この記事でわかること
- 減価償却費(P/L費用)と減価償却累計額(B/S評価勘定)は別物という、混同しやすい2科目の峻別
- 直接法と間接法の仕訳の違いと、間接法で貸方に「減価償却累計額」を使う理由
- 定額法・定率法の計算式と償却率、事業供用月の月割計算の考え方
- 10万円・20万円・30万円で分岐する少額資産の即時損金・一括償却・少額特例の使い分け
- 決算整理仕訳としての位置づけと、個人事業主(直接法)と法人(間接法)の実務差
公的情報源: 国税庁タックスアンサー No.2100 減価償却のあらまし/No.2106 定額法と定率法/No.5408 少額減価償却資産特例/耐用年数省令 別表第一
減価償却費と減価償却累計額の切り分け・月割計算・償却率の適用は、資産が増えるほど手作業ではミスが出やすい部分です。取得価額を登録すれば毎期の仕訳と累計額を自動計算したい場合は、会計ソフトの活用も選択肢になります。
結論を先に書きます
減価償却で登場する勘定科目は、大きく2つ。費用を表す「減価償却費」と、資産のマイナスを表す「減価償却累計額」です。この2つは名前が似ていますが、載る場所も役割も別物です。
減価償却費は損益計算書(P/L)の費用、減価償却累計額は貸借対照表(B/S)の評価勘定。当期1年分の費用が減価償却費、過去からの累計が減価償却累計額、と覚えると混同しません。
仕訳では、借方は必ず「減価償却費」、貸方に何を置くかで直接法と間接法に分かれるという理解が出発点になります。
- 減価償却費=P/Lの費用(当期分)/減価償却累計額=B/Sの評価勘定(資産のマイナス・累計)
- 仕訳の借方はどちらの方法でも減価償却費。貸方が固定資産(直接法)か減価償却累計額(間接法)かで分岐
- 有形固定資産は間接法が一般的、無形固定資産(ソフトウェア等)は直接法が原則
- 計算は定額法(毎年同額)か定率法(初期ほど多い)。取得価額30万円未満は少額特例で償却不要の道も
- 根拠は国税庁 No.2100・耐用年数省令。個別判断は顧問税理士へ
減価償却費と減価償却累計額はどう違う?
まず、この記事の核心である2つの科目の違いを整理します。「当期の費用」なのか「過去からの累計」なのかで、載る決算書も勘定科目の性質も変わります。
減価償却とは、建物・機械・車両などの固定資産の取得価額を、使用できる期間(耐用年数)にわたって少しずつ費用に配分する手続きです。国税庁のタックスアンサー No.2100でも、時の経過によって価値が減る資産を対象に、法定耐用年数にわたって取得費を分割計上すると示されています。
その配分プロセスで、当期に計上する費用が「減価償却費」、取得から現在までに計上した費用の合計が「減価償却累計額」です。
2科目の対照表
| 比較項目 | 減価償却費 | 減価償却累計額 |
|---|---|---|
| 分類 | 費用 | 資産のマイナス(評価勘定) |
| 載る決算書 | 損益計算書(P/L) | 貸借対照表(B/S) |
| 計上する範囲 | 当期1年分 | 取得から現在までの累計 |
| 仕訳での位置 | 借方 | 貸方(間接法のとき) |
| 期末の残高 | 決算で費用に振替えゼロ | 翌期へ繰り越して積み上がる |
減価償却累計額は「資産」の区分にありますが、残高が増えるほど資産の帳簿価額を減らす「マイナスの資産」という点が独特です。貸借対照表では固定資産の取得価額から控除する形で表示され、評価勘定と呼ばれます。
「マイナスの資産」という考え方
たとえば取得価額100万円の機械を3年使い、毎年20万円ずつ償却したとします。3年後の減価償却累計額は60万円。貸借対照表には「機械100万円/減価償却累計額△60万円=帳簿価額40万円」と表示されます。
このように、取得価額(100万円)と累計額(60万円)を両方見せることで、もとの値段と、これまでどれだけ費用化したかが一目でわかるのが累計額を使う最大のメリットです。
直接法と間接法の仕訳の違い
減価償却費の仕訳方法には「直接法」と「間接法」の2つがあります。借方が「減価償却費」なのは共通で、貸方に何を置くかだけが違うと押さえてください。
- 直接法:貸方に固定資産の科目を置き、資産から直接減額する
- 間接法:貸方に「減価償却累計額」を置き、資産は取得価額のまま残す
実務では、取得価額と償却の累計が両方わかる間接法が有形固定資産で一般的です。一方、ソフトウェアなどの無形固定資産は直接法が原則とされます。
仕訳例:直接法(取得価額100万円・当期償却20万円)
備品を100万円で取得し、当期の減価償却費20万円を直接法で計上するケースです。貸方に備品を置き、備品の帳簿価額を直接減らします。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 200,000 | 備品 | 200,000 | 当期分減価償却(定額法・直接法) |
この仕訳の結果、備品の帳簿価額は80万円になります。貸借対照表には80万円だけが載るため、帳簿価額はすぐわかる反面、もとの取得価額100万円は帳簿から見えなくなるのが直接法の特徴です。
仕訳例:間接法(取得価額100万円・当期償却20万円)
同じ条件を間接法で計上すると、貸方は「減価償却累計額」になります。備品そのものは取得価額100万円のまま動かしません。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 200,000 | 減価償却累計額 | 200,000 | 当期分減価償却(定額法・間接法) |
貸借対照表では「備品1,000,000/減価償却累計額△200,000」と並び、取得価額と累計額の両方が残ります。取得原価と償却の進み具合を同時に把握できるため、法人の決算では間接法が広く使われています。
