固定資産税の消費税区分は不課税|非課税との違い・二重課税にならない理由・売買時の精算金は建物分が課税になる仕訳例とインボイス

固定資産税の消費税区分は不課税です。税金の納付は「対価を得て行う資産の譲渡等」に当たらないため、消費税の課税対象そのものに入りません(消費税法2条1項8号・4条1項、国税庁 No.6209)。ただし不動産売買のときに買主が負担する固定資産税の精算金は売買代金の一部で、建物分は10%課税、土地分は非課税になります(消費税法基本通達10-1-6)。

この記事でわかること

  • 固定資産税が不課税になる根拠(消費税法2条・4条、通達5-1-2)と、「非課税」と書くと何が違ってくるか
  • 都市計画税・償却資産税・延滞金・督促手数料・還付金・証明書手数料・家賃に含まれる固定資産税相当額など14場面の早見表
  • 建物の消費税と固定資産税は二重課税にならない理由(課税の対象が「取引」と「保有」で違う)
  • 売買時の固定資産税精算金の計算例と仕訳4本(売主・買主・税区分つき)、名義変更漏れのケース
  • 精算金の課税方式別の扱い(原則課税・簡易課税・2割特例・免税事業者)と、インボイスに何を書くか
  • 償却資産の申告書に書く取得価額は税込か税抜か(経理方式で決まる)

公的情報源: 国税庁タックスアンサー No.6209「非課税と不課税の違い」(参照)/No.6157「課税の対象とならないもの(不課税)の具体例」(参照)/質疑応答事例「未経過固定資産税等の取扱い」(参照)/消費税法基本通達 第10章第1節 課税資産の譲渡等 10-1-6(参照)/消費税法(e-Gov法令検索・参照)

先に答え

固定資産税を納めたときの消費税区分は不課税(対象外)です。会計ソフトでは「対象外」を選び、仮払消費税は立てません。都市計画税・償却資産税・延滞金も同じ扱いになります。

一方、土地や建物を買ったときに売主へ払う「固定資産税の精算金」は、税金の納付ではありません。売買代金の一部として、建物に対応する分だけ消費税がかかります。ここを租税公課で処理すると、消費税も法人税も両方でずれが出ます。

この記事の要点

  • 固定資産税の納付は不課税。反対給付のない金銭の支払いで、「対価を得て行う資産の譲渡等」に当たらない(消費税法2条1項8号・4条1項、通達5-1-2)
  • 「非課税」と「不課税」は課税売上割合の計算で差が出る。非課税は分母に入れるが、不課税は分母にも分子にも入れない(No.6209・令和8年4月1日現在法令等)
  • 建物に消費税を払い、そのあと毎年固定資産税を払っても二重課税ではない。消費税は「取引」に、固定資産税は「1月1日の所有」にかかる別の税
  • 売買時の精算金は譲渡対価の一部。建物分は課税10%・土地分は非課税(質疑応答事例・通達10-1-6)。買主は取得価額に含め、売主は売却収入に含める
  • 免税事業者の売主から買った建物分の精算金は、買主の仕入税額控除が80%(2026年9月30日まで)→70%(2026年10月1日から)の経過措置になる(No.6498)
  • 償却資産の申告書に書く取得価額は、税込経理なら税込・税抜経理なら税抜(横浜市 償却資産Q&A・No.5403)

目次

固定資産税の消費税区分は不課税|消費税法2条・4条と通達5-1-2の判定

固定資産税の消費税とは、市区町村へ納める固定資産税が消費税の課税対象に入るかどうかの判定です。答えは不課税で、課税・非課税・免税のどれでもありません。消費税法4条1項は「国内において事業者が行つた資産の譲渡等」に消費税を課すと定め、2条1項8号はその資産の譲渡等を「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」と定義しています(令和8年4月1日施行版・e-Gov法令検索)。

税金を納めても、市区町村から物を受け取ったりサービスを受けたりするわけではありません。消費税法基本通達5-1-2は「対価を得て行われる」を「資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供に対して反対給付を受けること」と説明しています。反対給付がない支払いは、課税対象の入口で外れます。

