給与の消費税は不課税|なぜかからないのか(消費税法2条1項12号・通達1-1-1)・非課税との違い・外注費と分ける4要素・手当別早見表17行と仕訳例3本

給与の消費税は不課税です(消費税法2条1項12号・国税庁 No.6157)。雇用契約に基づく労働の対価は「事業として行う取引」に当たらず、会社側では課税仕入れの範囲から除かれます。役員報酬・賞与・退職金も同じ不課税で、給与30万円を払っても仕入税額控除は0円です。

この記事でわかること

  • 給与が不課税になる根拠を、受け取る側(通達1-1-1)と支払う側(消費税法2条1項12号・通達11-1-2)の2本に分けた条文
  • 「非課税」と「不課税(対象外)」の違いと、給与をどちらで入力しても納税額が変わらない仕組み(No.6209)
  • 給与と外注費を分ける通達1-1-1の判定4要素と、派遣料(課税)・出向の給与負担金(給与扱い)の区分
  • 役員報酬・賞与・退職金・各種手当・現物給与・専従者給与など17行の早見表
  • 給与支給・外注費・出向負担金の仕訳例3本と、インボイス後に同じ30万円を払ったときの控除額の差(経過措置80%→70%)

公的情報源: 消費税法 2条1項8号・12号、4条(e-Gov法令検索)/国税庁 消費税法基本通達 1-1-1「個人事業者と給与所得者の区分」(参照)/同 11-1-2「給与等を対価とする役務の提供」(参照)/国税庁タックスアンサー No.6157「課税の対象とならないもの(不課税)の具体例」(参照)/No.6451「仕入税額控除の対象となるもの」(参照)

先に答え

給与の消費税区分は不課税です。会計ソフトでは「対象外」または「不課税」を選び、消費税申告書のどの欄にも金額が動きません。給料・賃金だけでなく、役員報酬、賞与、退職金、残業手当や住宅手当のような各種手当も同じ扱いになります。

理由は2段階です。受け取る従業員は「事業者」に当たらず、支払う会社側では法律の条文が給与等を課税仕入れから外しています。この2本の根拠を押さえると、外注費との線引きも自然に決まります。

この記事の要点

  • 給与は不課税。雇用契約に基づく労働の対価で、事業者が事業として行う取引ではない(国税庁 No.6157(1)・令和8年4月1日現在法令等)
  • 支払う会社側では、消費税法2条1項12号が「給与等を対価とする役務の提供」を課税仕入れから除外している。通達11-1-2により退職金・年金も給与等に含まれる
  • 「非課税」と違い、不課税は課税売上割合の分母にも分子にも入らない(No.6209)。ただし支払う給与はもともと売上でないため、どちらで入力しても納税額は同じ
  • 給与か外注費かは契約の実態で決まる。通達1-1-1は①他人の代替②指揮監督③滅失時の報酬請求④材料・用具の供与の4要素を総合勘案すると定めている
  • 派遣料は課税仕入れ(通達5-5-11)、出向者の給与負担金は給与扱いで不課税(通達5-5-10)。同じ「人を使う費用」でも区分が分かれる
  • インボイス後、同じ税込30万円でも控除額は給与0円・外注費(適格請求書あり)27,272円・免税事業者への外注費21,818円(2026年10月1日からは19,090円)

目次

給与の消費税が不課税になる理由|消費税法2条1項12号と通達1-1-1

給与の消費税とは、雇用契約に基づいて支払う労働の対価が、消費税の課税対象である「資産の譲渡等」に当たるかどうかの判定です。答えは「当たらない」で、区分は不課税です。

消費税法4条1項は「国内において事業者が行つた資産の譲渡等」に消費税を課すると定めています。そして2条1項8号は資産の譲渡等を「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」と定義しています。給与はこの「事業として」の要件を満たしません。

