リバースチャージ方式とは、国外事業者から受けた「事業者向け電気通信利用役務の提供」(Web広告の配信など)の消費税を、売手でなく買手の国内事業者が申告・納税する仕組みです。ただし一般課税で課税売上割合95%以上・簡易課税・2割特例の課税期間は、当分の間その取引は「なかったもの」とされ、申告も仕入税額控除も要りません(国税庁 No.6118)。
この記事でわかること
- リバースチャージ方式の対象になる「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「特定役務の提供」の範囲を、消費税法2条と通達5-8-3・5-8-4の本文で確認
- Google広告・海外SaaS・AWS・アプリストア・海外コンサルなど取引の型別16行の早見表(リバースチャージ/国外事業者が申告/プラットフォーム課税/国外取引)
- 課税売上割合95%以上・簡易課税・2割特例なら申告不要になる経過措置の根拠と、控除だけを取れない理由
- 課税売上割合95%未満の事業者向けに、仕訳3パターン(なかったもの・一括比例配分・個別対応)と付表2-3の⑬⑭欄の書き方
- インボイス後の消費者向け役務の扱い(登録番号T+13桁で判定・80%経過措置は使えない・少額特例は使える)と、2025年4月からのプラットフォーム課税との境界
公的情報源: 国税庁タックスアンサー No.6118「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係」(参照)/国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A」令和8年6月改訂(参照)/消費税法基本通達 第5章第8節「特定資産の譲渡等」5-8-1〜5-8-6(参照)/No.6568「プラットフォーム課税」(参照)
先に答え
リバースチャージ方式で申告が要るのは、一般課税で課税売上割合が95%未満の課税期間に、国外事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供や特定役務の提供を受けた場合だけです。国外法人からWeb広告を直接買っている会社は、まず自社の課税売上割合を確認します。
課税売上割合が95%以上、または簡易課税・2割特例の課税期間なら、その取引は「なかったもの」として扱います。帳簿では税区分を「対象外(不課税)」にして費用計上するだけで、仕入税額控除も取りません。
この記事の要点
- 対象は国外事業者から受ける「事業者向け電気通信利用役務の提供」(消法2条1項8の4)と「特定役務の提供」(同8の5)。国内法人からのSaaSや広告は通常の課税仕入れ
- 買手が支払対価の額をそのまま課税標準にして10%を申告し、同じ金額を仕入税額控除する(Q&A問5・問16)。110分の100の税抜計算はしない
- 一般課税で課税売上割合95%以上・簡易課税・2割特例(個人は令和9・10年の3割特例も)の課税期間は当分の間「なかったもの」=申告不要・控除も不可(27年改正法附則42・44②)
- Webから消費者も申し込める海外SaaSや電子書籍は「消費者向け」=国外事業者が申告。買手は相手の登録番号(T+13桁)があれば控除、なければ控除不可で80%経過措置も使えない
- 2025年4月からアプリストア経由の消費者向け役務は特定プラットフォーム事業者が納税。事業者向け役務は従来どおりリバースチャージ
リバースチャージ方式とは|国外事業者からの「事業者向け電気通信利用役務」を買手が申告する仕組み
リバースチャージ方式とは、国外事業者から受けた特定の役務について、買手の国内事業者が消費税を申告・納税する課税方式です。消費税は本来、売った側が申告します(消法5条1項)。国外事業者に日本の申告を求めても実効性が乏しいため、2015年10月1日から納税義務を買手側へ反転(リバース)させました。
対象は、国外事業者が行う「事業者向け電気通信利用役務の提供」(2015年10月1日〜)と、国外事業者が国内で行う「特定役務の提供」(芸能・スポーツ等・2016年4月1日〜)の2つです(国税庁 No.6118)。あわせて「特定課税仕入れ」と呼びます(消法4条1項)。
