損害賠償金の消費税は不課税が原則|課税になる3類型・修理代を直接払う場合の仕入税額控除・受取と支払の仕訳例と計上時期

損害賠償金の消費税は不課税が原則です(国税庁 No.6257・消費税法基本通達5-2-5)。例外として課税になるのは、損傷した棚卸資産を加害者に引き渡す・特許権など無体財産権の侵害・不動産の明渡し遅延の3類型だけ。修理代を自分で払えば課税仕入れとして控除でき、受け取った賠償金は不課税のまま課税売上割合にも入れません。

この記事でわかること

  • 損害賠償金が不課税になる理由と、名目でなく実質で判定する通達5-2-5の本文
  • 例外として課税になる3類型(棚卸資産の引渡し・無体財産権の侵害・明渡し遅延)と、それぞれの受取側・支払側の処理
  • 交通事故の修理代・評価損・休業損害・示談金・慰謝料・横領の弁済・立退料・保険金など18場面の早見表
  • 修理代を直接払ってもらう場合と賠償金で受け取って自分で修理する場合で、仕入税額控除がどう変わるか(被害者側・加害者側)
  • 受取・支払・課税3類型の仕訳例5本、課税方式別(原則・簡易・2割特例・免税)の処理表、インボイス、収益計上と損金算入の時期

公的情報源: 国税庁タックスアンサー No.6257「損害賠償金」(参照)/No.6157「課税の対象とならないもの(不課税)の具体例」(参照)/消費税法基本通達 第5章第2節「資産の譲渡の範囲」5-2-4〜5-2-7(参照)/法人税基本通達 2-1-43(参照

先に答え

損害賠償金の消費税区分は不課税です。心身や資産に加えられた損害の発生に伴って受け取るお金は、資産の譲渡や貸付け、役務の提供の対価に当たりません。示談金・和解金・慰謝料・弁償金も、名目が違うだけで同じ判定になります。

ただし名称でなく実質で判定するため、実質が「売った」「貸した」「使わせた」対価なら課税です。国税庁は3つの類型を挙げています。

この記事の要点

  • 損害賠償金は不課税が原則。受け取る側は課税売上に入れず、支払う側は仕入税額控除もできない(No.6257・No.6157(7)・令和8年4月1日現在法令等)
  • 課税になるのは3類型だけ。①損傷した棚卸資産等を加害者に引き渡し、そのまままたは軽微な修理で使える場合 ②特許権・商標権など無体財産権の侵害 ③不動産等の明渡し遅延の損害金(通達5-2-5)
  • 修理代は「誰が修理役務を受けたか」で決まる。被害者が修理工場に払えば被害者の課税仕入れ。加害者や保険会社が直接払っても、加害者側の課税仕入れにはならない
  • 保険金も不課税(通達5-2-4)。保険金で修理しても修理代は課税仕入れのまま。区分は「非課税」でなく「不課税」で、課税売上割合の分母にも入れない(No.6209)
  • 計上時期は受取側が確定日(実際の入金日も可・法基通2-1-43)、支払側が確定日または申出額の未払金計上(法基通2-2-13)

目次

損害賠償金の消費税は不課税が原則|No.6257と通達5-2-5の判定

損害賠償金の消費税とは、損害の補てんとして受け渡しするお金が、資産の譲渡等の対価に当たるかどうかで課税・不課税を分ける判定です。国税庁 No.6257「損害賠償金」(令和8年4月1日現在法令等)は、「心身または資産に対して加えられた損害の発生に伴って受ける損害賠償金については、通常は資産の譲渡等の対価に当たりません」と定めています。

判定の物差しは1つだけ。その名称によって判定するのではなく、その実質によって判定する(No.6257)。「損害賠償金」と書いてあっても中身が家賃や商品代なら課税、「解決金」と書いてあっても損害の補てんなら不課税です。

