出張や社員旅行で温泉に泊まったときの入湯税の勘定科目は、宿泊費と一体で「旅費交通費」とするのが実務上一般的です。標準税率は1人1日150円で、会社が直接納める租税公課とは性質が異なります。消費税は不課税(課税対象外)で、宿泊料金や入浴料の本体だけが課税10%になります。
この記事でわかること
- 入湯税の勘定科目は宿泊費と一体で「旅費交通費」が実務の基本
- 「租税公課」にしない理由を、負担者と特別徴収のしくみから整理
- 社員旅行の温泉は福利厚生費、取引先の接待招待は交際費になる場合も
- 入湯税の消費税は不課税(対象外)。宿泊料金・入浴料の本体だけが課税10%
- 標準税率150円のしくみ、日帰り温泉・個人事業主の注意点
- 従業員・自分の出張に伴う入湯税は旅費交通費(宿泊費と一体)
- 入湯税の負担者は入湯客、納めるのは鉱泉浴場=租税公課ではない
- 社員旅行・慰安目的なら福利厚生費に含めるのが自然
- 消費税は宿泊料金・入浴料の本体だけ課税10%、入湯税は不課税
温泉旅館の請求書に「入湯税 150円」と載っていて、科目に迷った経験は多いはずです。まず結論を、利用シーン別に表で押さえておきましょう。
入湯税の勘定科目|シーン別の早見表
| 利用シーン | 一般的な勘定科目 | ポイント |
|---|---|---|
| 従業員・役員の出張に伴う入湯税 | 旅費交通費 | 宿泊費と一体で計上 |
| 個人事業主自身の事業出張の入湯税 | 旅費交通費 | 事業分のみ・私的旅行は対象外 |
| 社員旅行・慰安旅行での温泉利用 | 福利厚生費 | 全社員対象など要件を満たす場合 |
| 取引先を接待・招待した宿泊の入湯税 | 交際費 | 接待宿泊と一体なら交際費に含める |
| 自社が鉱泉浴場を営み直接納める税 | 租税公課 | ※通常の利用者側では該当しない |

入湯税とは|温泉に課される市町村の目的税
入湯税とは、温泉地の鉱泉浴場に入浴する人へ課される市町村の目的税です。宿泊費や入浴料とは別に、1人あたり定額で上乗せされます。
標準税率は、入湯客1人1日について150円です(総務省・地方税制度/地方税法701条の2)。市町村は条例で金額を変えられるため、実際の額は温泉地ごとに異なります。宿泊客と日帰り客で額を分け、日帰りを低く設定する自治体も多く見られます。
「目的税」とは、使いみちが決まっている税のことです。入湯税は、次のような費用に充てられます(総務省・地方税制度)。
- 環境衛生施設の整備
- 鉱泉源の保護管理施設の整備
- 消防施設その他の消防活動に必要な施設の整備
- 観光の振興(観光施設の整備を含む)
つまり入湯税は、温泉地の維持と観光のために使われる税金です。名前に「税」が付きますが、会社が自社の負担として直接納める税ではありません。この点が、勘定科目を決めるうえでのカギになります。
なぜ「租税公課」ではないのか|負担者と特別徴収のしくみ
入湯税を租税公課で処理するのは、多くの場合は正確ではありません。勘定科目の判断で見るのは税の名称ではなく、「誰が負担者で、どう納められる税か」です。

入湯税のしくみを分解すると、登場人物は3者に分かれます。
- 負担する人=温泉に入った入湯客(=出張者や利用者本人)
- 集めて納める人=鉱泉浴場の経営者(特別徴収義務者)
- 使う人=市町村(目的税として使途が限定される)
入湯税は特別徴収で納められます(総務省・地方税制度)。鉱泉浴場の経営者が、施設利用の料金とあわせて入湯客から税を預かり、市町村へ納入するしくみです。
会社の立場で見ると、負担しているのは出張した従業員(=会社の宿泊コスト)です。会社が自社の税金として自治体へ直接納めているわけではありません。
だから、入湯税は「税金の支払い」ではなく「宿泊コストの一部」と捉えるのが整合的です。宿泊費と一体で旅費交通費に含めれば、実態に合った処理になります。
租税公課に該当するのは、自社が鉱泉浴場を経営し、特別徴収した税を自ら納入する場合など、限られたケースだけです。租税公課の範囲そのものは、租税公課の勘定科目一覧で整理しています。
ケース別の仕訳例|旅費交通費・福利厚生費・交際費
ここからは、実務で出やすいケースの仕訳を見ていきます。金額は宿泊料金11,000円(税込)+入湯税150円の例で統一します。
従業員の出張で宿泊した場合
宿泊費と入湯税をまとめて旅費交通費で処理します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 11,150円 | 現金・預金など | 11,150円 |
税抜経理で消費税区分を厳密に分ける場合は、宿泊料金本体10,000円を課税仕入れ10%、入湯税150円を対象外として入力します。
社員旅行・慰安旅行で温泉を利用した場合
