税理士報酬の勘定科目・仕訳|支払手数料と源泉徴収の処理

税理士報酬の勘定科目は「支払手数料」か「支払報酬料」が一般的で、顧問料・決算料・記帳代行のどれも同じ科目で処理できます。法人や従業員へ給与を払う個人事業主が個人の税理士へ払うときは、報酬から10.21%を源泉徴収し、預り金で処理します。

この記事でわかること

  • 税理士報酬に使う勘定科目の選び方(支払手数料・支払報酬料・支払顧問料の使い分け)
  • 源泉徴収が必要な人・不要な人(法人・個人事業主・税理士法人の違い)
  • 源泉税額の計算式(10.21%・100万円超は20.42%)と、消費税を含めるかどうかの判定
  • 源泉あり・なしの仕訳例と、預り金・消費税の処理

公的情報源: 国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」/国税庁「No.2795 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金」

結論を先に書きます

税理士に払う報酬は、「支払手数料」か「支払報酬料」で処理するのが一般的です。どちらでも税務上の問題はありません。ただし源泉徴収が発生する支払いなので、お金の流れを追いやすい「支払報酬料」に寄せておくと管理が楽になります。

もう一つの分かれ目が源泉徴収です。支払う側が源泉徴収義務者(法人、または従業員へ給与を払う個人事業主)で、支払先が個人の税理士なら、報酬から所得税を天引きします。相手が税理士法人のときや、給与を払っていない個人事業主が払うときは源泉徴収不要。まずこの2点を押さえれば処理はほぼ決まります。

この記事の要点
  • 科目は支払手数料・支払報酬料・支払顧問料のいずれか。決めたら継続して同じ科目を使う
  • 源泉徴収は「誰が払うか」と「相手が個人か法人か」で要否が決まる
  • 源泉税額は報酬額×10.21%(同一人へ1回100万円超の部分は20.42%)
  • 天引きした源泉税は「預り金」で処理し、原則翌月10日までに納付する

税理士報酬は毎月・毎年発生し、金額もまとまります。科目の選び方と源泉徴収の判定を最初に固めておくと、決算まで迷わずに処理できます。この記事では、勘定科目の使い分けから源泉徴収の要否・計算・仕訳・消費税までを順に整理します。

目次

税理士報酬の勘定科目はどれ?支払手数料と支払報酬料

税理士報酬とは、顧問契約や決算申告・記帳代行などで税理士に支払う費用のことで、費用の勘定科目で計上します。法律で科目が決められているわけではなく、実務では次のいずれかを使います。

勘定科目主な使いどころ特徴
支払手数料手数料をまとめて管理したいとき振込手数料など他の手数料と同じ科目に集約
支払報酬料士業への報酬を分けて管理したいとき源泉徴収の対象額を把握しやすい
支払顧問料顧問契約による継続的な報酬顧問料を独立集計できる
業務委託費記帳代行など業務を委託した対価外注色の強い契約で使うことがある

どの科目でも税務上は問題ありません。ポイントは、税理士報酬は源泉徴収がからむ支払いという点です。振込手数料などと同じ「支払手数料」に混ぜると、源泉徴収の対象額が埋もれてしまいます。士業への報酬を独立させたいなら「支払報酬料」が扱いやすい選択です。

顧問料・決算料・スポット相談も同じ科目でよい

税理士への支払いは、月々の顧問料・決算申告料・記帳代行料・スポットの相談料など種類が分かれます。ただしどれも同じ勘定科目でまとめて問題ありません。決算料だけ別科目にする必要はなく、内容は摘要欄に「○月分顧問料」「決算申告料」と書き分ければ十分です。

税理士報酬に使える支払報酬料・支払手数料・支払顧問料の3科目について、対象・源泉徴収の管理しやすさ・消費税区分の違いを整理した比較図
図:税理士報酬はどの科目でもよいが、源泉徴収を管理しやすい支払報酬料が扱いやすい。

大切なのは「継続性の原則」です。今期は支払手数料、来期は支払報酬料と毎期変えると前年比較ができず、税務調査でも指摘されやすくなります。一度決めた科目は毎期そろえるのが基本です。

税理士報酬で源泉徴収が必要な人・不要な人

税理士報酬の源泉徴収は、「支払う側が源泉徴収義務者かどうか」と「支払先が個人か法人か」の2つで決まります。国税庁も、弁護士・税理士などへの報酬を源泉徴収の対象と定めています。