損害賠償金の消費税区分を決める判定フロー

  • 契約書・示談書・請求書で「何の対価として払われるか」を確認する
  • STEP1損傷した棚卸資産等を加害者に引き渡すか引き渡し、そのままか軽微な修理で使えるなら 課税(譲渡の対価・通達5-2-5(1))
  • STEP2特許権・商標権などの無体財産権の侵害か権利者が受け取る賠償金は 課税(使用料に相当・5-2-5(2))
  • STEP3不動産等の明渡しが遅れた期間の損害金か賃貸人が受け取る分は 課税(賃料に相当・5-2-5(3)・住宅は非課税)
  • STEP4上の3つに当たらない損害の補てんか修理代相当・休業損害・慰謝料・示談金・和解金 → 不課税。適格請求書は不要

図:まず課税になる3類型に当たるかを見て、当たらなければ名目に関係なく不課税。保険会社が代わりに払っても判定は同じ。

通達5-2-5「損害賠償金」の本文

No.6257 の根拠は消費税法4条と消費税法基本通達5-2-5です。5-2-5(損害賠償金)は次のように定めています。

「損害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に伴い受けるものは、資産の譲渡等の対価に該当しないが、例えば、次に掲げる損害賠償金のように、その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるものは資産の譲渡等の対価に該当することに留意する」

続けて(1)棚卸資産等の引渡し、(2)無体財産権の侵害、(3)不動産等の明渡しの遅滞の3つを列挙しています。(1)のかっこ書きには「加害者に代わって損害賠償金を支払う者を含む」とあります。保険会社が支払う場合も、加害者が支払う場合と同じ判定です。

「非課税」でなく「不課税」|課税売上割合に入れない

「損害賠償金 消費税 非課税 不課税」と検索されますが、区分は不課税です。国税庁 No.6209「非課税と不課税の違い」は、非課税を「対価を得て行う取引のうち土地の譲渡や利子など政策的に課税しないもの」、不課税を「対価を得て行う取引に当たらないもの」と分けています。

違いが数字に出るのは受け取った側の課税売上割合です。No.6209 のとおり、非課税売上は分母に入りますが、不課税の受取額は分母にも分子にも入れません。会計ソフトでは「対象外」「不課税」を選び、「非課税売上」を選ばないようにします。

保険金も不課税(通達5-2-4)|賠償金との違いは「誰から受け取るか」だけ

消費税法基本通達5-2-4(保険金等)は「保険金又は共済金(これらに準ずるものを含む。)は、保険事故の発生に伴い受けるものであるから、資産の譲渡等の対価に該当しない」と定めています。No.6157「課税の対象とならないもの(不課税)の具体例」でも、(4)保険金や共済金と(7)損害賠償金が並んで挙げられています。

事故の相手から直接受け取れば損害賠償金、相手や自分の保険会社から受け取れば保険金。どれも不課税で、受け取った側の処理は変わりません。変わるのは自分が払う修理代の側で、後の章で整理します。

損害賠償金が課税になる3類型|棚卸資産の引渡し・無体財産権・明渡し遅延

損害賠償金が課税になるのは、実質が「資産を売った」「権利を使わせた」「不動産を貸した」対価に当たる3つの場合です。No.6257 と通達5-2-5 が同じ3類型を挙げており、受け取った側は課税売上、支払った側は課税仕入れになります。

課税になる損害賠償金の3類型(通達5-2-5・2026年9月時点)

類型課税になる条件実質受け取った側支払った側根拠
①損傷した棚卸資産等の引渡し損害を受けた棚卸資産等を加害者に引き渡し、そのままか軽微な修理で使用できる資産の譲渡の対価課税売上10%(軽減税率対象の商品は8%)課税仕入れ(適格請求書があれば控除)5-2-5(1)・No.6257 1
②無体財産権の侵害特許権・商標権・著作権などの侵害で権利者が受け取る権利の使用料に相当課税売上10%課税仕入れ5-2-5(2)・No.6257 2
③不動産等の明渡し遅延契約終了後も明け渡さない期間について賃貸人が受け取る賃貸料に相当課税売上10%(住宅の賃料相当は非課税)課税仕入れ(住宅は非課税仕入れ)5-2-5(3)・No.6257 3・No.6261

