年末調整の仕訳|還付は預り金の取り崩し・不足額は預り金に追加・預り金がマイナスなら立替金で翌月相殺・納付書と還付請求書の対応【2026年版】

年末調整の仕訳は、預り金(源泉所得税)を動かすだけで完結します。超過額の還付は借方に預り金、不足額の徴収は貸方に預り金を追加し、給料手当の金額は変えません。還付額が12月分の源泉徴収税額を超えて預り金がマイナスになったら、立替金へ振り替えて翌月以降の納付額と相殺します(国税庁 No.2675・所得税法191条・令和8年4月1日現在法令等)。

この記事でわかること

  • 年末調整の仕訳で使う勘定科目は預り金1本で足りる理由と、還付金・立替金・未収入金を使う場面
  • 12月給与で相殺する型と翌年1月に精算する型、税額計算を省略する型(㋑)と通常計算する型(㋺)で仕訳の数字がどう変わるか
  • 還付・不足額の徴収・徴収繰延の仕訳例7本(同じ会社の3ケースで金額を通して比較)
  • 還付額が12月分の税額を超えて預り金がマイナスになったときの立替金・未収入金への振替と翌月相殺、12月決算のときの決算整理
  • 税務署から還付を受ける過納額還付請求書の3要件と仕訳、納付書(所得税徴収高計算書)の各欄と仕訳の対応表、弥生などの会計ソフトでの入力

公的情報源: 国税庁タックスアンサー No.2675「年末調整の過不足額の精算」(参照)/No.2505「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」(参照)/「令和8年分 年末調整のしかた」過不足額の精算(PDF)/A2-17 年末調整過納額の還付請求(参照)/納付書の記載のしかた(参照)

先に答え

年末調整の仕訳で動かす科目は預り金(源泉所得税)だけです。毎月の給与で預かった源泉所得税のうち、1年分の税額(年調年税額)を超えて預かっていた分を従業員へ返し、足りない分を追加で預かります。給料手当の金額は年末調整の前後で変わりません。

迷いが生まれるのは還付額が大きいときです。12月分の源泉徴収税額より還付額が多いと、預り金の残高は借方(マイナス)に振れるでしょう。この状態は翌月以降の納付額から差し引く途中経過で、入力ミスを疑う場面とは違います。決算書に負債のマイナスを出さないよう立替金へ振り替え、1月以降の預り金と相殺していけば整います。

この記事の要点

  • 超過額の還付は借方 預り金/貸方 普通預金、不足額の徴収は貸方 預り金を12月給与の控除に追加する(所得税法190条・191条・192条)
  • 還付した額はその月に納付する源泉徴収税額から差し引く。引ききれない分は翌月以降の納付額から順次差し引く(No.2675・所得税法施行令312条)
  • 預り金がマイナスになったら立替金(税務署へ還付請求するなら未収入金)へ振り替え、翌月以降に相殺する。12月決算なら決算整理で振り替える
  • 解散・廃業/徴収税額がなくなった/翌月1日から2か月経っても還付しきれないの3つに当たれば、過納額還付請求書で税務署から還付を受ける(所得税法施行令313条・A2-17)
  • 納付書は「年末調整による超過税額」欄にその月に実際に精算した額を書き、本税が0円でも提出する(年末調整のしかた 令和8年分 p.42)

目次

年末調整の仕訳とは|預り金の過不足を12月給与で精算する処理

年末調整の仕訳とは、毎月預かった源泉所得税と年調年税額の差額を、預り金の増減で精算する仕訳です。所得税法190条は、超過額を「その年最後に給与等の支払をする際徴収すべき所得税に充当」し、不足額を「その年最後に給与等の支払をする際徴収して」翌月10日までに納付すると定めた条文です。

充当しきれない超過額は191条で「過納額」と呼ばれ、給与の支払者が還付します。徴収しきれない不足額は192条により翌年の給与から順次徴収する決まりです。還付も徴収も、動く科目は預り金だけという構造は、この3条から来ています。

