従業員へ払う基本給・諸手当は「給料手当」で処理します(個人事業は青色申告決算書で「給料賃金」)。支給時は総額を計上し、源泉所得税・住民税・社会保険料の本人負担分を預り金で差し引き、残りを支給します。個人事業主自身への給与は経費になりません。
この記事でわかること
- 従業員給与の勘定科目は法人=給料手当/個人事業=給料賃金(呼び名が違うだけで処理は同じ)
- 支給の仕訳は総額計上→源泉・住民税・社保を預り金で控除→差引支給→翌月納付の4段階
- 個人事業主自身への給与は必要経費にできない(=事業主貸で処理)
- 生計を一にする家族への給与は青色事業専従者給与(事前届出が必須・科目も別)
- 役員報酬・雑給・賃金・給与手当との使い分け早見表
公的情報源: 所得税法183条(源泉徴収・e-Gov)/国税庁 No.2075 青色事業専従者給与/労働基準法11条(賃金の定義・e-Gov)
結論を先に書きます
従業員へ支払う基本給や諸手当は、原則「給料手当」で処理します。個人事業主の青色申告決算書では、同じものを「給料賃金」という科目名で記帳します。呼び名は違いますが、中身も仕訳の考え方も同じです。
支給のときは「額面(総額)を費用として計上」してから、源泉所得税・住民税・社会保険料の本人負担分を「預り金」で差し引き、残った手取りを支給します。差し引いた預り金は、後日まとめて国や自治体・年金機構へ納めます。
もう1つの重要な結論が、個人事業主自身への給与は経費にできないという点です。事業主が生活費を引き出しても「給料賃金」ではなく「事業主貸」で処理します。
- 従業員給与=給料手当(法人)/給料賃金(個人事業)。基本給・残業代・各種手当を含む
- 仕訳は総額計上→預り金控除→差引支給→翌月納付の4ステップ
- 控除するのは源泉所得税・住民税・健康保険・厚生年金・雇用保険の本人負担分
- 個人事業主本人の給与は経費不可(事業主貸)、家族は専従者給与(事前届出)
給料計算や勘定科目の判断を日々担っている方は、経理の実務スキルが着実に積み上がっています。市場価値が気になる方は、経理・管理部門特化のWARC AGENT(無料)で求人相場を確かめておくのも一つの手です。
給料手当とは|含まれる手当と使う場面
給料手当とは、労働の対価として従業員へ定期的に支払う給与・手当を処理する勘定科目です。損益計算書では販売費及び一般管理費(販管費)に区分されます。
含まれるのは基本給だけではありません。次のような固定的・変動的な手当も、原則すべて「給料手当」にまとめます。
給料手当に含まれる主な項目
| 区分 | 具体例 |
|---|---|
| 基本給 | 月給・日給・時給の基礎部分 |
| 固定的手当 | 役職手当・住宅手当・家族手当・資格手当 |
| 変動的手当 | 時間外(残業)手当・休日出勤手当・深夜手当 |
| 通勤関連 | 通勤手当(非課税限度額あり) |
賞与(ボーナス)は「賞与」または「賞与手当」として別科目にするのが一般的です。通勤手当は一定額まで所得税が非課税ですが、社会保険料の計算では報酬に含める点に注意してください。
製造業では「賃金」を使うことがある
工場の製造ラインで働く従業員の給与は、製造原価に集計するため「賃金」という科目を使う場合があります。事務・営業など販管費に入る人件費は「給料手当」、製造現場の人件費は「賃金」——この区分で原価管理の精度が変わります。
小規模で製造原価を分ける必要がなければ、すべて給料手当にまとめても差し支えありません。自社の管理目的に合わせて決めるのが実務の考え方です。
給料支給の一連の仕訳|総額→控除→差引支給→納付
このH2が本記事の核心です。結論を先に言うと、給与は「額面総額を費用計上し、預り金を差し引いて手取りを支給する」のが基本形。多くの入門書は控除の仕訳を省きがちですが、ここを通しで理解すると迷いが消えます。
月給30万円・控除内訳を「源泉所得税8,000円・住民税12,000円・社会保険料本人負担45,000円」と仮定して、4段階で追います。
STEP1|給与支給時(総額計上と預り金控除)
給与を支給した日に、額面総額を「給料手当」で費用計上し、本人負担分を「預り金」として差し引きます。
給与支給時の仕訳
| 借方科目 | 金額(円) | 貸方科目 | 金額(円) |
|---|---|---|---|
| 給料手当 | 300,000 | 普通預金(差引支給額) | 235,000 |
| 預り金(源泉所得税) | 8,000 | ||
| 預り金(住民税) | 12,000 | ||
| 預り金(社会保険料) | 45,000 |
借方の給料手当30万円が「会社の費用」、貸方の普通預金23万5,000円が「実際に振り込む手取り」です。差額の6万5,000円は、本人から預かって後で納める「預り金」として負債に計上します。
STEP2|源泉所得税の納付(翌月10日まで)
預かった源泉所得税は、原則として支給月の翌月10日までに国へ納めます。納付時に預り金を取り崩します。
源泉所得税の納付時の仕訳
| 借方科目 | 金額(円) | 貸方科目 | 金額(円) |
|---|---|---|---|
| 預り金(源泉所得税) | 8,000 | 普通預金 | 8,000 |
事業主が給与から所得税を天引きして納める義務は、所得税法183条(e-Gov)で定められています。給与を払う側の法的義務であり、忘れると不納付加算税の対象になります。
STEP3|住民税の納付(特別徴収)
住民税を給与天引き(特別徴収)している場合も、預り金を取り崩して自治体へ納めます。仕組みは源泉所得税と同じです。
住民税の納付時の仕訳
| 借方科目 | 金額(円) | 貸方科目 | 金額(円) |
|---|---|---|---|
| 預り金(住民税) | 12,000 | 普通預金 | 12,000 |
住民税は前年所得をもとに市区町村が税額を通知します。天引き額を経理側で計算する必要はなく、通知どおりに預り金へ振り替えるだけです。