①棚卸資産の引渡し|壊れて廃棄したなら不課税・引き取って使えるなら課税

同じ「商品を壊された」でも、その商品がどこへ行くかで区分が変わります。廃棄して賠償金だけ受け取れば損害の補てんで不課税。加害者が商品を引き取り、そのまままたは軽微な修理で使えるなら、商品を売ったのと同じとみなして課税売上です。運送中の破損で運送会社が商品を引き取る場面が典型で、請求書に「損害賠償金」と書くかどうかは関係ありません。

②無体財産権の侵害|使用料の後払いと同じ

特許権や商標権を無断で使われた後に受け取る賠償金は、本来ならライセンス料として受け取っていたお金です。通達5-2-5(2)は権利者が受け取る賠償金を使用料に相当するものとして課税の対価に含めています。判決や和解で「損害賠償金」と名付けられていても課税売上で、受け取る側が適格請求書発行事業者なら求めに応じて適格請求書を交付します。

③明渡し遅延|使い続けた期間の家賃

賃貸借契約が終わった後も退去しない期間について賃貸人が受け取る損害金は、その期間の賃料に相当します。国税庁 No.6261「建物賃貸借契約の違約金など」も同じ整理です。契約終了後に立ち退かない入居者から受け取る割増賃借料は、貸付けの対価として全額課税と定めています。住宅の場合は住宅家賃と同じ非課税です。

同じ賃貸でも、中途解約の違約金(家賃◯か月分)は逸失利益の補てんで不課税になります。中途解約・短期解約の違約金と原状回復費の区分はキャンセル料・解約違約金の消費税区分で扱っています。

立退料と容器保証金|隣の通達が定める不課税

通達5-2-7(建物賃貸借契約の解除等に伴う立退料の取扱い)は、賃借人が賃貸人から受け取る立退料を「賃貸借の権利が消滅することに対する補償、営業上の損失又は移転等に要する実費補償」として不課税と定めています。店舗の営業補償も同じ性格です。ただし注書きのとおり、賃借人の地位を第三者に譲って受け取る対価は賃借権の譲渡として課税になります。

通達5-2-6(容器保証金等の取扱い)は、返却されなかったびん・ケースの保証金を「損害賠償金として処理する場合」は不課税、「容器の譲渡の対価として処理する場合」は課税と分けています。

損害賠償金の消費税区分 類型別早見表18場面

損害賠償金の消費税区分は、場面ごとに「実質が何の対価か」を当てはめれば決まります。不課税が14場面・課税が4場面で、課税になるのは前章の3類型と、賃借権の譲渡だけです。

損害賠償金・補償金の消費税区分 類型別早見表(受け取った側の区分・2026年9月時点)

