が支払う保険料のうち、会社が負担する部分がここに入ります。

従業員が負担する部分は法定福利費ではありません。給与から天引きした従業員負担分は、いったん「預り金」で受け取り、納付のときに会社負担分(法定福利費)と一緒に支払う。この流れさえ押さえれば、毎月の仕訳は迷いません。

この記事の要点
  • 法定福利費=社会保険料・労働保険料の会社負担分。従業員負担分は「預り金」で処理する
  • 対象は6費用(健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険・労災保険・子ども子育て拠出金の会社負担分)
  • 福利厚生費との違いは「法律で義務か・会社の任意か」。義務なら法定福利費、任意なら福利厚生費
  • 負担割合は保険で違う。健保・厚年は労使折半/労災は全額会社/雇用保険は会社が多め
  • 社会保険料は消費税が非課税国税庁 No.6201)。仕入税額控除の対象にならない

目次

法定福利費とは?対象になる6つの費用

法定福利費とは、法令で会社に負担が義務づけられている福利厚生の費用です。ここでいう「福利厚生」は、社会保険と労働保険を指します。会社の判断で増減できる性質のものではなく、加入も負担も法律で決まっているのが特徴です。

対象になるのは、次の6つの費用の「会社負担分」です。従業員の給与から天引きする従業員負担分は含みません。

費用の種類根拠になる保険・制度会社負担の位置づけ
健康保険料健康保険(協会けんぽ・健保組合)会社負担分を計上
介護保険料介護保険(40〜64歳の従業員)会社負担分を計上
厚生年金保険料厚生年金保険会社負担分を計上
雇用保険料雇用保険(労働保険)会社負担分を計上
労災保険料労災保険(労働保険)全額を会社が計上
子ども・子育て拠出金子ども・子育て支援制度全額を会社が計上

健康保険・介護保険・厚生年金保険の3つはまとめて「社会保険」、雇用保険と労災保険の2つは「労働保険」と呼ばれます。子ども・子育て拠出金は従業員負担がなく、全額を会社が負担して法定福利費に入れる点が見落とされがちです。

「範囲」を判定する一言ルール

「これは法定福利費の範囲か?」と迷ったときの判定はシンプルです。その支出が法律で義務づけられているかを見ます。社会保険料・労働保険料・子ども子育て拠出金の会社負担分なら法定福利費、そうでなければ後述する福利厚生費や別の科目を検討します。

法定福利費と福利厚生費の決定的な違い

法定福利費と福利厚生費は名前が似ていますが、性質はまったく別ものです。違いは一点、法律で義務づけられているか、会社が任意で行うかに集約されます。

法定福利費は法律で負担が義務づけられた費用。福利厚生費は、会社が従業員のために任意で提供する制度の費用です。混同すると、経費の内訳や社会保険の集計がずれてしまいます。

比較軸法定福利費福利厚生費
性質法律で義務会社の任意
対象例健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険等の会社負担分慶弔見舞金・社員旅行・健康診断・通勤以外の各種手当
負担の決まり方保険料率で決まる(会社に裁量なし)会社が制度設計する
加入・実施要件を満たせば強制会社が導入するか選べる

たとえば健康保険料の会社負担分は法定福利費、社員旅行の費用は福利厚生費です。任意で提供する福利厚生をより詳しく整理したい場合は、福利厚生費の勘定科目と経費計上の要件もあわせて確認してください。

なお、福利厚生費は「全従業員が対象」「金額が常識の範囲内」などの要件を満たさないと給与課税されることがあります。法定福利費にはそうした要件判定がなく、法律に沿って粛々と計上するだけという違いもあります。

社会保険料の負担割合(労使折半・全額会社・会社が多め)

法定福利費として計上する金額は、保険ごとに「会社がどれだけ負担するか」で変わります。負担割合は3パターンに分かれます。

保険ごとの会社負担の割合(目安)

保険の種類負担のしかた会社負担の割合(目安)
健康保険料労使折半約2分の1
介護保険料(40〜64歳)労使折半約2分の1
厚生年金保険料労使折半9.15%(料率18.3%の半分)
雇用保険料会社が多め事業主のほうが率が高い
労災保険料全額会社100%
子ども・子育て拠出金全額会社100%

労使折半(健康保険・介護保険・厚生年金)

社会保険にあたる健康保険・介護保険・厚生年金保険は、原則として会社と従業員で半分ずつ負担します。厚生年金保険料率は18.3%で固定されており、その半分の9.15%が会社負担、9.15%が従業員負担です(日本年金機構 厚生年金保険の保険料)。健康保険料率は都道府県で異なるため、実額は保険料額表で確認します。

会社が多め(雇用保険)

雇用保険料は、会社(事業主)の負担率のほうが従業員より高いのが特徴です。失業等給付の部分は労使で同率ですが、雇用保険二事業(雇用の安定・能力開発)の部分は事業主だけが負担するためです。最新の料率は厚生労働省 雇用保険料率についてで毎年確認してください。