STEP4|社会保険料の納付
社会保険料は、本人から預かった分(預り金)に会社負担分(法定福利費)を合わせて、翌月末に年金機構へ納めます。会社負担分は別途「法定福利費」で費用計上します。
社会保険料の納付時の仕訳(会社負担も同額と仮定)
| 借方科目 | 金額(円) | 貸方科目 | 金額(円) |
|---|---|---|---|
| 預り金(社会保険料) | 45,000 | 普通預金 | 90,000 |
| 法定福利費 | 45,000 |
給与の預り金は「一時的に会社が預かっているだけ」なので、納付が終われば残高はゼロに戻るのが健全です。月末に預り金が積み上がっていたら、納付漏れを疑うサインになります。社会保険料の仕訳の詳細は、社会保険料の仕訳(法定福利費・預り金・未払金の使い分け)で深掘りしています。源泉所得税の科目処理は源泉所得税の勘定科目と仕訳もあわせてご確認ください。
法人と個人事業主の違い|本人給与は経費にできない
給料の処理でつまずきやすいのが、法人と個人事業主の扱いの違いです。結論から言うと、従業員への給与は法人・個人とも経費になりますが、事業主自身への給与は個人事業では経費にできません。
法人と個人事業主の給与処理の対比
| 対象者 | 法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 従業員への給与 | 給料手当(経費) | 給料賃金(経費) |
| 経営者・事業主本人 | 役員報酬(要件を満たせば経費) | 事業主貸(経費にできない) |
| 生計を一にする家族 | 給料手当(実態があれば経費) | 青色事業専従者給与(届出が条件) |
法人の社長は「役員」なので、給与ではなく役員報酬で処理し、定期同額給与などの要件を満たせば経費になります。一方、個人事業主本人は「事業から給与を受け取る」という概念がないため、扱いがまったく異なります。
個人事業主自身の生活費は「事業主貸」
個人事業主が事業用の口座や現金から生活費を引き出しても、それは給料賃金ではありません。事業のお金を個人が使っただけなので「事業主貸」で処理します。
事業主が生活費10万円を引き出した場合
| 借方科目 | 金額(円) | 貸方科目 | 金額(円) |
|---|---|---|---|
| 事業主貸 | 100,000 | 普通預金 | 100,000 |
事業主貸は経費ではなく、元入金(資本)の払い戻しに近い性格の科目です。ここを給料賃金にしてしまうと、経費の過大計上となり税務調査で必ず問われます。
生計を一にする家族は「青色事業専従者給与」
個人事業主が配偶者や親族に給与を払う場合、原則は経費になりません。ただし青色申告なら、要件を満たして事前に届け出れば「青色事業専従者給与」として全額を経費にできます。
- 青色申告者と生計を一にする配偶者・親族であること
- その年の12月31日時点で15歳以上であること
- 年間6か月を超えて事業に専ら従事していること
- 「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していること
届出書の提出期限は、経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業・専従者が増えた場合は、その日から2か月以内)です。詳細は国税庁 No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除、届出手続は国税庁 A1-10 青色事業専従者給与に関する届出手続を確認してください。
重要なのは、専従者給与は「給料賃金」ではなく「専従者給与」という別科目で記帳する点です。従業員への給料賃金と混同すると、届出額との対応が崩れます。届出た金額の範囲内でしか経費にできないため、支給額の管理も欠かせません。
給料の仕訳、預り金の管理、専従者給与の届出——こうした経理の実務判断を日々こなしている方は、確実に市場価値の高いスキルを積んでいます。その経験が今の職場で正当に評価されているか気になる方は、経理・管理部門に特化した転職エージェントで求人の相場を確かめてみてはいかがでしょうか。会計士・税理士としてのキャリアを視野に入れているならツインプロの無料キャリア面談という選択肢もあります。
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類似科目との使い分け|役員報酬・雑給・賃金・給与手当
給料手当と紛らわしい科目は複数あります。誰に、どんな性格で払うかで科目が変わります。判断に迷ったら、まず「支払い相手の立場」を見るのが近道です。
給料手当と類似科目の使い分け
| 勘定科目 | 支払う相手 | ポイント |
|---|---|---|
| 給料手当 | 正社員などの従業員 | 基本給+諸手当。販管費の中心的な人件費 |
| 給与手当 | 従業員(給料手当とほぼ同義) | 会計ソフトにより名称が違うだけ。中身は同じ |
| 役員報酬 | 取締役などの役員 | 定期同額給与などの要件で損金算入。従業員と必ず別科目 |
| 雑給 | パート・アルバイト | 少額・臨時の人件費。まとめて給料手当でも可 |
| 賃金 | 製造現場の従業員 | 製造原価に集計する人件費。原価計算の区分に使う |
| 専従者給与 | 生計一の家族(個人事業) | 事前届出が条件。給料賃金とは別に記帳 |
「給料手当」と「給与手当」は名称違いの同義で、freee・マネーフォワード・弥生など会計ソフトごとに表記が分かれるだけです。どちらか一方に統一して使えば問題ありません。
一方、役員報酬と専従者給与は「別科目にする理由が税務上ある」科目です。役員報酬は損金算入に厳しいルールがあり、従業員給与と混ぜると税務判断ができなくなります。雑給は分ける実益がなければ給料手当に含めて構いません。
よくある質問
給料手当の勘定科目について、経理の現場で頻出する質問を整理します。
Q1:給料手当と給与手当はどう違いますか?
