「取引先が倒産しそうで、売掛金が回収できないかもしれない……」
経営をしていると、こうした不安に直面することがあります。
まだ実際に損をしたわけではないけれど、将来的に回収できなくなる可能性が高い場合、あらかじめそのリスクを当期の費用として計上しておく仕組みが「貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)」です。
この記事では、経理初心者の方に向けて、貸倒引当金の勘定科目の使い方、計算方法、そして決算時の仕訳の流れを解説します。
結論:リスクを「見積もって」計上する
- 貸倒引当金(資産のマイナス)
売掛金や受取手形などのうち、将来回収できないと予想される金額。 - 貸倒引当金繰入(費用)
引当金を計上する際に使う「費用の科目」。今期の経費になります。 - 中小企業の特例
過去の貸倒実績だけでなく、国が決めた一定率(法定繰入率)で計算することが認められています。
1. 貸倒引当金の仕組みと勘定科目
貸倒引当金は、他の勘定科目とは少し毛色が違います。貸借対照表(B/S)では「資産の部」に記載されますが、プラスの資産ではなく、資産の金額を減らす役割(評価勘定)を持ちます。
使う科目は主に以下の2つです。
| 勘定科目 | 区分 | 役割 |
|---|---|---|
| 貸倒引当金 | 資産のマイナス | 決算書で売掛金のすぐ下にマイナス表示される。 |
| 貸倒引当金繰入 | 費用(販売管理費) | 今期の利益を減らすための「経費」として使う。 |
2. 【中小企業向け】法定繰入率による計算
貸倒引当金の金額をどう決めるかは難しい問題ですが、資本金1億円以下の中小企業(青色申告)であれば、簡便な「法定繰入率(ほうていくりいれりつ)」を使って計算することが認められています。
$$ 貸倒引当金 = 期末の売掛金等 \times 法定繰入率 $$
主な業種の法定繰入率
- 卸売・小売業: 1.0%
- 製造業: 0.8%
- 建設業: 1.2%
- サービス業: 0.6%
※これらは「一括評価」と呼ばれる方法です。個別に回収が危ぶまれる取引先がある場合は、別途「個別評価」を行います。
3. 決算時の仕訳例
貸倒引当金の処理には、前期末に立てた引当金を一度ゼロに戻す「洗替法(あらいがえほう)」が一般的です。
例:前期の引当金が10万円あり、今期末の計算で12万円計上したい場合
① 前期の引当金を戻し入れる
| 借方 | 金額 | 摘要 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 貸倒引当金 | 100,000 | 前期分戻入 | 貸倒引当金戻入 | 100,000 |
※「貸倒引当金戻入」は収益(営業外収益)の科目です。
② 今期分の引当金を繰り入れる
| 借方 | 金額 | 摘要 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 貸倒引当金繰入 | 120,000 | 今期分計上 | 貸倒引当金 | 120,000 |
4. 本当に倒産してしまった時はどうする?
実際に取引先が倒産し、売掛金が回収不能になった場合は「貸倒損失(かしだおれそんしつ)」として処理しますが、すでに引当金を立てている場合はそれを取り崩します。
例:売掛金5万円が回収不能になった(引当金は十分にある)
| 借方 | 金額 | 摘要 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 貸倒引当金 | 50,000 | 〇〇社倒産による | 売掛金 | 50,000 |
このように、引当金をあらかじめ立てておくことで、実際に倒産が起きた時にその期の利益がガクンと減るのを防ぐ(クッションのような役割)ことができます。
まとめ
貸倒引当金は、「将来の損」を今から見積もっておく賢い経理処理です。
- 売掛金等の回収不能リスクに備えるためのもの。
- 中小企業は「法定繰入率」で計算できる。
- 決算で「繰入(費用)」を行い、利益を適切に管理する。
- 実際に倒産した際は、引当金を取り崩して処理する。
特に売掛金の残高が大きい会社ほど、貸倒引当金の設定は節税対策としても、正確な決算書作りとしても重要になります。毎年の決算で必ずチェックするようにしましょう。
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