通勤手当の勘定科目と仕訳|給料手当・旅費交通費の使い分けと非課税限度額【2026年版】

通勤手当は給与の性質を持つため、勘定科目は「給料手当」または「旅費交通費」で処理します。所得税は公共交通機関なら月15万円まで非課税、マイカーは距離別で非課税。ただし社会保険料は非課税分も含めて算定する点に注意します。

この記事でわかること

  • 通勤手当の勘定科目は給料手当が基本/管理上は旅費交通費でも可(継続適用が条件)
  • 所得税の非課税限度額は公共交通機関=月15万円・マイカー=片道距離別、超過分は給与課税
  • 消費税は非課税分・課税分とも全額「課税仕入れ」で仕入税額控除の対象
  • 所得税が非課税でも社会保険料・労働保険は非課税分まで含めて算定する落とし穴
  • 法人・個人事業主で共通の扱いと、事業主本人の交通費との線引き

公的情報源: 国税庁 No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当所得税法9条1項5号(e-Gov)

結論を先に書きます

通勤手当は、従業員が負担する通勤費用を会社が補填するお金です。給与の一部という性質を持つため、勘定科目は「給料手当(給与手当)」で処理するのが基本。管理上の都合で「旅費交通費」を使う会社も多く、どちらでも問題ありません。

判断の軸は「税務上どう扱うか」で3つに分かれます。所得税は一定額まで非課税・消費税は全額課税仕入れ・社会保険料は全額が算定基礎。この3つを混同すると、源泉徴収や社保の届出でミスが起きます。

この記事の要点
  • 勘定科目は給料手当が基本。旅費交通費で処理してもよいが、継続適用する
  • 所得税は公共交通機関=月15万円・マイカー=距離別まで非課税。超過分は給与課税
  • 消費税は非課税分も含め全額が課税仕入れ
  • 社会保険料・労働保険は非課税分も含めて全額を算定基礎に含める

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目次

通勤手当の勘定科目は「給料手当」か「旅費交通費」|選び方

結論から言うと、通勤手当は給与の性質を持つ支出なので「給料手当」で処理するのが原則です。ただし旅費交通費で処理しても税務上の問題はありません。法律で勘定科目が固定されているわけではないためです。

大切なのは、一度決めた科目を継続して使う(継続適用)こと。年度ごとに科目を変えると、決算書の比較可能性が失われ、税務調査でも説明しづらくなります。

2つの勘定科目の使い分け

どちらの科目を選ぶかは、会社の管理方針で決めます。給与と一体で見たいなら給料手当、交通費だけを別集計したいなら旅費交通費が向いています。

勘定科目性格向いているケース注意点
給料手当(給与手当)人件費給与明細と帳簿を一致させたい消費税の課税仕入れ集計を別途行う必要
旅費交通費経費(販管費)交通費を出張旅費とまとめて管理したい給与総額との突合が一手間

給与計算ソフト(freee・マネーフォワード・弥生)は、通勤手当を給与項目として扱うのが標準設定です。会計連携で「給料手当」に振られることが多いので、旅費交通費に寄せたい場合は連携設定を確認してください。

出張旅費(旅費交通費)との違い

通勤手当と混同しやすいのが、出張時の交通費です。両者は税務上の扱いが大きく異なります。

  • 通勤手当=毎日の通勤にかかる費用。給与の性質があり、所得税の非課税限度額がある。
  • 出張旅費=業務遂行のための移動費。実費弁償の経費で、原則として全額が非課税。

つまり同じ「交通費」でも、通勤分には非課税の上限があり、出張分には上限がないという差があります。出張旅費の詳しい仕訳・日当の扱いは、出張旅費・日当の勘定科目と仕訳の解説で整理しています。

通勤手当の非課税限度額|公共交通機関とマイカーで分ける

通勤手当は、一定額までは所得税がかかりません。根拠は所得税法9条1項5号で、通勤手当のうち「一般の給与所得者の通勤手当として通常必要と認められる部分」を非課税と定めています。

非課税限度額は、公共交通機関を使うかマイカー等を使うかで計算方法が変わります。限度額を超えた部分は給与として課税され、源泉徴収の対象になります。

公共交通機関を利用する場合

電車・バスなどの公共交通機関で通う場合、最も経済的かつ合理的な経路の運賃で、月15万円までが非課税です。この15万円は、2016年以降改正がなく据え置かれています。

1か月・3か月・6か月の定期券代も対象です。新幹線通勤の特急料金も「経済的かつ合理的」であれば含められますが、グリーン料金は対象外とされています。

マイカー・自転車を利用する場合

自動車や自転車で通う場合は、片道の通勤距離に応じた定額が非課税限度額になります。距離が短いほど限度額は小さく、片道2km未満は全額課税です。

マイカー・自転車通勤の非課税限度額(片道距離別・月額)