国外事業者から受けた役務がリバースチャージ方式の対象になるかの判定フロー
- 請求書の発行元と契約の形を上から順に確認する
- STEP1請求元は国外事業者か(非居住者の個人・外国法人)日本法人からの請求なら通常の課税仕入れ10%。国内支店のある外国法人は国外事業者(Q&A問6)
- STEP2インターネット経由の役務(電気通信利用役務の提供)か広告配信・SaaS・クラウド・配信は該当。受託開発の納品や対面のコンサルは該当しない(通達5-8-3)
- STEP3受ける側が通常事業者に限られる役務かWeb広告や個別契約のクラウドは事業者向け=リバースチャージ。消費者も申し込める配信・SaaSは消費者向け=国外事業者が申告(通達5-8-4)
- STEP4自社は一般課税で課税売上割合95%未満かYesなら申告と控除。95%以上・簡易課税・2割特例なら「なかったもの」(附則42・44②)
図:国外事業者→電気通信利用役務→事業者向け→課税売上割合95%未満、の4段を全部通ったときだけ申告が要る。
電気通信利用役務の提供の範囲|通達5-8-3の6例と該当しない2例
「電気通信利用役務の提供」は、電気通信回線を介して行われる著作物の提供その他の役務の提供で、他の資産の譲渡等に付随して行われるものを除いたものです(消法2条1項8の3)。消費税法基本通達5-8-3 は、該当する例として次の6つを挙げています。
- インターネットを介した電子書籍の配信
- インターネットを介して音楽・映像を視聴させる役務の提供
- インターネットを介してソフトウエアを利用させる役務の提供
- ウエブサイト上に他の事業者等の商品販売の場所を提供する役務の提供
- ウエブサイト上に広告を掲載する役務の提供
- 電話、電子メールによる継続的なコンサルティング
同じ通達の注書きは、該当しない例も示しています。国外資産の運用状況をメールで報告するものや、国外でソフトウエアを開発して完成品をインターネットで送信するものは、他の役務に付随する通知にすぎず対象外です。受託開発の納品は国外取引として不課税で、リバースチャージには入りません。
事業者向けか消費者向けかは「受ける側が通常事業者に限られるか」で決まる
「事業者向け電気通信利用役務の提供」とは、国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、役務の性質または取引条件等から、受ける者が通常事業者に限られるものです(消法2条1項8の4)。通達5-8-4 は判定の型を2つ示しています。
- 役務の性質から明らか: ウエブサイト上への広告の掲載のように、通常事業者向けであることが客観的に明らかなもの
- 取引条件から明らか: 事業者ごとに個別に取引内容を取り決めた契約に基づき、契約上その事業者が事業として利用することが明らかなもの
反対に、電子書籍・音楽の配信や各種ソフトウエア・ゲームの利用のように消費者にも広く提供される役務は、規約に「事業者のみ対象」と書いてあっても、消費者からの申込みを事実上制限できないなら事業者向けに該当しません(通達5-8-4 注)。この場合は「消費者向け電気通信利用役務の提供」となり、国外事業者側が申告・納税します。
国税庁Q&A問4 は、クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービスを消費者向けの例に挙げつつ、利用範囲・人数を個別に交渉して固有の契約を結ぶものは事業者向けになると補足しています。同じSaaSでも、Webの標準プランなら消費者向け、個別契約なら事業者向けに分かれます。
特定役務の提供|国外の芸能人・スポーツ選手を事業者が呼ぶ場合
「特定役務の提供」は、国外事業者が行う演劇その他の政令で定める役務の提供で、電気通信利用役務の提供に該当しないものです(消法2条1項8の5)。国税庁 No.6405 は、俳優・音楽家その他の芸能人、職業運動家の役務の提供を主たる内容とする事業として、国外事業者が他の事業者に対して行うものと説明しています。
