遅延損害金の勘定科目は、支払ったときは「支払利息」(金銭債務の遅延)または「雑損失」、受け取ったときは「雑収入」で処理します。消費税は実態が利息のため原則「非課税」。ただし建物の賃料滞納は課税、税金の延滞税は「租税公課」で別物です。民法の法定利率は年3%。
この記事でわかること
- 遅延損害金を支払ったときの勘定科目は「支払利息」か「雑損失」で、どちらを選ぶかの判断軸
- 遅延損害金を受け取ったときは「雑収入」(営業外収益)で処理する理由
- 買掛金・売掛金・借入金などケース別の科目と仕訳例
- 消費税は原則「非課税」だが、賃料滞納だけは「課税」になる例外
- 取引の遅延損害金と、税金の「延滞税(租税公課)」との違い
公的情報源: 国税庁タックスアンサー No.6257(損害賠償金)・No.6201(非課税となる取引)/民法第404条(法定利率)
結論を先に書きます
遅延損害金の勘定科目は、自社が「払う側」か「受け取る側」かでまず分かれます。
払った場合は、金銭債務の遅延なら「支払利息」、それ以外の一時的なものなら「雑損失」。受け取った場合は「雑収入」で処理するのが基本です。
- 支払った:金銭債務の遅延は「支払利息」、少額・臨時なら「雑損失」(ともに営業外費用)
- 受け取った:「雑収入」(営業外収益)で処理する
- 消費税は原則「非課税」(実態が利息のため)。賃料滞納だけ「課税」の例外
- 税金の「延滞税」は遅延損害金ではない。「租税公課」で損金不算入
判断の起点は、いつも「これは取引の遅延か、税金の遅延か」。この記事では、支払・受取それぞれの科目から、ケース別の仕訳、消費税の区分、延滞税との違いまで、迷いやすい順に整理します(2026年時点)。
遅延損害金とは|契約上の債務の履行が遅れたときの賠償金
遅延損害金とは、契約で決めた支払期日までに金銭を払えなかったとき、遅れた期間に応じて債務者が債権者へ支払う損害賠償金です。
利息とよく似ていますが、性質は「損害賠償金」。約束どおりに払ってもらえなかった損害を、金銭でうめ合わせるものです。
金額は「元本 × 年率 × 遅延日数 ÷ 365」で計算します。年率は契約で定めるのが原則ですが、定めがなければ民法の法定利率(2026年時点で年3%)が使われます(民法第404条)。
- 支払う側(債務者):期日までに払えなかった当事者
- 受け取る側(債権者):期日どおりに受け取れなかった当事者
同じ「遅延損害金」でも、自社がどちらの立場かで使う勘定科目は変わります。まずは払った場合から見ていきましょう。
支払ったときの勘定科目|「支払利息」か「雑損失」

遅延損害金を支払ったときの科目は、金銭債務の遅延なら「支払利息」が基本です。
売掛金・買掛金・借入金など、お金の貸し借りや代金の支払いが遅れたことに対する遅延損害金は、実質的に利息の性質を持ちます。そのため、損益計算書で「営業外費用」に区分される「支払利息」で処理します。
一方で、金額が少額だったり、一時的・臨時に発生したものだったりする場合は、「雑損失」で処理してもかまいません。
| 支払いのケース | 使える勘定科目 | 表示区分 |
|---|---|---|
| 借入金・買掛金など金銭債務の遅延 | 支払利息 | 営業外費用 |
| 売掛金・クレジットカードの遅延 | 支払利息 または 雑損失 | 営業外費用 |
| 少額・臨時に発生したもの | 雑損失 | 営業外費用 |
| 建物・駐車場などの賃料滞納 | 支払家賃 | 販管費 |
どちらの科目でも損金(経費)にはなりますが、条件が1つあります。一度決めた科目を継続して使うこと。期ごとに入れ替えると、費用の比較がしにくくなります。
支払利息そのものの位置づけや、借入金の利息との違いを整理したいときは、支払利息の勘定科目と仕訳(借入金利息・手形割引料・消費税)もあわせてご覧ください。
