福利厚生費の勘定科目と仕訳|法定福利費との違い・認められる3要件【2026年】

福利厚生費は、健康診断・慶弔金・社員旅行・食事補助などの費用を処理する勘定科目です。法定福利費との違いや、認められる3要件(全員対象・金額が妥当・現金の直接支給でない)、外れると給与認定されるリスクまで整理します。

この記事でわかること

  • 福利厚生費に使う勘定科目と、健康診断・慶弔金・社員旅行・食事補助・忘年会の仕訳例
  • 混同されやすい「福利厚生費」と「法定福利費」の違い(任意か義務か・使う科目の分かれ目)
  • 経費として認められる3要件(全従業員が対象・金額が社会通念上妥当・現金の直接支給でない)
  • 要件を外すと「給与」認定→源泉徴収の対象になるリスクと、国税庁が示す数字基準
  • 意外と間違える消費税の課税・不課税(慶弔金は不課税/飲食・物品購入は課税)
  • 役員のみ・特定者のみの支出が交際費・給与に転げる境界線

公的情報源: 国税庁タックスアンサー No.2508 給与所得となるものNo.2594 食事を支給したときNo.2603 従業員レクリエーション旅行No.5261 交際費等と福利厚生費との区分

福利厚生費は「どこまで経費か」「給与にならないか」の判定が細かく、手仕訳ではミスが起きやすい費目です。勘定科目の自動提案や消費税区分の管理までまとめて扱いたい場合は、会計ソフトの活用も選択肢になります。

結論を先に書きます

従業員のための任意の支出(健康診断・慶弔金・社員旅行など)は、「福利厚生費」勘定で処理します。一方、社会保険料の会社負担分は「福利厚生費」ではなく「法定福利費」勘定を使います。名前が似ていますが、任意か法律上の義務かで科目が分かれるのがポイントです。

そして福利厚生費が経費(かつ非課税)として認められるかは、①全従業員が対象 ②金額が社会通念上妥当 ③現金の直接支給でないの3要件で決まります。この要件を外すと、その支出は「給与」とみなされ源泉徴収の対象になります。

この記事の要点
  • 科目は任意=福利厚生費/義務(社保会社負担)=法定福利費で使い分ける
  • 認められる3要件は全従業員対象・金額が妥当・現金の直接支給でない
  • 要件を外すと給与認定→源泉徴収。食事補助・社員旅行には国税庁の数字基準がある
  • 消費税は慶弔金=不課税/飲食・物品購入=課税で区分が変わる
  • 根拠は国税庁 No.2508ほか。個別判断は顧問税理士へ

目次

結論:福利厚生費の勘定科目と3要件

福利厚生費とは、給与や交際費とは別に、従業員の働きやすさや健康・慰労のために会社が任意で負担する費用です。まずは全体像を押さえてください。

論点結論
使う勘定科目従業員向けの任意の支出は「福利厚生費」
社会保険料の会社負担分「福利厚生費」ではなく「法定福利費」
経費に認められる要件全従業員が対象・金額が妥当・現金の直接支給でない
要件を外すと「給与」認定→源泉徴収の対象
消費税内容で課税・不課税が分かれる(慶弔金は不課税)

福利厚生費は金額の上限が法律で細かく決まっているわけではありません。だからこそ「3要件を満たすか」で線引きするのが実務の基本になります。判断に迷いやすい費目なので、根拠を残しながら処理するのが安全です。

福利厚生費として認められる3要件

経費(かつ従業員に課税されない)として扱うには、次の3つをすべて満たす必要があります。

要件内容外れる例
①機会の平等性原則すべての従業員が対象・利用できる役員や特定部署だけが対象
②金額の妥当性支出額が社会通念上妥当な範囲一人だけ高額な慰安・過大な旅行
③現金支給でない現金・金券など換金性の高いものでない現金で一律配布・商品券の配布

3要件のうち1つでも外れると、その支出は福利厚生費として認められず、受け取った従業員の「給与」として課税されます。「全員が対象か」「金額は常識的か」「現金を配っていないか」を毎回確認するのがポイントです。

福利厚生費とは(法定外福利厚生の費用)

福利厚生費は、会社が任意で行う「法定外福利厚生」にかかる費用のことです。法律で義務づけられた社会保険とは別に、従業員の健康・慰労・生活支援のために会社が独自に用意する制度が該当します。