不特定多数に対して行うものは除かれます。国外の音楽家が自ら国内で演奏会を主催する場合は、観客に事業者が混ざっていても特定役務にあたりません(通達5-8-6)。国内の興行会社が国外のアーティストに払う出演料が典型例です。
国外事業者の意味|国内に支店がある外国法人も含む
国外事業者とは、所得税法の非居住者である個人事業者と、法人税法の外国法人をいいます(消法2条1項4の2)。国税庁Q&A問6 は、国内に支店等を有する外国法人も国外事業者に該当すると明記しています。日本支店から請求が来ても、契約相手が外国法人なら判定は変わりません。
一方、外国企業の日本法人(日本で設立した子会社)は内国法人なので国外事業者ではありません。日本法人から受ける広告やSaaSは通常の課税仕入れで、インボイスで控除します。内外判定の原則は国税庁 No.6210「国外取引」のとおりです。
リバースチャージ方式の対象になる取引・ならない取引 早見表
リバースチャージ方式の判定は、サービス名でなく「誰から・どんな契約で」買っているかで決まります。同じ会社のサービスでも、請求元が国外法人か日本法人か、Webの標準プランか個別契約かで4通りに分かれます。
取引の型別 リバースチャージ方式の対象・対象外の早見表(買手が国内の課税事業者の場合・2026年9月時点)
| 取引の型(例) | 課税方式 | 買手の処理 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 国外法人から直接買うWeb広告の配信(検索広告・SNS広告) | リバースチャージ | 課税売上割合95%未満なら申告+控除。95%以上なら対象外 | 通達5-8-4(1)・No.6118 |
| 同じ広告を日本法人(国内の子会社・代理店)と契約して買う | 通常の課税仕入れ10% | 適格請求書で控除 | Q&A問6・No.6210 |
| 海外SaaSのエンタープライズ契約(利用人数・範囲を個別交渉) | リバースチャージ | 同上(95%未満なら申告+控除) | 通達5-8-4(2)・Q&A問4 |
| 海外SaaSのWeb標準プラン(会議ツール・チャット・デザインソフト等) | 国外事業者が申告(消費者向け) | 相手の登録番号があれば適格請求書で控除。無ければ控除不可 | 通達5-8-4注・Q&A問29 |
| 海外クラウドサーバー・ストレージをWebで申込 | 国外事業者が申告(消費者向け) | 同上 | Q&A問4 |
| 海外レンタルサーバー・ドメイン登録をWebで申込 | 国外事業者が申告(消費者向け) | 同上 | 通達5-8-3(3)・5-8-4注 |
| 電子書籍・音楽・動画の配信(国外事業者・Web申込) | 国外事業者が申告(消費者向け) | 同上 | Q&A問4 |
| アプリストア経由で買う国外事業者のアプリ・アプリ内課金(2025年4月1日〜) | プラットフォーム課税 | 特定プラットフォーム事業者の適格請求書で控除 | No.6568・Q&A問29 |
| 海外ECモールの出店手数料・商品掲載料 | 国外事業者が申告(消費者向け) | 相手の登録番号で判定 | Q&A問4 |
| 海外プラットフォームでゲーム・ソフトを販売する場所の提供を受ける | リバースチャージ | 95%未満なら申告+控除 | Q&A問3-1① |
| 国外の事業者からメール・電話で受ける継続的コンサルティング(個別契約) | リバースチャージ | 同上 | 通達5-8-3(6)・5-8-4(2) |
| 国外のコンサルタントが来日して対面で行う助言 | 電気通信利用役務でない。役務提供地が国内なら国外事業者の課税売上 | 相手の登録番号で判定 | No.6210 |
| 国外でソフトウエアを受託開発し完成品をネットで納品 | 国外取引(不課税) | 控除なし。税区分は対象外 | 通達5-8-3注2 |
| 国外の芸能人・スポーツ選手を国内の事業者が招いて払う出演料 | リバースチャージ(特定役務) | 95%未満なら申告+控除 | 消法2条1項8の5・No.6405 |
