「営業車を200万円で買ったから、今年の利益から200万円引いて節税しよう!」
残念ながら、会計や税金のルールではこれは認められません。
建物、車、パソコンなどの長く使える高額な資産は、買った年に一度に経費にするのではなく、何年かに分けて少しずつ経費にしていく必要があります。
これが「減価償却(げんかしょうきゃく)」です。
この記事では、減価償却の基本的な仕組みと、計算方法である「定額法」と「定率法」の違いについて、わかりやすく解説します。
結論:どちらの計算方法を選ぶ?
- 定額法(ていがくほう)
毎年同じ金額を経費にする。
→ 個人事業主の原則ルール(届出で変更可)。
→ 利益が安定して出るため、計画が立てやすい。 - 定率法(ていりつほう)
初年度にドカンと多く経費にし、年々減っていく。
→ 法人の原則ルール(届出で変更可)。
→ 買った直後の節税効果が高く、早期に資金回収できる。
減価償却のイメージ:「時の経過」を経費にする
なぜ面倒な計算をするのでしょうか?
それは、「モノの価値は、使えば使うほど減っていく」からです。
例えば新車を200万円で買っても、5年乗ればボロボロになり、価値はほとんどなくなります。
この「価値が減った分」を毎年計算し、「減価償却費」という名前で経費(損益計算書)に入れていくのです。
また、「その資産を使っている期間(収益を生んでいる期間)」に合わせて費用を計上すべきだ、という会計上の考え方(費用収益対応の原則)も背景にあります。
「定額法」と「定率法」の計算比較
減価償却費の計算方法は主に2つあります。
例として、200万円の社用車(耐用年数6年)を購入した場合で比較してみましょう。
| 年数 | 定額法 (毎年33.4万円ずつ) | 定率法 (残存簿価 × 33.3%) |
|---|---|---|
| 1年目 | 334,000円 | 666,000円 (多い!) |
| 2年目 | 334,000円 | 444,222円 |
| 3年目 | 334,000円 | 296,296円 |
| 4年目 | 334,000円 | 197,629円 |
| 5年目 | 334,000円 | 197,926円 (※調整) |
| 6年目 | 333,999円 (残1円) | 197,926円 (残1円) |
| 合計 | 約200万円 | 約200万円 |
※計算簡略化のため、償却率は概算を使用しています。実際は改定償却率などの規定があります。
定額法の特徴
- メリット: 計算が簡単。毎年の利益への影響が一定。
- デメリット: 早い段階での節税効果が弱い。
- 対象: 建物(※建物は法人でも必ず定額法)、個人事業主の資産全般。
定率法の特徴
- メリット: 初年度の経費が大きくなるため、利益が出ている時の節税に最適。
- デメリット: 年数が経つと経費が激減する。計算が少し複雑。
- 対象: 法人の建物以外の資産(車両、機械、備品など)。
法定償却方法と届出について
「うちは法人だけど、定額法を使いたい」
「個人だけど、定率法で早く経費にしたい」
こうした場合、税務署に「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出することで、計算方法を変更することができます。
ただし、一度変更すると3年間は変えられないため、慎重に検討する必要があります。
減価償却が終わったらどうなる?
耐用年数が過ぎて、帳簿上の価値(簿価)がほぼゼロになっても、その資産を使い続けることは可能です。
その場合、帳簿には「1円(備忘価額)」だけを残し続けます。
「この資産はまだ会社にありますよ」ということを忘れないためのメモのようなものです。
実際に廃棄したり売却したりするまでは、この1円が固定資産台帳に残り続けます。
まとめ
減価償却は、高額な資産購入費を「時間の経過」とともに経費に変えていく手続きです。
- 法人は原則「定率法」(建物除く)。早い段階で節税できる。
- 個人は原則「定額法」。毎年コツコツ経費にする。
- どちらもトータルで経費になる金額(購入額)は同じ。
設備投資を行う際は、「今年の経費はいくらになるか?」をシミュレーションしてから購入することをお勧めします。
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