印鑑証明書の発行手数料の勘定科目は「支払手数料」または「租税公課」で処理します。どちらでも会計ルール上は正しく、社内で1つに決めて継続適用すれば問題ありません。法人は法務局で1通500円、個人事業主は市区町村で300円前後。消費税は行政手数料のため非課税で、仕入税額控除はできません。
「支払手数料と租税公課のどちらが正解か」「登記のために取った分はどうするか」「消費税は課税かどうか」まで、迷わない基準で整理します。
この記事でわかること
- 印鑑証明書の勘定科目は「支払手数料」か「租税公課」のどちらでもよい、という結論と理由
- 法人(法務局・1通500円)と個人事業主(市区町村・300円前後)の発行元と手数料の違い
- 登記・契約・融資など取得場面別の仕訳の具体例
- 印鑑証明書の消費税は「非課税」で仕入税額控除できないという落とし穴
- 雑費・登記費用(付随費用)で処理するケースなど注意点
結論を先に書きます
印鑑証明書の発行手数料は、「支払手数料」または「租税公課」で処理します。手続きの対価とみれば支払手数料、行政機関へ納める公的な負担とみれば租税公課で、どちらを選んでも会計上は正しい処理です。
大切なのは、一度決めた科目を毎年同じように使い続ける(継続適用)ことです。少額で回数が少なければ「雑費」でもかまいません。消費税は行政手数料なので非課税として扱います。
- 印鑑証明書の勘定科目は「支払手数料」か「租税公課」のどちらでもよい(継続適用が原則)
- 少額・低頻度なら「雑費」でも可。会社ごとに1つに統一する
- 法人は法務局で1通500円、個人事業主は市区町村で300円前後と発行元が違う
- 会社設立・不動産取得の登記のために取った分は登記費用の一部として整理することもある
- 消費税は「非課税」。課税仕入れにして仕入税額控除しないよう注意
印鑑証明書の勘定科目は「支払手数料」か「租税公課」|どちらでもよい
印鑑証明書の勘定科目とは、印鑑証明書を取得したときの発行手数料を記録する科目のことで、実務では「支払手数料」または「租税公課」を使います。

2つの科目は、同じ支出を別の角度から見ているだけです。性質の違いを押さえると選びやすくなります。
| 勘定科目 | 選ぶ考え方 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 支払手数料 | 証明書発行という手続きの対価とみる | 契約・取引に伴う証明書取得が多い |
| 租税公課 | 行政機関へ納める公的な手数料とみる | 印紙税・登録免許税などと並べて管理したい |
| 雑費 | 少額・低頻度で重要度が低い | 年に数回・金額もわずか |
どの科目を選んでも、経費になる点・課税所得の計算結果は変わりません。会計ソフトの科目もこの3つのいずれかで登録すれば問題ありません。
ポイントは、会社(事業)ごとに使う科目を1つに決めて継続することです。ある年は支払手数料、翌年は租税公課、と使い分けると、集計がぶれて比較しにくくなります。
なお、行政機関の窓口で支払う手数料という点では、住民票や戸籍の発行手数料と同じ考え方です。役所の証明書全般の科目は住民票・戸籍などの発行手数料の勘定科目は?租税公課と支払手数料でも整理しています。
法人と個人事業主で発行元・手数料が違う(法務局500円・市区町村300円)
印鑑証明書は、法人と個人で発行する場所と金額が異なります。仕訳の勘定科目は同じでも、この違いは知っておくと迷いません。

法人の印鑑証明書は、代表者印(会社実印)を登録した法務局が発行します。個人事業主・個人の印鑑証明書は、住んでいる市区町村が発行します。
| 区分 | 発行元 | 手数料の目安(2026年時点) |
|---|---|---|
| 法人(会社実印) | 法務局 | 書面請求で1通500円 |
| 法人(オンライン請求) | 法務局(電子申請) | 窓口交付・郵送で1通400円台 |
| 個人事業主・個人 | 市区町村 | 1通300円前後(コンビニ交付は200円前後) |
法人の手数料は2025年4月に改定され、書面請求は1通500円になりました(参考: 法務省「登記手数料について」)。個人の手数料は自治体ごとに異なるため、金額は窓口や自治体サイトで確認してください。
個人事業主が印鑑証明書を取得する場合、それが事業のためか私用かで処理が変わります。事業の契約・融資のために取ったなら経費、私的な用途なら経費にしません。事業用口座から払っても私的なら「事業主貸」で処理します。
仕訳例|取得場面別(登記・契約・融資)
印鑑証明書は取得する場面によって仕訳が少し変わります。基本形と、登記のために取った場合を分けて示します。普通の取得は次のとおりです。
ケース1:契約・手続きのために取得した場合
取引先との契約、口座開設、補助金申請などで印鑑証明書を1通取り、現金で払ったケースです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 500 | 現金 | 500 | 印鑑証明書 1通 |
租税公課で処理する場合は、借方を「租税公課」に置き換えるだけです。どちらでも問題ありません。
ケース2:事業用口座から複数通をまとめて取得した場合
融資審査などで印鑑証明書を数通まとめて取り、事業用の普通預金から払ったケースです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 1,500 | 普通預金 | 1,500 | 印鑑証明書 3通(融資申込) |
ケース3:個人事業主が私用で取得した場合
事業と関係のない用途(マイカー購入など)で取ったケースです。事業の経費にはならないため、事業用口座から払ったときは「事業主貸」で処理します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 事業主貸 | 300 | 普通預金 | 300 | 印鑑証明書(私用) |
事業主貸・事業主借の考え方は事業主貸・事業主借とは?仕訳例と期末の元入金振替で整理しています。
会社設立・不動産取得の登記のために取った分は「登記費用」
- 日常の証明書取得 → 「支払手数料」または「租税公課」で費用処理
- 会社設立や不動産取得の登記のための取得 → 登記費用の一部(付随費用)として整理することがある
会社設立、増資、不動産の購入などの登記の一連の手続きで印鑑証明書を取ることがあります。この場合、印鑑証明書の手数料は登記費用の一部として、司法書士報酬や登録免許税とまとめて把握することがあります。
登記費用の多くは「支払手数料」や「租税公課」で費用処理しますが、不動産などの資産を取得するために直接かかった付随費用は、その資産の取得原価に含める考え方もあります。金額が小さければ費用処理で差し支えありません。
なお、登録免許税や印紙税といった登記まわりの税金は、原則として「租税公課」で経費になります。税金ごとの経費可否は法人税は経費にならない?「租税公課」で落とせる税金と「法人税等」の違いで詳しく整理しています。
印鑑証明書の消費税は「非課税」=仕入税額控除できない
印鑑証明書の発行手数料は、消費税では「非課税」です。「不課税(対象外)」ではない点に注意してください。
国・地方公共団体などが法令に基づいて徴収する行政手数料は、消費税法で非課税取引と定められています。印鑑証明書の発行手数料もこれに含まれます(参考: 国税庁「No.6201 非課税となる取引」)。