| 国外の音楽家が自ら主催する国内公演のチケット | 特定役務でない | 通常の課税仕入れ。相手の登録番号で判定 | 通達5-8-6 |
| 国内事業者から受けるSaaS・広告・クラウド | 通常の課税仕入れ10% | 適格請求書で控除 | 消法5条1項 |
請求書の「リバースチャージ方式の対象」表示で見分ける
事業者向け電気通信利用役務の提供を行う国外事業者には、受ける事業者が納税義務者になる旨を表示する義務があります(消法62条・通達5-8-2)。国外の広告事業者の請求書や規約に「リバースチャージ方式の対象」と注記があるのはこのためです。
ただし表示が無くても納税義務は消えません。通達5-8-2 の注は、表示義務の履行の有無は受ける側の納税義務に影響しないと定めています。請求元の法人名と契約の形で判定するのが確実です。
広告宣伝費・通信費など科目はいつもどおり
リバースチャージの対象でも、勘定科目は取引の内容で選びます。変わるのは税区分だけです。科目の使い分けは広告宣伝費の勘定科目と仕訳、サブスクの勘定科目・仕訳、サーバー代・ドメイン代の仕訳で整理しています。
課税売上割合95%以上・簡易課税・2割特例なら「なかったもの」|リバースチャージ方式の経過措置
リバースチャージ方式で実際に申告する事業者は、一般課税で、その課税期間の課税売上割合が95%未満の事業者だけです。所得税法等の一部を改正する法律(平成27年法律第9号)附則42条と44条2項により、次の課税期間は「当分の間」特定課税仕入れがなかったものとして消費税法が適用されます(通達5-8-1 注)。
課税方式別 リバースチャージ方式の申告要否と仕入税額控除(2026年9月時点)
| 自社の課税方式(その課税期間) | 特定課税仕入れの扱い | 申告(課税標準に含める) | 仕入税額控除 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 一般課税・課税売上割合95%未満 | あったもの | 必要。支払対価の額×10% | できる(個別対応または一括比例配分で計算) | 消法5①・28②・30①、Q&A問5 |
| 一般課税・課税売上割合95%以上 | なかったもの | 不要 | できない | 27年改正法附則42、Q&A問24 |
| 簡易課税 | なかったもの | 不要 | できない(みなし仕入率の計算にも入れない) | 27年改正法附則44②、Q&A問25 |
| 2割特例(2026年9月30日の属する課税期間まで) | なかったもの | 不要 | できない | 28年改正法附則51の2④、No.6118 |
| 3割特例(個人事業者・令和9年・令和10年) | なかったもの | 不要 | できない | 28年改正法附則51の3④、Q&A問25 |
| 免税事業者 | 納税義務なし | 不要 | — | 消法9①、Q&A問26 |
95%以上でも「控除だけ取る」ことはできない
課税売上割合が95%以上の課税期間では、申告が不要になるだけでなく仕入税額控除もできません。国税庁Q&A問24 は「特定課税仕入れに係る消費税額について、仕入税額控除を行うことはできません」と明言し、No.6118 の注3も「仕入税額控除のみを行うこともできません」としています。
「なかったもの」とされる以上、課税標準にも課税仕入れにも入らないからです。帳簿では税区分を「対象外」にして支払額をそのまま費用計上します。「課税仕入10%」を選ぶと仮払消費税が立って控除が過大になります。
課税売上割合に準ずる割合では逃げられない
承認を受けた「課税売上割合に準ずる割合」が95%以上でも、実際の課税売上割合が95%未満なら経過措置は使えません。国税庁Q&A問22 は、準ずる割合が95%以上でも課税売上割合が95%未満なら特定課税仕入れの申告が要るとしています。
課税売上割合の分母・分子には、特定課税仕入れの金額を入れません(Q&A問28)。自社が売る側として行う「特定資産の譲渡等」も除いて計算します(No.6405)。分母に不課税の受取額を入れない点はキャンセル料・違約金の消費税区分と同じ考え方です。
