青色事業専従者給与の勘定科目と要件|白色の事業専従者控除との違い・届出・金額設定を整理【2026年版】

生計を一にする家族への給与は原則、必要経費にできません。ただし青色申告なら「青色事業専従者給与に関する届出書」を事前に提出し、届出額の範囲かつ労務の対価として相当な額なら勘定科目「専従者給与」で全額経費にできます。白色は事業専従者控除(配偶者86万円・その他50万円が上限)で、両者は併用できません。

この記事でわかること

  • 家族への給与は原則経費不可。例外が青色の「専従者給与」と白色の「事業専従者控除」の2つだけ
  • 青色事業専従者の3要件(生計を一にする親族/12月31日で15歳以上/6月超もっぱら従事)と、経費算入の3条件
  • 勘定科目は「専従者給与」(青色)/白色は科目でなく所得計算上の控除という決定的な違い
  • 届出の提出期限(原則3月15日)と、届出額を超えて払うと超過分が経費にならない落とし穴
  • 専従者にすると配偶者控除・扶養控除(38万円等)が使えなくなるため、金額設定は損益分岐で判断する

公的情報源: 国税庁 No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除国税庁 A1-10 青色事業専従者給与に関する届出手続所得税法57条(e-Gov)

結論を先に書きます

家族に払う給与は、原則として必要経費になりません。所得税法56条が「生計を一にする配偶者その他の親族への対価は、原則として必要経費に算入しない」と定めているためです。

この原則の例外が2つだけあります。青色申告者の「青色事業専従者給与」(所得税法57条1項)と、白色申告者の「事業専従者控除」(同3項)です。

青色は事前に届出をすれば、実際に払った給与を勘定科目「専従者給与」で全額経費にできます。白色は届出不要ですが、控除額が配偶者86万円・その他親族50万円で頭打ちになります。どちらも同じ人について両方は使えません。

この記事の要点
  • 家族への給与=原則経費不可(所得税法56条)。例外は青色の専従者給与/白色の事業専従者控除の2つ
  • 青色の勘定科目は「専従者給与」。従業員の「給料賃金」とは科目を分けて集計する
  • 経費にできるのは届出額の範囲内かつ労務の対価として相当な額まで。過大分は否認される
  • 専従者にした家族は配偶者控除・扶養控除の対象外。給与は損益分岐(38万円等)を意識して設定する

目次

家族への給与が原則経費にならない理由|所得税法56条の壁

各見出しの結論を先に言うと、個人事業主が生計を一にする家族に払う給与・家賃・借入利息などの対価は、原則として必要経費に算入できません。これが所得税法56条の定める大原則です。

理由はシンプルで、生計が同じ家族間の支払いは「財布の中でお金が移動しただけ」とみなされ、恣意的に所得を分散して節税に使われるのを防ぐためです。

ただし、この原則を貫くと「家族総出で事業を回している個人事業主」が不利になります。そこで所得税法57条が、一定の要件を満たす家族従業員への給与だけは経費算入を認める例外を設けています。

「生計を一にする」の考え方

「生計を一にする」とは、必ずしも同居を意味しません。単身赴任や進学で別居していても、生活費・学費・療養費などを常に送金し合っている関係なら生計を一にすると扱われます。

逆に、同じ家に住んでいても、明確に家計を分けて独立して生活しているなら生計を一にしないと判断される場合があります。判定に迷う場面では、所轄税務署または顧問税理士に確認してください。

青色事業専従者給与の要件|対象者3要件+経費算入3条件

青色事業専従者給与を経費にするには、「誰が専従者か(対象者要件)」と「どう払うか(経費算入要件)」の2段階をどちらも満たす必要があります。

対象者の3要件(青色事業専従者に該当する人)

青色事業専従者の3要件

#要件判定基準
青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族同居でなくても送金等で生計同一なら該当
その年の12月31日時点で15歳以上年齢は年末時点で判定
その年を通じて6月を超える期間、もっぱら事業に従事学業・他社勤務が主なら「もっぱら」に該当しない