代表的なものを挙げます。

  • 健康診断・人間ドックの費用
  • 慶弔金(結婚祝い金・出産祝い金・香典など)
  • 社員旅行・忘年会・新年会などのレクリエーション
  • 食事補助・社員食堂の運営費
  • 制服・作業着の支給、常備薬・スポーツ施設の利用補助

これらは「賃金の代わり」ではなく、従業員が働きやすい環境を整えるための費用という位置づけです。だからこそ「全員が対象か」「金額は妥当か」という視点で判定します。個人事業主本人や家族従業員だけのための支出は、福利厚生費には該当しません。

福利厚生費と法定福利費の違い

「福利厚生費」と「法定福利費」は名前が似ていますが、法律上の義務があるかどうかで明確に分かれます。使う勘定科目も別です。

比較項目福利厚生費法定福利費
性格会社の任意法律上の義務
中身健康診断・慶弔金・社員旅行など社会保険料・労働保険料の会社負担分
使う勘定科目福利厚生費法定福利費
根拠会社の裁量で設計健康保険法・厚生年金保険法・労災保険法など
従業員への課税要件を外すと給与課税会社負担分は課税されない

法定福利費に含まれるのは、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料・雇用保険料・労災保険料・子ども子育て拠出金の会社負担分です。これらは法律で企業負担が定められているため、福利厚生費とは分けて「法定福利費」で計上します。

つまり「社会保険料の会社負担=法定福利費」「それ以外の任意の福利厚生=福利厚生費」と覚えると混同しません。見積書や仕訳を切るときは、まずこの2つのどちらかを見分けるのが第一歩です。

要件を外すと「給与」認定→源泉徴収のリスク

福利厚生費でつまずきやすいのが、3要件を外した支出が「給与」とみなされる点です。給与認定されると、会社はその分を源泉徴収しなければならず、後から追徴されるリスクがあります。

国税庁は、物やサービスで受け取る利益(現物給与)も原則は給与所得になると示しています(国税庁 No.2508 給与所得となるもの)。ただし一定の要件を満たせば非課税で扱える特例があり、費目ごとに数字基準が決まっています。

食事補助・社員旅行の数字基準

代表的な2つの費目には、次の明確な基準があります。

費目給与課税されない要件根拠
食事補助従業員が食事代の半額以上を負担・かつ会社負担が月3,500円(税抜)以下No.2594
社員旅行旅行が4泊5日以内・全従業員の50%以上が参加No.2603

たとえば食事補助は、会社負担が月3,500円(税抜)を超える、または従業員負担が半額未満だと、会社負担分の全額が給与として課税されます。社員旅行も、日数が長すぎる・参加率が低い・一部役員だけの豪華旅行といった場合は、福利厚生費でなく給与や交際費に転げます。

「良かれと思って手厚くした結果、給与課税になる」というのが典型的な失敗です。手厚さと非課税は両立しないことがある、と押さえてください。

福利厚生費の仕訳例(ケース別)

ここからは実際の仕訳を、現場でよくあるケースごとに整理します。いずれも税抜経理・普通預金からの支払いを想定しています。

健康診断の費用

全従業員を対象とした健康診断を、会社が病院へ直接支払うケースです。5万円(税込55,000円)を支払ったとします。

借方科目金額貸方科目金額
福利厚生費50,000普通預金55,000
仮払消費税5,000

摘要:全従業員 定期健康診断費用。健康診断は全員が対象であることが要件です。特定の役員だけの人間ドックは給与や役員賞与になる余地があります。

慶弔金(結婚祝い金・香典など)

社内規程に基づき、従業員へ結婚祝い金3万円を現金で支給したケースです。

借方科目金額貸方科目金額
福利厚生費30,000現金30,000

摘要:慶弔規程に基づく結婚祝い金。慶弔金は現金支給ですが、社内規程に沿った社会通念上妥当な金額であれば福利厚生費として認められます。消費税は対価性がないため不課税です(後述)。

社員旅行

全従業員対象の1泊2日の社員旅行に、会社が20万円(税込22万円)を負担したケースです。

借方科目金額貸方科目金額
福利厚生費200,000普通預金220,000
仮払消費税20,000

摘要:全従業員 社員旅行(1泊2日・参加率○%)。4泊5日以内・参加率50%以上という要件を満たすことを、参加者名簿や案内文書で残しておくと税務調査で説明しやすくなります。

