固定資産と消耗品の境界線は?「10万円・40万円の壁」と判定フローを徹底解説

固定資産か消耗品費かは、1つあたりの取得価額で決まり、10万円・20万円・40万円のラインで判定します。2026年4月の改正で少額特例は30万円未満から40万円未満へ拡大。使用可能期間が1年未満なら、金額に関わらず買った年の経費にできます。

この記事でわかること

  • 固定資産か経費かを分ける「10万円・20万円・40万円」の金額基準と、どれを使うべきかの判断軸
  • 2026年(令和8年)改正で30万円未満→40万円未満へ拡大した少額減価償却資産の特例の条件・上限・適用時期
  • 金額だけで決めない例外=「使用可能期間1年未満なら全額経費」というもう一つの判定軸
  • 一括償却資産(20万円未満を3年償却)で固定資産税(償却資産税)を回避する使いどころ
  • 金額区分別の具体的な仕訳例と、送料・設置費など境界を誤りやすい落とし穴

公的情報源: 国税庁タックスアンサー No.5403「少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」(参照)/No.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」(参照)/財務省「令和8年度税制改正の大綱」(参照

最初に押さえる結論

固定資産か消耗品費かは、原則として1つあたりの取得価額(税抜・税込は経理方式に従う)で決まります。判定の軸はシンプルで、まず金額のラインに当てはめ、特例が使えるかを確認する順番です。

ただし金額だけでは決まりません。「使用可能期間が1年未満」なら、金額に関わらず買った年の経費にできます。ここを見落とすと、本来一括で落とせるものを資産計上してしまいます。

この記事の要点
  • 10万円未満:全事業者が買った年に全額経費(消耗品費)にできる
  • 10万円以上40万円未満:原則は固定資産。ただし青色申告の中小企業・個人事業主は特例で一括経費(年間合計300万円まで)
  • 40万円以上:固定資産として資産計上し、耐用年数に応じて減価償却
  • 例外:使用可能期間1年未満なら金額不問で全額経費。20万円未満は一括償却資産(3年均等償却)も選べる

なお少額特例の「40万円未満」は2026年4月1日以後に取得した資産の基準です。2026年3月31日以前に取得した分は、従来どおり「30万円未満」で判定します(詳細は後述)。

この記事では、3つの金額の壁と、見落としがちな例外・仕訳・落とし穴を、迷わず当てはめられる順番で整理します。

目次

取得価額で決まる|固定資産と消耗品を分ける基本原則

図:取得価額と使用可能期間で決まる、消耗品と固定資産の分かれ目
図:取得価額と使用可能期間で決まる、消耗品と固定資産の分かれ目

固定資産と消耗品を分ける最初の物差しは、1つあたりの取得価額です。原則として、品物1単位ごとの金額で処理が変わります。

金額のラインを先に押さえておくと、後の判断が速くなります。まず金額、次に特例、最後に例外という順で当てはめるのが実務の基本です。

取得価額のラインと処理の対応

取得価額(1単位あたり)処理対象
10万円未満買った年に全額経費(消耗品費)すべての事業者
10万円以上40万円未満原則は固定資産。特例で一括経費も可特例は青色申告の中小企業・個人事業主
40万円以上固定資産として資産計上→減価償却すべての事業者

上表の「40万円未満」は2026年4月1日以後の取得分の基準です。2026年3月31日以前の取得分は「30万円未満」で読み替えてください。「10万円以上40万円未満」が、最も判断の分かれるゾーンになります。

10万円・20万円・40万円の壁の判定や、少額特例の年300万円枠の管理、償却資産税の対象判定は、資産が増えるほど手作業ではミスが起きやすい部分です。固定資産台帳と償却計算をまとめて扱いたい場合は、会計ソフトの活用も選択肢になります。

迷わず処理を決める判定フロー

図:取得価額による判定フロー(※少額減価償却資産の特例=青色申告の中小企業者等。2026年改正で30万円→40万円未満に拡大・年間合計300万円まで)。使用可能期間が1年未満なら金額に関わらず経費。
図:取得価額による判定フロー(※少額減価償却資産の特例=青色申告の中小企業者等。2026年改正で30万円→40万円未満に拡大・年間合計300万円まで)。使用可能期間が1年未満なら金額に関わらず経費。

購入した物品をどう処理するかは、上から順に質問へ答えていくと自然に決まります。判定フローを整理します。

  1. 使用可能期間は1年未満か? → はい:全額経費(消耗品費)
  2. 取得価額は10万円未満か? → はい:全額経費(消耗品費)
  3. 青色申告の中小企業・個人事業主で、40万円未満か? → はい:特例で一括経費(年300万円まで)
  4. 20万円未満か? → はい:一括償却資産(3年均等償却)も選べる
  5. いずれにも当てはまらない → 固定資産として資産計上・減価償却