国税庁 No.6157「課税の対象とならないもの(不課税)の具体例」は、給与・寄附金・保険金・配当金・損害賠償金を例に挙げています。税金の納付そのものは例示に無いものの、判定の物差しは同じで、注2の「対価を得て行う取引」に当たらないことが理由になります。

固定資産税まわりのお金の消費税区分を決める判定フロー

  • そのお金は「誰に」「何の見返りで」払うものかを確認する
  • STEP1市区町村へ納める税金・延滞金・督促手数料か反対給付がない → 不課税(消法2条1項8号・4条1項、地方税法1条1項14号)
  • STEP2役所へ払う証明書の発行手数料か法令に基づく手数料 → 非課税(No.6201(7))。税金ではないが課税もされない
  • STEP3売買の相手(売主)へ払う固定資産税の精算金か譲渡対価の一部 → 建物分は課税10%・土地分は非課税(通達10-1-6・No.6201(1))
  • STEP4家賃や地代に上乗せされた固定資産税相当額か家賃・地代と同じ区分 → 事務所家賃は課税・住宅家賃と地代は非課税(No.6225)

図:役所へ払う税金だけが不課税。相手方(売主・貸主)へ払う「固定資産税相当額」は、その取引の対価と同じ区分になる。

「非課税」でなく「不課税」|課税売上割合の分母に入れない

固定資産税を「非課税」で登録している帳簿を見かけますが、区分は不課税です。国税庁 No.6209「非課税と不課税の違い」は、非課税を「事業者が事業として対価を得て行う取引であっても、課税対象になじまないものや社会政策的配慮から消費税を課税しない取引」と定義しています。土地の譲渡や利子がその例で、対価を得る取引であることが前提になります。

不課税は「これに当たらない取引」、つまり対価を得て行う取引ですらないものを指す言葉です。固定資産税は後者に当たります。

違いが出るのは課税売上割合の計算です。No.6209は、非課税取引は分母のみに算入し、不課税取引は分母にも分子にも算入しないと書いています。支払側の固定資産税で割合は動かないものの、後述する精算金を売主として受け取ると、土地分(非課税売上)が分母に入ります。ここで区分を取り違えると、課税売上割合が95%を切るかどうかの判定に響くので、最初から不課税で登録しておきたいところです。

都市計画税・償却資産税・延滞金・督促手数料も不課税

固定資産税と一緒に納める都市計画税、償却資産にかかる固定資産税(いわゆる償却資産税)も、同じ理由で不課税です。納付書が1枚にまとまっていても、分けて考える必要はありません。

納期に遅れたときの延滞金と督促手数料も不課税です。地方税法1条1項14号は「地方団体の徴収金」を「地方税並びにその督促手数料、延滞金、過少申告加算金、不申告加算金、重加算金及び滞納処分費」と定義していて、督促手数料も税と同じ徴収金の枠に入ります(e-Gov法令検索・令和8年4月1日時点)。役所が発行する固定資産評価証明書や納税証明書の手数料は、法令に基づく手数料として非課税になり、こちらは不課税ではありません(No.6201(7))。証明書手数料の科目と仕訳は納税証明書の勘定科目で扱っています。

固定資産税と消費税は二重課税にならない

「建物を買うときに消費税を払い、持っている間も毎年固定資産税を払うのは二重課税では」という疑問は、課税の対象を分けると解けます。消費税は「事業者が対価を得て行う取引」にかかる税で、建物の売買という1回の取引に1回だけかかります(消費税法4条1項)。固定資産税は、毎年1月1日時点で固定資産を所有していることにかかる税で、取引の有無に関係なく課されます。

同じ建物に2つの税がかかっていても、課税の根拠になる事実が「買った」と「持っている」で別です。消費税を固定資産税の計算に含めることも、固定資産税に消費税を上乗せすることもありません。固定資産税の税額は固定資産税評価額(課税標準額)に税率をかけて決まり、購入時に払った消費税の額は評価額の計算に入らない仕組みです。

固定資産税まわりの消費税区分 早見表14場面

固定資産税に関係するお金は、「役所に納める税金」と「相手方に払う固定資産税相当額」に分けると迷いません。税金そのものは不課税、相手方への支払いは元の取引と同じ区分になります。