相手が免税事業者でも、自社が免税事業者でも
売手の国外事業者が課税事業者かどうかは関係ありません。通達5-8-1 は、国外事業者が課税事業者であるかどうかにかかわらず、受けた側が納税義務者になると定めています(Q&A問23)。
逆に自社が免税事業者なら、消費税の申告そのものが要りません(Q&A問26)。2割特例が切れて一般課税に移った年に課税売上割合が95%未満なら、その年から申告対象に入ります。判定は課税期間ごとにやり直すため、毎期の決算で確認します。
リバースチャージ方式の仕訳3パターン|95%以上・一括比例配分・個別対応
仕訳は税抜経理を前提に、国外法人から広告配信を200,000円で受けた場合で示します。特定課税仕入れの課税標準は支払対価の額そのもの(200,000円)で、消費税額は10%の20,000円です(Q&A問16)。支払額に消費税は含まれていないので、110分の100を掛けて税抜きにする処理はしません。
国外法人のWeb広告200,000円(課税売上割合80%・一括比例配分方式)の仕訳
借方
広告宣伝費 200,000
仮払消費税 20,000
貸方
普通預金 200,000
仮受消費税 20,000
図:支払額200,000円に対して、納税側の仮受消費税20,000円と控除側の仮払消費税20,000円を同時に立てる。控除できるのは仮払のうち80%=16,000円。
仕訳パターン1|一般課税で課税売上割合95%以上・簡易課税・2割特例(なかったもの)
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 広告宣伝費 | 200,000 | 普通預金 | 200,000 | 対象外(不課税) |
特定課税仕入れはなかったものとされるため、仮払消費税も仮受消費税も立てず、申告書にも載せません。税区分は「対象外」を選びます。
仕訳パターン2|一般課税で課税売上割合80%・一括比例配分方式
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 広告宣伝費 | 200,000 | 普通預金 | 200,000 | 特定課税仕入 10% |
| 仮払消費税 | 20,000 | 仮受消費税 | 20,000 |
納税側の仮受消費税20,000円は全額が納付に回ります。控除側の仮払消費税20,000円のうち控除できるのは課税売上割合80%分の16,000円で、差額4,000円が控除対象外消費税として決算で費用に振り替わります。国税庁Q&Aの計算イメージ(課税売上割合80%・一括比例配分)と同じ構造です。
仕訳パターン3|一般課税で課税売上割合80%・個別対応方式
| 用途区分 | 控除できる仮払消費税 | 控除対象外 | 納付への影響 |
|---|---|---|---|
| 課税売上にのみ要する(自社の課税商品の広告) | 20,000円の全額 | 0円 | 仮受20,000−仮払20,000=0円 |
| 課税・非課税に共通して要する(会社全体のブランド広告) | 20,000円×80%=16,000円 | 4,000円 | 4,000円の納付増 |
| 非課税売上にのみ要する(住宅賃貸の入居者募集広告) | 0円 | 20,000円 | 20,000円の納付増 |
個別対応方式では、特定課税仕入れも他の課税仕入れと同じ3区分に振り分けます。3区分の考え方は課税仕入れの勘定科目と消費税区分、仮払・仮受の科目と決算の振替は消費税の勘定科目は方式で違うで扱っています。
リバースチャージ方式の申告書の書き方|付表2-3の⑬⑭欄と帳簿の記載事項
申告書では、特定課税仕入れを課税標準(納税側)と課税仕入れ(控除側)の両方に書きます。一般用の申告書を作る事業者が使う付表2-3「課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表」には特定課税仕入れの専用欄があり、記載要領は「⑬及び⑭欄は、課税売上割合が95%未満、かつ、特定課税仕入れがある事業者のみ記載します」と定めています。
