予定納税の仕訳と勘定科目|個人事業主は「事業主貸」・還付は「事業主借」で処理する

個人事業主の予定納税は事業用口座から払うと「事業主貸」で処理し、経費にはなりません。プライベート口座なら仕訳不要。第1期・第2期・還付の借方貸方、還付加算金は雑収入という論点、法人は仮払法人税等で真逆になる点を解説します。

この記事でわかること

  • 個人事業主の予定納税は事業用口座から払うと「事業主貸」で処理し、経費にはならないこと
  • プライベート口座や現金で払った場合は仕訳が不要な理由
  • 第1期・第2期・還付それぞれの具体的な借方・貸方
  • 還付金に付く還付加算金は「雑収入」という見落としやすい論点
  • 法人の予定納税は「仮払法人税等」で個人とは処理が真逆になること

公的情報源: 国税庁「所得税及び復興特別所得税の予定納税」(参照)/「予定納税額の減額申請」(参照

結論を先に書きます

予定納税の仕訳で迷ったら、まず「誰の税金か」を考えます。所得税は事業ではなく事業主個人にかかる税金なので、事業用口座から払っても経費にはなりません。

そのため個人事業主が事業用口座から予定納税を払ったときは、借方を事業主貸で処理します。逆に払いすぎて還付を受けたときは、事業用口座に入るお金なので事業主借です。

この記事の要点
  • 所得税は個人の税金。事業用口座から払った予定納税は「事業主貸」で、租税公課などの経費にはしない
  • プライベートの財布・口座から払ったなら帳簿への仕訳は不要
  • 還付金は「事業主借」、そこに付く還付加算金だけは「雑収入」で課税対象
  • 法人は所得税と違い、予定納税を「仮払法人税等」で資産計上し決算で振り替える

目次

予定納税とは:所得税を前払いする制度

予定納税は、その年の所得税の一部をあらかじめ分割で前払いする制度です。前年分の所得税額(予定納税基準額)が15万円以上になると、税務署から通知が届きます。

一括で払う負担を和らげる仕組みですが、経理から見ると「まだ確定していない税金の前払い」という位置づけになります。

区分内容
対象になる人前年分の予定納税基準額が15万円以上の個人
納付する額原則、予定納税基準額の3分の1ずつ
第1期その年の7月(7月1日〜7月31日が納期)
第2期その年の11月(11月1日〜11月30日が納期)
精算翌年の確定申告で年税額から差し引いて精算

第1期・第2期で払った分は、翌年の確定申告で年間の所得税額から差し引きます。納めすぎていれば還付、足りなければ追加で納付します。金額や納期の最新情報は国税庁のタックスアンサー(No.2070)で確認してください(2026年6月時点)。

予定納税の勘定科目は「事業主貸」:経費にならない理由

個人事業主の予定納税でいちばん大事なのが、所得税は経費にできないという原則です。租税公課で処理したくなりますが、それは誤りです。

理由はシンプルで、所得税は事業の必要経費ではなく、事業で得た利益に対して「個人」に課される税金だからです。事業のもうけから支払うお金でも、性質は個人の支出になります。

  1. 所得税・住民税は「個人」にかかる税金 → 経費にならない
  2. 事業用口座から払うと事業の現金が減る → 帳簿に記録は必要
  3. 経費にできないお金の引き出しを表す科目 = 「事業主貸」

事業用口座からお金は出ていくので、帳簿上その動きは記録しなければなりません。ただし費用(経費)ではない。この「経費にならないけれど事業のお金が減る」という支出を受け止める科目が事業主貸です。

同じ理由で、個人事業税とは扱いが違う点にも注意してください。事業税は経費(租税公課)になりますが、所得税・住民税はなりません。この線引きは個人事業税の勘定科目は「租税公課」で詳しく整理しています。

