預り金の勘定科目と仕訳|源泉所得税・住民税・社会保険料の預りから納付までを解説【2026年版】

預り金は、給与や報酬から一時的に預かり、後で本人に代わって納付・返還する負債の勘定科目です。代表は源泉所得税・住民税(特別徴収)・社会保険料の本人負担分の3つ。会社の費用ではないため計上時に費用にせず、納付時に取り崩します。

この記事でわかること

  • 預り金は負債(流動負債)で、給与天引き分は「費用」ではなく預かった金として貸方に計上する
  • 預り金に計上する代表3類型=源泉所得税・住民税(特別徴収)・社会保険料の本人負担分の、預り→納付の仕訳例
  • 源泉所得税は原則、翌月10日までに納付。人員10人未満は「納期の特例」で年2回にまとめられる
  • 仮受金・前受金・立替金との違いを1枚の表で整理(読者が最も混同するポイント)
  • 決算に預り金が残る場合の注意(残高が語ること・マイナス残高の直し方)と、法人・個人事業主の共通点/相違点

公的情報源: 国税庁 No.2505 源泉所得税の納付期限と納期の特例国税庁 No.2502 源泉徴収義務者とは総務省 個人住民税

結論を先に書きます

預り金は、自社の費用ではなく「後で誰かに納める・返すお金を一時的に預かっている」ことを表す負債の勘定科目です。給与から差し引いた源泉所得税・住民税・社会保険料の本人負担分は、いったんこの預り金に置き、納付日が来たら取り崩します。

判断の軸はシンプルです。「このお金は最終的に誰のものか」を考え、自社のものでない(他者に代わって納付・返還する)なら預り金と覚えれば、ほとんどの場面で迷いません。計上時に費用(法定福利費や租税公課)にしてしまうと、利益や納税額の計算が狂います。

この記事の要点
  • 預り金=負債。給与計上時は貸方に置き、費用にはしない
  • 代表3類型は源泉所得税/住民税(特別徴収)/社会保険料の本人負担分
  • 納付時は「預り金(借方)/普通預金(貸方)」で取り崩して残高を消す
  • 補助科目(源泉所得税・住民税・社会保険料)を分けると、月末残高の検証が一気に楽になる

目次

預り金とは?一時的に預かり後で納付・返還する負債の勘定科目

預り金とは、会社が本来の支払先(国・自治体・年金機構など)に代わって、従業員や取引先から一時的に金銭を預かったときに使う負債の勘定科目です。給与から天引きした源泉所得税が典型例になります。

最大のポイントは「自社のお金ではない」こと。預かった時点では自社の費用でも収益でもなく、いずれ必ず第三者へ納付(または本人へ返還)する義務を表します。だからこそ、資産でも費用でもなく「負債」に区分されます。

預り金が「負債」で「費用ではない」理由

給与から差し引いた源泉所得税を、うっかり租税公課(費用)で処理してしまうミスは少なくありません。しかしその税金は会社が負担するものではなく、従業員本人が負担すべき税を会社が代わって預かっているだけです。

会社の費用にしてしまうと、本来より費用が膨らんで利益が過少に出ます。社会保険料の本人負担分を法定福利費(会社負担の費用)に混ぜるのも同じ誤りです。本人負担分は預り金、会社負担分は法定福利費、と明確に分けてください。

観点預り金の性格
貸借対照表の区分負債(原則、流動負債)
増える場面給与・報酬から天引きしたとき(貸方)
減る場面本人に代わって納付・返還したとき(借方)
損益への影響なし(費用・収益にしない)
健全な残高おおむね当月天引き分(納付済みなら残らない)

会社負担分の社会保険料の考え方は、法定福利費の勘定科目と仕訳の解説で詳しく整理しています。

預り金に計上する代表3類型|源泉所得税・住民税・社会保険料の本人負担分

預り金に入るものの大半は、給与計算で天引きする次の3つです。まずは全体像を表で押さえます。

類型内容納付先納付期限(原則)
源泉所得税給与・報酬から源泉徴収した所得税・復興特別所得税税務署(国)徴収した月の翌月10日
住民税(特別徴収)従業員の個人住民税を会社が天引き市区町村徴収した月の翌月10日
社会保険料(本人負担分)健康保険・厚生年金などの被保険者負担分年金事務所ほか翌月末(翌月徴収が原則)