特定課税仕入れの申告書・付表の記載箇所(一般用・2026年9月時点)
| 書類 | 書く内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 申告書第二表(課税標準額の内訳) | 特定課税仕入れに係る支払対価の額を課税標準に含める | 税抜計算せず支払額のまま(消法28②) |
| 付表2-3 ⑬欄 | 特定課税仕入れに係る支払対価の額 | 値引き等があれば控除後の金額 |
| 付表2-3 ⑭欄 | 特定課税仕入れに係る消費税額(⑬×7.8%) | 地方消費税分は申告書側で計算 |
| 付表2-3 の控除対象仕入税額 | ⑭を他の課税仕入れの税額と合算し、個別対応または一括比例配分で計算 | 課税売上割合はここでも実割合を使う |
帳簿に「特定」と付記すればインボイスは要らない
特定課税仕入れの仕入税額控除には、適格請求書の保存は不要です。消費税法30条7項により、法定事項を記載した帳簿のみの保存で控除できます(Q&A問27)。帳簿の記載事項は同条8項2号の5つです。
- 特定課税仕入れの相手方の氏名または名称
- 特定課税仕入れを行った年月日
- 特定課税仕入れの内容
- 特定課税仕入れに係る支払対価の額
- 特定課税仕入れに係るものである旨
最後の「旨」は、帳簿の摘要欄に「特定」と付記する程度で足ります(Q&A問27)。会計ソフトで「特定課税仕入」の税区分を選んでおけば、この要件は自動で満たせます。税区分の設定手順は弥生会計の消費税仕訳と課税区分の設定で確認できます。
インボイス後のリバースチャージ方式|登録国外事業者制度は2023年9月30日で終了
インボイス制度が始まっても、事業者向け役務のリバースチャージ方式は変わっていません。変わったのは消費者向け電気通信利用役務の提供を受けたときの控除要件です。2015年10月から2023年9月30日まで続いた登録国外事業者制度は廃止され、適格請求書発行事業者の登録番号で判定する仕組みへ移りました(No.6118)。
国外事業者から受けた電気通信利用役務 事業者向けと消費者向けの控除要件(インボイス後)
- 納税する人
- 買手の国内事業者
- 控除に要る書類
- 帳簿のみ(「特定」と付記)
- 相手の登録番号
- 不要
- 95%以上・簡易・2割特例
- なかったもの=申告も控除も無し
- 納税する人
- 国外事業者(PF経由は特定PF事業者)
- 控除に要る書類
- 帳簿+相手の適格請求書
- 相手の登録番号
- 必要(T+13桁)。無ければ控除不可
- 80%・70%の経過措置
- 使えない。少額特例(税込1万円未満)は使える
図:事業者向けは自分で納めて帳簿だけで控除、消費者向けは相手の登録番号が無いと控除できない。
消費者向け役務は登録番号の有無で控除が決まる
Webから申し込む海外SaaS・クラウド・配信サービスは消費者向け役務です。国税庁Q&A問29 によると、控除には帳簿と、売手の国外事業者が交付した適格請求書(電子データを含む)の保存が要ります。請求書やアカウント画面の領収書にT+13桁の登録番号があれば控除、無ければ控除できません。
登録の有無は、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで登録番号を入力して確認できます。2023年9月1日時点の登録国外事業者で取消しの届出をしていない者は、2023年10月1日に登録を受けたものとみなされています(No.6118)。各社の請求書の記載(登録番号の有無)で判定します。
80%・70%の経過措置は使えない・少額特例は使える
登録番号の無い国内の免税事業者からの仕入れには、2026年9月30日まで80%・同年10月1日から70%を控除できる経過措置があります。ところが国外事業者からの消費者向け役務には、この経過措置が適用されません(平成30年改正令附則24・Q&A問29)。登録番号が無い海外サービスは、控除ゼロで全額を費用にします。