③の「6月を超える期間」がポイントです。年の途中で開業した場合や、結婚・就職などで年の途中から専従者になった場合は、従事可能期間の2分の1を超えて従事していれば要件を満たすという特例があります。

「もっぱら従事」とは、その事業に専念していることを指します。他社にフルタイム勤務している、昼間の大学に通っているといった人は、原則として専従者と認められません。

経費算入の3条件(届出額の範囲・相当性)

対象者要件を満たしても、次の3条件を欠くと経費になりません。

  1. 「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄税務署に提出している
  2. 届出書に記載した方法・金額の範囲内で実際に支払っている
  3. 労務の対価として相当と認められる金額である(過大でない)

特に②③が実務での落とし穴です。届出に「月20万円」と書いたのに月25万円払うと、超過した5万円分は経費になりません。また、経理事務を月数時間手伝う配偶者に月50万円を払うといった、労務の実態に見合わない過大な額は税務調査で否認されます。

勘定科目は「専従者給与」|仕訳例と従業員給与との区分

青色事業専従者給与の結論から言うと、勘定科目は「専従者給与」を使います。第三者である従業員に払う「給料賃金」とは科目を分け、確定申告書(青色申告決算書)でも別欄に記載します。

仕訳例:配偶者へ月20万円を支給(源泉徴収あり)

配偶者を専従者とし、届出額の範囲内で月20万円を支給、源泉所得税4,770円と住民税を天引きして普通預金から振り込むケースです。

専従者給与 月20万円支給時の仕訳

借方科目金額(円)貸方科目金額(円)
専従者給与200,000普通預金193,230
預り金(源泉所得税)4,770
預り金(住民税)2,000(仮)

天引きした源泉所得税は、原則として翌月10日までに国に納付します。専従者給与も第三者への給与と同じく源泉徴収の対象で、毎月の給与額と扶養親族の数に応じて「給与所得の源泉徴収税額表」で税額を求めます。

源泉徴収した所得税の納付・仕訳の詳細は、所得税(源泉徴収)の勘定科目と納付・預り金の仕訳で整理しています。

源泉徴収が不要になる月88,000円未満のライン

専従者に「扶養控除等申告書」を提出してもらっている場合、月々の給与が社会保険料控除後で8万8,000円未満なら、源泉徴収税額は0円になります(賞与や他の控除がない前提)。

事務負担を抑えるために、月8万8,000円未満(年約100万円弱)に設定する個人事業主は少なくありません。ただし金額設定は税負担全体で判断すべきで、後述の損益分岐と合わせて考えます。

なお、家族が社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する場合の会社負担・本人負担の仕訳は、社会保険料の仕訳|法定福利費・預り金・未払金の使い分けを参照してください。

青色「専従者給与」と白色「事業専従者控除」の違い

同じ「家族への対価を経費化する制度」でも、青色と白色では仕組みが根本的に異なります。青色は実額を勘定科目で経費計上、白色は所得計算上の定額控除という違いです。

青色事業専従者給与 vs 白色事業専従者控除

比較軸青色事業専従者給与白色事業専従者控除
経費にできる額実際に払った給与全額(届出額・相当額の範囲)定額(配偶者86万円・その他50万円が上限)
事前届出必要(原則3月15日まで)不要
勘定科目専従者給与科目なし(申告書で所得から控除)
上限労務の対価として相当な額まで(実質青天井)配偶者86万円/その他50万円
もっぱら従事6月超6月超
源泉徴収対象(額により必要)給与でないため不要
併用同一人について白色控除とは併用不可同左

白色の控除額には、もう一つ上限があります。「事業所得等の金額 ÷(専従者の数+1)」で計算した額と、86万円・50万円のいずれか低い方が控除額です。所得が少ない年は、86万円ではなく所得ベースの計算額が上限になる点に注意してください。

実額で大きく経費化したいなら青色、届出の手間を避けたいだけなら白色、という整理が基本になります。事業規模が拡大して家族に相応の給与を払うなら、青色申告のメリットが明確に大きくなります。

