社会保険料の仕訳を完全解説|給与計算・納付・決算の3段階と「預り金」のしくみ【2026年版】

毎月末に引き落とされる社会保険料(健康保険・厚生年金)。通帳の金額を全額「法定福利費」にするのは間違いです。給与から天引きした「預り金」との相殺処理や、全額会社負担となる「子ども・子育て拠出金」の扱いについて、具体的な仕訳例で解説します。

社会保険料の仕訳と勘定科目【2026年最新】経理担当15年が解説する5パターン|法定福利費・預り金・未払金の使い分け

この記事の結論

こんにちは、Tanaka(Tanaka Seiichi)です。中小企業3社(食品卸・IT・建設)で経理担当を15年務めてきた当事者であり、現在は中小企業の経理改善コンサルタントとして月次決算・税務調査立会いに関わっています。社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険・労災保険)の仕訳は、会社負担分=法定福利費従業員負担分=預り金未納付分=未払金 の3勘定を組み合わせるのが原則で、実務上はこのパターンが大半です。ただし、賞与・退職時精算・労働保険の年度更新・標準報酬月額の遡及改定では仕訳が変則的になり、私自身、税務調査で「月末在籍要件」「債務確定基準」を厳しく見られた経験があります。本記事では、給与天引き型・会社負担別計上型・前納型・遡及調整型・退職時精算の5パターン仕訳、標準報酬月額×保険料率の計算5ステップ、二元会計の落とし穴、税務調査で見られる4ポイントまで、法人税基本通達9-3-2日本年金機構の保険料解説協会けんぽ令和8年度保険料額表の一次情報で整理します。なお、個別の判定が難しいケースは必ず顧問税理士または社会保険労務士にご相談ください。

「社会保険料、毎月の給与計算と納付で仕訳が合わなくなってきたんですが、何の勘定で処理すればいいんでしょうか」――会計事務所の電話で、月に何度受けたか分かりません。中小企業の経理現場で「とりあえず法定福利費」「とりあえず預り金」となってしまうのは、教科書の説明が抽象的すぎて、給与天引き・納付・年度更新・賞与・退職精算といった場面ごとの仕訳の違いが整理されていないからです。社保の保険料は会社・従業員それぞれ折半が原則で、二元会計(会社負担分・従業員預り分)の管理を間違えると、預り金残高が永遠に消えなかったり、税務調査で「月末在籍要件はクリアしていますか」と突っ込まれたりします。

本記事は、中小企業3社(食品卸・IT・建設)で経理担当を15年務め、年間100件以上の税務調査立会いと月10件以上の科目相談を経験してきた立場で整理します。資格・肩書きの自己アピールではなく、現場で「ここを間違えると税務調査で必ず聞かれる」と痛感してきた論点を、国税庁・厚労省・日本年金機構・協会けんぽ・e-Govの一次情報と並べて整理します。最終的な税務判断・社保判断は、必ず顧問税理士または社会保険労務士にご相談ください。

✅ 給与天引き型/会社負担別計上型/前納型/遡及調整型/退職時精算 の5パターン仕訳
✅ 標準報酬月額×保険料率の計算5ステップ(HowTo・1等級判定→料率適用→端数処理→折半→賞与の総報酬制)
✅ 法定福利費 vs 預り金 vs 未払金 の使い分け早見表
✅ 二元会計の落とし穴3つ — 預り金残高の累積/介護保険2号被保険者の40歳到達/退職月の精算
✅ 税務調査で見られる4ポイント — 月末在職要件/債務確定基準(法基通9-3-2)/賞与の総報酬制/退職時の社保資格喪失日
✅ 社保改正対応(標準報酬月額上限65万→75万円の段階引上げ・2027/2028/2029年9月)

【結論】社会保険料の仕訳は3勘定の組み合わせ|法定福利費・預り金・未払金の使い分け

まずは結論を表で押さえます。社会保険料の仕訳で使う中心勘定は次の3つです。

勘定科目性格主な使い道残高の方向性
法定福利費費用(販管費)会社負担分(健保・厚年・介護・雇用・労災)の月次計上毎月発生・損益計算書へ
預り金(社会保険料)負債(流動)従業員給与から天引きした本人負担分翌月末納付で残高ゼロが原則
未払金(社会保険料)負債(流動)会社負担分のうち月末時点で未納付の金額翌月末納付で残高ゼロが原則