年末調整の仕訳を決める判定フロー

  • 源泉徴収簿の「年調年税額」と1〜12月の徴収税額の合計を比べる
  • STEP1徴収税額の合計が多い(超過額)か、少ない(不足額)か超過額→借方 預り金で還付/不足額→貸方 預り金で追加徴収(所得税法190条)
  • STEP2超過額は12月分として納付する源泉徴収税額で引ききれるか引ききれる→差額を翌月10日に納付/引ききれない→預り金が借方残になる
  • STEP3借方残は翌月以降の預り金と相殺できるかできる→立替金へ振り替えて1月以降に相殺(施行令312条)/できない→未収入金へ振り替えて税務署に還付請求(施行令313条)
  • STEP4納付書の該当欄に、その月に精算した額を記入する「年末調整による超過税額」「不足税額」欄。本税が0円でも提出する

図:年末調整の仕訳は「超過か不足か」「12月分で引ききれるか」「翌月に相殺できるか」の3段で決まる。科目は預り金が軸で、立替金・未収入金は引ききれないときだけ登場する。

年末調整の仕訳で使う勘定科目|預り金・立替金・未収入金の出番

科目の使い分けは次のとおりです。給料手当・法定福利費は年末調整で動きません。

年末調整の仕訳で登場する勘定科目と出番(2026年9月時点)

勘定科目区分年末調整での出番消費税区分
預り金(源泉所得税)負債還付は借方、不足額の徴収は貸方。精算の軸になる科目対象外
立替金資産還付額が12月分の税額を超え、預り金が借方残になったときの振替先。翌月以降の預り金と相殺対象外
未収入金資産税務署へ過納額還付請求書を出し、入金を待つときの振替先対象外
普通預金・現金資産還付金の支払い、源泉所得税の納付対象外
給料手当費用動かない。還付金を給与に上乗せしても給料手当は増やさない対象外

「還付金」という科目は使いません。従業員に返すお金は、預かっていたお金を返しているだけで、会社の費用にも収益にもなりません。法人や個人事業主が国から受け取る税の還付(法人税・消費税・所得税)は別の処理で、還付金の勘定科目と仕訳で扱っています。

12月給与の税額計算を省略する型(㋑)と通常計算する型(㋺)

「令和8年分 年末調整のしかた」(p.39)は、精算の方法を2つ挙げています。㋑は本年最後の給与の税額計算を省略し、その給与の徴収税額を0として精算する方法です。㋺は最後の給与も通常どおり税額計算したうえで精算する方法になります。

どちらを選んでも従業員の手取りと納付額は同じです。違うのは超過額として見える数字で、㋺型は12月分の徴収税額(本記事の例では18,000円)の分だけ超過額が大きく出ます。㋑型で「不足額」と出た人が、㋺型なら「超過額」になることもあるでしょう。給与ソフトの設定がどちらかを、仕訳を切る前に確認してください。

年末調整の仕訳例|還付を12月給与で相殺する型(仕訳例1〜2)

還付を12月給与と一緒に払う型では、12月分の源泉徴収税額と還付額を別行で仕訳します。相殺して純額1行にすると、納付書の「税額」欄と「年末調整による超過税額」欄に書く数字が帳簿から追えません。弥生のサポート情報(ida681)も、還付金と12月の源泉所得税を分けて仕訳する例を載せています。

以下の仕訳例は、すべて同じ会社の数字で通します。

仕訳例で使う会社の前提(従業員3名・税抜経理・納期の特例なし)

項目金額(円・月額)備考
給料手当の合計900,0003名分
源泉所得税(通常月の徴収税額)18,000甲欄・3名合計
住民税(特別徴収)45,000預り金(住民税)
社会保険料の本人負担分135,000預り金(社会保険料)
差引支給額(通常月)702,000900,000−18,000−45,000−135,000
ケースA 年末調整の超過額15,00012月分の税額18,000円で引ききれる
ケースB 年末調整の超過額60,00012月分の税額を42,000円超える
ケースC 年末調整の不足額9,00012月給与から追加徴収

ケースA|12月給与900,000円と一緒に超過額15,000円を還付した(㋺型)