給与が不課税になるまでの条文の流れ

  • 会社が従業員に支払う給与は、消費税の課税対象になるか
  • STEP1消費税法4条1項|課税対象は「事業者が行った資産の譲渡等」資産の譲渡等=事業として対価を得て行う譲渡・貸付け・役務の提供(2条1項8号)
  • STEP2通達1-1-1|雇用契約で他人に従属して働くのは「事業」でない従業員は自己の計算で独立して事業を行う者に当たらない=受け取る側で不課税
  • STEP3消費税法2条1項12号|課税仕入れから「給与等を対価とする役務の提供」を除外会社が払う給与は課税仕入れにならない=支払う側で仕入税額控除なし
  • STEP4通達11-1-2|給与等には賞与・退職金・年金も含む役員報酬・各種手当・退職金まで同じ不課税。会計ソフトは「対象外」

図:受け取る側は「事業者でない」、支払う側は「課税仕入れから除外」の2本立て。どちらから見ても給与は消費税の外にある。

受け取る側|従業員は「事業者」に当たらない(通達1-1-1)

消費税法基本通達1-1-1「個人事業者と給与所得者の区分」は、次のように定めています。「事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しない」。

従業員は会社の指揮命令のもとで働き、成果の損益は会社に帰属します。自分の計算で独立して行う事業ではないため、労働の対価である給与は資産の譲渡等に当たりません。国税庁 No.6157(1)も「雇用契約に基づく労働の対価であり、事業者が事業として行う取引ではないからです」と説明しています。

同じ通達は、出来高払の給与にも触れています。歩合や出来高で計算される給与であっても、雇用契約に基づくものは事業に該当せず、不課税のままです。

支払う側|課税仕入れの定義から給与等が除かれている(消費税法2条1項12号)

会社が払う側の根拠は条文そのものにあります。消費税法2条1項12号は課税仕入れを「事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(所得税法第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けること」と定義しています。

かっこ書きが決め手です。給与等を対価とする役務の提供は、法律の条文で課税仕入れから外されています。したがって、給与を払っても仕入税額控除の対象になる金額は0円です。No.6451「仕入税額控除の対象となるもの」も「給与等の支払は含まれません」と明記しています。

通達11-1-2が示す「給与等」の範囲は、基本給より広めです。俸給・給料・賃金・歳費・賞与に加えて、「過去の労務の提供を給付原因とする退職金、年金等も該当する」とあります。役員報酬も所得税法28条の給与所得ですから、同じく課税仕入れになりません。

給与の消費税は「非課税」でなく「不課税」|対象外との違いと納税額への影響

給与の消費税区分は不課税で、非課税とは別の区分です。国税庁 No.6209「非課税と不課税の違い」は、不課税を「事業者が事業として対価を得て行う取引に当たらないもの」、非課税を「その取引に当たるが政策的に課税しないもの」と分けています。

非課税・不課税・対象外の違い(支払う側から見た整理・2026年9月時点)

区分意味代表例課税売上割合(受け取る側)会計ソフトの表記
不課税課税対象の外にある取引給与・賞与・退職金・寄附金・損害賠償金分母にも分子にも入れない対象外/不課税
非課税課税対象だが政策的に課税しない取引土地の譲渡・社会保険料・利子・商品券分母に入れる非課税仕入/非課税売上
免税課税対象だが税率0%(輸出等)輸出売上・国際輸送分母と分子の両方に入れる輸出免税
課税消費税がかかる取引外注費・派遣料・通勤手当・備品購入分母と分子の両方に入れる課税仕入10%/課税売上10%

「対象外」は会計ソフトが不課税を表す言葉で、税法上の区分としては不課税と同じです。freeeやマネーフォワード、弥生のどれでも、給料手当の既定の税区分は「対象外」に設定されています。

給与をどちらで入力しても納税額は変わらない

課税売上割合は「受け取る側」の売上で計算するため、支払う給与が非課税か不課税かで分母は動きません。給与は売上ではないからです。仕入税額控除も、非課税仕入・不課税のどちらでもできません。