食事補助

社員食堂の食事代について、会社が月1人あたり3,000円(税込3,300円)を負担したケースです。

借方科目金額貸方科目金額
福利厚生費3,000普通預金3,300
仮払消費税300

摘要:食事補助(従業員半額負担・会社負担月3,000円)。会社負担が月3,500円(税抜)以下で従業員が半額以上を負担しているため、給与課税されません。

忘年会・新年会

全従業員が参加する忘年会の費用8万円(税込88,000円)を、会社が支払ったケースです。

借方科目金額貸方科目金額
福利厚生費80,000普通預金88,000
仮払消費税8,000

摘要:全従業員 忘年会費用。飲食費の消費税は課税仕入れとして仮払消費税で処理します。取引先を接待する飲食は交際費になるため、参加者が社内か社外かで科目が変わります。

費目ごとに消費税の課税・不課税が変わり、月次で件数が増えるほど手作業の管理は負担になります。勘定科目の自動提案から消費税区分の管理までまとめて扱えるのが会計ソフトの強みです。クラウド型なら税理士との共有もしやすくなります。

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消費税の課税・不課税の区分

福利厚生費で見落とされやすいのが消費税の区分です。福利厚生費だからといって、すべてが課税仕入れになるわけではありません。支出の中身で分かれます。

支出内容消費税区分理由
慶弔金(祝い金・香典)不課税対価性がない(お金の給付)
健康診断・人間ドック課税医療サービスの対価
社員旅行・忘年会の飲食課税役務・飲食の対価
制服・常備薬などの物品購入課税物品購入の対価
食事補助(会社が食事を購入)課税飲食物の対価

ポイントは「対価のやり取りがあるか」です。慶弔金のように見返りなくお金を渡すものは対価性がなく不課税ですが、飲食や物品の購入・医療サービスは対価があるため課税仕入れになります。同じ福利厚生費でも仮払消費税を計上するかどうかが変わるため、費目ごとに区分を確認してください。

勘定科目全般の区分に迷ったときは、勘定科目の用語集freee確定申告の勘定科目一覧もあわせて確認すると整理しやすくなります。

役員のみ・特定者のみは交際費・給与になる注意

福利厚生費の3要件で最初につまずくのが「全従業員が対象か」です。ここを外すと、福利厚生費ではなく交際費や給与になります。

国税庁も、社内の従業員のための慰安・会食などは福利厚生費、社外の取引先などへの接待は交際費、という区分を示しています(国税庁 No.5261 交際費等と福利厚生費との区分)。

判定の目安を整理します。

ケース科目理由
全従業員対象の慰安・会食福利厚生費機会の平等性を満たす
特定の役員・部署だけの会食給与または交際費全員対象でない
取引先を接待する飲食交際費社外への接待
一人だけへの高額な旅行・金品給与金額が妥当でない・個人への利益

特定の役員だけの支出は、役員給与(役員賞与)として損金不算入になる可能性もあります。福利厚生費で落とす前に、「これは全員が使える制度か」「一部の人だけに偏っていないか」を必ず確認してください。

福利厚生費の判定手順

支出が福利厚生費になるかどうかを、実務で使う順番に整理します。上から順に当てはめれば、多くのケースで迷わず判定できます。

  1. 社会保険料の会社負担分か → 該当すれば「法定福利費」で処理し終了
  2. 全従業員が対象か → 特定者のみなら給与・交際費を検討
  3. 金額は社会通念上妥当か → 過大なら給与・交際費を検討
  4. 現金・金券の直接支給でないか → 現金配布なら給与を検討
  5. 費目別の数字基準を満たすか(食事補助・社員旅行など)を確認
  6. 消費税の課税・不課税を区分して仕訳する

この6ステップで「法定福利費か福利厚生費か」「福利厚生費か給与・交際費か」「課税か不課税か」を順に切り分けられます。判定の根拠になる社内規程・参加者名簿・負担割合の記録を残しておくと、税務調査でも説明しやすくなります。

よくある質問

福利厚生費の処理で現場から頻出する質問を整理します。

Q1:福利厚生費と法定福利費はどう使い分けますか?

社会保険料や労働保険料の会社負担分は「法定福利費」、それ以外の任意の福利厚生(健康診断・慶弔金・社員旅行など)は「福利厚生費」で処理します。前者は法律で企業負担が義務づけられている費用、後者は会社が任意で行う費用という違いがあります。名前が似ているため、まず「社会保険の会社負担か、それ以外か」で見分けるのが確実です。

Q2:福利厚生費として認められる要件は何ですか?