ポイントは、金額より先に「使用可能期間」を確認することです。イベント用の看板や短期で使い捨てる金型のように1年未満で使い切るものは、金額が大きくても消耗品費で落とせます。

以下、各ステップを順に解説します。

「10万円の壁」消耗品費で全額落とせる範囲

図:支出が「費用(P/L)」か「資産(B/S)」かの分類ツリー
図:支出が「費用(P/L)」か「資産(B/S)」かの分類ツリー

すべての判定の土台になるのが「10万円の壁」です。会社の規模や申告方法に関係なく適用される、最も基本的なラインになります。

10万円未満は「消耗品費」で即経費

1単位あたりの取得価額が10万円未満のものは、税法上「少額の減価償却資産」として扱われ、購入した事業年度に全額を経費(損金)計上できます。

  • 勘定科目:消耗品費、事務用品費 など
  • メリット:買った年に全額を経費にできるため、その年の利益を圧縮でき、節税効果が出やすい

例えば9万円のオフィスチェアやプリンタは、迷わず消耗品費で処理して構いません。判定の出発点は、いつもこの「10万円未満かどうか」です。消耗品費の範囲は消耗品費の勘定科目と仕訳でも整理しています。

例外として、使用可能期間が1年未満と見込まれるもの(イベント用の看板、短期で使い捨てる金型など)は、取得価額に関わらず消耗品費として経費計上できます。

10万円以上は原則「固定資産」

取得価額が10万円以上になると、原則として「固定資産」に計上する必要があります。買った年に全額を経費にはできません。

国が定めた耐用年数に応じて、数年間にわたり少しずつ経費化していきます。これが「減価償却」です。

  • 勘定科目:工具器具備品、ソフトウェア、車両運搬具 など
  • デメリット:買った年の経費が少なくなるため、直近の節税効果は薄くなる

減価償却の仕組みは減価償却とは?仕組みと計算方法(定額法・定率法)、仕訳の勘定科目は減価償却費の勘定科目と仕訳で詳しく整理しています。

「40万円の壁」少額特例と2026年改正のポイント

ここが、この記事で最も重要なポイントです。原則は「10万円以上は固定資産」ですが、青色申告をしている中小企業や個人事業主には、非常に有利な特例が認められています。

結論として、2026年4月1日以後の取得分は「40万円未満」まで、買った年に一括で経費にできます。物価上昇を背景に、従来の30万円未満から引き上げられました。

少額減価償却資産の特例の中身

取得価額が10万円以上40万円未満の資産について、一定の条件を満たせば、購入した事業年度に全額を経費計上できる制度です。

項目内容
対象者青色申告をしている個人事業主、または資本金1億円以下・常時使用従業員400人以下の中小企業など
対象資産取得価額が10万円以上40万円未満の減価償却資産(2026年4月1日以後取得)
上限額1事業年度につき合計300万円まで
適用期限2029年(令和11年)3月31日まで

この特例を使えば、例えば35万円の高性能パソコンでも、原則の「工具器具備品(耐用年数4年)」で少しずつ償却せず、買った年に一気に35万円を経費にできます。期末に利益が出すぎたときの節税カードとして強力です。

特例を使える人・法人
  • 青色申告をしている個人事業主
  • 資本金1億円以下で、常時使用する従業員が400人以下の中小企業など
  • 年間の適用額が合計300万円の枠内に収まる場合

特例を使えない・対象外になる場合
  • 白色申告の事業者(青色申告が前提)
  • 常時使用する従業員が400人を超える、または資本金1億円超の法人
  • 年300万円の枠を超えた分(超過分は通常の減価償却か一括償却資産で処理)

2026年改正で「30万円→40万円」へ拡大

令和8年度税制改正で、特例の対象と期限が見直されました。取得日を基準に、新旧どちらの金額が適用されるかが決まります。

改正前後の比較

項目改正前(2026年3月31日以前取得)改正後(2026年4月1日以後取得)
取得価額の上限30万円未満40万円未満
年間合計の上限300万円300万円(据え置き)
従業員数の要件常時使用500人以下常時使用400人以下
適用期限2026年3月31日2029年3月31日まで延長

判定は事業年度ではなく個々の資産の取得日で行います。そのため12月決算の法人でも、2026年4月1日以後に取得した分は40万円基準を使えます。従来は対象外だった「30万円以上40万円未満」の資産も、改正後は買った年に全額経費にできるようになりました。