届出書の提出期限と金額設定の注意点

青色事業専従者給与でつまずきやすいのが、届出の期限と金額設定です。ここを外すと、要件を満たしていても経費にできません。

提出期限(原則3月15日・新規は2か月以内)

  1. 原則:経費算入しようとする年の3月15日まで
  2. その年の1月16日以後に開業した場合:開業日から2か月以内
  3. 年の途中で新たに専従者ができた場合:その日から2か月以内

つまり、「今年から配偶者に給与を払って経費にしたい」なら、原則その年の3月15日までに届出を出す必要があります。期限を過ぎると、その年は専従者給与を経費にできません。開業初年度や結婚・出産で家族構成が変わった年は、2か月以内の例外期限を必ず確認してください。

金額設定の3つの注意

金額は「届出額の範囲」「労務の対価として相当」の2軸で決めます。実務で外しやすいのは次の3点です。

注意①:届出額を超えて払わない。届出に月20万円と書いたら、賞与を含めても届出の範囲を超えた分は経費不可です。増額する見込みがあるなら、届出時に余裕を持った上限で記載しておくのが実務的です。

注意②:労務の実態に見合わせる。勤務時間・業務内容・地域の同種業務の賃金水準に照らして過大な額は否認リスクが高くなります。第三者を雇ったら同じ仕事にいくら払うか、を目安にします。

注意③:源泉徴収・年末調整を忘れない。専従者給与も給与所得です。月8万8,000円以上なら源泉徴収が必要で、年末調整・源泉徴収票の交付・給与支払報告書の提出も第三者従業員と同様に行います。

専従者にすると配偶者控除・扶養控除が使えない|損益分岐で判断

見落とされがちですが、青色事業専従者や白色事業専従者になった家族は、その年の配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の対象から外れます(給与の額が0円でも、専従者として届け出た時点で対象外)。

つまり「専従者給与で経費を増やす」効果と「配偶者控除38万円等を失う」効果を差し引きで考える必要があります。

損益分岐のイメージ

専従者給与と配偶者控除の比較(概念)

選択事業主側の効果家族側の負担
配偶者控除を使う所得控除38万円(合計所得により逓減)なし
専従者給与を払う支払給与の全額が経費(青色)給与に対し本人の所得税・住民税・社保等

ざっくり言えば、専従者給与が配偶者控除相当(38万円)を超えて払える労務実態があるなら、専従者給与のほうが有利になりやすいということです。逆に、ほとんど手伝っていない配偶者に無理に給与を払うと、控除を失うだけで損をしかねません。

さらに、専従者給与によって家族本人に所得が発生すると、住民税・国民健康保険料・社会保険の扶養判定にも影響します。世帯全体の手取りで最適化するのが正しい判断軸です。具体的な金額での有利判定は、顧問税理士に試算を依頼するのが確実です。

よくある質問

青色事業専従者給与・事業専従者控除について、実務で頻出する質問を整理します。

Q1:青色事業専従者給与の勘定科目は何ですか?

勘定科目は「専従者給与」を使います。第三者の従業員に払う「給料賃金」とは科目を分けて集計し、青色申告決算書でも専従者給与は別欄に記載します。源泉所得税・住民税を天引きした場合は、貸方に「預り金」を計上する点は通常の給与と同じです。

Q2:届出をせずに払った家族への給与は経費になりますか?

なりません。青色事業専従者給与は「青色事業専従者給与に関する届出書」の事前提出が経費算入の絶対条件です(原則その年の3月15日まで)。届出がない場合、青色申告者でも家族への給与は所得税法56条の原則どおり必要経費に算入できません。白色申告者は届出不要ですが、経費でなく「事業専従者控除」という定額控除(配偶者86万円・その他50万円が上限)になります。

Q3:白色申告の事業専従者控除はいくらまでですか?