受け取ったときの勘定科目|「雑収入」で処理する
遅延損害金を受け取ったときの科目は、「雑収入」が基本です。
取引先からの入金が遅れ、その分の遅延損害金を受け取った場合、本業の売上ではないため「雑収入」(営業外収益)で処理します。
「受取利息」を使う考え方もありますが、実務では雑収入で処理するのが一般的です。金額が小さく、金融取引としての貸付利息とは性質が異なるためです。
- 雑収入:本業以外で臨時に生じた少額の収益。遅延損害金の受け取りはこれに該当
- 受取利息:預金・貸付金など、金銭の貸付けから生じる利息が本来の対象
受け取り側の「雑収入」と支払い側の「雑損失」は、名前が対になっています。混同しないよう、払ったら雑損失、受け取ったら雑収入と覚えておくと迷いません。
雑収入で処理する取引を広く確認したいときは、雑収入の勘定科目と仕訳例(消費税の課税区分つき)で整理しています。
取引先間・借入金など|ケース別の科目と考え方
遅延損害金は、どの取引から生じたかで細かい判断が変わります。代表的なケースを整理します。
買掛金・未払金の支払遅延(自社が払う)
取引先への代金支払いが遅れ、遅延損害金を請求されたケースです。金銭債務の遅延にあたるため、「支払利息」(少額なら「雑損失」)で処理します。
売掛金の回収遅延(自社が受け取る)
得意先からの入金が遅れ、遅延損害金を受け取ったケースです。この場合は「雑収入」で処理します。
借入金の返済遅延(自社が払う)
金融機関などへの返済が遅れ、遅延損害金(遅延利息)を払ったケースです。利息の性質が強いため、「支払利息」で処理します。
建物・駐車場の賃料滞納(自社が払う)
家賃や駐車場代の支払いが遅れたケースは、遅延損害金も家賃の一部と捉え、「支払家賃」で処理します。この場合は後述のとおり消費税の扱いも変わるため、注意が必要です。
いずれのケースも、「金銭債務の遅延か、賃料の遅延か」で科目と消費税が分かれる、と押さえておけば大きく外しません。
仕訳例|支払・受取それぞれの記帳

具体的な仕訳を見ていきましょう。まずは、買掛金の支払いが遅れ、遅延損害金3,000円を普通預金から支払ったケースです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払利息 | 3,000円 | 普通預金 | 3,000円 |
金銭債務の遅延なので「支払利息」で費用計上します。少額のため「雑損失」で処理してもかまいません。
次に、売掛金の回収が遅れ、取引先から遅延損害金5,000円を普通預金で受け取ったケースです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 5,000円 | 雑収入 | 5,000円 |
本業の売上ではないため、「雑収入」で収益計上します。
なお、遅延損害金と元本(もともとの売掛金・買掛金)は別々に記帳します。元本の入金・支払いと、遅延損害金を混ぜないのが、残高を合わせるコツです。
会計ソフトを使うなら、遅延損害金の仕訳をテンプレート(よく使う仕訳)として登録しておくと、消費税区分の付け間違いを防げます。
消費税は原則「非課税」|賃料滞納の課税・延滞税との違い
遅延損害金の消費税は、原則として「非課税」です。
金銭債務の支払いが遅れたことによる遅延損害金は、実態が「金銭を貸していることに対する利息」と考えられます。利子は消費税法上の非課税取引のため、遅延損害金も非課税になります。
ただし、発生した原因によって扱いが変わる点に注意が必要です。
| 遅延損害金のケース | 消費税区分 | 理由 |
|---|---|---|
| 売掛金・買掛金・借入金など金銭債務の遅延 | 非課税 | 実態が利息(利子相当) |
| 建物・駐車場など課税資産の賃料滞納 | 課税 | 賃料の割増しの性質 |
