「従業員のモチベーションを上げるために、社員旅行に行きたい」「役員の健康管理のために、人間ドックの費用を会社で負担したい」
こうした従業員への還元(ベネフィット)は、要件を満たせば「福利厚生費」として、会社は経費になり、個人には税金がかからないというメリットがあります。
しかし、やり方を間違えると「現物給与(ボーナスと同じ扱い)」とみなされ、会社には源泉所得税の徴収漏れ、個人には所得税・住民税のアップというダブルパンチが待っています。
この記事では、福利厚生費として認められるための「3つの壁」と、よくある事例の判定基準を解説します。
結論:この3条件を満たしているか?
① 機会均等(みんなに)「役員だけ」「特定の社員だけ」はNG。全従業員を対象にした制度であること。
② 金額の妥当性(常識の範囲)「1人100万円の豪華旅行」などはNG。社会通念上、常識的な金額であること。
③ 現物給付(モノやサービスで)「現金」「商品券」の支給は原則NG。換金性の高いものは給与とみなされる。
ケース別判定:これは経費?給与?
よくある福利厚生の事例について、○(福利厚生費)と×(給与課税)のラインを見ていきましょう。
- 健康診断・人間ドック
判定内容○ 福利厚生・全社員対象の定期健康診断・「35歳以上の社員全員」を対象とした人間ドック× 給与課税・役員だけが受ける高額な人間ドック・会社が費用を負担し、かつ受診していない人には現金を渡す場合
ポイントは「特定の人のためではないか」です。役員だけの高額検診は、実質的な役員賞与とみなされるリスクが高いです。
- 社員旅行
社員旅行を福利厚生費にするには、国税庁が定める以下の要件をクリアする必要があります。
旅行期間が4泊5日以内であること。
参加人数が全従業員の50%以上であること。
会社負担額が少額(概ね1人10万円以下)であること。
⚠️ 家族同伴の場合従業員の家族も連れて行く場合、「家族の分」の費用は福利厚生費になりません。家族分は本人が自己負担するか、会社が出すならその分は「本人への給与」として課税されます。
- 商品券・ギフトカード・カタログギフト
創業記念や永年勤続表彰などで、記念品を渡す場合です。
判定内容○ 福利厚生・記念品(時計、盾、ペンなど)・カタログギフト(選べる商品)・テーマパークのチケットなど× 給与課税・現金(ご祝儀)・商品券(Amazonギフト券、QUOカードなど)
一番の落とし穴がここです。「商品券=現金そのもの」とみなされるため、原則として給与課税されます。従業員は喜びますが、税務上は非常に厳しいため、記念品は「モノ」で渡すのが鉄則です。
- ジム会費・レジャー施設
法人会員として契約し、全社員が使える: ○ 福利厚生費
社長個人のジム会費を会社が払う: × 給与(役員賞与)
「社長しか使っていない」という実態があると否認される可能性があるため、利用記録を残し、実際に社員も使える環境にしておくことが重要です。
- 食事補助(ランチ代)
以下の条件を満たす場合、会社が負担した分は福利厚生費になります。
従業員が食事代の半分以上を負担していること。
会社負担額が月額3,500円以下(税抜)であること。
「全額会社持ち」にすると給与になります。意外と条件が厳しいため、最近では「オフィス設置型のお菓子・惣菜(1つ100円で購入など)」を導入する企業が増えています。
まとめ
福利厚生費は「会社にとっても従業員にとってもオイシイ」経費ですが、それゆえに税務署も厳しくチェックします。
「特定の誰かだけが得をしていないか?」
「現金(に近いもの)を渡していないか?」
この2点を常に意識してください。そして、新しい福利厚生を導入する際は、必ず「社内規定(慶弔見舞金規程など)」を作成し、制度として明文化しておくことが、税務調査対策として最も重要です。
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