一方、少額特例は使えます。基準期間の課税売上高1億円以下などの事業者は、2029年9月30日までの税込1万円未満の課税仕入れを帳簿のみで控除できます(Q&A問29・No.6496)。月額数千円の海外ツールは、登録番号が無くてもこの特例に乗ることがあります。経過措置の切り替え手順は2026年10月1日のインボイス経過措置の切り替えにまとめています。
プラットフォーム課税(2025年4月〜)とリバースチャージ方式の境界
2025年4月1日以後、国外事業者がアプリストアなどのデジタルプラットフォームを介して行う消費者向け電気通信利用役務の提供のうち、特定プラットフォーム事業者を通じて対価を受け取るものは、その特定プラットフォーム事業者が役務を提供したものとみなして申告・納税します(消法15条の2・No.6568)。事業者向け役務は対象から除かれており、従来どおり買手のリバースチャージです。
国外事業者からの電気通信利用役務 3つの課税方式の比較(2026年9月時点)
| 比較項目 | リバースチャージ方式 | 国外事業者申告納税方式 | プラットフォーム課税 |
|---|---|---|---|
| 対象 | 事業者向け電気通信利用役務・特定役務 | 消費者向け電気通信利用役務(PF経由でないもの) | PF経由の消費者向け電気通信利用役務(2025年4月1日〜) |
| 納税する人 | 買手の国内事業者 | 国外事業者 | 特定プラットフォーム事業者 |
| 買手が控除に使う書類 | 帳簿のみ | 国外事業者の適格請求書 | 特定PF事業者の適格請求書 |
| 課税売上割合95%以上の扱い | なかったもの(申告・控除なし) | 通常の課税仕入れとして控除 | 通常の課税仕入れとして控除 |
| 根拠 | 消法5①・27年改正法附則42 | 消法5①・30⑦ | 消法15の2・令6改正法附則13 |
特定プラットフォーム事業者に指定されると、国税庁がプラットフォームの名称・事業者名・効力発生日を公表します(No.6568)。国内事業者が出品する場合や、プラットフォームを介さず直接販売する場合は対象外です。
買手にとっての違いは、控除に使う適格請求書の発行元です。アプリストア経由の領収書には特定プラットフォーム事業者の登録番号が載ります。事業者向けの個別契約は今までどおり自社で申告します。
よくある質問
リバースチャージ方式で実際によく検索される6問です。
Q1:リバースチャージ方式とは何ですか?わかりやすく教えてください
国外事業者から受けた「事業者向け電気通信利用役務の提供」(Web広告の配信など)と「特定役務の提供」(芸能・スポーツ)について、買手の国内事業者が消費税を申告・納税する仕組みです。輸入貨物の消費税を輸入者が納めるのと同じ考え方で、納税と仕入税額控除を同じ申告で行います(国税庁Q&A問5)。一般課税で課税売上割合95%未満の事業者だけが対象です。
Q2:Google広告の消費税はリバースチャージ方式ですか?インボイスはどうなりますか?
契約相手が国外法人で、事業者向けの広告配信なら、リバースチャージ方式の対象です(通達5-8-4(1))。課税売上割合95%以上・簡易課税・2割特例の課税期間なら「なかったもの」で、税区分は対象外です。95%未満なら支払額を課税標準に含めて申告し、帳簿に「特定」と付記して控除します。インボイスの保存は要りません。契約相手が日本法人なら通常の課税仕入れで、請求元の法人名は各社の請求書で確認します。
Q3:課税売上割合が95%以上ならリバースチャージ方式の申告は不要ですか?
不要です。一般課税で課税売上割合が95%以上の課税期間は、当分の間、特定課税仕入れがなかったものとされます(27年改正法附則42・通達5-8-1注)。申告に含める必要がなく、同時に仕入税額控除もできません(Q&A問24)。簡易課税・2割特例・個人事業者の3割特例(令和9年・10年)の課税期間も同じ扱いです。判定は課税期間ごとに行うので、翌期に95%を下回れば申告対象になります。
Q4:リバースチャージ方式の仕訳はどう切りますか?