個人事業主と法人で使い分けが違う
実務上、どちらの方法を使うかは事業形態でも傾向が分かれます。混同しやすいので整理しておきます。
| 事業形態 | 主に使う方法 | 補足 |
|---|---|---|
| 個人事業主(青色申告決算書) | 直接法 | 減価償却費の計算明細に取得価額・未償却残高を記載 |
| 法人 | 間接法 | 取得価額と累計額を分けて把握・注記も明確 |
個人事業主の青色申告決算書は、減価償却費の計算欄で取得価額・償却累計・未償却残高を管理するため、帳簿は直接法で処理するのが一般的です。会社の経理では取得価額を残す間接法が主流になります。どちらを選んでも当期の減価償却費(費用)の金額は同じです。
直接法と間接法の切り替え、月割計算、償却率の当てはめは、固定資産の件数が増えるほど手作業では負担が大きくなります。取得価額と事業供用日を登録すれば、毎期の仕訳・減価償却累計額・帳簿価額まで自動で計算できるのが会計ソフトの強みです。
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定額法と定率法:計算方法の違い
減価償却費の金額は、償却方法によって変わります。代表的なのが「定額法」と「定率法」。国税庁タックスアンサー No.2106を踏まえて、両者の計算式と特徴を整理します。
定額法・定率法の比較
| 項目 | 定額法 | 定率法 |
|---|---|---|
| 計算式 | 取得価額 × 定額法償却率 | 未償却残高 × 定率法償却率 |
| 償却費の推移 | 毎年ほぼ同額 | 初期ほど多く、年々減少 |
| 向くケース | 収益が安定した資産 | 早期に費用化したい資産 |
| 建物・建物附属設備 | 定額法のみ(強制) | 使えない |
定額法は毎年同じ額を費用化するため、決算の見通しが立てやすい方法です。定率法は初年度に多く償却でき、早期の節税効果が大きいという特徴があります。ただし建物・建物附属設備・構築物は定額法しか使えない点に注意してください。
事業供用月の月割計算
期の途中で取得・使用開始した資産は、使った月数だけ按分します。年間の償却限度額に「使用月数 ÷ 12」を掛けるのが基本です。
たとえば定額法で年間償却額が12万円の資産を、決算月まで残り3か月の時点で使い始めた場合、当期の減価償却費は「120,000円 × 3/12 = 30,000円」になります。取得しただけでは償却できず、事業に使い始めた月から計算する点がポイントです。
なお平成19年4月1日以後に取得した資産は、残存価額が廃止され、備忘価額1円まで償却できます。償却の最終年は帳簿価額が1円残る仕訳になります。
決算整理仕訳としての減価償却
減価償却の仕訳は、期中に毎月起こす取引ではなく、決算のときにまとめて計上する「決算整理仕訳」の一つです(月次決算をしている場合は毎月計上することもあります)。
決算整理仕訳とは、期末に一年分の損益を正しく計算するために行う調整仕訳です。減価償却のほか、売上原価の算定、経過勘定(前払費用・未払費用)の計上などが該当します。
- 償却限度額を計算:取得価額・償却率・使用月数から当期の減価償却費を算出する
- 方法を決めて仕訳:直接法なら貸方に固定資産、間接法なら貸方に減価償却累計額
- 決算書へ反映:減価償却費は損益計算書、累計額は貸借対照表に表示する
この手順を踏むことで、固定資産の価値の減少が正しく費用として反映され、期末の帳簿価額も適正になります。計算の根拠となる耐用年数は減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一で資産ごとに定められています(2026年6月閲覧)。
少額な資産は償却しない選択肢もある
取得価額が小さい資産は、耐用年数にわたる減価償却をせず、取得した期に費用化できる特例があります。減価償却累計額の仕訳が不要になるケースもあるため、金額の段階で判断します。
取得価額別の処理方法
| 取得価額 | 処理方法 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費等で全額損金 | 取得時に一括費用(減価償却しない) | 法人税法施行令133条 |
| 20万円未満 | 一括償却資産 | 3年間で均等償却(償却資産税の対象外) | 法人税法施行令133条の2 |
| 30万円未満 | 少額減価償却資産特例 | 取得時に全額損金(年300万円上限) | 租税特別措置法67条の5 |
| 30万円以上 | 通常の減価償却 | 定額法・定率法で耐用年数にわたり償却 | 耐用年数省令 別表第一 |
30万円未満の資産を取得した中小企業者等は、国税庁タックスアンサー No.5408の少額減価償却資産の特例(措法67条の5)で取得時に全額を損金算入できます。適用には青色申告・常時使用従業員数500人以下等の要件があり、年間合計300万円の上限も設けられています。
少額特例と償却資産税の注意点
少額特例で即時損金にしても、償却資産税(固定資産税)の申告対象になる点に注意が必要です。「経費にしたから固定資産税もかからない」と誤解して申告漏れを起こすと、後から市町村に指摘される可能性があります。
一方、20万円未満で選べる一括償却資産(3年均等償却)は、償却資産税の対象外という利点があります。金額が近いときは、節税と申告手間の両面で有利な方を選ぶのが実務のコツです。
固定資産と消耗品の境界や勘定科目の全体像を確認したい場合は、free確定申告で使う勘定科目一覧や勘定科目・用語集もあわせて参照してください。無形固定資産の償却つながりで、繰延資産の勘定科目と償却も参考になります。
よくある質問
減価償却費・減価償却累計額の勘定科目について、現場で頻出する質問を整理します。
Q1:減価償却累計額は資産と負債のどちらですか?