給与を 非課税仕入 と 対象外 のどちらで入力した場合

非課税仕入で入力(誤り)
仕入税額控除
できない
課税売上割合
影響なし(売上でない)
申告書の集計
非課税仕入の集計に混ざる
対象外(不課税)で入力(正)
仕入税額控除
できない
課税売上割合
影響なし(売上でない)
申告書の集計
どの欄にも入らない

図:納税額はどちらでも同じ。違いは集計表の見え方だけなので、税法どおり「対象外」に直しておく。

違いが出るのは帳票の見え方だけです。非課税仕入で入力すると、消費税の集計表で非課税仕入の合計に給与が混ざり、社会保険料など本来の非課税仕入と区別できなくなります。区分は税法どおり「対象外(不課税)」に統一しておくのが安全です。

課税方式による差もありません。原則課税・簡易課税・2割特例・免税事業者のどれであっても、給与は消費税の計算に一切入りません。簡易課税や2割特例は売上側の消費税だけで納税額が決まるため、給与の区分を気にする場面は帳票の整理だけになります。

給与と外注費の消費税区分|通達1-1-1の判定4要素と派遣・出向の扱い

給与と外注費の消費税区分を決めるのは、契約書の名前でなく実態です。通達1-1-1は「雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうか」を基準とし、区分が明らかでないときは次の4つの事項を総合勘案すると定めています。

給与か外注費かを分ける判定要素(通達1-1-1・2026年9月時点)

通達1-1-1の判定要素給与に寄る実態(不課税)外注費に寄る実態(課税仕入れ)
(1) 役務の内容が他人の代替を容れるか本人しか働けない(代わりを立てられない)本人の判断で第三者に再委託・代替できる
(2) 事業者の指揮監督を受けるか勤務時間・場所・手順を会社が指示する納期と成果物だけ決め、進め方は本人に任せる
(3) 完成品が不可抗力で滅失しても報酬を請求できるか働いた時間分は請求できる(時間給の性格)成果物を引き渡せなければ請求できない(請負の性格)
(4) 材料・用具等を供与されているか会社のパソコン・工具・材料を使う自分の道具と材料を持ち込む

4要素のどれか1つで決まるものではなく、通達本文どおり「総合勘案」です。契約書に「業務委託」と書き、請求書に消費税を上乗せしていても、実態が(1)〜(4)のすべてで給与側に寄っていれば、税務上は給与として扱われます。

人に払う費用の消費税区分ツリー

  • 個人や他社に払う「人の働きに対するお金」は、どの区分か
  • 分岐1自社と雇用契約(またはこれに準ずる契約)がある個人への支払いかある → 給与等 = 不課税(役員報酬・賞与・退職金・各種手当を含む)
  • 分岐2雇用契約がなく、請負・委任で成果や役務に対して払うか実態が1-1-1の4要素で外注側 → 外注費 = 課税仕入れ(適格請求書で控除)
  • 分岐3派遣会社に払う派遣料か派遣会社が行う役務の提供の対価 → 課税仕入れ(通達5-5-11)
  • 分岐4出向元に払う出向者の給与負担金か出向先における出向者への給与として扱う → 不課税(通達5-5-10)

図:雇用関係が自社にあれば不課税、他社にあって役務提供を受けるだけなら課税。出向だけは他社雇用でも給与扱いになる。

派遣料は課税・出向者の給与負担金は不課税

同じ「よその会社の人に働いてもらう」費用でも、区分は正反対になります。通達5-5-11は、労働者派遣を行った事業者が受け取る派遣料等を「資産の譲渡等の対価に該当する」と定めています。派遣社員と派遣先の間に雇用関係がなく、派遣会社の役務提供を買っているためです。No.6451も人材派遣料を課税仕入れの例に挙げています。

一方、出向は反対の結論です。通達5-5-10は、出向先が出向元に支払う給与負担金を「出向先事業者におけるその出向者に対する給与として取り扱う」と定めています。出向者は出向先の指揮命令で働き、出向先と雇用関係に準ずる関係があるためです。経営指導料などの名義で払っていても、実質が給与負担金なら同じ扱いになります(同通達の注)。