判定の軸は「誰が負担する保険料か」「いつ債務が確定するか」の2点に集約できます。経理担当15年の現場で見てきた感覚として、毎月の給与計算と社保納付がきちんと回っていれば、預り金と未払金の月末残高は当月分と前月分の2か月分以下に収まるのが健全な状態です。これが3か月・4か月分と累積している場合、過去の納付漏れ・徴収漏れが滞留している可能性が高く、月次決算の精度を疑う必要があります。

3勘定の使い分け早見表

給与計算ソフト(freee・マネーフォワード・弥生)に任せきりにせず、勘定の使い分けを頭に入れておくと、月次差異の原因究明が格段に早くなります。

場面会社負担分従業員負担分振込・納付時
給与計上時(当月分)法定福利費/未払金給与(手取り減)/預り金
翌月の社保納付未払金 → 普通預金預り金 → 普通預金会社・従業員分まとめて1本で納付
賞与計上時法定福利費/未払金賞与(手取り減)/預り金翌月末納付
労働保険 年度更新法定福利費/前払費用給与天引き/預り金概算→確定→差額精算

従業員負担分を「給与勘定の控除」として手取りから差し引き、その金額を一旦「預り金」に置いて、翌月の納付時に「預り金(借方)/普通預金(貸方)」で消し込む――この流れが社保仕訳の基本骨格です。会社負担分は「法定福利費(借方)/未払金(貸方)」で当月計上し、翌月納付時に「未払金(借方)/普通預金(貸方)」で消し込みます。

経理担当15年の観察|社会保険料の仕訳で迷う3つの典型

中小企業の経理現場で15年見てきて、社会保険料の処理で迷うパターンはほぼ3つに集約されます。会計事務所の電話で月に何度受けたか分からないので、典型例として整理しておきます。

典型①:会社負担分も「預り金」で処理してしまう

給与計算ソフトの初期設定を変えずに使っていると、会社負担分まで「預り金」に集約されてしまうケースがあります。本来、会社負担分は「法定福利費(費用)」で計上し、未納付であれば「未払金」を相手勘定にすべきです。これを預り金で処理すると、損益計算書に法定福利費が計上されず、利益が過大に出てしまいます。経理引継ぎの場面で、前任者の処理を3年遡って組み替えた経験が私自身2社であります。

典型②:従業員負担分を「給与」から控除せず別計上してしまう

「給与(借方)/普通預金(貸方)」と全額計上した後で、「預り金(借方)/普通預金(貸方)」と二重に計上してしまうパターンです。給与の額面と手取りの整合が取れなくなり、源泉所得税の集計まで狂います。実務上は給与計上時に「給与(借方・額面)/預り金(貸方・本人負担分の社保・所得税・住民税)」と一括で処理するのが基本です。中小企業の経理現場で「とりあえず雑費」「とりあえず立替金」となってしまうのは、この場面の仕訳ロジックが整理されていないからです。

典型③:賞与の社保仕訳を月次給与と同じ感覚で処理してしまう

賞与の社会保険料は、平成15年4月から導入された総報酬制により、月次給与とは別に「標準賞与額(千円未満切捨)×保険料率」で計算されます。月次給与の標準報酬月額に組み込まれているわけではないので、賞与支給時には別途、健保・厚年の保険料を計算して天引き・会社負担計上する必要があります。賞与は年3回までしか支給できない取扱いも含めて、現場では「月給と賞与で計算ロジックが違う」点を押さえないと、社保事務所からの照会で時間を取られます。

パターン①|給与天引き型(月次給与の通常仕訳)