税理士報酬の源泉徴収は、法人や給与を払う個人事業主が個人の税理士へ払う場合に必要で、税理士法人や給与を払わない個人事業主が払う場合は不要になることを示す判定フロー図
図:源泉徴収の要否は「支払者が源泉徴収義務者か」と「支払先が個人か法人か」で決まる。

要否を整理すると次のとおりです。

  • 源泉徴収が必要:法人、または従業員へ給与を払う個人事業主が、個人の税理士へ報酬を払う場合
  • 源泉徴収が不要:支払先が税理士法人の場合(法人への報酬は源泉徴収の対象外)
  • 源泉徴収が不要給与を払っていない個人事業主が払う場合(源泉徴収義務者にあたらない)

迷いやすいのが個人事業主のケースです。従業員を雇って給与を払っている個人事業主は源泉徴収義務者にあたるため、個人の税理士へ払う報酬から源泉徴収します。一方、従業員がいない一人事業主は源泉徴収義務者ではないので、天引きせず満額を支払います。

支払先が税理士法人か個人事務所かは、請求書の名義や登録番号で確認できます。判断に迷う場合は、契約前に相手の区分を確かめておくと処理がぶれません。フリーランスなど士業以外への源泉徴収の考え方は、フリーランスへの支払いと源泉徴収で詳しく整理しています。

税理士報酬の源泉徴収税額の計算方法

源泉徴収する所得税額は、報酬の大きさで税率が変わります。国税庁の定めでは、同一人に対して1回に支払う金額を基準に、次のように計算します。

1回の支払金額計算式
100万円以下支払金額 × 10.21%
100万円超(支払金額 − 100万円)× 20.42% + 102,100円

10.21%・20.42%には、所得税に加えて復興特別所得税が含まれています。たとえば顧問料5万円なら「50,000 × 10.21% = 5,105円」を天引きします。

消費税を含めるか・除くかの判定

源泉徴収の対象額は、原則として消費税込みの金額です。ただし請求書で報酬額と消費税額が明確に区分されている場合は、消費税を除いた本体価格を源泉徴収の対象にできます。

たとえば「顧問料50,000円+消費税5,000円」と分けて記載された請求書なら、本体50,000円の10.21%で計算します。区分がなく税込55,000円だけの記載なら、55,000円が対象です。請求書の書き方で源泉税額が変わるため、明細の記載を確認してから計算します。

税理士報酬の仕訳例:源泉あり・源泉なし

ここからは代表的な仕訳を見ていきます。数字は「顧問料50,000円+消費税5,000円(合計55,000円)」を普通預金から支払うケースで統一します。

ケース1:源泉徴収あり(法人・給与を払う個人事業主)

個人の税理士へ払い、源泉徴収する場合です。請求書で消費税が区分されているため、源泉税は本体50,000円 × 10.21% = 5,105円で計算します。

借方金額貸方金額摘要
支払報酬料50,000普通預金49,895○○税理士 顧問料
仮払消費税5,000預り金5,105源泉所得税

天引きした源泉所得税5,105円は「預り金」で計上し、原則として翌月10日までに納付します。相手に実際に振り込むのは、55,000円から源泉税を引いた49,895円です。

ケース2:源泉徴収なし(税理士法人・給与を払わない個人事業主)

支払先が税理士法人のとき、または給与を払っていない個人事業主が払うときは、源泉徴収せず満額を支払います。

借方金額貸方金額摘要
支払報酬料50,000普通預金55,000○○税理士法人 顧問料
仮払消費税5,000消費税10%

預り金は登場せず、消費税区分は課税仕入れ(10%)で処理します。役員へ払う報酬の考え方は役員報酬の勘定科目で別に整理しています。

ケース3:源泉税を納付したとき

預り金として計上した源泉所得税を、税務署へ納付したときの仕訳です。

借方金額貸方金額摘要
預り金5,105普通預金5,105源泉所得税 納付

納付時は預り金を借方で取り崩し、残高をゼロに戻します。租税公課などの費用科目は使いません。給与の源泉税がある場合は「納期の特例」でまとめて納付できることもあります。

税理士報酬の消費税とインボイス制度

税理士報酬は消費税の課税対象(課税仕入れ・10%)です。支払った消費税は、原則として仕入税額控除の対象になります。

ただしインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、適格請求書発行事業者からの請求書でなければ、原則として仕入税額控除ができません。多くの税理士事務所は登録事業者ですが、請求書に登録番号「T+13桁」があるかを確認しておきます。

  1. 請求書に適格請求書発行事業者の登録番号があるか(T+13桁)
  2. 報酬額と消費税額が区分して記載されているか(源泉税の計算にも影響)
  3. 帳簿へ取引年月日・内容・支払先・金額を記載しているか

支払手数料全般の消費税区分や、振込手数料・仲介手数料との切り分けは、支払手数料の勘定科目と仕訳でまとめて確認できます。

よくある質問

税理士報酬の処理でつまずきやすい6つの疑問を整理します。

Q1:税理士報酬は「支払手数料」と「支払報酬料」のどちらがよい?