このほか、取引先への報酬支払いで源泉徴収した所得税、社宅費や財形貯蓄の天引き分なども預り金で処理します。

補助科目を分けると管理が一気に楽になる

3類型をすべて「預り金」1本にまとめると、月末残高が何の預りか判別できなくなります。「源泉所得税預り金」「住民税預り金」「社会保険料預り金」など補助科目を分けるのが実務の基本です。

補助科目ごとに「天引き額=納付額」で残高がゼロに戻るかを確認できれば、納付漏れ・徴収漏れをその月のうちに発見できます。会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生)でも、給与連携時に補助科目が自動で割り当たる設定になっているか確認してください。

類型①|源泉所得税の預り→納付の仕訳(原則は翌月10日納付)

源泉所得税は、給与支払時に「預り金」で預かり、翌月10日までに税務署へ納付する流れです。会社は源泉徴収義務者として、従業員の給与から所得税を差し引いて国に納める役割を担います(所得税法183条ほか)。

給与天引き時の仕訳

月給30万円、源泉所得税5,000円を天引きするケースです(社会保険料・住民税は後述の合算例で扱います)。

借方科目金額(円)貸方科目金額(円)
給与手当300,000普通預金(手取り)295,000
預り金(源泉所得税)5,000

給与の額面は費用(給与手当)として全額を借方に計上し、天引きした源泉所得税は貸方の預り金に置きます。会社が支払う手取りと預り金の合計は、必ず額面と一致します。

納付時(翌月10日)の仕訳

借方科目金額(円)貸方科目金額(円)
預り金(源泉所得税)5,000普通預金5,000

納付時は預り金を借方で取り崩し、残高をゼロに戻します。ここで租税公課などの費用を使わない点に注意してください。

納期の特例(年2回にまとめられる制度)

給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、申請により源泉所得税を年2回にまとめて納付できます。1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日が期限です。詳細は国税庁 No.2505で確認できます。

特例を使う場合でも、毎月の給与天引きは預り金に積み上がり、納付月にまとめて取り崩す点は変わりません。半年分が残高に残るため、金額の管理はより丁寧に行ってください。

類型②|住民税(特別徴収)の預り→納付の仕訳

住民税の特別徴収とは、会社が従業員の個人住民税を毎月の給与から天引きし、本人に代わって市区町村へ納める仕組みです。前年の所得をもとに市区町村が税額を決定し、6月から翌年5月までの12回に分けて徴収します。

給与天引き時と納付時の仕訳

住民税10,000円を天引きするケースです。

場面借方科目金額貸方科目金額
給与天引き時給与手当(内訳)10,000預り金(住民税)10,000
納付時(翌月10日)預り金(住民税)10,000普通預金10,000

住民税も源泉所得税と同じく、天引き時は預り金、納付時に取り崩す形です。納付期限は徴収した月の翌月10日で、源泉所得税と同じ日にちに揃います。

住民税にも、従業員が常時10人未満の事業所を対象にした納期の特例(年2回納付)があります。制度の要件は市区町村ごとに案内されるため、各自治体の特別徴収の手引きを確認してください。

類型③|社会保険料の本人負担分の預り→納付の仕訳

社会保険料(健康保険・厚生年金など)は、本人負担分を「預り金」、会社負担分を「法定福利費」に分けて処理します。ここを混同すると損益計算書が狂うため、3類型の中でも特に注意が必要です。

給与天引き時と納付時の仕訳

本人負担分40,000円、同額の会社負担分40,000円を、翌月末に合算して納付するケースです。

場面借方科目金額貸方科目金額
給与天引き時給与手当(内訳)40,000預り金(社会保険料)40,000
会社負担分の計上法定福利費40,000未払金(社会保険料)40,000
納付時(翌月末)預り金(社会保険料)+ 未払金80,000普通預金80,000

納付時は、本人分(預り金)と会社分(未払金)の両方を借方で取り崩し、貸方の普通預金1本でまとめて納めます。社会保険料は前月分を当月給与から天引きする「翌月徴収」が原則です。