場面消費税区分判定のポイント根拠
交通事故の修理代相当額を賠償金として受け取り、自分で修理不課税損害の補てん。自分が払う修理代は課税仕入れ5-2-5・No.6257
交通事故の修理代を加害者(または保険会社)が修理工場へ直接支払い被害者側は取引なし被害者に入出金がなければ仕訳不要。加害者側は不課税の損害賠償金5-2-5(1)かっこ書き
事故車の評価損(格落ち損)の賠償金不課税資産価値の減少の補てん5-2-5
事故による休業損害・休車損害の賠償金不課税得られたはずの利益の補てん5-2-5
代車費用相当額の賠償金不課税自分が借りた代車のレンタル料は課税仕入れ5-2-5
人身事故の慰謝料・治療費相当の賠償金不課税心身に加えられた損害5-2-5・No.6157(7)
示談金・和解金・解決金不課税名称でなく実質で判定。中に商品代や家賃相当が含まれていればその部分は課税No.6257
特許権・商標権・著作権の侵害による賠償金課税10%使用料に相当5-2-5(2)
事務所・店舗の明渡し遅延の損害金課税10%賃料に相当(住宅は非課税)5-2-5(3)・No.6261
損傷した商品を加害者に引き渡し、そのまま使える場合の賠償金課税10%(軽減税率対象品は8%)資産の譲渡の対価5-2-5(1)
損傷した商品を廃棄し、賠償金だけ受け取る不課税引き渡していないので譲渡がない5-2-5
商品の納期遅延・契約不履行による違約金不課税逸失利益の補てん(別記事キャンセル料・違約金)通達5-5-2
データ消失・システム障害の賠償金不課税損害の補てん。復旧作業を有償で請け負えばその部分は課税5-2-5
従業員の横領・着服の弁済金不課税損害の回復。会社と従業員の間に譲渡等がない5-2-5・法基通9-7-16(2)
店舗の立退料・営業補償金(賃貸人から受け取る)不課税権利消滅の補償・実費補償5-2-7
賃借人の地位を第三者に譲渡して受け取る「立退料」名目の対価課税10%賃借権の譲渡の対価5-2-7 注
保険金・共済金(車両保険・火災保険・対物賠償)不課税保険事故の発生に伴い受ける5-2-4・No.6157(4)
取引先・従業員への見舞金不課税対価性がない(科目は交際費・福利厚生費)No.6157

示談金・和解金は「内訳」で判定する

示談書や和解調書に「解決金として金◯円」とだけ書かれていれば、全体が損害の補てんとして不課税です。内訳に「未払賃料相当額」「商品代金」「明渡し遅延損害金」が含まれていれば、その部分だけ課税になります。受け取る側が課税事業者なら、課税部分を明示して適格請求書を交付できる形にしておくと、支払側の控除が通ります。

遅延損害金・見舞金・保険料との線引き

売掛金の支払遅延に対する遅延損害金は、損害賠償金でなく利息の性格を持ち、区分も別物。支払側・受取側の処理は遅延損害金の勘定科目・仕訳にまとめました。

災害や事故の見舞金は対価性がなく不課税ですが、科目は交際費や福利厚生費。取引先向けの見舞金・慶弔金は取引先の結婚祝い・香典の勘定科目で扱っています。自動車保険料そのものは非課税(保険料)で、保険金の受取とは別の区分になる点に注意してください。保険料の科目と按分は自動車保険の勘定科目が詳しいです。

修理代を直接払ってもらう場合と賠償金で受け取る場合の仕入税額控除

修理代の消費税は修理役務の提供を受けた人=被害者だけが課税仕入れにできるというのが結論です。加害者や保険会社が修理工場に直接振り込んでも、加害者側の課税仕入れにはなりません。

課税仕入れとは、事業者が事業として他の者から資産を譲り受け、借り受け、または役務の提供を受けることです(国税庁 No.6451)。修理工場が修理したのは被害者の車なので、役務の提供を受けたのは被害者。加害者が払ったお金は、通達5-2-5のかっこ書きのとおり損害賠償金の支払いに当たります。

修理代88,000円(税込)の支払い方3パターンと仕入税額控除

A 被害者が修理工場に払い、賠償金88,000円を受け取る
被害者の控除
8,000円 できる(課税仕入れ)
被害者の賠償金
88,000円 不課税の雑収入
加害者
88,000円 不課税の損害賠償金・控除なし
B 加害者(または保険会社)が修理工場に直接払う
被害者の控除
なし(入出金がなく仕訳も立たない)
加害者の控除
できない(役務の提供を受けていない)
加害者の処理
88,000円 不課税の損害賠償金

図:控除できるのはAの被害者だけ。原則課税の被害者は消費税8,000円を控除で取り戻せるため、示談で賠償額を税抜80,000円と決めることもある。

修理代の支払い方3パターン×立場別の消費税処理(2026年9月時点)