固定資産税に関係するお金の消費税区分 早見表(支払う側の区分・2026年9月時点)

場面消費税区分判定のポイント根拠
固定資産税の納付(土地・家屋)不課税反対給付のない税金の納付消法2条1項8号・4条1項、No.6209
都市計画税の納付不課税固定資産税と同じ納付書で納める税金同上
償却資産税(償却資産にかかる固定資産税)の納付不課税申告して納める税金。申告書の取得価額は経理方式で決まる(後述)同上
固定資産税の延滞金・督促手数料不課税「地方団体の徴収金」に含まれる地方税法1条1項14号
固定資産税の還付金(過納・減免)不課税納めすぎた税金が戻るだけ消法2条1項8号
固定資産評価証明書・納税証明書の発行手数料非課税国等が法令に基づいて行う事務の手数料No.6201(7)
売買時の固定資産税精算金(建物分)課税10%譲渡対価の一部。買主は課税仕入れ・売主は課税売上質疑応答事例、通達10-1-6
売買時の固定資産税精算金(土地分)非課税土地の譲渡は非課税。買主は非課税仕入れ・売主は非課税売上通達10-1-6、No.6201(1)
名義変更しなかったため売主に課された税を買主が売主へ支払う不課税譲渡対価ではなく立替分の精算通達10-1-6(注)
事務所・店舗の家賃に含まれる固定資産税相当額課税10%建物の貸付けの対価と一体No.6225
住宅の家賃に含まれる固定資産税相当額非課税住宅の貸付けは非課税(1か月未満を除く)No.6225
借地の地代に含まれる固定資産税相当額非課税土地の貸付けは非課税(1か月未満・駐車場等を除く)No.6225
固定資産税の申告・納付を税理士に依頼した報酬課税10%役務の提供の対価。税金そのものではない消法2条1項8号
償却資産申告書に書く取得価額税込経理は税込・税抜経理は税抜・免税事業者は税込区分ではなく申告額の話。税額に差が出る横浜市 償却資産Q&A Q3、No.5403

表の下から2行目のように、税金そのものではない支出(税理士報酬・証明書手数料)は、租税公課の科目に入れても消費税区分は別です。租税公課の科目と一覧は租税公課の一覧にまとめています。

不動産売買の固定資産税精算金は売買代金の一部|建物分が課税・土地分が非課税

固定資産税の精算金(未経過固定資産税等)は、税金ではなく売買代金の一部です。国税庁の質疑応答事例「未経過固定資産税等の取扱い」(令和7年8月1日現在の法令・通達等)は、次のように答えています。

質疑応答事例「未経過固定資産税等の取扱い」回答要旨(抜粋)

不動産売買の際に、売買当事者の合意に基づき固定資産税・都市計画税の未経過分を買主が分担する場合の当該分担金は、地方公共団体に対して納付すべき固定資産税そのものではなく、私人間で行う利益調整のための金銭の授受であり、不動産の譲渡対価の一部を構成するもの(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭)として課税の対象となります(基通10-1-6)。

理由は納税義務者の決まり方にあります。固定資産税は1月1日時点の所有者に1年分が課され、年の途中で売っても売主が納税義務者のままです。買主が引渡し日以降の分を売主へ渡す慣行は、当事者どうしの負担調整であって、市区町村へ納める税金ではありません。

通達10-1-6(未経過固定資産税等の取扱い)は、この金額を「当該資産の譲渡について収受する金額とは別に収受している場合であっても、当該未経過分に相当する金額は当該資産の譲渡の金額に含まれる」と定めています。契約書で売買代金と精算金を分けて書いても、判定は変わりません。

譲渡の金額に含まれるので、区分は売った資産と同じになります。土地の譲渡は非課税(消費税法6条1項・別表第二、No.6201(1))、建物の譲渡は課税です。土地分の精算金は非課税・建物分の精算金は課税10%で、土地と建物を一括で売買したときは、それぞれの対価を合理的に区分してから按分します。