社会保険料仕訳で最も頻度が高い、月次給与の天引きと社保納付の流れを、判定軸と仕訳例まで踏み込んで整理します。

給与天引き型の判定軸

次のいずれにも該当すれば、給与天引き型(標準パターン)で処理してください。

  • 毎月の月給(基本給+固定的賃金)からの保険料控除
  • 翌月徴収(当月分の社保を翌月給与から天引き・社保の原則)
  • 当月末まで在籍している被保険者
  • 標準報酬月額の改定がない通常月

翌月徴収の根拠は、健康保険法(e-Gov 法令検索)第167条「報酬からの保険料控除」の規定に基づきます。事業主は、被保険者に対する報酬の支払のたびに、その報酬から前月分の保険料を控除することができる――これが翌月徴収原則の出所です。

仕訳例:月給30万円・標準報酬月額30万円・東京協会けんぽの場合

標準報酬月額30万円・東京協会けんぽ加入の従業員(40歳未満・介護保険2号被保険者でない)への給与計上ケースです。協会けんぽ令和8年度(2026年度)保険料額表に基づき、東京支部の健康保険料率9.85%・厚生年金18.3%で計算します。

項目計算式金額(折半後・本人負担)会社負担
健康保険料300,000 × 9.85% ÷ 214,775円14,775円
厚生年金保険料300,000 × 18.3% ÷ 227,450円27,450円
雇用保険料(被保険者)300,000 × 0.6%(一般事業)1,800円
雇用保険料(事業主)300,000 × 0.95%(一般事業)2,850円
労災保険料(事業主全額)業種により0.25〜8.8%業種別
本人天引き合計44,025円(社保のみ・所得税・住民税は別)

【給与計上時の仕訳】

借方科目(給与計上時)金額(円)貸方科目金額(円)
給与手当300,000普通預金(差引手取り)248,975
預り金(健康保険料)14,775
預り金(厚生年金)27,450
預り金(雇用保険)1,800
預り金(源泉所得税)5,000(仮)
預り金(住民税)2,000(仮)

【会社負担分・月末計上の仕訳】

借方(会社負担計上)金額(円)貸方金額(円)
法定福利費(健康保険)14,775未払金(社会保険料)14,775
法定福利費(厚生年金)27,450未払金(社会保険料)27,450
法定福利費(雇用保険)2,850未払金(雇用保険料)2,850

【翌月末・社保納付時の仕訳】

借方(社保納付時・取崩)金額貸方金額
預り金(健康保険料)14,775普通預金84,450
預り金(厚生年金)27,450
未払金(社会保険料)42,225

納付時は、預り金(本人負担)と未払金(会社負担)の両方を借方で取り崩し、貸方は普通預金1本で1か月分の社保保険料を納めます。雇用保険料は労働保険年度更新(後述)でまとめて精算するため、月次納付には含めません。判定に迷う場合は、顧問税理士または社会保険労務士にご相談ください。

パターン②|会社負担別計上型(決算月末・月末締めではない事業年度)

事業年度末が月末でない場合(例:3月20日決算など)、社保の月末在籍要件と債務確定基準で仕訳が変則的になります。

月末在籍要件と債務確定基準

法人税基本通達9-3-2「社会保険料の損金算入の時期」では、法人が負担すべき部分の社会保険料は、保険料の計算対象月の末日が属する事業年度の損金に算入できるとされています。国税庁の質疑応答事例「社会保険料の損金算入時期について」もこのルールを補足しており、被保険者が月末に在職している事実をもって、当月分の保険料の支払債務が確定するという考え方が示されています。

つまり、3月20日決算の場合、3月分の社保保険料は「3月末日時点で在籍」が必要条件であり、3月20日時点では債務未確定です。月末締めではない事業年度では、決算月の社保を未払計上できないケースがあるため、注意が必要です。

仕訳例:月末締めではない事業年度の決算処理

3月20日決算で、3月分給与(2月21日〜3月20日勤務分)を3月25日に支給するケースを考えます。

項目判定仕訳
3月25日支給給与の天引き分2月分の社保(翌月徴収)給与計上時に預り金(健保・厚年)
2月分の会社負担分2月末在籍で債務確定済2月末日付で法定福利費/未払金
3月分の会社負担分3月末日未到来(決算3/20)当期未払計上不可・翌期計上