片道の通勤距離非課税限度額(月額)
2km未満全額課税(非課税なし)
2km以上10km未満4,200円
10km以上15km未満7,300円
15km以上25km未満13,500円
25km以上35km未満19,700円
35km以上45km未満25,900円
45km以上55km未満32,300円
55km以上65km未満38,700円
65km以上75km未満45,700円
75km以上85km未満52,700円
85km以上95km未満59,600円
95km以上66,400円

上の金額は国税庁 No.2585で定められた基準額です。マイカー通勤者が有料道路を使う場合や、公共交通機関とマイカーを併用する場合は、合理的な運賃等を加えて計算します。駐車場料金を負担する場合は、上限月5,000円を加算できます。距離区分や金額は税制改正で見直されるため、給与計算前に最新の限度額を確認してください。

通勤手当の仕訳例|非課税・課税・消費税の扱い

通勤手当の仕訳は、非課税限度額の範囲内かどうかで科目や源泉の扱いが変わります。ここでは基本の3パターンを示します。金額は月給とは別に、通勤手当だけを抜き出した形で記載します。

仕訳例1:非課税限度額の範囲内(公共交通・定期代1万円)

限度額内なので、全額を通常の通勤手当として処理します。源泉所得税はかかりません。

借方科目金額(円)貸方科目金額(円)
給料手当(通勤手当)10,000普通預金10,000

消費税の区分は「課税仕入れ」です。通勤手当は、所得税が非課税でも消費税上は全額が課税仕入れとして仕入税額控除の対象になります。

仕訳例2:非課税限度額を超える(マイカー・片道8kmで月8,000円支給)

片道8kmの非課税限度額は4,200円です。支給8,000円のうち、超える3,800円は給与として課税され、源泉所得税の計算に含めます。

借方科目金額(円)貸方科目金額(円)
給料手当(通勤手当)8,000普通預金7,700
預り金(源泉所得税)300(仮)

超過分3,800円だけが課税対象で、非課税分4,200円は源泉徴収の対象外です。給与計算ソフトでは「課税通勤費」「非課税通勤費」の欄を分けて入力します。

仕訳例3:現物支給(定期券を会社が購入して渡す)

定期券そのものを会社が買って従業員へ渡す場合も、通勤手当と同じ非課税ルールが適用されます。

借方科目金額(円)貸方科目金額(円)
給料手当(通勤手当)30,000普通預金30,000

現物支給でも、非課税限度額を超えれば超過分は給与課税です。定期券の購入時に消費税の課税仕入れとして処理します。

所得税は非課税でも社会保険料の算定基礎には含む

ここが通勤手当の最大の落とし穴です。所得税で非課税でも、社会保険料の計算では通勤手当を全額「報酬」に含めます。所得税と社会保険は、まったく別の制度で運用されているためです。

つまり非課税枠内の通勤手当であっても、健康保険・厚生年金の標準報酬月額を計算するときは、通勤手当を丸ごと含めて等級を判定します。ここを見落とすと、標準報酬月額の届出額が実態より低くなり、後から遡及して訂正する事態になります。

標準報酬月額・随時改定への影響

通勤手当を含めた報酬で等級が決まるため、通勤手当の変動が社会保険料に響きます。

  • 定時決定(算定基礎届):4〜6月の報酬に通勤手当を含めて標準報酬月額を算定する。
  • 随時改定(月額変更届):引越しや定期区間の変更で通勤手当が大きく変わり、固定的賃金の変動として2等級以上ずれれば随時改定の対象になる。
  • 労働保険料:雇用保険・労災の賃金総額にも通勤手当を含める。

社会保険料の3勘定(法定福利費・預り金・未払金)を使った具体的な仕訳は、社会保険料の仕訳を完全解説した記事で3段階に分けて整理しています。

所得税・消費税・社会保険料の扱いを一覧で整理

制度通勤手当の扱いポイント
所得税限度額まで非課税公共交通は月15万円・マイカーは距離別。超過分は給与課税
消費税全額が課税仕入れ非課税分も含めて仕入税額控除の対象
社会保険料全額が報酬非課税分も含めて標準報酬月額を算定
労働保険料全額が賃金雇用保険・労災の算定基礎に含む

同じ通勤手当でも、制度ごとに扱いが違う点を頭に入れておくと、源泉徴収と社保の届出でずれが出ません。

法人・個人事業主に共通する通勤手当の扱い

従業員に支払う通勤手当は、法人でも個人事業主でも同じ扱いです。勘定科目・非課税限度額・社会保険の算定基礎、いずれも変わりません。

ただし事業主本人については注意が必要です。個人事業主には自分への「給与」という概念がないため、事業主本人の通勤という考え方はありません。

事業主本人の移動費は「旅費交通費」

事業主本人が仕事で移動した交通費は、通勤手当ではなく旅費交通費で経費計上します。取引先訪問や仕入れの移動などが該当します。

  • 従業員への通勤手当:給料手当(または旅費交通費)で処理し、非課税限度額と社保算定に注意。
  • 事業主本人の移動費:旅費交通費で全額経費。通勤手当の非課税枠の話は関係ない。

法人の役員に支払う通勤手当も、従業員と同じく非課税限度額の範囲で非課税です。役員報酬とは別枠で支給できます。

よくある質問

通勤手当の勘定科目・非課税・社会保険について、現場で頻出する質問を整理します。

Q1:通勤手当の勘定科目は給料手当と旅費交通費のどちらが正しいですか?