外注費が給与と認定されたときに起きること

税務調査で外注費が給与と判定されると、消費税では外注費として控除していた仕入税額が否認され、追徴になります。あわせて所得税の源泉徴収漏れ(不納付加算税・延滞税)と、社会保険の加入義務も同時に問われる流れです。

「給与を外注費に付け替えて消費税を減らす」という発想は、1-1-1の実態判定で止まります。区分を変えるなら、契約だけでなく働き方そのものを(1)〜(4)で外注側に寄せなければなりません。外注費として処理するときの勘定科目・源泉徴収・インボイスの実務は外注費(業務委託費)の勘定科目と仕訳で扱っています。

給与に含まれる支払・含まれない支払|手当別の消費税区分早見表17行

給与の消費税区分は、基本給だけでなく「給与等の性質を有する」支払すべてに及びます。逆に、給与明細に載っていても給与等でないものは別区分です。不課税が11行・課税仕入れが4行・非課税が1行・購入と支給で分かれるものが1行あります。

人件費まわりの消費税区分早見表(支払う側の区分・2026年9月時点)

支払の種類消費税区分判定のポイント根拠
給料・賃金・基本給不課税雇用契約に基づく労働の対価消法2条1項12号・No.6157(1)
役員報酬不課税所得税法28条の給与所得=給与等消法2条1項12号・通達11-1-2
賞与・役員賞与不課税通達が「賞与」を給与等に明記通達11-1-2
残業手当・住宅手当・家族手当・役職手当・資格手当不課税「これらの性質を有する給与」通達11-1-2
出来高払・歩合給不課税雇用契約に基づけば事業でない通達1-1-1
退職金不課税「過去の労務の提供を給付原因とする退職金」通達11-1-2
企業年金・退職年金不課税同上「年金等」通達11-1-2
青色事業専従者給与不課税家族従業員への給与=給与等消法2条1項12号
通勤手当(通常必要な範囲)課税仕入れ所得税で非課税でも全額が課税仕入れNo.6459・通達11-6-5
国内出張の日当・旅費(通常必要な範囲)課税仕入れ旅行に通常必要な部分No.6459
海外出張の日当・旅費不課税原則として課税仕入れにならない(国際線の航空券は免税)No.6459
現物給与(会社が買って渡す物品)購入時は課税仕入れ・支給時は不課税購入は事業として役務・資産を受ける。従業員への支給は対価なし通達11-1-1・消法4条5項2号
社会保険料(会社負担の法定福利費)非課税保険料は非課税取引消法別表第二3号
源泉所得税・社会保険料の預り金不課税(対象外)従業員から預かり納付するだけNo.6209
人材派遣料課税仕入れ派遣会社の役務提供の対価通達5-5-11・No.6451
出向者の給与負担金不課税出向先の給与として扱う通達5-5-10
外注費(請負・委任の報酬)課税仕入れ事業者が事業として行う役務の対価通達1-1-1・No.6451(7)

通勤手当だけは給与明細の中で課税仕入れになる例外で、所得税の非課税限度額を超えていても通常必要な範囲なら全額が控除対象です。帳簿の書き方と仕訳は通勤手当の消費税は課税仕入れで扱っています。社会保険料の非課税と預り金の処理は社会保険料の消費税は非課税で整理しています。海外出張の日当・航空券・現地ホテルの区分なら、海外出張の消費税の早見表が参考になるでしょう。

役員報酬・賞与・退職金も同じ不課税

役員報酬は雇用契約でなく委任契約に基づきますが、所得税法28条1項の給与所得です。消費税法2条1項12号のかっこ書きは「所得税法第二十八条第一項に規定する給与等」を指しているため、役員報酬も課税仕入れから外れます。

退職金は所得税では退職所得で給与所得ではありません。それでも通達11-1-2が「過去の労務の提供を給付原因とする退職金、年金等も該当する」と明記しているため、消費税では給与等と同じ不課税になります。役員退職金も同様です。