なお適用の手続きとして、法人は別表十六(七)を確定申告書に添付し、個人事業主は青色申告決算書の減価償却費の計算欄に「措法28の2」等を記載します。なお、国税庁タックスアンサー No.5408は2026年8月12日時点でも「令和7年4月1日現在法令等」の内容で、30万円未満・従業員500人以下・令和8年3月31日までという改正前の要件を表示しています。金額・人数・適用期限は条文(租税特別措置法第67条の5、個人事業主は第28条の2)と同施行令第39条の28が正です。特例の仕訳や記載方法は少額減価償却資産の特例と仕訳ルールで掘り下げています。

40万円の壁の判定・少額特例の300万円枠の残管理・別表十六(七)の作成は、件数が増えるほど手作業では負担が大きくなります。固定資産台帳への登録から仕訳・申告書類の作成まで一気通貫で扱えるのが会計ソフトの強みです。

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「20万円の壁」一括償却資産で償却資産税を抑える

10万円以上20万円未満の資産には、もう一つ「一括償却資産」という選択肢があります。資産の種類や本来の耐用年数に関係なく、一律3年間で均等に償却する方法です。

  • メリット1:本来の耐用年数が長いもの(例:金属製の看板=耐用年数20年)でも、3年で早期に経費化できる
  • メリット2固定資産税(償却資産税)の対象外になる

使い所は、40万円の特例枠(年間300万円)を使い切ってしまった場合や、固定資産税を抑えたい場合です。40万円特例と一括償却資産は、同じ資産にどちらを使うか選べるため、枠の残りと償却資産税の有無で使い分けるのが実務的です。

4つの処理方法の早見比較

選択肢対象金額経費化のスピード償却資産税
消耗品費(10万円未満)10万円未満即時・全額対象外
一括償却資産10万円以上20万円未満3年均等対象外
少額減価償却資産の特例10万円以上40万円未満即時・全額(年300万円まで)対象
通常の減価償却10万円以上耐用年数で按分対象

償却資産税(固定資産税)そのものの扱いは固定資産税の勘定科目と仕訳で整理しています。看板の処理は看板の勘定科目も参考になります。

取得価額に含める付随費用|送料・設置費で境界を誤らない

判定の分かれ目でつまずきやすいのが、「取得価額に何を含めるか」です。結論として、本体価格だけでなく購入に付随する費用も取得価額に含めます

例えば本体9万8,000円のエアコンでも、設置費用が5,000円かかれば取得価額は10万3,000円です。本体だけを見て「10万円未満」と判断すると誤りになります。

取得価額に含める・含めないの目安

区分具体例
取得価額に含める引取運賃・送料・荷役費・購入手数料・関税・据付費・試運転費
含めなくてよい値引き・割戻し(控除する)/登録免許税など一定の租税公課

据付が必要なエアコンや大型機器は、設置費を含めた合計で境界を判定します(エアコンの勘定科目も参照)。また判定は採用している経理方式に従い、税抜経理なら税抜額、税込経理なら税込額で行う点にも注意してください。

金額区分別の仕訳例と中古資産の注意点

図:一括償却資産のT字勘定(借方・貸方)と3年均等償却のイメージ
図:一括償却資産のT字勘定(借方・貸方)と3年均等償却のイメージ

処理方法が決まったら、あとは仕訳です。金額区分ごとの具体例を、借方・貸方でまとめます。

取得価額別の仕訳例

取得価額の例処理仕訳(借方/貸方)
9万円 オフィスチェア消耗品費消耗品費 90,000/現金預金 90,000
18万円 ノートPC一括償却資産一括償却資産 180,000/現金預金 180,000(決算時 減価償却費 60,000/一括償却資産 60,000)
35万円 高性能PC少額特例(改正後)消耗品費 350,000/現金預金 350,000(別表十六(七)を添付)
50万円 コピー機通常の減価償却工具器具備品 500,000/現金預金 500,000(決算時に減価償却)

少額特例は「消耗品費」でも「減価償却費」でも計上できますが、いったん資産計上してから同額を減価償却する方法もあります。処理の一貫性を保つのがポイントです。

中古資産は「耐用年数」に注意

中古で購入した資産は、新品より短い中古の耐用年数で償却できます。簡便法では、法定耐用年数の全部を経過したものは「法定耐用年数×20%」で計算します(1年未満は切り捨て・最低2年)。

よくある誤判定パターン

  • 付随費用の含め忘れ:送料・設置費を足すと10万円・20万円・40万円を超えるのに、本体価格だけで判定してしまう
  • セット判定のミス:応接セットやパソコン+モニターなど、機能上一体のものを1点ずつで判定してしまう
  • 税込経理の見落とし:税込経理なのに税抜額で境界を見て、実際は超えている
  • 修繕費との混同:資産の価値を高める支出(資本的支出)を修繕費で落としてしまう(判定は修繕費と資本的支出の違いを参照)

よくある質問

固定資産と消耗品の境界線について、実務で迷いやすい点を整理します。

Q1:10万円の判定は税抜と税込のどちらで見ますか?