社会保険料の3勘定(法定福利費・預り金・未払金)の使い分けや、標準報酬月額の計算、決算月の注意点は、社会保険料の仕訳を完全解説した記事で網羅しています。

給与天引きをまとめた「複合仕訳」

実務では、源泉所得税・住民税・社会保険料をまとめて1本の給与仕訳で処理します。月給30万円から3類型を天引きした複合仕訳が次の形です。

借方科目金額(円)貸方科目金額(円)
給与手当300,000普通預金(手取り)245,000
預り金(源泉所得税)5,000
預り金(住民税)10,000
預り金(社会保険料)40,000

貸方の預り金3つと手取りの合計(245,000+55,000)が、額面30万円と一致します。この「額面=手取り+預り金」の一致確認が、給与仕訳の最も基本的な検算です。

預り金と仮受金・前受金・立替金の違い(比較表)

読者が最も混同するのが、預り金と似た仮勘定・前受・立替の区別です。判断軸は「そのお金は誰のもので、どう解消するか」の1点に集約されます。

勘定科目何を表すか貸借の区分解消のしかた
預り金他者に代わって納付・返還する金を預かった負債納付・返還で消える
仮受金入金があったが内容・相手が不明負債内容判明時に振替(決算に残さない)
前受金商品・サービスの提供前に受け取った代金負債売上計上で消える
立替金他者が負担すべき費用を一時的に立て替えた資産本人から回収して消える

ポイントは2つあります。ひとつは、立替金だけが「資産(借方)」である点。会社がお金を出しているため、預り金とは貸借が逆になります。

もうひとつは、仮受金は決算に残してはいけない点です。内容不明のまま期をまたがず、決算までに正しい科目(売上・預り金・前受金など)へ振り替えます。前受金は売上の前受けなので、商品を引き渡した時点で売上に振り替えて消します。

それぞれの詳しい仕訳は、仮受金の解説前受金の解説立替金の解説で確認してください。

決算に預り金が残る場合の注意|残高が語ること・マイナス残高の直し方

決算日に預り金の残高があること自体は、異常ではありません。翌月納付が原則のため、決算月に天引きした分は「まだ納付していない預り金」として残るのが正常な状態です。

問題は、その残高が「当月分」で説明できるかどうかです。数か月分が積み上がっている場合、過去の納付漏れ・徴収漏れ・二重計上のいずれかが疑われます。

決算前にチェックする3ポイント

  1. 補助科目ごとに「残高=直近の未納付分」で説明できるか
  2. 納付が済んだ月の預り金が、取り崩し漏れで残っていないか
  3. 預り金がマイナス残高(借方残)になっていないか

預り金がマイナス残高(借方に残高)になっている場合は、預かった以上に納付している状態です。天引き額の入力ミス、補助科目の付け間違い、納付額の誤りが典型的な原因になります。放置せず、給与台帳と納付書を突き合わせて原因を特定してください。

マイナス残高のまま決算を組むと、負債であるべき預り金が資産のように見えてしまい、貸借対照表の信頼性が下がります。月次で「預り金残高=未納付分」を確認する運用が、決算での慌てを防ぐ最短ルートです。

法人と個人事業主で共通する点・異なる点

預り金の使い方は、法人でも個人事業主でも基本は同じです。ただし「事業主本人の税金」の扱いだけは大きく違います。

論点法人個人事業主
従業員給与の源泉所得税預り金預り金(源泉徴収義務者になる場合)
住民税(特別徴収)預り金預り金
社会保険料の本人負担分預り金預り金(従業員がいる場合)
事業主本人の所得税・住民税(法人税等で別処理)事業主貸(預り金は使わない)

共通点は、従業員や専従者に給与を払い源泉徴収する事業主は、法人・個人を問わず預り金を使うことです。従業員が常時10人未満なら納期の特例を使える点も同じです。

一方、個人事業主自身の所得税や住民税は、預り金ではなく「事業主貸」で処理します。事業主本人の税金は事業の経費でも預り金でもないためです。個人事業主の所得税の扱いは、所得税の勘定科目の解説で詳しく整理しています。

よくある質問

預り金の仕訳について、現場で質問が多い7問を整理します。

Q1:預り金は資産と負債のどちらですか?

預り金は負債(原則、流動負債)です。会社が支払先に代わって一時的に預かった金で、いずれ必ず納付・返還する義務があるため負債に区分します。給与から天引きした源泉所得税や社会保険料の本人負担分が代表例です。費用でも収益でもないため、給与計上時に費用として処理しない点に注意してください。

Q2:源泉所得税の納付期限はいつですか?