課税売上割合95%未満なら、費用の計上と同時に仮払消費税と仮受消費税を同額で立てます。国外法人の広告200,000円なら「広告宣伝費200,000/普通預金200,000」に加えて「仮払消費税20,000/仮受消費税20,000」です。課税標準は支払額そのもので、110分の100の税抜計算はしません(Q&A問16)。95%以上なら「広告宣伝費200,000/普通預金200,000」だけで、税区分は対象外です。
Q5:海外のサブスク(SaaS)の消費税はインボイス後どう処理しますか?
Webから申し込む標準プランは「消費者向け電気通信利用役務の提供」で、国外事業者側が申告します。買手は、相手の請求書に登録番号(T+13桁)があれば控除でき、無ければ控除できません(Q&A問29)。80%・70%の経過措置は使えず、税込1万円未満の少額特例は使えます。利用人数や範囲を個別に交渉した契約なら事業者向けになり、リバースチャージ方式に切り替わります。
Q6:リバースチャージ方式の経過措置はいつまで続きますか?
法律上は「当分の間」で、終了日は決まっていません。平成27年改正法附則42条・44条2項が課税売上割合95%以上と簡易課税の課税期間を、28年改正法附則51の2④・51の3④が2割特例・3割特例の課税期間を「なかったもの」と定めています。国税庁Q&Aは令和8年6月改訂版でもこの取扱いを維持しており、改正があれば No.6118 に反映されます。
まとめ
リバースチャージ方式の判定と処理を1枚に整理します。
この記事のまとめ
- リバースチャージ方式は、国外事業者から受けた事業者向け電気通信利用役務の提供と特定役務の提供について、買手が消費税を申告・納税する仕組み(消法4条1項・5条1項・No.6118)
- 事業者向けかどうかは「受ける者が通常事業者に限られるか」で判定する。Web広告・個別契約のクラウドは事業者向け、消費者も申し込める配信・SaaSは消費者向け(通達5-8-4)
- 一般課税で課税売上割合95%以上・簡易課税・2割特例・3割特例の課税期間は「なかったもの」=申告不要・控除も不可。税区分は対象外(27年改正法附則42・44②)
- 95%未満なら支払額そのものを課税標準にして仮払・仮受を同額で立て、付表2-3の⑬⑭欄に記載。控除は帳簿に「特定」と付記すればインボイス不要(消法30⑦⑧)
- 消費者向け役務は相手の登録番号(T+13桁)が無いと控除不可。80%経過措置は使えず、少額特例は使える(Q&A問29)
- 2025年4月からアプリストア経由の消費者向け役務は特定プラットフォーム事業者が納税。事業者向けは従来どおりリバースチャージ(No.6568)
リバースチャージ方式 判定と処理の早見表(2026年9月時点)
| 自社の状況 | 国外法人のWeb広告・個別契約SaaS(事業者向け) | Web申込の海外SaaS・配信(消費者向け) | 会計ソフトの税区分 |
|---|---|---|---|
| 一般課税・課税売上割合95%未満 | 申告+控除(帳簿のみ) | 相手の登録番号があれば控除 | 特定課税仕入 10%/課税仕入 10% |
| 一般課税・課税売上割合95%以上 | なかったもの(申告・控除なし) | 相手の登録番号があれば控除 | 対象外/課税仕入 10% |
| 簡易課税・2割特例・3割特例 | なかったもの | 控除計算なし(売上税額だけで納付額を計算) | 対象外/課税仕入 10% |
| 免税事業者 | 申告不要 | 申告不要 | 対象外 |
免責事項
※本記事は消費税の一般的な取扱いを国税庁の公開情報(2026年9月時点)に基づいて整理したものです。個別のサービスが事業者向けか消費者向けかは契約内容と請求書の記載により異なります。最新の法令をご確認のうえ、必要に応じて顧問税理士など有資格者へご相談ください。