減価償却累計額は「資産」の区分に置かれる勘定科目ですが、性質はマイナスの資産(評価勘定)です。貸借対照表では固定資産の取得価額から控除する形で表示され、残高が増えるほど資産の帳簿価額を減らします。負債ではないため、その位置づけを取り違えないよう注意してください。
Q2:減価償却費と減価償却累計額の違いを一言でいうと?
減価償却費は「当期1年分」の費用で損益計算書に載り、減価償却累計額は「取得から現在まで」の累計で貸借対照表に載ります。毎年の減価償却費が積み重なったものが減価償却累計額、と理解すると混同しません。間接法では、借方に減価償却費、貸方に減価償却累計額を計上します。
Q3:直接法と間接法はどちらを使えばいいですか?
有形固定資産(建物・機械・車両・備品など)は、取得価額と累計額を分けて把握できる間接法が一般的です。ソフトウェアなどの無形固定資産は直接法が原則とされます。個人事業主は青色申告決算書の様式に合わせて直接法で処理することが多く、法人は間接法が主流です。どちらでも当期の減価償却費(費用)の金額は同じになります。
Q4:定額法と定率法はどちらが得ですか?
早期に多く費用化して節税したい場合は、初年度の償却額が大きい定率法が有利です。毎期の費用を平準化して決算の見通しを立てたい場合は定額法が向きます。ただし建物・建物附属設備・構築物は定額法しか選べません。法定償却方法(届出をしない場合に適用される方法)は資産や事業形態で異なるため、変更したい場合は事前の届出が必要です。
Q5:30万円未満の資産は減価償却しなくていいですか?
青色申告の中小企業者等であれば、取得価額30万円未満の資産は少額減価償却資産の特例(措法67条の5)で取得時に全額損金算入でき、耐用年数にわたる減価償却は不要です。ただし年間合計300万円の上限があり、常時使用従業員数500人以下等の要件も確認が必要です。なお即時損金にしても償却資産税(固定資産税)の申告対象になる点に注意してください。
Q6:減価償却の仕訳はいつ計上しますか?
減価償却は決算のときにまとめて計上する決算整理仕訳の一つです。期末に当期分の償却限度額を計算し、直接法または間接法で仕訳します。月次決算をしている場合は、年間の償却額を12で割って毎月計上することもあります。取得しただけでは償却できず、事業に使い始めた月から月割で計算します。
Q7:土地は減価償却できますか?
土地や骨董品・美術品など、時の経過によって価値が減らない資産は減価償却の対象外です。減価償却できるのは、建物・機械装置・車両・備品・ソフトウェアなど、使用や時間の経過で価値が下がる「減価償却資産」に限られます。土地は取得価額のまま帳簿に残り、売却や評価替えがあるまで金額は動きません。
まとめ:2科目の峻別が理解の起点
減価償却費と減価償却累計額の勘定科目を、最後にチェックリストで整理します。
- 減価償却費=損益計算書の費用(当期分)/減価償却累計額=貸借対照表の評価勘定(累計・資産のマイナス)
- 仕訳の借方はどちらの方法でも減価償却費。貸方が固定資産(直接法)か減価償却累計額(間接法)かで分岐
- 有形固定資産は間接法が一般的、無形固定資産は直接法が原則。個人事業主は直接法・法人は間接法が主流
- 計算は定額法(毎年同額)か定率法(初期ほど多い)。建物系は定額法のみ・期中取得は月割
- 取得価額30万円未満は少額特例で即時損金の道もあるが、償却資産税の申告は忘れない
減価償却の理解でつまずく最大の原因は、「費用(P/L)」と「評価勘定(B/S)」の2科目を混同することにあります。この峻別さえできれば、直接法・間接法の違いも、決算整理仕訳としての位置づけも、すっきり整理できます。
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