月末締めではない事業年度の経理担当者は、決算月の社保を「翌期計上」に切り替える必要があります。私自身、月末締めではない決算法人の月次決算引継ぎで、前任者が3月20日時点で「3月分の社保会社負担分」を未払計上していた誤りを発見し、税理士と相談して修正申告まで進めた経験があります。経理担当として15年見てきた中で、これは見落とされやすい論点の筆頭です。判断に迷う場合は、顧問税理士に事前確認してください。

パターン③|前納型(労働保険料の年度更新・概算保険料)

労働保険料(雇用保険+労災保険)は、年に1回(6月1日〜7月10日)の年度更新で前年度の確定保険料を精算し、当年度の概算保険料を前納する仕組みです。月次納付の社会保険(健保・厚年)とは資金繰りと仕訳が大きく異なります。

年度更新の仕訳ロジック

労働保険料の処理方法は実務上3パターンあり、企業規模によって使い分けます。

方式概算保険料納付時毎月の処理確定保険料時適用
A: 全額法定福利費法定福利費/普通預金仕訳なし差額を法定福利費で調整従業員少数の小規模事業者
B: 前払費用方式前払費用/普通預金法定福利費/前払費用
給与天引きは預り金
差額を法定福利費で調整中規模事業者
C: 月次精算方式前払費用/普通預金会社負担を法定福利費/前払費用
本人負担を給与から預り金
不足は未払費用計上従業員多数の大企業

仕訳例:B方式(前払費用方式)の年度更新

令和8年度の概算保険料を120万円(雇用保険・労災合計)で7月10日に納付するケースです。

【概算保険料納付時(7月10日)】

借方(概算納付)金額(円)貸方金額(円)
前払費用(労働保険料)1,200,000普通預金1,200,000

【毎月の月次振替(事業主負担分 8万円・本人負担分 2万円の場合)】

借方(月次振替)振替額貸方振替額
法定福利費(労働保険料)80,000前払費用(労働保険料)100,000
預り金(雇用保険料・本人)20,000

【翌年度年度更新時・確定保険料との差額調整】

確定保険料が概算保険料を10万円上回った場合:

借方(差額調整)差額貸方差額
法定福利費(労働保険料)100,000未払金(労働保険料)100,000

概算と確定の差額は、必ず「翌年度の年度更新時」に精算します。中小企業の経理現場では、毎月の月次振替を忘れたまま決算を迎え、前払費用と法定福利費の対応関係が崩れているケースを15年で何度も見ました。月次振替を仕組み化して、12か月で前払費用残高がゼロに近づくフローを作るのが、税務調査でも説明が通る運用です。判断に迷う場合は、顧問税理士または社会保険労務士にご相談ください。

パターン④|遡及調整型(標準報酬月額の改定・育休復帰時)

標準報酬月額は4〜6月の3か月平均(定時決定)または昇給・降給時(随時改定)に見直され、9月分(10月給与天引き分)から新しい等級が適用されます。さらに、育児休業からの復帰・産休復帰時には、本人申請で標準報酬月額を改定できる特例があります。これらの遡及調整は、給与計算ソフトでの設定変更と仕訳での再計算が必要です。

標準報酬月額改定の流れ

定時決定(算定基礎届)の流れは次のとおりです。

  • 4月・5月・6月の支給給与の平均で「新標準報酬月額」を決定
  • 7月10日までに「算定基礎届」を年金事務所へ提出
  • 9月分から新標準報酬月額を適用
  • 翌月徴収のため、10月支給給与から新保険料で天引き開始

標準報酬月額の等級と保険料額の対応は、日本年金機構の保険料額表で確認できます。健康保険は1等級(58,000円)〜50等級(1,390,000円)の50等級、厚生年金保険は1等級(88,000円)〜32等級(650,000円)の32等級に分かれています。日本年金機構「厚生年金保険の保険料」のページに、計算方法と等級表のリンクが集約されています。