パターン被害者側加害者側保険会社から見た支払い根拠
A 被害者が修理工場に支払い、加害者から賠償金を受け取る修理代=課税仕入れ(控除可)/賠償金=不課税の収入賠償金=不課税・控除なし対物賠償保険金=不課税(加害者側で保険金収入と賠償金支出を両建てするか、直接払いなら仕訳なし)No.6451・5-2-5
B 加害者が修理工場に直接支払う入出金なし=仕訳なし。控除もなし修理工場への支払い=不課税の損害賠償金・控除なし5-2-5(1)かっこ書き
C 保険会社が修理工場に直接支払う(被害者の車両保険・加害者の対物賠償)自分の車両保険なら 修理代=課税仕入れ/保険金=不課税で両建て。相手の対物賠償なら仕訳なし自分の対物賠償なら仕訳なし保険金=不課税(5-2-4)5-2-4・No.6451

被害者側|修理代は課税仕入れ・賠償金は不課税で相殺しない

被害者が原則課税の事業者なら、修理工場に払った88,000円のうち8,000円は仕入税額控除の対象です。同時に受け取る賠償金88,000円は不課税の雑収入で、修理代と相殺して純額にしません。修繕費88,000円(課税仕入れ)と雑収入88,000円(不課税)を両建てで記帳します。

個別対応方式では、修理した車が課税売上のための業務に使う車なら、修繕費は課税売上対応の課税仕入れです。賠償金が不課税収入だからといって「共通対応」に落とす必要はありません。用途区分の判定は課税仕入れの勘定科目と消費税区分で整理しています。

自分の車両保険や火災保険で修理し、保険会社が修理工場に直接払ったときも、修理役務を受けたのは自分です。修繕費(課税仕入れ)と保険金収入(不課税)を両建てで記帳し、免責金額の自己負担分だけが普通預金からの支出になります。

加害者側|直接払っても課税仕入れにならない

加害者が修理工場へ直接88,000円を振り込んでも、加害者は修理役務を受けていません。支払いの実質は損害賠償金で、通達5-2-5(1)は「加害者に代わって損害賠償金を支払う者」まで含めて損害賠償金の枠で扱っています。加害者側では全額が不課税の雑損失(損害賠償金)で、修理工場が加害者宛に請求書を発行しても控除には使えません。例外は加害者が損傷した商品を引き取る場合で、3類型の①に当たり、商品を仕入れたのと同じ課税仕入れになります。

相手の対物賠償保険から修理工場へ直接支払われた被害者は、自分の入出金がないため仕訳を立てず、控除もありません。修理代の控除を受けたいなら、パターンAのように一度自分で支払い、賠償金を受け取る形にします。

損害賠償金の仕訳例5本|受取・支払・課税3類型

仕訳は税抜経理を前提に、受取側2本・支払側1本・課税になる例2本を示します。科目は受取側が雑収入、支払側が雑損失(損害賠償金)が一般的で、科目より税区分の付け方が納税額を決めます

事故で修理代88,000円を支払い、加害者から賠償金88,000円を受け取った(被害者・原則課税)

借方

修繕費 80,000

仮払消費税 8,000

普通預金 88,000

貸方

普通預金 88,000

雑収入(損害賠償金) 88,000

図:修理代は課税仕入れとして仮払消費税を立て、賠償金は不課税の雑収入で両建てにする。相殺して純額0円にしない。

仕訳例1(受取側)|事故で修理代88,000円(税込)を修理工場へ支払い、加害者から賠償金88,000円が入金された

借方金額(円)貸方金額(円)税区分
修繕費80,000普通預金88,000課税仕入 10%
仮払消費税8,000
普通預金88,000雑収入(損害賠償金)88,000対象外

修繕費の課税仕入れは修理工場の適格請求書で控除します。賠償金は不課税なので、課税売上割合の分母にも入りません。雑収入の税区分の全体像は雑収入の勘定科目と仕訳で扱っています。

