寄付金の勘定科目と仕訳|法人の損金算入限度額と個人事業主の処理【2026年】

寄付金は見返りのない支出だけが該当し、基本の勘定科目は「寄付金」です。法人の寄付金3分類と一般寄付金の損金算入限度額の計算例、個人事業主が事業主貸+寄付金控除で処理する理由、ふるさと納税や消費税など間違えやすい論点を解説します。

この記事でわかること

  • 寄付金の勘定科目は基本「寄付金(寄附金)」。見返りのない支出だけが該当する判定軸
  • 法人の寄付金は3分類(国等・指定=全額損金/特定公益増進法人=別枠/一般=限度額)
  • 一般寄付金の損金算入限度額の計算式と、資本金1,000万円・所得500万円での具体的な計算例
  • 個人事業主は必要経費にできず「事業主貸」+寄付金控除(所得控除)で処理する理由
  • ふるさと納税・消費税(不課税)・現物寄付・災害義援金など間違えやすい論点

公的情報源: 国税庁タックスアンサー No.5281(寄附金の範囲と損金不算入額の計算)No.5280(寄附金を支出したとき)No.1150(寄附金控除)

寄付金は「勘定科目は寄付金でも、損金・控除の扱いが法人と個人でまるで違う」科目です。分類判定や限度額計算を手作業でやると迷いやすい部分なので、仕訳の自動化から検討したい場合は会計ソフトも選択肢になります。

結論を先に書きます

寄付金(寄附金)の勘定科目は、基本的に「寄付金」で処理します。ここでいう寄付金とは、国・地方公共団体・公益法人・NPO法人などへ、見返りを求めずに支出した金銭や資産のこと。この「対価性がない」という点が、他の科目と分ける最大の判定軸です。

ただし勘定科目が同じでも、税務上の扱いは法人と個人でまったく違います。法人は寄付金を3つに分類し、種類ごとに損金にできる金額が変わります。一方の個人事業主は寄付金を必要経費にできず、「事業主貸」で処理したうえで確定申告の「寄付金控除」で救済する形です。

この記事の要点
  • 勘定科目は「寄付金」。宣伝目的なら広告宣伝費、取引先関係なら交際費に振り分ける
  • 法人の寄付金は3分類。国・地方公共団体・指定寄付金は全額損金、特定公益増進法人は特別枠、一般寄付金は限度額まで
  • 個人事業主は寄付金を必要経費にできない。「事業主貸」で処理し、確定申告で寄付金控除(所得控除)を受ける
  • 寄付金は消費税不課税。個人のふるさと納税は事業の寄付金ではない
  • 根拠は国税庁 No.5281No.1150。個別判断は顧問税理士へ

目次

結論:寄付金の勘定科目は「寄付金」

寄付や寄附をしたときの勘定科目は、原則として「寄付金(寄附金)」を使います。まずは全体像を表で押さえてください。

支出のパターン勘定科目税務上の扱い
国・地方公共団体・指定寄付金寄付金全額を損金算入(法人)
特定公益増進法人・認定NPO法人等寄付金特別損金算入限度額まで(法人)
その他一般の寄付金寄付金一般の損金算入限度額まで(法人)
宣伝目的(企業名掲載の協賛金など)広告宣伝費全額を損金算入
取引先関係の付き合いの支出交際費交際費課税の対象
個人事業主が事業用資金から寄付事業主貸経費にならず寄付金控除で処理

「寄付」という名目でも、見返り(対価)があるものは寄付金にならない点が要注意です。企業名が広告として掲載される協賛金は広告宣伝費、取引先との付き合いで出す支出は交際費になります。純粋に見返りを求めない支出だけが「寄付金」です。

寄付金かどうかを分ける判定軸

同じ支出でも、次の問いに答えると科目が決まります。

  • 支出の見返り(宣伝・サービス・物品)を受けているか → 受けているなら広告宣伝費・交際費など
  • 相手は事業関係者か、公益的な団体か → 事業関係の付き合いは交際費の余地
  • 金銭や資産を無償で提供したか → 無償提供なら寄付金

国税庁タックスアンサー No.5281でも、寄付金は「金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与」と定義されています(2026年6月閲覧)。対価性の有無を最初に確認するのが実務の出発点です。