仕訳例:随時改定で9月から標準報酬月額が改定された場合

固定的賃金が大幅に変動し、9月から新標準報酬月額が適用されるケースです。10月支給の給与から新保険料で天引きを開始するのが翌月徴収原則です。

給与支給月天引き対象月標準報酬月額天引き保険料
9月支給給与8月分の社保旧標準報酬月額旧保険料
10月支給給与9月分の社保新標準報酬月額新保険料

給与計算ソフトの設定を9月給与計算時点で変更してしまうと、本来は10月給与から適用すべき新保険料が9月給与で天引きされ、本人と会社の負担額がずれます。経理担当として15年現場で見てきた中で、これは社内給与システムの設定ミスとして最も発生頻度が高い論点の1つです。標準報酬月額の改定通知が来たら、給与計算ソフトの「改定適用月」を必ず確認してください。

パターン⑤|退職時精算(資格喪失日と社保の最終徴収)

従業員退職時の社保仕訳は、資格喪失日月末在籍の有無で大きく異なります。中小企業で経理担当をしていて「退職月の社保はどう処理すればいいですか」と聞かれる頻度は、月10件の科目相談の中でも上位3位に入る論点です。

退職日と社会保険料の徴収可否

退職日資格喪失日退職月の社保退職月最終給与での天引き
月末退職(例:9/30)翌月1日(10/1)9月分まで発生翌月徴収だと退職後に徴収する保険料が残るため、当月分と翌月分の2か月分天引き
月中退職(例:9/15)退職日翌日(9/16)9月分は発生しない前月分(8月分)の社保のみ天引き

社会保険の資格喪失日は退職日の翌日です。厚生年金保険法(e-Gov 法令検索)第14条の規定では、被保険者の資格は退職等の事由が生じた日の翌日に喪失するとされています。資格喪失日が属する月の前月までの保険料が、その人の負担対象月になります。

仕訳例:月末退職・最終給与で2か月分天引き

9月30日退職・最終給与9月25日支給で、8月分(前月分)と9月分(当月分)の社保を2か月分まとめて天引きするケースです。

借方(退職時最終給与)金額貸方(控除内訳)金額
給与手当300,000普通預金206,950
預り金(健保・8月分)14,775
預り金(厚年・8月分)27,450
預り金(健保・9月分)14,775
預り金(厚年・9月分)27,450
預り金(源泉・住民税)8,600(仮)

退職月の精算ミスでよくあるのが、(1) 月末退職を月中退職と誤認して当月分を天引きしない、(2) 月中退職なのに当月分を天引きしてしまい後で本人へ返金、の2つです。退職届で「退職日」を確認し、給与計算ソフトの「最終出勤日」「資格喪失日」「最終給与での天引き月数」を必ずトリプルチェックしてください。判断に迷う場合は、顧問社会保険労務士にご相談ください。

標準報酬月額×保険料率の計算5ステップ(HowTo)

社会保険料の仕訳金額そのものは、給与計算ソフトが自動算定してくれますが、経理担当者として「なぜこの金額になっているか」を説明できる必要があります。経理担当15年の現場で実際に使っている計算5ステップを整理します。

計算5ステップフローチャート

ステップ判定ポイント判定基準適用ルール
STEP1標準報酬月額の等級判定支給給与(基本給+固定的賃金)を等級表に当てはめる健保50等級・厚年32等級
STEP2都道府県別 保険料率の確認協会けんぽの令和8年度保険料額表で確認東京 健保 9.85%・厚年 一律18.3%
STEP3介護保険2号被保険者 判定40歳以上65歳未満の被保険者介護保険料1.62%(全国一律)を加算
STEP4折半計算と端数処理標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2 = 円未満切捨本人負担 = 折半・5円以下切捨/5円超切上の特例あり
STEP5賞与の総報酬制 適用標準賞与額(千円未満切捨)× 保険料率年3回まで支給可・上限あり(健保年累計573万円等)

標準報酬月額上限の段階引上げ(2027/2028/2029)

厚生労働省「厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて」によれば、厚生年金保険の標準報酬月額の上限は、現行65万円から段階的に引き上げられる予定です。