仕訳例2(受取側)|取引先の過失で倉庫の商品(帳簿価額200,000円)が全損し、廃棄したうえで賠償金300,000円が入金された

借方金額(円)貸方金額(円)税区分
普通預金300,000雑収入(損害賠償金)300,000対象外
商品廃棄損200,000商品200,000対象外

商品を引き渡していないため譲渡がなく、賠償金は全額不課税です。廃棄損は損害の発生した日の事業年度に損金にできます(法基通2-1-43 注)。

仕訳例3(支払側)|配送中に取引先の備品を壊し、賠償金150,000円を振り込んだ

借方金額(円)貸方金額(円)税区分
雑損失(損害賠償金)150,000普通預金150,000対象外

支払側に仮払消費税は立ちません。相手から「消費税込み」の請求が来ても、不課税の損害賠償金である限り課税仕入れにはできません。従業員の運転ミスなど業務中の過失で故意や重過失がなければ、法人税でも損金です(法基通9-7-16(1))。

仕訳例4(受取側・課税①)|損傷した商品を加害者が引き取り、そのまま使えるとして賠償金110,000円(税込)を受け取った

借方金額(円)貸方金額(円)税区分
普通預金110,000売上高(または雑収入)100,000課税売上 10%
仮受消費税10,000

通達5-2-5(1)の類型で、商品を売ったのと同じ課税売上です。相手が求めれば適格請求書を交付します。食品など軽減税率の対象品なら8%で計算します。

仕訳例5(受取側・課税③)|テナントが契約終了後1か月明け渡さず、賃料相当の損害金220,000円(税込)を受け取った

借方金額(円)貸方金額(円)税区分
普通預金220,000受取家賃(または雑収入)200,000課税売上 10%
仮受消費税20,000

事務所の明渡し遅延分は貸付けの対価として課税売上です(通達5-2-5(3)・No.6261)。住宅なら非課税売上として課税売上割合の分母に入れます。

課税方式別の処理とインボイス|原則課税・簡易課税・2割特例・免税事業者

損害賠償金の区分が納税額に効くのは、受け取る側で課税3類型に当たる場合と、原則課税の被害者が修理代を払う場合の2つです。不課税の賠償金はどの課税方式でも申告に影響しません。

課税方式別 損害賠償金の処理(受け取った側・支払った側・2026年9月時点)

自社の課税方式受け取った側(不課税の賠償金)受け取った側(課税3類型)支払った側根拠
原則課税(本則課税)課税売上に入れない。課税売上割合の分母にも入れない課税売上として売上税額に含める賠償金は控除なし。自分で払う修理代は課税仕入れ(適格請求書または少額特例)No.6209・No.6451
簡易課税影響なし課税売上に含め、実質に応じた事業区分(商品の譲渡・使用料・賃料)でみなし仕入率を適用個別の控除計算なし。修理代を区分しても納税額は変わらないNo.6505
2割特例(2026年9月30日の属する課税期間まで)影響なし課税売上に含め、その2割を納付個別の控除計算なしNo.6498
免税事業者影響なし課税売上高に含める(基準期間1,000万円の判定)控除なし。税込額をそのまま費用計上No.6501

インボイス|不課税の賠償金に登録番号は不要・課税3類型は適格請求書

不課税の損害賠償金には、請求書や示談書に登録番号や消費税額を書く必要がありません。「損害賠償金 ◯円(不課税)」または「対象外」と明示しておくと、支払側の入力が揃います。「消費税額0円」と書くと非課税や免税と混同されるため避けます。

課税3類型に当たる賠償金を受け取る側が適格請求書発行事業者なら、相手の求めに応じて適格請求書を交付します。支払側の控除には、その適格請求書の保存が要件。税込1万円未満なら少額特例で2029年9月30日まで帳簿のみで足ります(国税庁 No.6496・基準期間の課税売上高1億円以下など)。

修理代を自分で払う被害者は、修理工場の適格請求書を保存します。修理工場が免税事業者なら控除は減ります。2026年9月30日までは仕入税額相当額の80%、2026年10月1日からは70%です(No.6498・令和8年度税制改正で見直し後の区分)。