現物給与|会社の購入は課税仕入れ・従業員へ渡す時は不課税

会社が物品を買って従業員に無償で渡す現物給与は、2つの取引に分けて考えます。物品を買う取引は、会社が事業として資産を譲り受けているので課税仕入れです(通達11-1-1)。従業員に渡す取引は対価がなく、資産の譲渡等に当たらないので不課税です。

役員に渡す場合だけは扱いが別です。消費税法4条5項2号は「法人が資産をその役員に対して贈与した場合における当該贈与」を資産の譲渡とみなすと定めています。役員への現物支給はみなし譲渡として課税売上に計上する必要があります。従業員への贈与にはこの規定がありません。

給与の消費税 仕訳例3本|給与支給・外注費・出向者の給与負担金

仕訳は税抜経理を前提に、給与支給・外注費・出向負担金の3本を示します。給与の税区分は全行「対象外」で、通勤手当だけが課税仕入れになります。

月給300,000円+通勤手当11,000円を支給し、社会保険料45,000円と源泉所得税6,500円を天引きした

借方

給料手当 300,000

旅費交通費(通勤手当) 10,000

仮払消費税 1,000

貸方

預り金(社会保険料) 45,000

預り金(源泉所得税) 6,500

普通預金 259,500

図:給料手当と預り金は対象外。通勤手当だけ課税仕入れとして仮払消費税1,000円を立てる。

仕訳例1|月給300,000円と通勤手当11,000円(税込)を支給し、社会保険料45,000円・源泉所得税6,500円を天引きした

借方金額(円)借方の税区分貸方金額(円)
給料手当300,000対象外預り金(社会保険料)45,000
旅費交通費(通勤手当)10,000課税仕入 10%預り金(源泉所得税)6,500
仮払消費税1,000―普通預金259,500

給料手当300,000円は対象外で、消費税申告には一切出てきません。通勤手当11,000円だけを課税仕入れに分け、帳簿に「通勤手当」と記載すれば、適格請求書がなくても控除の対象です。総額から控除・差引支給・納付までの一連の流れは給料手当の勘定科目と仕訳で扱っています。

仕訳例2|適格請求書発行事業者のデザイナーに外注費220,000円(税込)を支払った

借方金額(円)貸方金額(円)税区分
外注費200,000普通預金220,000課税仕入 10%
仮払消費税20,000

同じ働きに対する支払いでも、雇用契約でなく請負なら課税仕入れになり、仮払消費税20,000円を控除できます。相手が免税事業者の場合は、次章の経過措置で計算してください。デザイナーへの報酬は源泉徴収の対象になる場合があり、その扱いは外注費の勘定科目ページで整理しています。

仕訳例3|出向者1名の給与負担金350,000円を出向元に支払った

借方金額(円)貸方金額(円)税区分
給料手当(出向者給与負担金)350,000普通預金350,000対象外

通達5-5-10により、出向先が負担する給与相当額は出向先の給与として扱います。出向元から請求書が来ても消費税は乗らないため、税区分は対象外です。もし派遣会社への派遣料330,000円(税込)なら、人材派遣料300,000円+仮払消費税30,000円の課税仕入れになり、同じ「人件費」でも仕訳が変わります。

会計ソフトで選ぶ税区分

給料手当・役員報酬・賞与・退職金の科目は、どのソフトでも既定が「対象外」です。給与計算ソフトから会計ソフトへ連携するとき、通勤手当が給料手当に合算されて対象外のまま取り込まれることがあります。通勤手当の行だけを課税仕入10%に分け直すと、控除の取りこぼしを防げます。

インボイス後の給与と外注費|同じ30万円を払ったときの仕入税額控除の差

給与の消費税はインボイス制度の前後で何も変わりません。もともと課税仕入れでないため、適格請求書も登録番号も関係がなく、控除額は0円のままです。差が出るのは外注費側で、相手が適格請求書発行事業者かどうかで控除額が変わります。

税込300,000円を支払ったときの仕入税額控除額の比較(原則課税・2026年9月時点)