借方

給料手当 900,000

預り金(源泉所得税) 15,000

貸方

普通預金 717,000

預り金(源泉所得税) 18,000

預り金(住民税) 45,000

預り金(社会保険料) 135,000

図:12月分の徴収18,000円は貸方、還付15,000円は借方に分けて置く。預り金(源泉所得税)の残高は3,000円になり、翌年1月10日にその3,000円を納付する。

仕訳例1(ケースA・㋺型)|12月25日に給与900,000円を支給し、年末調整の超過額15,000円を上乗せして振り込んだ

借方金額(円)貸方金額(円)税区分
給料手当900,000普通預金717,000対象外
預り金(源泉所得税)15,000預り金(源泉所得税)18,000対象外
預り金(住民税)45,000対象外
預り金(社会保険料)135,000対象外

振込額は702,000円+15,000円=717,000円です。預り金(源泉所得税)は貸方18,000円と借方15,000円で差引3,000円が残り、これが12月分として納付する税額になります。

仕訳例2(ケースA)|翌年1月10日に12月分の源泉所得税3,000円を納付した

借方金額(円)貸方金額(円)税区分
預り金(源泉所得税)3,000普通預金3,000対象外

納付書には「税額」18,000円、「年末調整による超過税額」15,000円、本税3,000円と書きます。所得税法施行令312条が、還付した額を納付すべき金額から控除すると定めているためです。

㋑型なら同じケースAが「不足額3,000円」になる

㋑型は12月給与の税額計算を省略します。1〜11月の徴収税額の合計と年調年税額を比べるので、ケースAの超過額15,000円から12月分18,000円を引いた不足額3,000円として結果が出ます。12月給与から3,000円を追加で預かり、翌年1月10日に納付する流れです。

借方金額(円)貸方金額(円)税区分
給料手当900,000普通預金717,000対象外
預り金(源泉所得税)3,000対象外
預り金(住民税)45,000対象外
預り金(社会保険料)135,000対象外

振込額717,000円も納付額3,000円も㋺型と同じです。納付書は「税額」欄を0円にし、「年末調整による不足税額」欄に3,000円と書きます。年末調整のしかた(p.42)の記載例1が、税額計算を省略した場合の書き方を載せた例です。

年末調整の仕訳例|翌年1月精算型と不足額の徴収(仕訳例3〜5)

12月給与の支給日までに年末調整の計算が終わらない会社は、超過額を翌年1月の給与で還付することになるでしょう。No.2675 は、年末調整を行った月分の徴収税額で還付しきれないときに「その後に納付する源泉徴収税額から差し引き順次還付」する方法を認めています。1月に還付した額の記入先は、1月分の納付書(納付は2月10日)の「年末調整による超過税額」欄です。

仕訳例3(ケースA・翌年1月精算型)|1月25日の給与900,000円と一緒に、前年分の超過額15,000円を還付した

12月分の源泉所得税18,000円は1月10日に全額納付しておき、1月分の納付(2月10日)で3,000円だけ納めます。仕訳の形は仕訳例1と同じで、月が1つ後ろへずれるだけです。

納期の特例(給与の支給人員が常時10人未満)を受けている会社は、7〜12月分をまとめて翌年1月20日に納付します(No.2505)。12月に還付した超過額は、この7〜12月分の納付額から差し引きます。半年分の税額が引き当てになるので、特例を受けている会社ほど預り金のマイナスは起きにくいといえます。

不足額の徴収|12月給与の控除に追加する

年調年税額が徴収税額の合計より多ければ不足額です。所得税法190条のとおり、12月給与から追加で徴収し、翌月10日までに納付します。

仕訳例4(ケースC)|12月25日の給与900,000円から、通常の源泉18,000円に加えて不足額9,000円を徴収した

借方金額(円)貸方金額(円)税区分
給料手当900,000普通預金693,000対象外
預り金(源泉所得税)27,000対象外
預り金(住民税)45,000対象外
預り金(社会保険料)135,000対象外