収益計上と損金算入の時期|確定日が原則・入金日と申出額の例外

受け取る損害賠償金は、支払を受けるべきことが確定した日の事業年度の益金です。法人税基本通達2-1-43(損害賠償金等の帰属の時期)は確定日基準が原則です。ただし「実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には、これを認める」と定めています。示談が長引く事故では、入金日基準を使えば決算をまたぐ見積計上を避けられます。

同じ通達の注書きは、損害に係る損失の額を「保険金又は共済金により補塡される部分の金額を除き、その損害の発生した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる」としています。損失は先に、賠償金は確定または入金時に。この順番が通達で認められた形です。

損害賠償金の計上時期(法人税・2026年9月時点)

立場・場面原則認められる例外・注意根拠
受け取る側(益金)支払を受けるべきことが確定した日実際に入金した日の事業年度で益金算入法基通2-1-43
受け取る側(損害の損失)損害の発生した日の事業年度に損金保険金・共済金で補てんされる部分は除く法基通2-1-43 注
支払う側(損金)賠償額が確定した日決算日までに相手方へ申し出た金額を未払金計上(保険金で補てんされることが明らかな部分は除く)法基通2-2-13
支払う側(役員・従業員の行為)業務に関連し、故意・重過失がなければ損金故意・重過失または業務外なら本人への債権。求償できなければ貸倒処理も可法基通9-7-16・9-7-17
支払う側(自動車の人身事故の内払)示談成立前でも支出した日の事業年度の損金対応する保険金は益金に算入法基通9-7-18
消費税(課税3類型・修理代)資産の譲渡等をした日・役務の提供を受けた日の課税期間消法28・30

従業員の事故・横領は「誰の責任か」で損金と債権に分かれる

従業員が業務中に起こした事故の賠償金は、故意や重過失がなければ会社の損金です(法基通9-7-16(1))。故意・重過失があるか業務と関係のない行為なら、賠償金相当額は従業員への債権になります(同(2))。横領の弁済金も同じ整理で、会社が受け取る弁済は損害の回復であり、消費税は不課税です。従業員の支払能力からみて求償できないときは、貸倒れとして損金にできます。回収が確実な部分を放棄すると給与扱いです(法基通9-7-17)。

よくある質問

損害賠償金と消費税で実際によく検索される6問です。

Q1:損害賠償金に消費税はかかりますか?

原則としてかかりません。国税庁 No.6257 は、心身または資産に加えられた損害の発生に伴って受ける損害賠償金を、資産の譲渡等の対価に当たらないものとしています。例外は3類型だけ。損傷した棚卸資産を加害者に引き渡してそのまま使える場合、特許権などの無体財産権の侵害、不動産の明渡し遅延が課税になります。

Q2:損害賠償金の消費税区分は非課税ですか、不課税ですか?

不課税です。非課税は土地の譲渡や利子のように対価を得る取引を政策的に課税しないもの。不課税はそもそも対価を得る取引に当たらないものを指します(国税庁 No.6209)。損害賠償金は対価でないため不課税で、受け取った側の課税売上割合の分母にも入れません。会計ソフトでは「対象外」を選びます。

Q3:事故の修理代を相手に払ってもらった場合、消費税はどうなりますか?

自分で修理工場に払って賠償金を受け取ったなら、修理代は課税仕入れとして控除でき、賠償金は不課税の雑収入です。相手や相手の保険会社が修理工場に直接払ったなら、自分には入出金がないので仕訳も控除もありません。加害者側は直接払っても修理役務を受けていないため、課税仕入れにはならず不課税の損害賠償金です(通達5-2-5(1)・No.6451)。

Q4:示談金や和解金、慰謝料に消費税はかかりますか?

かかりません。示談金・和解金・慰謝料は名称が違うだけで、損害の補てんとして受け取るものは不課税です。No.6257 は「名称によって判定するのではなく、その実質によって判定する」としています。ただし和解の内訳に未払賃料相当額や商品代金、明渡し遅延損害金が含まれていれば、その部分だけ課税になります。

Q5:損害賠償金の請求書にインボイス(登録番号)は必要ですか?