寄付金とは?費用になるが「無償の支出」が条件

寄付金は損益計算書上の費用(販売費及び一般管理費または営業外費用)として計上されます。ただし会計上の費用計上と、税務上の損金算入は別物です。

法人の場合、寄付金を無制限に損金にできるわけではありません。理由はシンプルで、寄付金は事業との直接的な対応関係が薄い支出だからです。際限なく損金にできると、利益の付け替えや租税回避に使われかねません。そこで法人税法は、寄付金の種類ごとに損金にできる上限(損金算入限度額)を定めています。

一方、個人事業主にとって寄付金は「事業のための支出」とは認められにくく、そもそも必要経費になりません。この非対称性が、寄付金という科目のいちばんのつまずきポイントです。

法人の寄付金は3つに分類する

法人が支出した寄付金は、税務上、次の3つに分類されます。分類によって損金にできる金額が大きく変わります。

法人の寄付金3分類と損金算入の扱い

分類具体例損金算入の扱い
国・地方公共団体等への寄付金/指定寄付金国・都道府県・市区町村への寄付、財務大臣が指定した寄付金(義援金の一部など)全額を損金算入
特定公益増進法人等への寄付金独立行政法人・社会福祉法人・学校法人・認定NPO法人等特別損金算入限度額まで損金算入
一般の寄付金上記に当てはまらないすべての寄付金(一般社団法人・個人・海外団体など)一般の損金算入限度額まで損金算入

国・地方公共団体への寄付金と指定寄付金は、支出した全額が損金になります(国税庁 No.5280)。一方、特定公益増進法人向けは「特別枠」、それ以外は「一般枠」で、それぞれ限度額の範囲内でしか損金にできません。同じ金額を寄付しても、寄付先の種別によって節税効果がまったく違うのはこのためです。

損金算入時期は「実際に支払った日」

法人の寄付金は、実際に金銭を支払った日(現実に支出した日)を含む事業年度の損金になります。未払計上した寄付金は、支払いが済むまで損金になりません。決算対策で寄付を検討する場合は、事業年度末までに実際の支払いを終えているかを必ず確認してください。

寄付金の損金算入限度額の計算式と計算例

一般の寄付金の損金算入限度額は、法人の資本金と所得をもとに計算します。計算式は次のとおりです(普通法人・資本または出資を有する法人)。

区分計算式
一般寄付金の損金算入限度額(期末の資本金の額+資本準備金の額の合計額 × 当期の月数/12 × 2.5/1,000 + 所得の金額 × 2.5/100)× 1/4
特定公益増進法人への特別損金算入限度額(期末の資本金の額+資本準備金の額の合計額 × 当期の月数/12 × 3.75/1,000 + 所得の金額 × 6.25/100)× 1/2

計算式だけ見ると難しく感じますが、資本基準と所得基準を足して割るだけです。具体的な数字を当てはめてみます。

計算例:資本金1,000万円・所得500万円・当期12か月の場合

項目一般寄付金の枠特定公益増進法人の特別枠
資本基準額1,000万円 × 12/12 × 2.5/1,000 = 25,000円1,000万円 × 12/12 × 3.75/1,000 = 37,500円
所得基準額500万円 × 2.5/100 = 125,000円500万円 × 6.25/100 = 312,500円
合計150,000円350,000円
限度額(一般 ×1/4・特別 ×1/2)37,500円175,000円

一般の寄付金を30万円支出しても、この会社が損金にできるのは37,500円までで、残り262,500円は損金不算入(課税対象)です。ところが同じ30万円を特定公益増進法人へ寄付すると、特別枠175,000円まで損金にでき、なお超えた分は一般枠でも判定されます。寄付先の種別を意識するだけで、損金にできる額が数倍変わるのが実務上の勘所です。

寄付金の分類判定や損金算入限度額の計算は、資本金・所得・寄付先の種別が絡むため手計算では間違えやすい部分です。仕訳から決算・申告書類の作成まで一気通貫で扱えるのが会計ソフトの強みなので、自社の運用に合うか無料で試してみるのが近道です。

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寄付金の仕訳例(法人)

実際の仕訳を、支払い方法・現物寄付のケース別に整理します。

現金・預金で寄付したとき

社会福祉法人へ現金10万円を寄付したケースです。

借方科目金額貸方科目金額
寄付金100,000現金100,000

摘要:○○社会福祉法人への寄付(20XX年○月)。銀行振込なら貸方を「普通預金」にします。

クレジットカードで寄付したとき

認定NPO法人へクレジットカードで5万円を寄付したケースです。決済日と引き落とし日で2段階に分けます。

時点借方金額貸方金額
決済時寄付金50,000未払金50,000
引落時未払金50,000普通預金50,000

現物(物品)を寄付したとき

自社で仕入れた商品(帳簿価額8万円)を被災地支援として寄付したケースです。

借方金額貸方金額
寄付金80,000仕入(または商品)80,000

現物寄付は、寄付した資産の時価(または帳簿価額)を寄付金として計上します。時価が帳簿価額を上回る場合は、その差額の扱いに注意が必要です。高額な現物寄付は、事前に顧問税理士へ確認してください。