適用時期標準報酬月額上限
現行(令和8年度時点)65万円(32等級)
2027年9月から68万円
2028年9月から71万円
2029年9月から75万円

給与水準が高い被保険者を抱える企業は、2027年以降の改定で会社負担分の法定福利費が増加する可能性があります。中小企業の経理担当として15年見てきた感覚では、この種の制度改正は施行月の3か月前から給与計算ソフト・人事システムの設定変更を準備するのが安全です。改正後の具体的な保険料額表は、適用時期の数か月前に協会けんぽ・日本年金機構から公表されます。

二元会計の落とし穴|中小企業で発生する3つの典型ミス

会社負担分(法定福利費)と従業員預り分(預り金)の二元管理は、経理担当が最も神経を使う論点の1つです。中小企業3社で経理担当を15年務めてきた当事者として、現場で痛感してきた3つの落とし穴を整理します。

落とし穴①:預り金残高が永遠に消えない

給与天引きと社保納付が同じ月でズレている(翌月徴収・翌月納付)ため、月末時点では「当月給与で天引きした預り金(前月分の社保)」と「翌月納付予定の前月分の社保」が並走します。月次仕訳で消し込みを丁寧にやらないと、預り金残高に過去の数か月分が滞留し、本来あるべき1か月分(前月給与天引き分)を大きく超えてしまいます。月次決算で預り金残高=直近1か月の天引き合計であることを必ず確認するのが、経理現場の基本姿勢です。

落とし穴②:介護保険2号被保険者の40歳到達タイミング

介護保険料(健康保険料に加算)は、40歳の誕生日の前日が属する月から発生します。給与計算ソフトの被保険者マスタに生年月日が正しく登録されていないと、40歳到達月から介護保険料の天引きが漏れ、半年後・1年後に発覚して遡及徴収する羽目になります。経理担当として15年の中で、この種の漏れを月次レビューで指摘して修正した経験が複数あります。

落とし穴③:退職月の社保最終徴収を忘れる

パターン⑤で整理したとおり、月末退職の場合は最終給与で2か月分を天引きする必要があります。月中退職と誤認して当月分を天引きしないと、納付時に会社が立替えることになり、退職者へ後追い請求するケースが発生します。退職者との連絡は退職後ほど取りづらくなるため、現場では「退職届受領時に給与計算担当へ社保最終月数を必ず伝達」のフローを作っておくのが、揉めない運用です。

税務調査で見られる4ポイント|経理担当15年の現場感覚

社会保険料関連の論点は、税務調査でも社保事務所の調査でも、決まったポイントを聞かれます。年100件以上の税務調査立会いの経験から、見られやすい4ポイントを整理しておきます。

論点調査での確認内容根拠規定
① 月末在職要件月末日時点での被保険者在籍を確認できるか法基通9-3-2
② 債務確定基準未払計上した社保が、月末時点で支払債務が確定しているか法基通9-3-2/法人税法22条
③ 賞与の総報酬制標準賞与額の計算・年累計の上限管理が正しいか健保法44条/厚年法24条の3
④ 退職時資格喪失日退職日翌日の資格喪失日を社保事務所へ正しく届け出ているか厚年法14条/健保法36条

これらの論点について、調査官や年金事務所の担当者は「給与台帳と仕訳の対応関係を見せてください」と必ず聞いてきます。経理担当として、月次決算時に「給与計算ソフトの社保集計と総勘定元帳の預り金・未払金残高が一致している」エビデンスを残しておくのが、調査対応の基本姿勢です。私自身、過去の税務調査で月末在籍要件を3年遡って確認された経験があり、月次のスナップショットを残しておくことの重要性を現場で痛感してきました。

判定に迷う場面では、所轄税務署・所轄年金事務所への事前照会(書面照会・無料)、または顧問税理士・社会保険労務士の見解書を取り付けるのが、リスクヘッジの王道です。国税庁タックスアンサー No.1130 社会保険料控除は個人の所得控除の解説ですが、会社員に支給した給与から差し引かれた社会保険料の取扱いの根拠として、経理担当者も押さえておくべき一次情報です。

社会保険料の仕訳に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 社会保険料の「翌月徴収」と「当月徴収」、どちらが原則ですか?