原則すべての従業員が対象であること(機会の平等性)、支出額が社会通念上妥当であること(金額の妥当性)、現金や金券など換金性の高いものの支給でないこと、の3要件です。1つでも外れると福利厚生費として認められず、受け取った従業員の給与として課税される可能性があります。全員が使える制度か、金額は常識的か、現金を配っていないかを毎回確認してください。

Q3:慶弔金は現金支給ですが福利厚生費にできますか?

社内の慶弔規程に基づき、結婚祝い金・出産祝い金・香典などを社会通念上妥当な金額で支給する場合は、現金であっても福利厚生費として認められます。3要件の「現金支給でない」は、給与の代わりに一律で現金を配る行為を想定したものです。慶弔金のように規程に沿って支給するものは例外的に認められます。消費税は対価性がないため不課税で処理します。

Q4:食事補助はいくらまで福利厚生費になりますか?

従業員が食事代の半額以上を負担し、かつ会社負担が1か月あたり3,500円(税抜)以下であれば、給与課税されず福利厚生費として処理できます(国税庁 No.2594)。会社負担が3,500円を超える、または従業員負担が半額未満の場合は、会社負担分の全額が給与として課税されます。負担割合と月額を記録しておくと説明が円滑になります。

Q5:社員旅行を福利厚生費にする条件は?

旅行の期間が4泊5日以内(海外旅行は現地滞在が4泊5日以内)で、全従業員の50%以上が参加していることが目安です(国税庁 No.2603)。参加率が低い、日数が長すぎる、一部の役員だけの豪華な旅行などは、福利厚生費でなく給与や交際費とみなされる可能性があります。参加者名簿と旅行案内を残しておくのが安全です。

Q6:役員だけの会食や旅行は福利厚生費にできますか?

福利厚生費は原則すべての従業員が対象であることが要件のため、特定の役員だけを対象とした会食や旅行は福利厚生費になりません。内容によって役員給与(役員賞与)や交際費として扱われ、役員賞与に該当すると損金不算入になる可能性があります。社外の取引先を接待する飲食は交際費です。誰が対象かで科目が変わる点に注意してください。

Q7:個人事業主本人の福利厚生費は経費になりますか?

福利厚生費は「雇用している従業員のための費用」です。そのため、個人事業主本人や生計を一にする家族従業員だけのための健康診断・慰安旅行などは、原則として福利厚生費に該当しません。従業員を雇用している場合に、その従業員を対象として支出した費用が福利厚生費になります。本人分の支出は経費性を個別に検討する必要があります。

まとめ:福利厚生費の判定チェックリスト

福利厚生費の勘定科目と仕訳の判定を、最後にチェックリストで整理します。

この記事のまとめ
  • 科目は任意=福利厚生費/社会保険の会社負担=法定福利費で使い分ける
  • 認められる3要件は全従業員対象・金額が妥当・現金の直接支給でない
  • 要件を外すと給与認定→源泉徴収。食事補助は月3,500円(税抜)以下・社員旅行は4泊5日以内かつ参加50%以上が目安
  • 消費税は慶弔金=不課税/飲食・物品・医療=課税で区分
  • 役員のみ・特定者のみは交際費・給与に転げるため対象範囲を確認

福利厚生費は「全員が対象か・金額は妥当か・現金を配っていないか」の3要件と、費目ごとの数字基準・消費税区分を押さえれば、迷わず処理できます。判定の根拠になる社内規程・参加者名簿・負担割合の記録を残しておけば、後で揉めるリスクも下がります。

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免責事項

※本記事は国税庁の公開情報をもとに整理した一般的な情報です。支出の内容が特殊な場合・高額な支出・役員が関係する支出・給与課税の判定など、個別の税務判断は所轄税務署の事前照会(書面照会・無料)または顧問税理士にご相談ください。


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この記事を書いた人

会計・経理アドバイザー / 中小企業支援コンサルタント

経歴
大学卒業後、会計事務所で10年以上勤務し、法人・個人事業主の会計処理、税務申告、経理業務改善を多数経験。特に「勘定科目の設定・運用」に関して、企業規模や業種ごとに最適化したアドバイスを提供してきた。現在は独立し、経理の効率化や会計初心者向けの研修も実施。

専門分野
・勘定科目の選定・運用ルール作り
・会計ソフト導入と科目設定支援
・経理担当者の教育・研修
・中小企業の経営数字可視化サポート

サイトの目的
「勘定科目は難しい…」という声をなくし、初心者でも迷わず正しい科目選択ができるようにすること。具体例・図解・テンプレートを用いて、経理や会計業務の現場で即使える情報を発信しています。

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