預り金(源泉所得税)27,000円は、通常分18,000円と不足額9,000円の合計です。翌年1月10日に27,000円を納付し、納付書は「税額」18,000円、「年末調整による不足税額」9,000円、本税27,000円と書きます。

不足額が大きい人は翌年1月・2月に繰り延べできる

不足額を12月給与から引くと税引手取りが1〜11月の平均の70%未満になる人は、「年末調整による不足額徴収繰延承認申請書」を所轄税務署に出して承認を受けると、承認額の2分の1ずつを翌年1月と2月の給与から徴収できます(所得税法192条2項・No.2675)。申請はその年最後の給与を支払う日の前日までです。

仕訳例5(繰延承認あり)|不足額60,000円のうち承認額40,000円を1月・2月に20,000円ずつ徴収する

時点借方金額(円)貸方金額(円)
12月給与給料手当900,000普通預金 ほか通常控除+預り金(源泉所得税)20,000を追加
1月給与給料手当900,000普通預金 ほか通常控除+預り金(源泉所得税)20,000を追加
2月給与給料手当900,000普通預金 ほか通常控除+預り金(源泉所得税)20,000を追加

各月に徴収した20,000円は、その月分の納付書の「年末調整による不足税額」欄に書きます。年末調整のしかた(p.41)の注のとおり、12月給与に対する通常の税額は繰り延べの対象になりません。

預り金がマイナスになった年末調整の仕訳|立替金か未収入金で翌月以降に相殺(仕訳例6)

年末調整で預り金がマイナスになるのは、還付額が12月分の源泉徴収税額を超えたときです。ケースBでは超過額60,000円に対して12月分の預りが18,000円しかなく、差額42,000円が借方残になります。会社が従業員へ先に返した分を、これから国から取り戻していく途中の姿といえます。

ケースB|超過額60,000円が12月分の税額18,000円を超えたときの3つの出口

A 預り金の借方残のまま翌月へ
12月末の残高
預り金(源泉所得税)△42,000
向く会社
3月決算など、決算日をまたがない会社
注意
補助科目で「年末調整還付分」と分けておく
B 立替金へ振り替えて翌月相殺
12月末の残高
立替金 42,000/預り金 0
向く会社
12月決算・貸借対照表に負債のマイナスを出したくない会社
回収
1月18,000・2月18,000・3月6,000を預り金と相殺
C 未収入金へ振り替えて税務署に還付請求
12月末の残高
未収入金 42,000/預り金 0
向く会社
翌月1日から2か月で還付しきれない・徴収税額がなくなった会社
回収
過納額還付請求書を提出し、入金時に未収入金を消す

図:借方残の相手が「翌月以降の自社の納付額」なら立替金、「税務署からの入金」なら未収入金。どちらも回収するまで残高を残し、費用にはしない。

立替金と未収入金の選び方|相手が誰かで決める

立替金は、本来ほかの人が払うお金を会社が一時的に立て替えたときの資産科目です。従業員へ返した42,000円は、国が返すべきお金を会社が先に払った形なので、翌月以降の納付額から取り戻す前提なら立替金がなじみます。

税務署へ過納額還付請求書を出して入金を待つなら、相手は税務署です。金銭債権として未収入金に置くと、入金時に消し込む相手が明確になります。どちらの科目を選んでも損益は動かず、消費税も対象外です。

ケースBの12月給与の仕訳は仕訳例1と同じ形で、借方の預り金が60,000円、振込額が762,000円(702,000円+60,000円)になります。貸方の預り金18,000円と差し引いて、預り金(源泉所得税)は42,000円の借方残です。

仕訳例6(ケースB・12月決算)|12月31日に預り金(源泉所得税)の借方残42,000円を立替金へ振り替え、翌年1〜3月の納付額と相殺した

時点借方金額(円)貸方金額(円)税区分
12月31日(決算整理)立替金42,000預り金(源泉所得税)42,000対象外
1月給与(通常の預り)給料手当 ほか—預り金(源泉所得税)18,000対象外
2月10日(1月分の納付日)預り金(源泉所得税)18,000立替金18,000対象外
3月10日(2月分の納付日)預り金(源泉所得税)18,000立替金18,000対象外
4月10日(3月分の納付日)預り金(源泉所得税)18,000立替金6,000対象外
同上普通預金12,000対象外