どちらでも問題ありません。通勤手当は給与の性質を持つため「給料手当(給与手当)」で処理するのが原則ですが、交通費を別集計したい会社は「旅費交通費」を使ってもかまいません。法律で科目が固定されているわけではなく、大切なのは一度決めた科目を継続して使うことです。

Q2:通勤手当はいくらまで非課税になりますか?

公共交通機関を利用する場合は、最も経済的かつ合理的な経路の運賃で月15万円までが非課税です。マイカーや自転車の場合は片道の通勤距離に応じた定額(片道2km以上10km未満なら月4,200円など)が限度額になります。限度額を超えた部分は給与として課税され、源泉徴収の対象です。

Q3:マイカー通勤の非課税限度額はどう決まりますか?

片道の通勤距離で決まります。片道2km未満は全額課税、2km以上10km未満は月4,200円というように、距離が長くなるほど限度額が上がります。有料道路を使う場合や公共交通機関と併用する場合は、合理的な運賃等を加算できます。距離区分や金額は税制改正で見直されるため、給与計算の前に国税庁の最新情報で確認してください。

Q4:通勤手当は消費税の課税仕入れになりますか?

なります。通勤手当は所得税が非課税でも、消費税上は全額が課税仕入れとして仕入税額控除の対象です。公共交通機関の運賃・定期代・マイカーのガソリン代相当いずれも課税仕入れで処理します。所得税の非課税限度額を超えた部分も、消費税では全額が課税仕入れになる点に注意してください。

Q5:所得税が非課税でも社会保険料はかかりますか?

かかります。所得税と社会保険は別の制度で、社会保険料の計算では通勤手当を全額「報酬」に含めます。非課税枠内の通勤手当であっても、健康保険・厚生年金の標準報酬月額を算定するときは通勤手当を丸ごと含めて等級を判定します。ここを見落とすと届出額が実態より低くなり、遡及訂正が必要になります。

Q6:通勤手当を変更したら社会保険の手続きは必要ですか?

必要になる場合があります。引越しや定期区間の変更で通勤手当が大きく変わり、固定的賃金の変動として標準報酬月額に2等級以上の差が生じ、変動月以後3か月とも報酬支払基礎日数が17日以上の場合、随時改定(月額変更届)の対象です。通勤手当の変更は随時改定の引き金になりやすいので、変更時は等級への影響を確認してください。

Q7:個人事業主の通勤手当は経費になりますか?

事業主本人には通勤手当という考え方はありません。個人事業主には自分への給与がないため、本人の移動費は「旅費交通費」で全額経費に計上します。一方、従業員に支払う通勤手当は、法人と同じく給料手当(または旅費交通費)で処理し、非課税限度額と社会保険の算定基礎に含める扱いになります。

まとめ|通勤手当の勘定科目・非課税・社保の最終チェック

通勤手当の勘定科目と税務・社保の扱いを、最後にチェックリストで整理します。

この記事のまとめ
  • 勘定科目は給料手当が基本。旅費交通費でも可だが継続適用する
  • 所得税は公共交通=月15万円・マイカー=片道距離別まで非課税、超過分は給与課税
  • 消費税は非課税分も含めて全額が課税仕入れ
  • 社会保険料・労働保険は非課税分も含め全額を算定基礎に含める(最大の落とし穴)
  • 従業員への支給は法人・個人事業主で共通、事業主本人の移動費は旅費交通費

通勤手当でつまずかないコツは、「所得税の非課税」と「社会保険の算定」を別々に判断することです。所得税が非課税でも社保は全額対象という一点を押さえれば、標準報酬月額の届出ミスは防げます。距離区分や限度額は改正されることがあるため、給与計算の前に最新の基準を確認してください。

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免責事項

※本記事は公的情報をもとに整理した一般的な情報であり、個別の税務・社会保険の判断を保証するものではありません。通勤手当の非課税限度額や社会保険の算定基礎は制度改正で変わることがあります。個別事情がある場面では、必ず顧問税理士または社会保険労務士にご相談ください。

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この記事を書いた人

会計事務所で10年以上、法人や個人事業主の帳簿づけと税務申告の手伝いをしてきたTanakaです。決算が近づくと、経営者から「この支払いはどの科目で処理すればいいですか」という電話を何度も受けました。答えは業種や会社の規模で変わります。そこを一つずつ、相手に合わせて説明してきました。

独立してからは、中小企業の経理担当者向けの研修や、freee・マネーフォワード・弥生の科目設定の相談にも応じています。教科書の説明は抽象的で、現場では「とりあえず雑費」で片づけてしまうことも少なくありません。このサイトでは、勘定科目の選び方の判断軸を、具体例をそえて整理しています。最終的な税務判断は、顧問税理士にご相談ください。

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