| 土地・住宅の賃料滞納 | 非課税 | 土地・住宅の貸付けは非課税 |
| 資産の損壊・契約解除等の損害賠償金 | 不課税(対象外) | 資産の譲渡等の対価でない |
会計ソフトで入力する際は、金銭債務の遅延なら「非課税仕入れ」または「非課税売上」を選びます。建物の賃料滞納だけは「課税」になるため、税区分の自動仕訳をそのまま使わず、原因を確認してください。損害賠償金一般の扱いは国税庁タックスアンサー No.6257 でも確認できます。
税金の「延滞税」は遅延損害金ではない
混同しやすいのが、税金の「延滞税」です。これは遅延損害金とは別物です。
- 遅延損害金:取引・契約上の債務の遅延 → 支払利息・雑損失(受取は雑収入)
- 延滞税・延滞金:税金や社会保険料の納付遅れに対する国・自治体へのペナルティ → 「租税公課」
延滞税は罰則的な性質のため、法人税の計算上は損金に算入できません(損金不算入)。消費税もかかりません(税金そのものなので不課税)。取引の遅延損害金とは科目も税務も違う、と切り分けておきましょう。
延滞税・加算税など「損金にならない税金」の扱いは、法人税は経費にならない?租税公課で落とせる税金との違いで詳しく整理しています。
よくある質問(FAQ)
遅延損害金の処理でよく寄せられる疑問を、5つ整理します。
Q1:遅延損害金を払ったときの勘定科目は何ですか?
金銭債務(借入金・買掛金など)の遅延なら「支払利息」が基本です。売掛金やクレジットカードの遅延、少額・臨時のものは「雑損失」でも処理できます。いずれも営業外費用で、一度決めた科目を継続して使うことが大切です。
Q2:遅延損害金を受け取ったときはどう処理しますか?
「雑収入」(営業外収益)で処理します。本業の売上ではなく、臨時に生じた少額の収益だからです。受取利息を使う考え方もありますが、実務では雑収入が一般的です。
Q3:遅延損害金に消費税はかかりますか?
原則かかりません(非課税)。金銭債務の遅延損害金は実態が利息のため、非課税取引になります。ただし建物・駐車場など課税資産の賃料滞納による遅延損害金は、賃料の割増しとして「課税」になる例外があります。
Q4:遅延損害金と延滞税は同じですか?
違います。遅延損害金は取引・契約上の債務の遅延に対するもので、「支払利息」「雑損失」「雑収入」で処理します。延滞税は税金の納付遅れに対するペナルティで、「租税公課」で処理し、法人税の計算上は損金になりません。
Q5:遅延損害金は経費になりますか?
なります。取引先や金融機関へ支払った遅延損害金は、「支払利息」または「雑損失」として損金(経費)に算入できます。損金不算入なのは、税金の延滞税・加算税や交通反則金などのペナルティ系です。
まとめ:遅延損害金の勘定科目チェックリスト
最後に、この記事の要点をチェックリストで整理します。
- 支払ったら「支払利息」(金銭債務の遅延)または「雑損失」
- 受け取ったら「雑収入」(営業外収益)で処理する
- 元本と遅延損害金は分けて記帳し、残高を合わせる
- 消費税は原則「非課税」。建物の賃料滞納だけ「課税」の例外
- 税金の「延滞税」は「租税公課」で、損金不算入・不課税
遅延損害金は、「取引の遅延」か「税金の遅延」かを最初に切り分けることが最大のポイントです。取引の遅延なら支払利息・雑損失・雑収入、税金の遅延なら租税公課、と押さえておけば科目選びで迷いません。
損益計算書での費用・収益の位置づけをまとめて確認したいときは、損益の勘定科目はどれ?損益計算書の科目一覧と損益勘定の仕訳も参考になります。
あわせて読みたい
免責事項
※本記事は会計・税務の一般的な情報を整理したものです。個別の仕訳・税務判断は、状況により取り扱いが異なる場合があります。最終的な判断は顧問税理士や所轄の税務署にご相談ください。