ケース別の仕訳例:第1期・第2期・個人資金で払った場合

実際の仕訳を、支払方法別に見ていきます。借方は事業主貸、貸方は普通預金が基本形です。

ケース1:第1期分を事業用口座から払った

7月に第1期分50,000円を、事業用の普通預金から納付したケースです。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額摘要
事業主貸50,000普通預金50,000所得税 予定納税 第1期

費用科目は一切使いません。事業主貸で処理すれば、事業の経費には影響せず、事業のお金が減ったことだけが帳簿に残ります。

ケース2:第2期分を事業用口座から払った

11月に第2期分50,000円を、同じく事業用口座から納付したケースです。第1期とまったく同じ形になります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額摘要
事業主貸50,000普通預金50,000所得税 予定納税 第2期

ケース3:プライベートの財布・口座から払った

ここが見落としやすいポイントです。事業用ではない個人の口座や現金で払った場合、帳簿への仕訳は不要です。

事業のお金が動いていないため、事業の帳簿に記録する対象がありません。無理に事業主貸で計上すると、かえって事業の資金残高が合わなくなります。「事業用口座を通したときだけ仕訳する」と覚えておきましょう。

還付・減額申請・還付加算金の処理

予定納税は前払いなので、払いすぎることがあります。翌年の確定申告で精算して戻ってくるお金の処理を整理します。

還付金は「事業主借」で受ける

予定納税を納めすぎて、還付金が事業用口座に振り込まれたケースです。事業のお金が増えますが、これは売上(収益)ではありません。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額摘要
普通預金30,000事業主借30,000所得税 予定納税 還付

経費にならないお金の支払いが事業主貸なら、その逆、経費でも売上でもないお金の入金は事業主借です。

還付加算金だけは「雑収入」で課税される

多くの記事が触れていない重要な論点があります。還付金に上乗せされる還付加算金は「雑収入」として扱い、課税対象になります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額摘要
普通預金30,500事業主借30,000予定納税 還付分
雑収入500還付加算金

還付金の元本部分は事業主借(非課税)、還付加算金は雑収入(課税)と、1回の入金で科目が分かれます。金額は小さくても申告漏れになりやすいので、通知書で内訳を必ず確認してください。

予定納税が負担なら「減額申請」を検討する

その年の所得が前年より大きく下がる見込みなら、予定納税額そのものを減らす減額申請ができます。第1期・第2期の納期に合わせて申請でき、資金繰りに直結します。会計処理ではありませんが、経理担当が事業主に案内すべき論点です(国税庁 No.2073を参照、2026年6月確認)。

法人の予定納税との違い:個人とは処理が真逆

同じ「予定納税」でも、法人と個人ではまったく別の処理になります。混同しやすいので対比で押さえましょう。

個人と法人の予定納税処理の比較

比較項目個人事業主(所得税)法人(法人税・中間納付)
使う科目事業主貸仮払法人税等(または法人税等)
経費になるかならない(個人の税金)法人税等として損益に反映
資産計上しない一時的に資産計上し決算で振替
決算での処理翌年の確定申告で個人が精算確定税額と相殺・還付を振替

法人は中間納付(予定納税)を「仮払法人税等」で資産計上し、決算で確定した法人税等と相殺します。個人のように「経費にならないから事業主貸」という発想ではありません。

法人成りを検討している事業主は、この違いを知らずに個人時代のクセで処理するとズレます。法人の税金全体の科目は所得税・法人税の勘定科目もあわせて確認してください。

予定納税でよくあるミスと会計ソフトの設定

最後に、freee・マネーフォワード・弥生などの会計ソフトを使うときに起きやすいミスを整理します。自動仕訳に任せきると、思わぬ誤りが残ります。

  • 租税公課で計上してしまう:所得税を経費にすると利益が過少になり、税務調査で否認される。必ず事業主貸で処理する
  • 個人資金の支払いまで仕訳する:事業用口座を通していない納付を計上すると、資金残高が合わなくなる
  • 還付加算金を事業主借に含める:課税対象の雑収入が申告漏れになる。通知書で内訳を分ける
  • 自動連携の科目推測を放置する:口座連携で「税金の支払い」として租税公課に振られることがある。予定納税は手動で事業主貸へ修正する

ミスの多くは「所得税=経費ではない」という原則を忘れることから起きます。仕訳を切る前に、その税金が事業のものか個人のものかを一度確認する習慣が有効です。税金ごとの科目の全体像はフリーランスの源泉徴収と仕訳もあわせてどうぞ。

よくある質問

予定納税の仕訳について、実務で頻出する質問をまとめます。

Q1:予定納税の勘定科目は何を使いますか?