精算金の計算例|年税額30万円・7月1日引渡し・起算日1月1日

数字で追ってみましょう。固定資産税と都市計画税の年税額が、土地180,000円・建物120,000円(合計300,000円)の事務所ビルを、2026年7月1日に引き渡すとします。起算日を1月1日にすると、売主の負担は1月1日〜6月30日の181日、買主の負担は7月1日〜12月31日の184日です(2026年は365日)。

固定資産税精算金の計算例(年税額300,000円・2026年7月1日引渡し・起算日1月1日・円未満切捨て)

区分年税額(円)買主負担分の計算精算金(円)消費税区分消費税(円・外税の場合)
土地180,000180,000 × 184 ÷ 36590,739非課税0
建物120,000120,000 × 184 ÷ 36560,493課税10%6,049
合計300,000151,2326,049

買主が売主へ渡す金額は、精算金151,232円に建物分の消費税6,049円を足した157,281円になります。起算日を4月1日にする地域(関西に多い慣行)では日数が変わるだけで、区分の考え方は同じです。

契約書に「精算金の建物分は課税」と書いておく

精算金を「税込」で決めたのか「税抜」で決めたのかは、契約書で明らかにしておきます。書いていないと、建物分60,493円のうち5,499円が消費税なのか、別に6,049円を上乗せするのかで、売主の課税売上と買主の仕入税額が変わってしまいます。

課税標準は「対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭」から消費税相当額を除いた額です(消費税法28条1項)。契約書に消費税の扱いが無ければ、受け取った額に消費税が含まれているものとして110分の10を税額と見るのが実務の扱いで、売主側が不利になります。売買契約書の「公租公課の分担」条項に、建物分の消費税額を1行書いておくと双方が迷いません。

通達10-1-6の注|名義変更しなかったため売主に課された税は不課税

10-1-6には注があります。売却後に名義変更をしなかったなどの理由で、本来は買主に課されるべき固定資産税等が売主に課され、売主が買主からその相当額を受け取った場合、その金額は「資産の譲渡等の対価に該当しない」と定めています。

これは翌年以降の税を売主が立て替えた形で、譲渡対価の一部ではありません。売主は不課税の受取、買主は不課税の支払として処理します。引渡し年の未経過分(課税・非課税)と、名義変更漏れによる翌年分(不課税)を混ぜないようにします。

固定資産税の「納付」と「精算金」|消費税の区分と科目の違い

市区町村へ納付する固定資産税
相手
市区町村(1月1日の所有者に課税)
消費税区分
不課税(対象外)
勘定科目
租税公課
インボイス
不要(納付書・領収証書で足りる)
課税売上割合
影響なし
売買時に売主へ渡す固定資産税精算金
相手
売主(当事者間の負担調整)
消費税区分
建物分=課税10%・土地分=非課税
勘定科目
買主=土地・建物(取得価額)/売主=売却収入
インボイス
建物分の控除に売主の適格請求書が要る
課税売上割合
売主は土地分が分母に入る

図:同じ「固定資産税」の名前でも、払う相手が役所か売主かで消費税・科目・インボイスの扱いが全部変わる。

固定資産税の精算金の仕訳例4本|納付・買主・売主・名義変更漏れ

仕訳は税抜経理・原則課税を前提にします。納付の仕訳は租税公課の1本で終わり、精算金は土地と建物に分けて税区分を付けます。科目より税区分の付け方が消費税の申告額を決めます。一括払い・分割払い・発生主義の納付パターンと家事按分は固定資産税の勘定科目と仕訳3パターンで扱っているので、ここでは消費税に関わる仕訳に絞ります。

仕訳例1(納付)|固定資産税・都市計画税300,000円を口座振替で納付した

借方金額(円)貸方金額(円)税区分
租税公課300,000普通預金300,000対象外

仮払消費税は立てません。延滞金が付いた場合も税区分は対象外のままで、科目は損金不算入の区別のために分けます。

買主が精算金157,281円(土地90,739円・建物60,493円・建物分の消費税6,049円)を売主へ振り込んだ

借方

土地 90,739

建物 60,493

仮払消費税 6,049

貸方

普通預金 157,281

図:精算金は租税公課にしない。土地・建物の取得価額に分けて入れ、建物分だけ仮払消費税を立てる。

仕訳例2(買主)|精算金157,281円(土地90,739円・建物60,493円・消費税6,049円)を売主へ振り込んだ

借方金額(円)貸方金額(円)税区分
土地90,739普通預金157,281非課税仕入
建物60,493課税仕入 10%
仮払消費税6,049

建物分の仮払消費税6,049円は、売主の適格請求書(または売買契約書と領収書で記載事項がそろうもの)を保存して仕入税額控除します。土地分は非課税仕入れなので控除の対象になりません。取得価額に入れた精算金は、建物分が減価償却を通じて費用になり、土地分は売却まで費用になりません。