採用している経理方式に従います。税抜経理なら税抜価額、税込経理なら税込価額で10万円・20万円・40万円のラインを判定します。税込経理を選んでいる免税事業者などは、税込金額で境界を超えやすくなる点に注意してください。

Q2:セットで買った応接セットは、1点ずつで判定できますか?

通常1単位として取引される単位(1組・1セット)で判定します。応接セットのテーブルと椅子のように、セットで機能するものは合計額で見ます。机と椅子を別々に買っても、社会通念上ひとまとまりで使うものは合算で判断するのが原則です。

Q3:2026年の改正で何が変わりましたか?

令和8年度税制改正で、少額減価償却資産の特例の上限が30万円未満から40万円未満へ引き上げられました。適用は2026年4月1日以後に取得した資産からで、判定は取得日ベースです。あわせて対象法人の従業員数要件が500人以下から400人以下に見直され、適用期限は2029年3月31日まで延長されました。

Q4:送料や設置費は取得価額に含めますか?

含めます。引取運賃・送料・据付費・試運転費など、購入に付随する費用は取得価額に加えて判定します。本体が9万8,000円でも設置費が5,000円かかれば10万3,000円となり、消耗品費では落とせません。値引き分は取得価額から控除します。

Q5:40万円の特例と一括償却資産、どちらが得ですか?

その年の利益と償却資産税の有無で変わります。早く全額を経費にして節税したいなら40万円特例固定資産税(償却資産税)を避けたいなら20万円未満の一括償却資産が有利です。特例枠(年300万円)を使い切った後の追加投資には、一括償却資産が選択肢になります。

Q6:パソコンは何円から固定資産になりますか?

原則は10万円以上で固定資産です。ただし青色申告の中小企業・個人事業主なら、2026年4月1日以後の取得分は40万円未満まで特例で一括経費にできます。40万円以上のパソコンは、工具器具備品(耐用年数4年・サーバー用以外)として資産計上し、減価償却します。

まとめ:金額の壁を正しく当てはめる

固定資産と消耗品の判定は、キャッシュフローや税額に直結する重要な業務です。最後に判断の軸を整理します。

この記事のまとめ
  • 判定は金額より先に「使用可能期間1年未満か」を確認。該当すれば金額不問で全額経費
  • 基本は「10万円未満は経費(消耗品費)」。取得価額には送料・設置費も含める
  • 青色申告の中小企業・個人事業主は2026年4月以後「40万円未満なら特例で一括経費(年300万円まで)」の強力なカードを持つ
  • 20万円未満は一括償却資産(3年均等・償却資産税の対象外)も選べる
  • 期末に利益が出すぎたときは、40万円未満の設備投資が有効な節税策になる

自社がどの特例を使えるのか、枠の残りと償却資産税の有無を踏まえて、最適な処理を選びましょう。個別の適用判断に迷う場合は、顧問税理士に相談すると確実です。

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免責事項

※本記事は勘定科目・税務処理に関する一般的な情報を整理したものです。特例の適用要件や上限・期限は改正される場合があります。個別の会計処理・税務判断は、国税庁等の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて税理士へご相談ください。


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この記事を書いた人

会計・経理アドバイザー / 中小企業支援コンサルタント

経歴
大学卒業後、会計事務所で10年以上勤務し、法人・個人事業主の会計処理、税務申告、経理業務改善を多数経験。特に「勘定科目の設定・運用」に関して、企業規模や業種ごとに最適化したアドバイスを提供してきた。現在は独立し、経理の効率化や会計初心者向けの研修も実施。

専門分野
・勘定科目の選定・運用ルール作り
・会計ソフト導入と科目設定支援
・経理担当者の教育・研修
・中小企業の経営数字可視化サポート

サイトの目的
「勘定科目は難しい…」という声をなくし、初心者でも迷わず正しい科目選択ができるようにすること。具体例・図解・テンプレートを用いて、経理や会計業務の現場で即使える情報を発信しています。

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