原則として、給与や報酬から源泉徴収した所得税は徴収した月の翌月10日までに納付します。ただし、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、申請により「納期の特例」を使え、1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日にまとめて納付できます。詳細は国税庁 No.2505で確認できます。

Q3:預り金に補助科目は必要ですか?

必須ではありませんが、実務では強く推奨します。「源泉所得税預り金」「住民税預り金」「社会保険料預り金」のように補助科目を分けると、補助科目ごとに天引き額と納付額を突き合わせて残高を検証でき、納付漏れ・徴収漏れをその月のうちに発見できます。すべて預り金1本にまとめると、月末残高が何の預りか判別できなくなります。

Q4:預り金と仮受金の違いは何ですか?

預り金は「後で誰に、いくら納付・返還するか」が明確に分かっているお金です。一方、仮受金は入金があったが内容や相手が不明なときに一時的に使う仮勘定です。仮受金は決算に残してはならず、内容が判明したら正しい科目(売上・前受金・預り金など)へ振り替えます。「相手と用途が確定しているか」で区別してください。

Q5:決算で預り金が残っていても問題ありませんか?

問題ありません。翌月納付が原則のため、決算月に天引きした分が未納付の預り金として残るのは正常です。ただし、残高が「直近の未納付分」で説明できることが条件です。数か月分が累積している場合は、過去の納付漏れ・取り崩し漏れ・二重計上を疑い、給与台帳と納付書を突き合わせて確認してください。

Q6:個人事業主も預り金を使いますか?

従業員や青色事業専従者に給与を払い、源泉徴収する個人事業主(源泉徴収義務者)は預り金を使います。処理の考え方は法人と同じです。一方、事業主本人の所得税・住民税は預り金ではなく「事業主貸」で処理します。事業主本人の税金は事業の経費でも預り金でもないためです。

Q7:預り金がマイナス残高になったらどうすればよいですか?

預り金が借方残(マイナス残高)になっているのは、預かった以上に納付している状態です。天引き額の入力ミス、補助科目の付け間違い、納付額の誤りが主な原因です。給与台帳・納付書・総勘定元帳を突き合わせて差異の原因を特定し、正しい金額へ修正してください。マイナスのまま決算を組むと貸借対照表の信頼性が下がります。

まとめ|預り金の仕訳の最終チェックリスト

預り金の勘定科目と仕訳の要点を、最後に整理します。

この記事のまとめ
  • 預り金は負債。給与天引き分は貸方に計上し、費用にはしない
  • 代表3類型は源泉所得税・住民税(特別徴収)・社会保険料の本人負担分
  • 源泉所得税・住民税は翌月10日、社会保険料は翌月末が納付期限の原則
  • 納付時は「預り金(借方)/普通預金(貸方)」で取り崩して残高を消す
  • 補助科目を分け、月末残高=未納付分で説明できる状態を保つ
  • マイナス残高は納付超過のサイン。給与台帳と納付書で原因を特定する

預り金でつまずかないコツは、「このお金は自社のものか、他者に代わって納付・返還するお金か」を最初に判定することです。他者のためのお金なら預り金、と決めておけば、源泉所得税も社会保険料も同じ発想で処理できます。

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免責事項

※本記事は公的情報をもとに整理した一般的な情報であり、個別の会計処理・税務判断を保証するものではありません。源泉所得税・住民税・社会保険料の納付期限や納期の特例、補助科目の設定、決算での残高処理など、個別事情がある場面では、必ず顧問税理士または所轄の税務署・市区町村にご確認ください。

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この記事を書いた人

会計事務所で10年以上、法人や個人事業主の帳簿づけと税務申告の手伝いをしてきたTanakaです。決算が近づくと、経営者から「この支払いはどの科目で処理すればいいですか」という電話を何度も受けました。答えは業種や会社の規模で変わります。そこを一つずつ、相手に合わせて説明してきました。

独立してからは、中小企業の経理担当者向けの研修や、freee・マネーフォワード・弥生の科目設定の相談にも応じています。教科書の説明は抽象的で、現場では「とりあえず雑費」で片づけてしまうことも少なくありません。このサイトでは、勘定科目の選び方の判断軸を、具体例をそえて整理しています。最終的な税務判断は、顧問税理士にご相談ください。

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