税込経理の場合は、建物66,542円(60,493円+6,049円)・土地90,739円で計上します。

仕訳例3(売主)|精算金157,281円が入金された(精算金部分だけを抜き出した仕訳)

借方金額(円)貸方金額(円)税区分
普通預金157,281固定資産売却益(土地分)90,739非課税売上
固定資産売却益(建物分)60,493課税売上 10%
仮受消費税6,049

実際には売買代金本体と一緒に売却損益を計算するので、精算金は本体の対価に上乗せして仕訳します。建物の売却本体の仕訳と売却損益の出し方は固定資産売却益の勘定科目と仕訳で扱っているので、そちらを参照してください。売主が受け取った土地分90,739円は非課税売上として課税売上割合の分母に入り、建物分60,493円は分母と分子の両方に入ります。

売主が納めた年税額300,000円は、仕訳例1のとおり全額が租税公課のままです。受け取った精算金で租税公課を減らす処理は不要です。

仕訳例4(名義変更漏れ)|翌年の固定資産税120,000円が売主に課され、売主が納付したうえで買主から同額を受け取った

立場借方金額(円)貸方金額(円)税区分
売主(納付時)立替金120,000普通預金120,000対象外
売主(受取時)普通預金120,000立替金120,000対象外
買主(支払時)租税公課120,000普通預金120,000対象外

通達10-1-6の注のとおり、この受取は譲渡対価に当たりません。売主は課税売上にせず、買主は仕入税額控除もしません。買主側は自分が負担すべき年度の税なので、租税公課で経費にできます。

精算金の課税方式別の扱いとインボイス|原則課税・簡易課税・2割特例・免税事業者

精算金の建物分は、売主が課税事業者なら課税売上、買主が原則課税なら課税仕入れになります。どちらか一方が免税事業者や簡易課税だと、処理が片側だけ変わります。

固定資産税精算金(建物分)の課税方式別の扱い(2026年9月時点)

立場 × 課税方式精算金 建物分の扱い精算金 土地分の扱い注意点
売主・原則課税課税売上10%(仮受消費税を計上)非課税売上(分母に算入)建物分に登録番号・税率・税額を記載した適格請求書を交付
売主・簡易課税課税売上10%。事業区分は第4種(自己が使用していた固定資産の譲渡・No.6509)非課税売上みなし仕入率60%で納付税額を計算。買主への適格請求書は同じく必要
売主・2割特例課税売上10%。納付税額は売上税額の2割非課税売上2割特例は令和8年9月30日までの日の属する課税期間まで(No.6498)。個人事業者は2026年分まで使える
売主・免税事業者課税取引だが売主に納税義務なし。適格請求書は交付できない非課税買主側は経過措置で80%→70%控除(下記)
買主・原則課税課税仕入10%(適格請求書の保存で控除)非課税仕入(控除なし)居住用賃貸建物(税抜1,000万円以上)は控除の対象外(消費税法30条10項)
買主・簡易課税/2割特例課税仕入だが個別の控除計算をしない非課税仕入帳簿の税区分は「課税仕入」で記録しておく(方式変更時に備える)
買主・免税事業者控除なし。税込額をそのまま取得価額に取得価額に償却資産の申告も税込額で行う(横浜市 償却資産Q&A Q3)

免税事業者の売主から買った場合|80%控除は2026年9月30日まで

売主が免税事業者(登録番号のない個人など)だと、買主は適格請求書を受け取れません。この場合、買主は帳簿と区分記載請求書の保存を条件に、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置を使います。国税庁 No.6498(令和8年4月1日現在法令等)は、令和5年10月1日から令和13年9月30日までの期間について、80%から7割・5割・3割へ段階的に下がる割合を定めています。