個人事業主が事業用口座から払った場合は事業主貸です。所得税は個人にかかる税金で経費にならないため、租税公課などの費用科目は使いません。プライベートの財布や口座から払ったなら、事業の帳簿に仕訳する必要はありません。

Q2:予定納税は経費になりますか?

なりません。予定納税は所得税の前払いで、所得税は事業の必要経費ではなく事業主個人にかかる税金だからです。同じ税金でも個人事業税は経費(租税公課)になりますが、所得税・住民税は経費にできません。

Q3:予定納税の還付を受けたときの仕訳は?

還付金が事業用口座に入ったら事業主借で処理します。売上でも経費の戻りでもないためです。ただし還付金に付く還付加算金は「雑収入」として課税対象になるので、元本部分と分けて計上してください。

Q4:現金や個人の口座で払ったら仕訳しなくていいのですか?

はい。事業用ではない資金で払った場合、事業のお金が動いていないため帳簿への記録は不要です。仕訳が必要なのは、あくまで事業用口座・事業用現金から払ったときだけです。

Q5:予定納税を払いすぎているときは減らせますか?

その年の所得が前年より下がる見込みなら、予定納税額の減額申請ができます。第1期・第2期それぞれの納期に合わせて税務署へ申請します。会計処理ではありませんが、資金繰りに直結するため早めの検討が有効です。

Q6:会計ソフトが予定納税を租税公課に振り分けます。どうすれば?

口座連携の自動推測で、税金の支払いが租税公課に振られることがあります。予定納税は手動で事業主貸に修正してください。租税公課のまま放置すると経費が過大になり、正しい所得が計算できません。

まとめ

予定納税の仕訳を、個人事業主目線で整理しました。

この記事のまとめ
  • 所得税は個人の税金。事業用口座から払った予定納税は事業主貸で、経費にはしない
  • プライベート資金で払ったなら仕訳は不要
  • 還付金は事業主借、そこに付く還付加算金だけは雑収入で課税される
  • 法人は仮払法人税等で資産計上し決算で振り替える。個人とは処理が真逆
  • 会計ソフトの自動仕訳が租税公課に振ったら、手動で事業主貸へ直す

予定納税は「経費にならない税金の前払い」です。この性質さえ押さえれば、事業主貸・事業主借の使い分けで迷うことはありません。仕訳を切る前に「これは事業の税金か、個人の税金か」を一度確認する。それだけで科目のミスは大きく減ります。

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免責事項

※本記事は一般的な会計・税務の考え方を整理したものです。予定納税の要否・金額や個別の仕訳判断は、事業の状況によって異なります。最終的な判断は国税庁の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて顧問税理士にご相談ください。


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この記事を書いた人

会計・経理アドバイザー / 中小企業支援コンサルタント

経歴
大学卒業後、会計事務所で10年以上勤務し、法人・個人事業主の会計処理、税務申告、経理業務改善を多数経験。特に「勘定科目の設定・運用」に関して、企業規模や業種ごとに最適化したアドバイスを提供してきた。現在は独立し、経理の効率化や会計初心者向けの研修も実施。

専門分野
・勘定科目の選定・運用ルール作り
・会計ソフト導入と科目設定支援
・経理担当者の教育・研修
・中小企業の経営数字可視化サポート

サイトの目的
「勘定科目は難しい…」という声をなくし、初心者でも迷わず正しい科目選択ができるようにすること。具体例・図解・テンプレートを用いて、経理や会計業務の現場で即使える情報を発信しています。

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