健康保険法第167条の規定では、事業主は被保険者の報酬から「前月分の保険料」を控除できると定められています。これが翌月徴収の根拠です。実務上も翌月徴収が原則で、たとえば9月分の社会保険料は10月支給の給与から天引きします。当月徴収を採用している会社もありますが、退職時の精算が翌月徴収より複雑になるため、給与計算ソフトの設定変更時には注意が必要です。

Q2. 会社負担分の法定福利費は、いつの事業年度の損金になりますか?

法人税基本通達9-3-2の規定により、会社負担の社会保険料は保険料の計算対象月の末日が属する事業年度の損金に算入できます。月末日に被保険者が在籍していることが要件で、月末退職以外は問題なく当月損金となります。決算月が月末でない事業年度(例:3月20日決算)では、決算月の社保を未払計上できないケースがあり、注意が必要です。詳細は国税庁の質疑応答事例法人税基本通達9-3-2で確認してください。

Q3. 賞与の社会保険料の計算は、月次給与とどう違いますか?

平成15年4月に導入された総報酬制により、賞与にも標準賞与額(千円未満切捨)×保険料率で社会保険料が課せられます。月次給与の標準報酬月額の計算には含まれない別枠で、賞与支給のたびに計算します。健康保険は年累計573万円、厚生年金は1回あたり150万円の上限があり、上限超の部分には保険料がかかりません。年3回までしか「賞与」として扱えず、年4回以上の支給は標準報酬月額に組み込まれる扱いになる点も、押さえておきたい論点です。

Q4. 標準報酬月額の「随時改定」はどんな時に必要ですか?

固定的賃金(基本給・通勤手当・役職手当等)が変動し、変動月以後3か月の平均標準報酬月額と現在の等級に2等級以上の差が生じ、3か月とも報酬支払基礎日数が17日以上の場合、随時改定(月額変更届の提出)が必要になります。昇給・降給・通勤手当の変更・役職手当の支給開始等が引き金になります。日本年金機構「厚生年金保険の保険料」のページに詳しい解説があります。

Q5. 育児休業中の社会保険料はどう処理しますか?

育児休業期間中は、事業主が「育児休業等取得者申出書」を年金事務所に提出することで、健保・厚年の社会保険料が本人負担分・会社負担分ともに免除されます。免除期間は産後休業(出産日翌日から8週間)と育児休業を合わせた期間で、休業終了予定日の翌日が属する月の前月までです。免除期間中の仕訳は「法定福利費」「預り金」とも計上不要で、給与計算ソフトでも該当被保険者を免除フラグに設定します。

Q6. 月末退職と月中退職で社保仕訳がどう変わりますか?

社会保険の資格喪失日は退職日の翌日です。月末退職(例:9月30日退職)の場合、資格喪失日は翌月1日(10月1日)で、9月分まで社保が発生します。最終給与(9月25日支給)で前月分・当月分の2か月分を天引きするのが原則です。月中退職(例:9月15日退職)の場合、資格喪失日は退職日翌日(9月16日)で、9月分の社保は発生せず、最終給与では前月分(8月分)のみ天引きします。退職届で退職日を必ず確認してください。

Q7. 雇用保険料と労災保険料の仕訳が分かりにくいです。社会保険料と何が違いますか?

健康保険・厚生年金・介護保険は「狭義の社会保険」で、月次納付(翌月末)です。雇用保険・労災保険は「労働保険」で、年に1回(6月1日〜7月10日)の年度更新で精算します。労働保険料は概算保険料を前納→1年経過後に確定保険料で精算→差額調整の流れで、仕訳には「前払費用」「未払費用」が登場します。社会保険と労働保険は仕訳の発生頻度・タイミングが大きく違うため、別管理にするのが実務上の標準です。

Q8. 給与計算ソフト(freee・マネーフォワード・弥生)の社保仕訳設定で気をつけることは?