境目は2026年(令和8年)9月30日です。9月30日までの課税仕入れは80%、10月1日以後の課税仕入れは70%になります(令和8年度税制改正で2年延長・割合見直し)。建物の引渡し日が10月1日以後なら、精算金の建物分の控除も70%です。仕訳例2の6,049円で言えば、控除できるのは4,839円(80%)か4,234円(70%)になり、残りは建物の取得価額に上乗せする形です。

インボイスに何を書くか|精算金を含めた建物対価に税率と税額を記載

売主が適格請求書発行事業者なら、精算金の建物分を含めた建物の譲渡対価に、登録番号・税率・消費税額を記載した書類を買主へ渡します。売買契約書と領収書を合わせて記載事項がそろっていれば、それが適格請求書になります。

精算金だけを別紙で精算する場合も、建物分には「10%対象 60,493円・消費税 6,049円」、土地分には「非課税 90,739円」と分けて書くのが基本です。土地分に税率や税額を書かないこと、建物分の消費税額を売買本体の税額と合算して記載することが、買主側の控除計算を楽にします。役所へ納める固定資産税の納付書には、当然ながら登録番号も税額も付きません。

償却資産税の申告と消費税|取得価額は経理方式で決まる

償却資産の申告書に書く取得価額は、税込経理なら税込、税抜経理なら税抜です。横浜市の「固定資産税(償却資産)に関するよくある御質問」Q3は、「税込経理を採用している場合は、消費税を含めた取得価額で申告」「税抜経理を採用している場合は消費税を含めずに申告」と答えています。免税事業者は税抜経理をしていても税込で申告します。

国税庁 No.5403(令和7年4月1日現在法令等)も、少額の減価償却資産の判定について「法人が適用している消費税等の経理処理方式に応じて算定した価額により判定する」と書いていて、考え方は共通です。

差は税額に出ます。税抜1,000万円の機械なら、税込経理では1,100万円で申告するため、課税標準の差は100万円です。償却資産の税率は1.4%なので、初年度の差は最大で年14,000円(評価額は年々下がるため、実際の差はこれより小さくなります)。会計ソフトの経理方式を年の途中で変えると、申告書の取得価額と帳簿が食い違うので、方式の変更は期首に合わせます。

税込経理で申告した償却資産税を納付するときの消費税区分は、もちろん不課税です。申告の元になる取得価額に消費税が入っているかどうかと、納める税金の区分は別の話になります。

よくある質問

固定資産税と消費税で実際によく検索される6問です。

Q1:固定資産税に消費税はかかりますか?

かかりません。固定資産税の納付は不課税で、消費税の課税対象に入りません。消費税法4条1項が課税対象とするのは「事業者が行つた資産の譲渡等」で、2条1項8号はそれを「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」と定義しています。税金の納付は反対給付のない支払いで、この定義から外れます(通達5-1-2)。会計ソフトでは「対象外」を選びます。

Q2:固定資産税の消費税区分は非課税ですか、不課税ですか?

不課税です。非課税は土地の譲渡や利子のように、対価を得る取引を政策的に課税しないものを指します。不課税はそもそも対価を得る取引に当たらないものです(国税庁 No.6209)。固定資産税を非課税で登録しても支払側の申告額は変わりませんが、売主として精算金を受け取る場面では、土地分(非課税売上)と税金(不課税)の区別が課税売上割合に響きます。

Q3:建物に消費税を払ったのに固定資産税もかかるのは二重課税ではありませんか?

二重課税ではありません。消費税は「建物を買う」という取引に1回だけかかる税で、固定資産税は「1月1日に所有している」という状態に毎年かかる税です。課税の根拠になる事実が違うため、同じ建物に両方がかかっても、それぞれ別の事実への課税です。固定資産税の額は固定資産税評価額で決まり、購入時に払った消費税は計算に入りません。

Q4:不動産を買ったときの固定資産税精算金に消費税はかかりますか?