どちらでも税務上の問題はありません。ただし税理士報酬は源泉徴収がからむため、振込手数料などと同じ「支払手数料」に混ぜると源泉対象額が埋もれやすいです。士業への報酬を独立して管理したいなら「支払報酬料」が扱いやすく、決算や納付の確認が楽になります。

Q2:個人事業主が税理士に払うとき、源泉徴収は必要?

従業員へ給与を払っている個人事業主なら必要です。この場合は源泉徴収義務者にあたるため、個人の税理士への報酬から10.21%を天引きします。一方、従業員がいない一人事業主は源泉徴収義務者ではないため、源泉徴収せずに満額を支払います。

Q3:税理士法人に払う場合も源泉徴収する?

いいえ、税理士法人への報酬は源泉徴収の対象外です。源泉徴収が必要なのは個人の税理士へ払う場合で、法人への支払いには適用されません。請求書の名義が「○○税理士法人」か個人事務所かを確認して判断します。

Q4:源泉徴収は税込・税抜のどちらで計算する?

原則は税込金額が対象です。ただし請求書で報酬額と消費税額が明確に区分されている場合は、消費税を除いた本体価格で計算できます。「顧問料50,000円+消費税5,000円」と分かれていれば本体50,000円の10.21%、税込55,000円だけの記載なら55,000円が対象になります。

Q5:天引きした源泉所得税はどの勘定科目で処理する?

預り金」で処理します。税理士に代わって国に納める所得税を一時的に預かる形になるため、負債の科目である預り金を使います。原則として徴収した月の翌月10日までに税務署へ納付し、納付時に預り金を取り崩して残高をゼロに戻します。

Q6:決算料やスポット相談料は顧問料と別の科目にすべき?

同じ勘定科目でまとめて問題ありません。決算申告料・記帳代行料・スポット相談料も、月々の顧問料と同じ「支払報酬料」などで計上し、内容は摘要欄で書き分ければ十分です。科目を細かく分けるより、継続性を保って同じ科目を使うほうが管理しやすくなります。

まとめ:税理士報酬の勘定科目と源泉徴収のポイント

税理士報酬の処理で迷ったときの判断ポイントを、最後に整理します。

この記事のまとめ
  • 勘定科目は支払手数料・支払報酬料・支払顧問料のいずれか。源泉管理がしやすい「支払報酬料」が扱いやすい
  • 源泉徴収は「支払者が源泉徴収義務者か」「支払先が個人か法人か」で要否が決まる
  • 税理士法人・給与を払わない個人事業主が払う場合は源泉徴収不要
  • 源泉税額は報酬額×10.21%(同一人へ1回100万円超の部分は20.42%)。天引き分は預り金で処理
  • 消費税は課税仕入れ(10%)。請求書で税額が区分されていれば本体価格が源泉対象
  • 顧問料・決算料・記帳代行料は同じ科目でまとめてよい(継続性の原則)

税理士報酬は金額がまとまり、源泉徴収もからむため、最初に科目と源泉の判定ルールを固めておくと毎期の処理が安定します。源泉徴収の要否や消費税の区分に迷うケースは、請求書の記載を確認したうえで、必要に応じて顧問税理士へ相談して処理ルールを決めておくと安心です。

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免責事項

※本記事は会計・税務の一般的な情報を整理したものです。勘定科目の選択や源泉徴収・消費税区分の最終的な判断は、国税庁の最新情報をご確認のうえ、個別の事情に応じて税理士へご相談ください。


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この記事を書いた人

会計事務所で10年以上、法人や個人事業主の帳簿づけと税務申告の手伝いをしてきたTanakaです。決算が近づくと、経営者から「この支払いはどの科目で処理すればいいですか」という電話を何度も受けました。答えは業種や会社の規模で変わります。そこを一つずつ、相手に合わせて説明してきました。

独立してからは、中小企業の経理担当者向けの研修や、freee・マネーフォワード・弥生の科目設定の相談にも応じています。教科書の説明は抽象的で、現場では「とりあえず雑費」で片づけてしまうことも少なくありません。このサイトでは、勘定科目の選び方の判断軸を、具体例をそえて整理しています。最終的な税務判断は、顧問税理士にご相談ください。

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