1月分・2月分は納付額が0円で、3月分から12,000円の納付が再開します。相殺した額は各月の納付書の「年末調整による超過税額」欄に18,000円・18,000円・6,000円と書きます。

決算日をまたがない会社(3月決算など)は、振替をせず預り金の借方残のまま翌月に進めても実務上は困りません。ただし補助科目を「年末調整還付分」と分けておかないと、月次の預り→納付の突合で差異の原因がわからなくなります。月次の預り金の残高管理は預り金の勘定科目と仕訳が詳しいです。

預り金のマイナスが「なぜ」起きたかを切り分ける

同じ借方残でも、年末調整の還付が原因なら正常です。天引き額の入力漏れや納付額の誤りが原因なら訂正が必要になるでしょう。切り分けは源泉徴収簿の「差引超過額又は不足額」欄の合計と、12月の預り金の借方計上額が一致するかで行います。一致していれば還付が原因で、差があれば別の誤りが混ざっているはずです。

還付しきれないときは税務署から還付|過納額還付請求書の3要件と仕訳(仕訳例7)

翌月以降の納付額から差し引いても取り戻せない会社は、税務署から直接還付を受けます。所得税法施行令313条とNo.2675 が挙げる要件は次の3つです。

税務署から還付を受けられる3要件(所得税法施行令313条・No.2675・2026年9月時点)

要件内容典型例
① 給与の支払者でなくなった解散・廃業・休業で還付ができなくなった12月に事業をやめ、1月以降の給与がない
② 徴収して納付する税額がなくなった徴収税額が0になり、差し引く相手がない従業員が全員退職した
③ 2か月経っても還付しきれない還付すべきこととなった日の属する月の翌月1日から起算して2か月を経過しても過納額が残る見込み超過額が月々の徴収税額に比べて多額

③は「見込み」で足ります。A2-17 の注のとおり、翌月1日から2か月を経過する日までに全額の還付が困難と認められるときは、2か月を待たずに手続できます。ケースBの42,000円は3月分の納付で消えるので③には当たらず、税務署からの還付は使いません。

提出書類と期限|源泉徴収簿2年分の写しと委任状

提出するのは「源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」です。添付書類は受給者ごとの源泉徴収簿の写し(過納額が生じた年分と還付する年分の2年分)と、会社がまとめて受け取るときは各人からの委任状で、e-Taxでも送信できます(A2-17)。提出時期の定めはありませんが、事由が生じた日から5年で請求権が時効にかかります。

退職した人など委任状を出せない人の分は、税務署から本人へ直接還付される仕組みです。その分の請求書は用紙を分けて作ってください。

仕訳例7(税務署から還付)|廃業で1月以降の給与がなく、超過額42,000円の還付請求書を提出して3月に入金された

時点借方金額(円)貸方金額(円)税区分
12月31日(請求書提出)未収入金42,000預り金(源泉所得税)42,000対象外
3月(税務署から入金)普通預金42,000未収入金42,000対象外

入金は先に従業員へ返した分の回収にすぎません。雑収入にすると利益が42,000円膨らみます。この請求書で還付を受ける金額は、納付書の「年末調整による超過税額」欄に含めません(納付書の記載のしかた 注)。納付書とは別ルートで精算するためです。

納付書(所得税徴収高計算書)と年末調整の仕訳の対応|超過税額欄・本税0円

仕訳と納付書は同じ月の同じ数字を写します。「税額」欄にはその月に徴収した源泉所得税を、「年末調整による超過税額」欄にはその月に実際に還付・充当した額を、「不足税額」欄にはその月に実際に徴収した不足額を書きます(納付書の記載のしかた・年末調整のしかた p.42)。12月に精算しきれず1月・2月に繰り越した分は、その1月・2月分の納付書に書きます。

仕訳の預り金の動きと納付書の各欄の対応(ケースB・12月分〜3月分)