実務で大切なのは、印鑑証明書の手数料を「課税仕入れ」にしないことです。課税仕入れにすると、本来控除できない消費税を仕入税額控除してしまい、消費税の申告額が誤ります。
会計ソフトの消費税区分では「非課税仕入れ」または「対象外」を選びます。課税区分の判定に迷う場合は消費税の勘定科目はどれ?仮払・仮受・未払消費税の仕訳例もあわせてご覧ください。
よくある間違いと注意点
実務で見かける誤りを整理します。いずれも決算・申告に影響するため、最初に押さえておくと安心です。
- 印鑑証明書の手数料を「課税仕入れ」にして仕入税額控除してしまう
- 年ごとに支払手数料と租税公課をばらばらに使う
- 個人事業主が私用の印鑑証明書を経費にしてしまう
- 金額の目安を古いまま使い、法人手数料を450円で計上する
間違い1:課税仕入れにしてしまう
最も多い誤りです。行政手数料は非課税のため、仕入税額控除の対象になりません。消費税区分は「非課税仕入れ」か「対象外」を選びます。
間違い2:科目を年ごとに変える
支払手数料でも租税公課でもよいのですが、年によって使い分けると集計がぶれます。会社で1つに決めて継続適用してください。
間違い3:私用の印鑑証明書を経費にする
個人事業主が私的な用途で取った印鑑証明書は経費になりません。事業用口座から払ったなら「事業主貸」で処理します。
間違い4:古い手数料額のまま計上する
法人の印鑑証明書は2025年4月に書面請求が500円へ改定されました。過去の450円で覚えていると誤差が出るため、最新額を確認しましょう。判断に迷う場合は、顧問税理士に確認するのが安全です。
よくある質問
印鑑証明書の処理でつまずきやすい5問を整理します。
Q1:印鑑証明書は支払手数料と租税公課のどちらで処理しますか?
どちらでも問題ありません。手続きの対価とみれば「支払手数料」、行政機関へ納める公的な手数料とみれば「租税公課」です。会社で1つに決めて継続適用すれば、会計ルール上どちらも正しい処理です。
Q2:印鑑証明書の消費税は課税されますか?
されません。行政手数料は消費税法で非課税取引とされているため、印鑑証明書の発行手数料も非課税です。「不課税」ではなく「非課税」で、課税仕入れにして仕入税額控除しないよう注意します。
Q3:法人と個人で印鑑証明書の勘定科目は違いますか?
勘定科目は同じで「支払手数料」か「租税公課」です。違うのは発行元と金額で、法人は法務局(書面請求で1通500円)、個人事業主は市区町村(300円前後)から取得します。
Q4:会社設立の登記で取った印鑑証明書はどう処理しますか?
登記費用の一部として、司法書士報酬や登録免許税とまとめて把握することがあります。多くは「支払手数料」「租税公課」で費用処理しますが、資産取得のための付随費用は取得原価に含める考え方もあります。
Q5:印鑑証明書の手数料は「雑費」でもよいですか?
かまいません。金額が少額で取得回数も少なければ「雑費」で処理して問題ありません。ただし雑費が膨らむと内容が見えにくくなるため、頻度が増えたら支払手数料や租税公課に寄せるのがおすすめです。
まとめ:印鑑証明書は「支払手数料か租税公課」で継続適用する
最後に、印鑑証明書の勘定科目のポイントを整理します。
- 印鑑証明書の勘定科目は「支払手数料」か「租税公課」のどちらでもよい(継続適用が原則)
- 少額・低頻度なら「雑費」でも可。会社ごとに1つに統一する
- 法人は法務局で1通500円、個人事業主は市区町村で300円前後
- 会社設立・不動産取得の登記のための取得は登記費用の一部として整理することがある
- 消費税は「非課税」。課税仕入れにして仕入税額控除しない
印鑑証明書の手数料は、支払手数料でも租税公課でも正しく処理できます。迷ったら支払手数料に寄せ、社内で統一して継続適用するのが実務的です。消費税を非課税で扱う点だけは間違えないようにし、判断に迷うケースでは最新の法務局・自治体情報を確認のうえ、税理士に相談すると確実です。
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免責事項
※本記事は2026年時点の公開情報をもとに勘定科目の一般的な考え方を整理したものです。手数料額・税制は改正や自治体・法務局により異なります。個別の税務処理・申告判断は、最新の国税庁・法務省・自治体の公式情報をご確認のうえ、税理士など有資格者にご相談ください。