支払の形仕入税額控除の額(円)必要な書類根拠
給与(雇用契約)0なし(帳簿に給与として記載)消法2条1項12号
外注費(適格請求書発行事業者へ)27,272適格請求書+帳簿消法30条
外注費(免税事業者へ・2026年9月30日まで)21,818(80%)区分記載請求書+「80%控除対象」等の帳簿記載28年改正法附則52・53
外注費(免税事業者へ・2026年10月1日〜2028年9月30日)19,090(70%)同上(「70%控除対象」等)同上・インボイスQ&A 問113
外注費(免税事業者へ・2028年10月1日〜2030年9月30日)13,636(50%)同上同上
外注費(免税事業者へ・2030年10月1日〜2031年9月30日)8,181(30%)同上同上

免税事業者からの仕入れに係る経過措置は、国税庁インボイスQ&A 問113(令和8年4月改訂)で80%→70%→50%→30%の4段階に整理されています。令和8年度改正前は「2026年10月から50%」と案内されていたため、古い解説のまま計算すると控除額がずれてしまいそうです。適用する割合は課税仕入れを行った日で判定します(同Q&A 問113-3)。

同じ税込300,000円を 給与 で払う場合と 外注費 で払う場合

給与として支払う
消費税区分
不課税(対象外)
仕入税額控除
0円
インボイス
不要
あわせて発生する義務
源泉徴収・社会保険・労働保険
外注費として支払う(適格請求書あり)
消費税区分
課税仕入れ10%
仕入税額控除
27,272円
インボイス
必要(免税事業者なら経過措置80%→70%)
あわせて発生する義務
報酬の種類により源泉徴収(No.6929)

図:控除額の差は月27,272円。ただし区分は契約の実態(通達1-1-1)で決まり、支払う側が選べるものではない。

免税事業者への外注費の仕訳(経過措置)

免税事業者のデザイナーに税込220,000円を払った場合、2026年9月30日までは仮払消費税16,000円(20,000円×80%)を立て、残り4,000円は外注費に含めます。2026年10月1日以降は仮払消費税14,000円(70%)、外注費206,000円になります。帳簿には「80%控除対象」「免」のように経過措置の適用を受ける旨を書きます(問113)。

仕訳例(参考)|免税事業者に外注費220,000円(税込)を支払った(2026年10月1日以降・70%)

借方金額(円)貸方金額(円)税区分
外注費206,000普通預金220,000課税仕入 10%(経過措置70%)
仮払消費税14,000

源泉徴収の計算基礎と消費税

外注費は消費税だけでなく源泉徴収でも給与と扱いが違います。No.6929によると、報酬・料金の源泉徴収は原則として消費税込みの金額が対象で、請求書に報酬と消費税等の額が明確に区分されていれば税抜の額だけを対象にできます。給与の源泉徴収は給与所得の源泉徴収税額表で行い、消費税の概念がそもそもありません。

よくある質問

給与と消費税で実際によく検索される6問です。

Q1:給与に消費税はかかりますか?

かかりません。給与は雇用契約に基づく労働の対価で、消費税の課税対象である「事業者が事業として対価を得て行う取引」に当たりません(国税庁 No.6157(1))。支払う会社側でも、消費税法2条1項12号が給与等を対価とする役務の提供を課税仕入れから除いているため、仕入税額控除はできません。

Q2:給与の消費税区分は非課税ですか、不課税ですか?

不課税です。非課税は「課税対象の取引だが政策的に課税しないもの」で、土地の譲渡や社会保険料が当たります。給与は課税対象の外にある取引なので不課税になり、会計ソフトでは「対象外」を選びます(No.6209)。非課税仕入で入力しても納税額は変わりませんが、集計表で社会保険料などと混ざるため対象外に統一します。

Q3:給与はなぜ消費税が不課税なのですか?

従業員が「事業者」に当たらないからです。消費税法基本通達1-1-1は、雇用契約に基づき他人に従属し、その他人の計算で行われる事業に役務を提供する場合は事業に該当しないと定めています。会社側から見ると、消費税法2条1項12号のかっこ書きが給与等を課税仕入れから外しているため、どちらの側から見ても消費税の外にあります。

Q4:役員報酬や賞与、退職金にも消費税はかかりませんか?