実質的な違いはありません。どちらも従業員へ支払う基本給・諸手当を処理する勘定科目で、会計ソフトや企業の運用によって名称が分かれているだけです。freeeでは「給与手当」、弥生では「給料手当」といった具合に表記が異なります。社内でどちらか一方に統一して使えば、決算書上も問題ありません。
Q2:個人事業主は自分への給料を経費にできますか?
できません。個人事業主本人が事業のお金を生活費として使っても、それは給料ではなく「事業主貸」で処理します。事業主は事業から給与を受け取るという概念がないためです。経費にできるのは、あくまで従業員(生計を別にする第三者)や、届出をした青色事業専従者への給与に限られます。
Q3:個人事業主が使う「給料賃金」と法人の「給料手当」は同じですか?
処理の考え方は同じです。個人事業主は青色申告決算書の様式に合わせて「給料賃金」という科目名で従業員給与を記帳し、法人は「給料手当」を使うのが一般的です。呼び名が違うだけで、総額を費用計上して源泉所得税・社会保険料などを預り金で差し引く仕訳の流れは共通しています。
Q4:給料から差し引く源泉所得税や社会保険料は何の科目で処理しますか?
本人負担分は「預り金」で処理します。給与支給時に給料手当(総額)を計上しつつ、源泉所得税・住民税・社会保険料の本人負担分を貸方の預り金へ振り替え、残額を支給します。預かった分は後日、国・自治体・年金機構へ納付する際に預り金を取り崩します。会社負担の社会保険料は別途「法定福利費」で費用計上します。
Q5:家族に払う給与を経費にするには何が必要ですか?
青色申告をしたうえで「青色事業専従者給与に関する届出書」を事前に税務署へ提出することが必要です。提出期限は経費算入しようとする年の3月15日まで(年の途中の開業・専従者増加は、その日から2か月以内)。生計を一にする配偶者・親族で、15歳以上、年間6か月超その事業に専ら従事している、といった要件も満たす必要があります。科目は「専従者給与」で記帳します。
Q6:パート・アルバイトの給与は給料手当と雑給のどちらですか?
どちらでも処理できます。パート・アルバイトの人件費を正社員と区別して管理したい場合は「雑給」を使い、区別する実益がなければ「給料手当」にまとめて構いません。大切なのは、一度決めた運用を継続して同じ科目で処理することです。年度によって科目を変えると、前年比較ができなくなります。
まとめ|給料手当の勘定科目と仕訳の要点
給料手当の勘定科目と仕訳を、最後に要点で整理します。
- 従業員給与は法人=給料手当/個人事業=給料賃金(名称違いで中身は同じ)
- 仕訳は総額計上→源泉・住民税・社保を預り金で控除→差引支給→翌月納付の4段階
- 控除した本人負担分は預り金、会社負担の社保は法定福利費で処理
- 個人事業主本人の給与は経費にできず「事業主貸」で処理する
- 家族への給与は青色事業専従者給与(事前届出・別科目)が条件
- 役員は役員報酬、製造現場は賃金、パートは雑給で使い分け
給料手当は、金額こそ大きいものの、仕組みを一度つかめば毎月同じ流れで処理できる科目です。迷わないコツは「総額を費用に、預かった分を預り金に」という骨格を守ること。個人事業主本人の給与と家族への専従者給与だけは扱いが特殊なので、届出と科目名を必ず確認してください。最終的な税務判断は、顧問税理士にご相談ください。
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免責事項
※本記事は公的情報をもとに整理した一般的な会計・税務情報であり、個別の会計処理・税務判断を保証するものではありません。役員報酬の損金算入要件・青色事業専従者給与の届出・源泉徴収や社会保険料の計算など、個別事情がある場面では必ず顧問税理士にご相談ください。