12月分(納付 1月10日)
税額
18,000
超過税額
18,000
本税
0(提出は要る)
1月分(納付 2月10日)
税額
18,000
超過税額
18,000
本税
0(提出は要る)
2月分(納付 3月10日)
税額
18,000
超過税額
18,000
本税
0(提出は要る)
3月分(納付 4月10日)
税額
18,000
超過税額
6,000
本税
12,000

図:超過額60,000円のうち12月分で18,000円、1月分で18,000円、2月分で18,000円、3月分で6,000円を充当し、3月分から納付が再開する。本税0円の月も納付書は提出する。

ケース別・納付書の記入と仕訳の対応(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書・2026年9月時点)

ケース・月分「税額」項(円)年末調整による超過税額(円)年末調整による不足税額(円)本税(円)対応する仕訳
A・12月分(㋺型)18,00015,000—3,000仕訳例1・2
A・12月分(㋑型)0—3,0003,000㋑型の表
A・翌年1月精算型(1月分)18,00015,000—3,000仕訳例3
B・12月分18,00018,000—0仕訳例6(振替)
B・1月分/2月分18,00018,000—0仕訳例6(相殺)
B・3月分18,0006,000—12,000仕訳例6(相殺+納付)
C・12月分18,000—9,00027,000仕訳例4
税務署へ還付請求した分—含めない——仕訳例7

本税が0円でも納付書は提出する

年末調整のしかた(p.42)は、過納額を充当・還付したため納付する税額がなくなり本税欄が0になった場合でも、所轄税務署へe-Taxで送信するか郵送・持参で提出するよう求めています。納付がない月に納付書を出し忘れるのが、年末調整後の1〜2月に多い抜けです。e-Taxなら税額0円の徴収高計算書もそのまま送信できます。

納付書は令和8年(2026年)以降分から新しい様式に切り替わっています。新様式はA4の単票式で複写式ではないため、税額などを各片に書く形です。国税庁は記載を簡単にする印字ツールを用意しており、整理番号欄がある従来の複写式の納付書も令和10年9月頃まで使える予定とされています(国税庁「所得税徴収高計算書(納付書)の記載のしかた」)。

弥生・freee・マネーフォワードでの年末調整の仕訳入力|補助科目と摘要

会計ソフトでの入力は、預り金に「源泉所得税」の補助科目を立て、還付行と12月分の徴収行を分けるのが要点です。弥生のサポート情報(ida681)は、12月に還付金65,342円と給与を同時に支給した例で、借方に「預り金 65,342円/年末調整還付金」、貸方に「預り金 50,000円/12月分 源泉所得税」と摘要を分けて入力しています。

会計ソフト入力の型(弥生会計・やよいの青色申告・freee・マネーフォワード クラウド共通・2026年9月時点)

入力する行勘定科目/補助科目摘要の例税区分
12月分の源泉徴収(貸方)預り金/源泉所得税12月分 源泉所得税対象外
年末調整の還付(借方)預り金/源泉所得税年末調整 還付金(従業員名または人数)対象外
不足額の徴収(貸方)預り金/源泉所得税年末調整 不足額対象外
借方残の振替(12月決算)立替金/年末調整還付分年末調整 超過額 繰越対象外
翌月の相殺預り金/源泉所得税 → 立替金1月分 源泉 年調超過額と相殺対象外

給与ソフトから会計ソフトへ仕訳を連携している会社は、還付額が「預り金の借方」で出るか「給料手当の増額」で出るかを12月分だけ確認してください。給料手当に混ざると、法定調書合計表の給与総額と帳簿が合わなくなります。給料支給の一連の仕訳は給料手当の勘定科目と仕訳、賞与で年末調整をするときの控除は賞与の勘定科目と仕訳で扱っています。

個人事業主が従業員の年末調整をする場合

個人事業主も従業員を雇っていれば源泉徴収義務者で、仕訳は法人と同じです。科目は給料手当でなく給料賃金を使う点だけが違います。事業主本人の所得税は年末調整の対象外で、確定申告で精算するため事業主貸で処理します。

よくある質問

年末調整の仕訳で実際によく検索される6問です。

Q1:年末調整の還付金の仕訳はどうしますか?