全額会社(労災保険・子ども子育て拠出金)

労災保険料と子ども・子育て拠出金は、全額を会社が負担します。従業員負担はゼロなので、給与から天引きすることもありません。労災保険料率は業種によって差があり、危険度の高い業種ほど高く設定されています。

法定福利費の仕訳例(給与天引き→会社負担→納付)

ここが実務の中心です。社会保険料の仕訳は、「給与天引き」「会社負担分の計上」「納付」の3場面で考えると整理できます。従業員負担分を「預り金」で受け取り、会社負担分を「法定福利費」で計上する、という骨組みです。

前提として、給与総額30万円、従業員負担の社会保険料4.5万円、会社負担の社会保険料4.6万円のケースで見ていきます。

① 給与を支払い、従業員負担分を天引きするとき

借方科目金額貸方科目金額
給料手当300,000普通預金255,000
預り金(社会保険料)45,000

従業員から預かった4.5万円は、まだ会社の費用ではありません。あくまであとで納付するために一時的に預かったお金なので「預り金」です。

② 会社負担分を計上するとき(当月末・発生主義)

借方科目金額貸方科目金額
法定福利費46,000未払費用46,000

会社が負担する4.6万円を、その月の費用として計上します。ここで初めて法定福利費が登場します。まだ支払っていないので、相手科目は「未払費用(または未払金)」です。

③ 保険料を納付するとき(翌月末など)

借方科目金額貸方科目金額
預り金(社会保険料)45,000普通預金91,000
未払費用46,000

納付時に、預かっていた従業員負担分(預り金)と、計上済みの会社負担分(未払費用)を取り崩します。合計9.1万円が口座から出て、預り金も未払費用もゼロに戻るのがポイントです。

簡便的な仕訳(現金主義)

毎月きっちり発生主義で計上せず、納付時にまとめて処理する簡便法もあります。小規模な事業者に多い方法です。

借方科目金額貸方科目金額
法定福利費46,000普通預金91,000
預り金(社会保険料)45,000

この場合、②の「未払費用」の計上を省き、納付のときに会社負担分を直接「法定福利費」で計上します。決算をまたぐ場合は、未払分の計上漏れに注意してください。

預り金と法定福利費が毎月入り組む社会保険料の仕訳は、給与計算と会計が別々だと転記ミスが起きやすい部分です。給与データから社会保険料の仕訳まで自動で連携できるのが会計ソフトの強みです。

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労働保険(労災・雇用)は納付タイミングが違う

多くの解説が見落としがちなのが、労働保険(労災保険・雇用保険)は社会保険と納付のしくみが違うという点です。健康保険や厚生年金は毎月納付しますが、労働保険は原則として年1回、「年度更新」でまとめて精算します。

年度更新では、まず1年分の概算保険料を先に納め、翌年に実際の賃金で計算した確定保険料と精算します。先払いした概算保険料は、支払時にいったん「前払費用」や「立替金」で処理し、毎月または決算で法定福利費へ振り替える方法が実務でよく使われます。

  • 概算保険料の納付時 → 前払費用(または立替費用)で計上
  • 期中・決算 → 会社負担分を法定福利費へ、従業員負担分を預り金と相殺
  • 確定精算 → 概算と確定の差額を追加納付または充当

社会保険と労働保険を同じ「毎月納付」と思い込むと、決算で前払分の振替漏れが起きます。納付サイクルが違うことを押さえておくと、期ずれのミスを防げます。

法定福利費に消費税はかかる?(非課税)

法定福利費でつまずきやすいのが消費税の扱いです。結論は、社会保険料・労働保険料には消費税がかからない(非課税)です。

国税庁 タックスアンサー No.6201「非課税となる取引」で、保険料を対価とする役務の提供は非課税取引と定められています。社会保険料はこれに該当するため、法定福利費には仮払消費税が発生せず、仕入税額控除の対象にもなりません

会計ソフトで社会保険料を入力するときは、消費税区分を「非課税」または「対象外」に設定します。ここを誤って「課税仕入れ」にすると、消費税の計算が狂ってしまうため注意が必要です。健康診断の費用(福利厚生費)などは課税取引になることが多く、同じ「福利」でも消費税区分が違う点も混同しやすいところです。

社会保険料以外の勘定科目の消費税区分をまとめて確認したい場合は、freee確定申告の勘定科目一覧や、勘定科目・用語集もあわせて確認してください。

法定福利費を正しく処理する4ステップ

毎月の社会保険料を迷わず処理するための手順を、4ステップに整理します。

  1. 給与から従業員負担分を天引きし、「預り金」で受け取る
  2. 会社負担分を「法定福利費」で計上する(発生主義なら相手科目は未払費用)
  3. 納付時に預り金と未払費用を取り崩し、実際の支払額と一致させる
  4. 消費税区分は「非課税・対象外」に設定し、労働保険は年度更新の前払分を振り替える

このサイクルが回っていれば、預り金の残高は納付のたびにゼロへ戻ります。預り金が積み上がっている場合は、天引きと納付のどこかがずれているサインなので、残高を毎月確認するのがおすすめです。

よくある質問

法定福利費の勘定科目について、実務で頻出する質問を整理します。

Q1:法定福利費には従業員負担分も含みますか?