不課税の損害賠償金には不要です。登録番号や消費税額を書かず、「損害賠償金 ◯円(不課税)」と明示すれば足ります。課税になる3類型(棚卸資産の引渡し・無体財産権の侵害・明渡し遅延)に当たる場合は別です。受け取る側が適格請求書発行事業者なら適格請求書を交付します。支払側は税込1万円未満なら2029年9月30日まで少額特例で帳簿のみでも控除できます(No.6496)。

Q6:保険金で修理した場合、修理代の消費税は控除できますか?

自分の車両保険や火災保険で修理したなら控除できます。保険金は保険事故の発生に伴って受けるもので不課税です(通達5-2-4)。修理代は自分が役務の提供を受けた課税仕入れなので、修繕費(課税仕入れ)と保険金収入(不課税)を両建てで記帳します。保険会社が修理工場に直接払っても同じです。相手の対物賠償保険から直接支払われた場合は、自分の入出金がないため仕訳も控除もありません。

まとめ

損害賠償金の消費税区分を1枚に整理します。

この記事のまとめ

  • 損害賠償金は不課税が原則。名称でなく実質で判定する(国税庁 No.6257・通達5-2-5)
  • 課税になるのは3類型だけ。①損傷した棚卸資産の引渡し(そのまま・軽微な修理で使える)②無体財産権の侵害 ③不動産等の明渡し遅延
  • 修理代の控除は修理役務を受けた被害者だけ。加害者や保険会社が直接払っても加害者側は課税仕入れにならない(No.6451・5-2-5(1)かっこ書き)
  • 保険金も不課税(通達5-2-4)。自分の保険で修理した修理代は課税仕入れのまま、保険金と両建てで記帳する
  • 区分は「非課税」でなく「不課税」。課税売上割合の分母に入れず、登録番号も不要(No.6209)
  • 計上時期は受取側が確定日または入金日(法基通2-1-43)、支払側が確定日または申出額の未払金計上(2-2-13)。従業員の行為は故意・重過失の有無で損金と債権に分かれる(9-7-16)

損害賠償金の消費税 早見表(2026年9月時点)

場面消費税区分適格請求書会計ソフトの税区分
修理代相当・評価損・休業損害・慰謝料・示談金・和解金の受取不課税不要対象外
損害賠償金の支払(雑損失)不課税不要対象外
被害者が自分で払う修理代課税10%必要(税込1万円未満は帳簿のみ可)課税仕入 10%
損傷した棚卸資産を加害者に引き渡して受け取る賠償金課税10%(軽減税率対象品は8%)必要課税売上 10%/8%
特許権・商標権など無体財産権の侵害の賠償金課税10%必要課税売上 10%
事務所の明渡し遅延の損害金課税10%(住宅は非課税)必要課税売上 10%
保険金・共済金・立退料・従業員からの弁済金不課税不要対象外
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免責事項

※本記事は消費税・法人税の一般的な取扱いを国税庁の公開情報(2026年9月時点)に基づいて整理したものです。損害賠償金の区分は示談書・契約書・請求書の内容により異なります。最新の法令をご確認のうえ、必要に応じて顧問税理士など有資格者へご相談ください。


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この記事を書いた人

会計事務所で10年以上、法人や個人事業主の帳簿づけと税務申告の手伝いをしてきたTanakaです。決算が近づくと、経営者から「この支払いはどの科目で処理すればいいですか」という電話を何度も受けました。答えは業種や会社の規模で変わります。そこを一つずつ、相手に合わせて説明してきました。

独立してからは、中小企業の経理担当者向けの研修や、freee・マネーフォワード・弥生の科目設定の相談にも応じています。教科書の説明は抽象的で、現場では「とりあえず雑費」で片づけてしまうことも少なくありません。このサイトでは、勘定科目の選び方の判断軸を、具体例をそえて整理しています。最終的な税務判断は、顧問税理士にご相談ください。

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