個人事業主は寄付金を必要経費にできない

ここが個人事業主で最もつまずく論点です。個人事業主が事業用資金から寄付をしても、その寄付金は必要経費になりません。事業所得を得るための直接の支出とは認められないためです。

事業用口座から支払ったときは「事業主貸」

経費にならないなら記帳不要かというと、そうではありません。事業用口座から支払った場合は、帳簿上の残高と実際の残高を一致させるため、「事業主貸」で処理します。

事業用口座から5万円を寄付したケースの仕訳です。

借方金額貸方金額
事業主貸50,000普通預金50,000

事業主貸は「事業のお金をプライベートに使った」ことを表す科目なので、経費にはならず、所得計算に影響しません。

救済策は確定申告の「寄付金控除」

経費にできない代わりに、個人は確定申告で寄付金控除(所得控除)を受けられます。対象は、国・地方公共団体・特定公益増進法人・認定NPO法人・政治団体などへの「特定寄附金」です。控除額の計算式は次のとおり(国税庁 No.1150)。

項目内容
控除額(その年に支出した特定寄附金の合計額 と 総所得金額等の40% のいずれか低い方)− 2,000円
選択肢政党等・認定NPO法人・公益社団法人等への寄付は「税額控除」を選択できる

たとえば特定寄附金を年5万円支出した場合、控除額は 50,000円 − 2,000円 = 48,000円 が所得から差し引かれます。政党・認定NPO法人・公益社団法人等への寄付は、所得控除に代えて税額控除(税額から直接差し引く方式)も選べるため、有利なほうを選ぶのがポイントです。

ふるさと納税は「事業の寄付金」ではない

個人事業主が迷いやすいのが、ふるさと納税の扱いです。ふるさと納税は「寄付」という名前ですが、事業の帳簿に寄付金として載せるものではありません

ふるさと納税は個人としての寄付であり、事業とは無関係です。事業用口座から支払った場合は個人事業主の寄付と同じく「事業主貸」で処理し、確定申告で寄付金控除(またはワンストップ特例)を使います。事業の経費や損金にはなりません。プライベートの財布から払うのが本来の姿である点を押さえてください。

なお法人版の「企業版ふるさと納税」は制度が別で、認定地方公共団体への寄付として全額損金算入に加えて税額控除が受けられます。個人のふるさと納税とは区別してください。

寄付金の消費税は「不課税」

寄付金は消費税の対象になりません。理由は対価性がないからです。消費税は「対価を得て行う資産の譲渡・サービスの提供」に課税されますが、寄付金は見返りのない支出なので、そもそも課税の枠の外(不課税取引)になります。

取引消費税の扱い
金銭の寄付不課税(対価性なし)
物品を購入して寄付購入時は課税仕入れ/寄付自体は不課税
協賛金(企業名掲載など見返りあり)課税取引(広告宣伝費として)

注意したいのは、物品を購入して寄付する場合です。物品の購入代金は課税仕入れとして仕入税額控除の対象になりますが、寄付の行為そのものは不課税です。仕入時と寄付時で消費税の扱いが分かれる点に気をつけてください。

災害義援金・共同募金の扱い

災害義援金は、拠出先によって扱いが変わります。判定を整理します。

  1. 国・地方公共団体へ直接、または日本赤十字社等を経由し最終的に国等へ拠出される義援金 → 指定寄付金として全額損金(法人)・寄付金控除の対象(個人)
  2. 特定公益増進法人・認定NPO法人への義援金 → 特定公益増進法人等への寄付金として扱う
  3. 拠出先が上記に該当しない義援金 → 一般の寄付金として限度額の範囲で損金算入

義援金は「善意だから全額損金」と思い込みやすいですが、拠出先が国等または指定を受けた募金かどうかで扱いが変わります。募金要綱や受領証で、指定寄付金・特定公益増進法人向けに該当するかを確認しておくと確実です。

よくある質問

寄付金の勘定科目について、実務で頻出する質問を整理します。

Q1:寄付金と寄附金はどちらの表記が正しいですか?