含みません。法定福利費は、あくまで社会保険料・労働保険料の「会社負担分」を計上する科目です。従業員の給与から天引きした従業員負担分は、いったん「預り金」で受け取り、納付のときに会社負担分と一緒に支払います。従業員負担分まで法定福利費に入れてしまうと、費用が二重に膨らんでしまうため注意してください。

Q2:法定福利費と福利厚生費の違いは何ですか?

法律で負担が義務づけられているかどうかが違いです。健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険などの会社負担分は「法定福利費」、社員旅行や慶弔見舞金など会社が任意で行う制度の費用は「福利厚生費」です。法定福利費は保険料率で金額が決まり会社に裁量がありませんが、福利厚生費は会社が制度を設計します。

Q3:法定福利費の対象になる費用の範囲は?

健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・労災保険料・子ども子育て拠出金の、会社負担分が対象です。社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金)と労働保険(雇用保険・労災保険)に、子ども子育て拠出金を加えた範囲と覚えると整理しやすいです。労災保険料と子ども子育て拠出金は従業員負担がなく、全額を会社が法定福利費に計上します。

Q4:法定福利費に消費税はかかりますか?

かかりません。社会保険料・労働保険料は、国税庁タックスアンサー No.6201で非課税取引とされているため、法定福利費には消費税が発生しません。仕入税額控除の対象にもならないので、会計ソフトでは消費税区分を「非課税」または「対象外」に設定します。健康診断など課税になる福利厚生費と区分を取り違えないよう注意してください。

Q5:社会保険料の会社負担割合はどれくらいですか?

保険によって異なります。健康保険・介護保険・厚生年金保険は原則として労使折半(会社と従業員が半分ずつ)で、厚生年金保険料率18.3%のうち会社負担は9.15%です。雇用保険は会社の負担率のほうが高く、労災保険料と子ども子育て拠出金は全額を会社が負担します。最新の料率は日本年金機構・厚生労働省の公表資料で確認してください。

Q6:預り金が毎月残ってしまうのはなぜですか?

天引きした従業員負担分と、実際に納付した従業員負担分がずれていると、預り金の残高が積み上がります。給与計算上の控除額と、納付書の従業員負担分が一致しているかを確認してください。原則どおり処理していれば、納付のたびに預り金はゼロへ戻ります。残高が残る場合は、控除漏れや納付額の不一致がないかを点検するのが基本です。

まとめ:法定福利費の判定チェックリスト

法定福利費の勘定科目と仕訳を、最後にチェックリストで整理します。

この記事のまとめ
  • 法定福利費=社会保険料・労働保険料の会社負担分。従業員負担分は「預り金」で処理する
  • 対象は6費用(健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険・労災保険・子ども子育て拠出金の会社負担分)
  • 福利厚生費との違いは「法律で義務か・会社の任意か」
  • 負担割合は健保・厚年は労使折半/労災・子ども子育て拠出金は全額会社/雇用保険は会社が多め
  • 社会保険料は消費税が非課税。会計ソフトの消費税区分は「非課税・対象外」に設定する
  • 労働保険は年度更新で概算・確定を精算。前払分の振替漏れに注意

法定福利費は「会社負担分を計上する科目」という原則さえ押さえれば、毎月の仕訳は預り金と法定福利費の往復で回ります。迷ったら、その支出が法律で義務づけられているかを確認してください。義務なら法定福利費、任意なら福利厚生費です。

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免責事項

※本記事は日本年金機構・厚生労働省・国税庁の公開情報をもとに整理した一般的な情報です。保険料率は年度ごとに改定され、都道府県・業種によっても異なります。個別の会計処理・消費税区分・年度更新の実務判断は、所轄の年金事務所・労働局、または顧問税理士にご確認ください。


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この記事を書いた人

会計・経理アドバイザー / 中小企業支援コンサルタント

経歴
大学卒業後、会計事務所で10年以上勤務し、法人・個人事業主の会計処理、税務申告、経理業務改善を多数経験。特に「勘定科目の設定・運用」に関して、企業規模や業種ごとに最適化したアドバイスを提供してきた。現在は独立し、経理の効率化や会計初心者向けの研修も実施。

専門分野
・勘定科目の選定・運用ルール作り
・会計ソフト導入と科目設定支援
・経理担当者の教育・研修
・中小企業の経営数字可視化サポート

サイトの目的
「勘定科目は難しい…」という声をなくし、初心者でも迷わず正しい科目選択ができるようにすること。具体例・図解・テンプレートを用いて、経理や会計業務の現場で即使える情報を発信しています。

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