建物分にはかかり、土地分にはかかりません。国税庁の質疑応答事例「未経過固定資産税等の取扱い」は、精算金を「私人間で行う利益調整のための金銭の授受」で「不動産の譲渡対価の一部」としています(通達10-1-6)。売買代金と同じ区分になるため、建物分は課税10%、土地分は非課税です。買主は租税公課ではなく土地・建物の取得価額に含めます。

Q5:固定資産税精算金の建物分を仕入税額控除するのにインボイスは必要ですか?

必要です。精算金の建物分は課税仕入れなので、原則課税の買主が控除するには売主の適格請求書(登録番号・税率・税額の記載があるもの)の保存が要ります。売買契約書と領収書で記載事項がそろえば、それで足ります。売主が免税事業者で適格請求書を受け取れない場合は、2026年9月30日までの仕入れは80%、10月1日以後は70%を控除する経過措置を使います(No.6498)。

Q6:償却資産の申告書に書く取得価額は消費税込みですか?

経理方式で決まります。税込経理なら消費税込み、税抜経理なら消費税抜きの金額で申告します。免税事業者は税抜経理をしていても税込で申告します(横浜市 償却資産Q&A Q3)。国税の少額減価償却資産の判定も同じ考え方です(国税庁 No.5403)。申告した償却資産税を納めるときの消費税区分は不課税です。

まとめ

固定資産税の消費税区分を1枚に整理します。

この記事のまとめ

  • 固定資産税・都市計画税・償却資産税の納付は不課税。反対給付のない支払いで課税対象に入らない(消費税法2条1項8号・4条1項、通達5-1-2、No.6209)
  • 「非課税」ではなく「不課税」で登録する。非課税は課税売上割合の分母に入り、不課税は分母にも分子にも入らない
  • 延滞金・督促手数料も不課税(地方税法1条1項14号)。証明書の発行手数料は非課税(No.6201(7))、税理士報酬は課税
  • 建物の消費税と固定資産税は二重課税ではない。「取引」と「保有」という別の事実に課税している
  • 売買時の精算金は譲渡対価の一部。建物分は課税10%・土地分は非課税(質疑応答事例、通達10-1-6)。名義変更漏れで売主に課された税の受取は不課税(10-1-6注)
  • 免税事業者の売主から買った建物分の精算金は、2026年9月30日までは80%・10月1日以後は70%の控除(No.6498)。居住用賃貸建物は控除の対象外(消費税法30条10項)
  • 償却資産の申告書の取得価額は税込経理なら税込・税抜経理なら税抜(横浜市 償却資産Q&A Q3、No.5403)

固定資産税の消費税 早見表(2026年9月時点)

場面消費税区分適格請求書会計ソフトの税区分
固定資産税・都市計画税・償却資産税の納付不課税不要対象外
延滞金・督促手数料・還付金不課税不要対象外
評価証明書・納税証明書の手数料非課税不要非課税仕入
精算金の建物分(買主)課税10%必要(免税事業者の売主なら経過措置80%→70%)課税仕入 10%
精算金の土地分(買主)非課税不要非課税仕入
精算金の建物分(売主)課税10%交付する課税売上 10%
精算金の土地分(売主)非課税不要非課税売上
名義変更漏れで売主に課された税の精算不課税不要対象外
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免責事項

※本記事は消費税・地方税の一般的な取扱いを国税庁・e-Gov法令検索・自治体の公開情報(2026年9月時点)に基づいて整理したものです。精算金の区分や按分は売買契約書の内容により異なります。最新の法令をご確認のうえ、必要に応じて顧問税理士など有資格者へご相談ください。


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この記事を書いた人

会計事務所で10年以上、法人や個人事業主の帳簿づけと税務申告の手伝いをしてきたTanakaです。決算が近づくと、経営者から「この支払いはどの科目で処理すればいいですか」という電話を何度も受けました。答えは業種や会社の規模で変わります。そこを一つずつ、相手に合わせて説明してきました。

独立してからは、中小企業の経理担当者向けの研修や、freee・マネーフォワード・弥生の科目設定の相談にも応じています。教科書の説明は抽象的で、現場では「とりあえず雑費」で片づけてしまうことも少なくありません。このサイトでは、勘定科目の選び方の判断軸を、具体例をそえて整理しています。最終的な税務判断は、顧問税理士にご相談ください。

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