配偶者は最高86万円、配偶者以外の親族は1人につき最高50万円です。ただし「事業所得等の金額 ÷(事業専従者の数+1)」で計算した金額と、86万円・50万円のいずれか低い方が実際の控除額になります。所得が少ない年は、所得ベースの計算額のほうが上限として効くため、必ず両方を計算して低い方を採用します。

Q4:専従者給与を払うと配偶者控除は併用できますか?

併用できません。青色事業専従者として給与の支払いを受ける人、または白色申告者の事業専従者である人は、その年の同一生計配偶者・扶養親族にはなれません。したがって配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の対象から外れます。専従者給与で増える経費と、失う配偶者控除(38万円等)を差し引きで比較して金額を決めるのが実務の基本です。

Q5:専従者給与に源泉徴収は必要ですか?

必要です。専従者給与も給与所得なので、金額に応じて源泉徴収の対象になります。専従者から「扶養控除等申告書」の提出を受けている場合、社会保険料控除後の月給が8万8,000円未満なら源泉徴収税額は0円になりますが、それ以上なら「給与所得の源泉徴収税額表」に基づいて天引きし、原則翌月10日までに納付します。年末調整・源泉徴収票の交付も第三者従業員と同様に行います。

Q6:年の途中で開業した場合も「6月超もっぱら従事」が必要ですか?

年の途中で開業した場合や、年の途中から専従者になった場合には特例があります。この場合は「従事することができる期間」の2分の1を超える期間、もっぱら事業に従事していれば要件を満たします。たとえば7月開業なら、7月から12月までの従事可能期間の半分(3か月)超もっぱら従事していれば専従者と認められます。

Q7:専従者に賞与を払っても経費になりますか?

青色事業専従者給与では、届出書に賞与の支給時期・金額(またはその基準)を記載していれば、その範囲内で賞与も経費にできます。届出に賞与の記載がない、または記載した金額・時期を超える場合は、超過分・未記載分が経費になりません。賞与を予定するなら、届出時に賞与の欄も忘れず記載しておくことが重要です。

まとめ|家族への給与を経費にする判断チェックリスト

家族への給与の勘定科目・経費化の判定を、最後に整理します。

この記事のまとめ
  • 家族への給与は原則経費不可(所得税法56条)。例外は青色の専従者給与/白色の事業専従者控除の2つだけ
  • 青色の勘定科目は「専従者給与」。従業員の「給料賃金」と分けて集計する
  • 青色は事前届出(原則3月15日)+届出額の範囲+相当な額で実額を全額経費化できる
  • 白色は届出不要だが配偶者86万円・その他50万円が上限の定額控除。青色と同一人での併用不可
  • 専従者にした家族は配偶者控除・扶養控除の対象外。金額は損益分岐と世帯全体の手取りで判断する

家族への給与でつまずかないコツは、「原則は経費にならない」を出発点に置き、青色なら期限内の届出と労務実態に見合う金額設定を徹底することです。金額の有利判定は配偶者控除・社会保険・住民税まで絡むため、具体的な試算は顧問税理士に相談するのが確実です。

関連する人件費・給与まわりの科目判定は、あわせて参照すると整理が早くなります。

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免責事項

※本記事は公的情報をもとに整理した一般的な情報であり、個別の税務判断を保証するものではありません。専従者の要件判定・届出額の相当性・配偶者控除との有利判定など、個別事情がある場面では、必ず顧問税理士または所轄税務署にご確認ください。

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この記事を書いた人

会計事務所で10年以上、法人や個人事業主の帳簿づけと税務申告の手伝いをしてきたTanakaです。決算が近づくと、経営者から「この支払いはどの科目で処理すればいいですか」という電話を何度も受けました。答えは業種や会社の規模で変わります。そこを一つずつ、相手に合わせて説明してきました。

独立してからは、中小企業の経理担当者向けの研修や、freee・マネーフォワード・弥生の科目設定の相談にも応じています。教科書の説明は抽象的で、現場では「とりあえず雑費」で片づけてしまうことも少なくありません。このサイトでは、勘定科目の選び方の判断軸を、具体例をそえて整理しています。最終的な税務判断は、顧問税理士にご相談ください。

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