全社員を対象とした慰安目的の旅行など、福利厚生の要件を満たすときは福利厚生費が自然です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 福利厚生費 | 11,150円 | 現金・預金など | 11,150円 |
一部の役員だけの旅行や、過度に高額な旅行は福利厚生費と認められないことがあります。全社員対象・社会通念上妥当な範囲という要件を意識しておきましょう。
取引先を接待・招待した場合
接待や招待を兼ねた宿泊なら、入湯税も接待宿泊と一体で交際費に含めるのが一般的です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 交際費 | 11,150円 | 現金・預金など | 11,150円 |
出張・接待・社員旅行の線引きは、旅費交通費の勘定科目と課税・非課税の区別や出張手当(日当)の勘定科目もあわせて確認すると迷いにくくなります。
入湯税の消費税は「不課税(対象外)」
入湯税は消費税の課税対象外(不課税)です。税金であって、対価としての取引ではないためです。課税されるのは、宿泊料金や入浴料の本体部分だけになります。
会計ソフトへの入力は、次のように分けると消費税の集計が正確になります。
| 項目 | 消費税区分 |
|---|---|
| 宿泊料金・入浴料の本体 | 課税仕入れ10% |
| 入湯税 | 対象外(不課税) |
領収書で入湯税が分けて記載されている場合は、その額を対象外に振り分けます。一体で書かれている場合は、施設に内訳を確認するのが確実です。宿泊料金本体の仕入税額控除には、鉱泉浴場が発行する適格請求書(インボイス)の保存が必要になります。
日帰り温泉・個人事業主の注意点
入湯税の税額・非課税範囲・宿泊/日帰りの区別は、市町村の条例で定められ改正もあります。本記事の金額は仕組みを理解するための一例です。最新の額・対象は、必ず温泉地の自治体公式サイトでご確認ください。
日帰りの温泉施設を利用した場合も、入湯税がかかることがあります。福利厚生や接待で日帰り温泉を使ったときは、宿泊のケースと同じ考え方で科目を判断します。
自治体の条例により、12歳未満の入湯客や、共同浴場・一般公衆浴場などが非課税とされる場合もあります。請求書に入湯税が載っていない場合は、非課税や税率0円の対象になっている可能性があります。
個人事業主が事業の出張で温泉宿に泊まった場合の入湯税は、宿泊費とあわせて旅費交通費で必要経費に算入できます。ただし観光を兼ねた私的な宿泊分は経費にできません。事業目的の宿泊だけを計上し、私的な部分は除外するのが原則です。
まとめ
- 入湯税の勘定科目は、宿泊費と一体で旅費交通費が実務の基本
- 負担者は入湯客、納めるのは鉱泉浴場=租税公課ではない
- 社員旅行は福利厚生費、取引先接待は交際費に含める場合も
- 消費税は不課税。宿泊料金・入浴料の本体だけ課税10%
- 標準150円だが額・非課税は自治体の条例で異なる
入湯税は少額でも、社員旅行・接待・税抜経理で不課税を分ける場面では判断が分かれます。同じ温泉でも「誰の・何の目的か」で科目が変わる点を押さえておけば、迷いません。
あわせて読みたい
よくある質問
- 入湯税の勘定科目は何になりますか?
-
出張や業務での温泉宿泊に伴う入湯税は、宿泊費と一体で「旅費交通費」に計上するのが実務上一般的です。入湯税だけを別科目に切り出す必要は、通常ありません。
- 入湯税を「租税公課」で処理するのは間違いですか?
-
多くの場合は適切ではありません。入湯税を負担するのは入湯客本人で、会社が自社の税金として直接納めるものではないためです。宿泊コストの一部として旅費交通費に含めるのが整合的です。租税公課になるのは、自社が鉱泉浴場を営み直接納入する場合など限られたケースです。
- 入湯税に消費税はかかりますか?
-
入湯税そのものは不課税(消費税の課税対象外)です。課税されるのは宿泊料金や入浴料の本体部分(10%)で、会計ソフトでは本体を課税10%、入湯税を対象外と分けて入力すると正確です。
- 社員旅行で温泉に行った場合の入湯税はどう処理しますか?
-
全社員を対象とした慰安目的の旅行など福利厚生の要件を満たす場合は、宿泊費や入湯税を「福利厚生費」に含めるのが自然です。一部の役員だけの旅行や過度に高額な旅行は、福利厚生費と認められないことがあります。
- 入湯税は1人いくらですか?
-
標準税率は入湯客1人1日について150円です(地方税法701条の2)。ただし市町村が条例で金額を変えられ、宿泊客と日帰り客で額を分ける自治体もあります。実際の額は温泉地の公式情報で確認しましょう。
※本記事は2026年時点の公開情報をもとにした一般的な整理です。入湯税の税額・非課税範囲・宿泊/日帰りの区別は自治体の条例により異なり改正もあるため、個別の判断は最新の自治体公式情報を確認のうえ、必要に応じて税理士など有資格者にご相談ください。