かかりません。役員報酬と賞与は所得税法28条の給与所得で、消費税法2条1項12号の「給与等」に含まれます。退職金は所得税では退職所得ですが、通達11-1-2が「過去の労務の提供を給付原因とする退職金、年金等も該当する」と定めているため、消費税では同じく不課税です。

Q5:給与と外注費の消費税区分はどうやって判定しますか?

契約の実態で判定します。通達1-1-1は、雇用契約またはこれに準ずる契約に基づく対価かどうかを基準とし、明らかでないときは①他人の代替を容れるか②指揮監督を受けるか③完成品が滅失しても報酬を請求できるか④材料・用具を供与されているかを総合勘案すると定めています。契約書の名前や請求書の消費税表示では決まりません。

Q6:派遣社員の派遣料と出向者の給与負担金の消費税は同じですか?

違います。派遣料は派遣会社の役務提供の対価として課税仕入れになります(通達5-5-11)。出向者の給与負担金は、出向先における出向者への給与として扱われるため不課税です(通達5-5-10)。出向元から「経営指導料」などの名義で請求されても、実質が給与負担金なら同じ扱いになります。

まとめ

給与の消費税区分を1枚に整理します。

この記事のまとめ

  • 給与は不課税。雇用契約に基づく労働の対価で、事業者が事業として行う取引ではない(No.6157(1)・通達1-1-1)
  • 支払う側の根拠は消費税法2条1項12号のかっこ書き。給与等を対価とする役務の提供は課税仕入れから除外され、控除額は0円
  • 役員報酬・賞与・各種手当・退職金・年金も給与等(通達11-1-2)。会計ソフトの税区分は「対象外」に統一する
  • 非課税と違い課税売上割合の分母に入らないが、支払う給与は売上でないため納税額はどちらでも同じ(No.6209)
  • 給与か外注費かは通達1-1-1の4要素で実態判定。派遣料は課税仕入れ(5-5-11)、出向者の給与負担金は不課税(5-5-10)
  • インボイス後も給与は変わらず控除0円。外注費は適格請求書で27,272円、免税事業者なら経過措置80%→70%(2026年10月1日から)→50%→30%(Q&A 問113)

給与の消費税 早見表(2026年9月時点)

場面消費税区分適格請求書会計ソフトの税区分
給料・役員報酬・賞与・各種手当の支給不課税不要対象外
退職金・企業年金の支給不課税不要対象外
通勤手当(通常必要な範囲)課税10%不要(帳簿のみ)課税仕入 10%
現物給与の物品購入課税10%必要課税仕入 10%
役員への現物支給みなし譲渡=課税売上―課税売上 10%
社会保険料(会社負担)非課税不要非課税仕入
出向者の給与負担金不課税不要対象外
人材派遣料・外注費課税10%必要(免税事業者は経過措置)課税仕入 10%
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免責事項

※本記事は消費税の一般的な取扱いを国税庁の公開情報と e-Gov の法令(2026年9月時点)に基づいて整理したものです。給与か外注費かの判定は契約と働き方の実態により異なります。最新の法令をご確認のうえ、必要に応じて顧問税理士など有資格者へご相談ください。


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この記事を書いた人

会計事務所で10年以上、法人や個人事業主の帳簿づけと税務申告の手伝いをしてきたTanakaです。決算が近づくと、経営者から「この支払いはどの科目で処理すればいいですか」という電話を何度も受けました。答えは業種や会社の規模で変わります。そこを一つずつ、相手に合わせて説明してきました。

独立してからは、中小企業の経理担当者向けの研修や、freee・マネーフォワード・弥生の科目設定の相談にも応じています。教科書の説明は抽象的で、現場では「とりあえず雑費」で片づけてしまうことも少なくありません。このサイトでは、勘定科目の選び方の判断軸を、具体例をそえて整理しています。最終的な税務判断は、顧問税理士にご相談ください。

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