前回の記事では、取引先など「社外の人」との飲食費(交際費・会議費)について解説しました。では、社外の人が一切参加しない、「社内の人間だけの飲み会」はどうなるのでしょうか?
「従業員への慰労だから、当然経費(福利厚生費)でしょ?」そう思いたいところですが、税務署は社内の飲み会に対して非常に厳しい目を向けています。
油断すると「交際費(社内接待)」とみなされたり、最悪の場合「参加者への給与(ボーナス)」と認定されて追徴課税されたりするリスクがあります。
この記事では、社内飲み会を安全に「福利厚生費」として処理するための条件を解説します。
結論:この3条件をクリアできるか?
社内飲食費が「福利厚生費」として認められるための鉄壁の条件です。
① 機会均等(全員が対象)「役員だけ」「特定の仲良しグループだけ」はNG。全社員、または支店・部署単位で全員に声掛けしていること。
② 金額の妥当性(常識の範囲)「1人3万円の高級フレンチ」などはNG。一般的な飲み会として常識的な金額であること。
③ 会社の行事であること「ただ飲みたいから集まった」はNG。忘年会、歓送迎会、決起会など、会社の公式行事であること。
⚠️ 「会議費」の基準は使えません!前回の記事で解説した「1人1万円以下なら会議費」というルールは、社外の人が参加している場合限定です。社内だけの飲み会は、たとえ1人3,000円でも、上記条件を満たさなければ原則「交際費」となります。
- なぜ原則は「交際費」になるのか?
税法では、事業に関係ある者に対する接待・慰安のための支出は「交際費」と定義されています。この「事業に関係ある者」には、得意先だけでなく「自社の役員・従業員」も含まれます。
つまり、社内の人間をねぎらうための飲み会は、原則として「社内交際費」となり、中小企業の特例(年800万円枠など)を使わない限り経費になりません。
しかし、例外として「従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」は交際費から除外され、「福利厚生費」として全額経費にすることが認められています。この例外規定を適用するためのハードルが、冒頭で挙げた3つの条件です。
- 福利厚生費になるための3つの壁
① 機会均等の壁(誰が?)
最も重要なのが「特定の誰かだけが得をしていないか」という点です。
OK例: 全社員対象の忘年会、営業部全員での達成会、新入社員歓迎会。
NG例: 役員だけの慰労会、同期の仲良しメンバー飲み会、特定の社員だけを誘った食事。
部署単位であっても、その部署の全員に案内がされており、参加の機会が平等に与えられている必要があります。
② 金額の壁(いくら?)
「通常要する費用(社会通念上妥当な金額)」であることが必要です。明確な基準はありませんが、一般的な居酒屋での飲食代(数千円〜1万円程度まで)が目安となります。
あまりに高額な場合(例:1人5万円の料亭など)は、福利厚生の範囲を超えているとして、参加した特定の個人への「給与(賞与)」とみなされ、源泉所得税の対象となるリスクが高まります。
③ 行事の壁(なんのために?)
会社の公式行事としての実態が必要です。
忘年会、新年会
歓送迎会
創立記念パーティー
プロジェクト完了の打ち上げ
これらは福利厚生費として認められやすいでしょう。一方で、明確な名目がない突発的な飲み会や、後述する「二次会」は認められにくくなります。
- よくある疑問:二次会は?ランチは?
二次会の費用は?
原則NG(個人負担または交際費)です。一次会は会社の公式行事(福利厚生費)として認められても、自由参加となる二次会以降は「個人的な遊興」とみなされる可能性が高いです。
会社が費用を補助する場合でも、福利厚生費とするのはリスクが高いため、参加者の自己負担とするか、どうしても会社が出すなら交際費処理が無難です。
ランチミーティング(昼食)は?
社内の人間だけで、お弁当を食べながら会議をしたような場合はどうでしょう。この場合、上記の3条件(全社員対象など)を満たすのは難しいため、福利厚生費にはなりません。
しかし、実態として「会議」が主目的であり、食事はその付随的なものである(食事代も常識の範囲内)と証明できれば、例外的に「会議費」として認められる可能性があります。(※必ず議事録などを残し、会議の実態を証明できるようにしておく必要があります)
まとめ
社内飲み会を「福利厚生費」にするためのポイントは以下の通りです。
「全社員(または全部署員)」を対象にする。
「常識的な金額」に抑える。
忘年会などの「公式行事」名目で行う。
一次会のみを経費とする。
条件を満たさないものは「交際費」となり、特定の個人だけが著しく得をするようなものは「給与認定」のリスクがあります。社内規定(慶弔見舞金規程や厚生費規程)で「忘年会費用の補助」などを明文化しておくと、税務調査の際にも説明しやすくなります。
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