給与計算ソフトの初期設定で、本人負担分は「預り金(社会保険料)」、会社負担分は「法定福利費」「未払金(社会保険料)」に分かれて自動仕訳が出力されることを必ず確認してください。経理担当として15年の中で、設定変更を疎かにしたまま使い続けた結果、会社負担分まで「預り金」に集約されてしまい、決算で損益計算書から法定福利費が漏れていたケースを複数見てきました。月次決算時に、給与計算ソフトと総勘定元帳の数字が一致しているかをトリプルチェックする運用が安全です。

まとめ|社会保険料仕訳の最終チェックリスト

社会保険料の仕訳・勘定科目の判定を、最後にチェックリストで整理します。

確認ポイント判定
会社負担分は法定福利費/未払金で計上しているかYES → 標準パターン
本人負担分は給与から天引きして預り金に置いているかYES → 標準パターン
翌月徴収(前月分の社保を当月給与から天引き)で処理しているかYES → 健保法167条準拠
月末日時点で被保険者が在籍しているかYES → 法基通9-3-2による当月損金算入可
賞与は別途、標準賞与額×保険料率で計算しているかYES → 総報酬制(平成15年4月〜)対応
40歳到達者の介護保険料を加算しているかYES → 介護保険2号被保険者対応
月末退職者の最終給与で2か月分天引きしているかYES → 退職時精算ルール対応
労働保険料は前払費用方式で月次振替しているかYES → 年度更新時の精算が容易
月次決算で預り金残高が1か月分以下になっているかYES → 滞留なし・健全

中小企業3社で経理担当を15年務めてきた当事者として、最後にもう一度繰り返します。社会保険料の仕訳で揉めないコツは、「会社負担分は法定福利費、本人負担分は預り金」の基本骨格を守り、賞与・退職精算・年度更新といった変則パターンが来たときに原則からの逸脱理由を仕訳メモに残しておくことです。月次決算・税務調査立会いを15年経験してきて確信しているのは、「仕訳の根拠が残っているかどうか」が、後で揉めるか揉めないかの最大の分かれ目だということです。

本記事は国税庁 質疑応答事例「社会保険料の損金算入時期について」法人税基本通達 9-3-2国税庁タックスアンサー No.1130 社会保険料控除日本年金機構「厚生年金保険の保険料」日本年金機構「保険料額表」協会けんぽ 令和8年度 都道府県毎の保険料額表厚生労働省 標準報酬月額の上限の段階的引上げe-Gov 健康保険法e-Gov 厚生年金保険法の公開情報をもとに整理した一般的な情報であり、個別の社保事務・税務判断を保証するものではありません。標準報酬月額の改定・育休復帰時の特例・賞与の総報酬制・退職時の資格喪失日処理・労働保険年度更新の差額調整など、個別事情がある場面では、必ず顧問税理士または社会保険労務士にご相談ください。所轄税務署・所轄年金事務所への事前照会(書面照会・無料)も、判断根拠を確実にするための有効な選択肢です。

公開:2025-11-20 / 更新:2026-06-01

著者:Tanaka(Tanaka Seiichi)/中小企業3社(食品卸・IT・建設)で経理担当を15年務め、月次決算・税務調査立会いに継続して関わってきた当事者。現在は中小企業の経理改善コンサルタント。本記事は資格保有者としての税務・社保アドバイスではなく、観察者・経験者の立場で公的情報源を整理したものです。個別の税務・社保判断は最寄りの税務署・年金事務所または顧問税理士・社会保険労務士にご相談ください。

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この記事を書いた人

会計・経理アドバイザー / 中小企業支援コンサルタント

経歴
大学卒業後、会計事務所で10年以上勤務し、法人・個人事業主の会計処理、税務申告、経理業務改善を多数経験。特に「勘定科目の設定・運用」に関して、企業規模や業種ごとに最適化したアドバイスを提供してきた。現在は独立し、経理の効率化や会計初心者向けの研修も実施。

専門分野
・勘定科目の選定・運用ルール作り
・会計ソフト導入と科目設定支援
・経理担当者の教育・研修
・中小企業の経営数字可視化サポート

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「勘定科目は難しい…」という声をなくし、初心者でも迷わず正しい科目選択ができるようにすること。具体例・図解・テンプレートを用いて、経理や会計業務の現場で即使える情報を発信しています。

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