意味は同じです。法令や国税庁の文書では「寄附金」(旧字)が使われますが、会計ソフトや実務では「寄付金」表記も広く使われています。勘定科目としてはどちらでも問題ありません。社内で表記を統一しておくと、集計や検索がしやすくなります。

Q2:協賛金は寄付金になりますか?

見返りの有無で変わります。企業名やロゴが広告として掲載されるなど宣伝効果がある協賛金は「広告宣伝費」、取引先との付き合いで出す協賛金は「交際費」になります。純粋に見返りを求めない場合のみ「寄付金」です。契約書やパンフレットで、掲載枠などの見返りがあるかを確認してください。

Q3:法人が寄付した全額を損金にできますか?

寄付先によります。国・地方公共団体・指定寄付金は全額損金ですが、特定公益増進法人は特別損金算入限度額まで、それ以外の一般寄付金は一般の損金算入限度額まで、と上限が設けられています。限度額は資本金と所得から計算します(国税庁 No.5281)。同じ金額でも寄付先の種別で損金にできる額が変わります。

Q4:個人事業主の寄付は帳簿にどう記帳しますか?

必要経費にはならないため、事業用口座から支払った場合は「事業主貸」で記帳します。所得計算には影響しません。そのうえで、国・地方公共団体・認定NPO法人等への特定寄附金は、確定申告で寄付金控除(所得控除)または税額控除を受けられます。控除を受けるには受領証(寄付金の証明書)の保存が必要です。

Q5:寄付金に消費税はかかりますか?

金銭の寄付は対価性がないため不課税です。消費税の課税対象にはなりません。ただし、物品を購入して寄付する場合、その物品の購入代金は課税仕入れとして仕入税額控除の対象になります。仕入時と寄付時で扱いが分かれる点に注意してください。

Q6:ふるさと納税は事業の経費になりますか?

なりません。ふるさと納税は個人としての寄付なので、事業の経費・損金にはなりません。事業用口座から払った場合は「事業主貸」で処理し、確定申告の寄付金控除やワンストップ特例で対応します。法人の「企業版ふるさと納税」は別制度で、全額損金算入と税額控除が受けられます。

まとめ:寄付金は「科目より扱い」で判断する

寄付金の処理を、最後にチェックリストで整理します。

この記事のまとめ
  • 勘定科目は基本「寄付金」。見返りがあれば広告宣伝費・交際費に振り分ける
  • 法人は3分類。国等・指定寄付金=全額損金/特定公益増進法人=特別枠/一般=限度額まで
  • 一般寄付金の限度額は(資本基準+所得基準)× 1/4。寄付先の種別で損金額が数倍変わる
  • 個人事業主は経費にできず「事業主貸」+寄付金控除(合計−2,000円)で処理
  • 寄付金は消費税不課税/ふるさと納税は事業の寄付金ではない

寄付金でいちばん大切なのは、勘定科目そのものより「税務上どう扱われるか」です。法人なら寄付先の種別で損金にできる額が変わり、個人事業主なら経費にできず控除で救済される。この非対称性を押さえておけば、決算・確定申告でつまずきにくくなります。

高額な寄付・現物寄付・海外団体への寄付など、判断が難しいケースは、所轄税務署の事前照会(書面照会・無料)または顧問税理士に確認するのが確実です。

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免責事項

※本記事は国税庁の公開情報をもとに整理した一般的な情報です。寄付先の種別判定・高額寄付・現物寄付・海外団体への寄付・災害義援金の扱いなど、個別の税務判断は所轄税務署の事前照会(書面照会・無料)または顧問税理士にご相談ください。税制は毎年改正されるため、適用の際は最新の情報をご確認ください。


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この記事を書いた人

会計・経理アドバイザー / 中小企業支援コンサルタント

経歴
大学卒業後、会計事務所で10年以上勤務し、法人・個人事業主の会計処理、税務申告、経理業務改善を多数経験。特に「勘定科目の設定・運用」に関して、企業規模や業種ごとに最適化したアドバイスを提供してきた。現在は独立し、経理の効率化や会計初心者向けの研修も実施。

専門分野
・勘定科目の選定・運用ルール作り
・会計ソフト導入と科目設定支援
・経理担当者の教育・研修
・中小企業の経営数字可視化サポート

サイトの目的
「勘定科目は難しい…」という声をなくし、初心者でも迷わず正しい科目選択ができるようにすること。具体例・図解・テンプレートを用いて、経理や会計業務の現場で即使える情報を発信しています。

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