借方に預り金(源泉所得税)、貸方に普通預金(または現金)です。12月給与と一緒に振り込むなら、給与の仕訳に借方の預り金を1行追加し、振込額をその分増やします。12月分の徴収税額(貸方の預り金)とは別行にして、相殺しないでください。給料手当の金額は変えません。

Q2:年末調整で預り金がマイナスになるのはなぜですか?

還付額が12月分の源泉徴収税額を超えたためです。たとえば12月分の預りが18,000円で還付が60,000円なら、預り金は42,000円の借方残になり、翌月以降の納付額から取り戻す途中の状態にあります。入力ミスを疑う前に、この筋道を確かめてください。源泉徴収簿の超過額の合計と借方計上額が一致していれば正常で、一致しなければ天引き額や納付額の誤りが混ざっているはずです。

Q3:年末調整の還付で預り金がマイナスになったら立替金にするべきですか?

12月決算で貸借対照表に負債のマイナスを出したくないなら、決算整理で立替金へ振り替えます。翌月以降は「預り金(借方)/立替金(貸方)」で相殺していきます。3月決算など決算日をまたがない会社は、補助科目を分けたうえで預り金の借方残のまま翌月に進めても差し支えありません。税務署へ還付請求するなら、相手が税務署になるので未収入金が向きます。

Q4:年末調整の超過額を翌年1月の給与で還付してもいいですか?

問題ありません。No.2675 は、年末調整を行った月分の徴収税額で還付しきれないときに、その後に納付する源泉徴収税額から差し引いて順次還付する方法を認めています。12月給与の支給日までに計算が終わらない会社は、1月給与で還付し、1月分の納付書(納付は2月10日)の「年末調整による超過税額」欄にその額を書いてください。

Q5:年末調整で納付する源泉所得税が0円になったら納付書は出さなくていいですか?

提出は要ります。年末調整のしかた(令和8年分 p.42)は、過納額の充当・還付で本税欄が0になった場合でも、所得税徴収高計算書を所轄税務署へe-Tax・郵送・持参で提出するよう求めた記述です。「税額」欄にその月の徴収税額、「年末調整による超過税額」欄に充当した額を書き、本税を0円にします。

Q6:年末調整の過納額を税務署から還付してもらえるのはどんなときですか?

解散・廃業などで給与の支払者でなくなった、徴収して納付する税額がなくなった、還付すべきこととなった日の翌月1日から2か月を経過しても還付しきれない見込み、の3つのいずれかです(所得税法施行令313条・No.2675)。「年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」に源泉徴収簿の写し2年分と委任状を添えて提出し、入金までは未収入金で持ってください。請求権は事由が生じた日から5年で時効にかかるので、廃業後も忘れずに出しておきたい手続です。

まとめ

年末調整の仕訳を1枚に整理します。

この記事のまとめ

  • 動かす科目は預り金(源泉所得税)だけ。還付は借方、不足額の徴収は貸方。給料手当は変えない(所得税法190条・191条・192条)
  • 12月給与で相殺する型でも翌年1月精算型でも、還付行と当月の徴収行は別行にする。相殺すると納付書の欄に書く数字が追えなくなる
  • ㋑型(12月の税額計算を省略)と㋺型(通常計算)で超過額の見え方が変わる。手取りと納付額は同じ
  • 還付額が12月分の税額を超えたら預り金は借方残になる。翌月以降の納付額から取り戻すなら立替金、税務署に請求するなら未収入金へ振り替える。損益は動かない
  • 税務署からの還付は3要件(支払者でなくなった/徴収税額がなくなった/翌月1日から2か月で還付しきれない)。5年で時効(施行令313条・A2-17)
  • 納付書は「年末調整による超過税額」「不足税額」欄にその月に実際に精算した額を書く。本税0円でも提出。令和8年以降分は新様式(従来の複写式は令和10年9月頃まで使える予定)

年末調整の仕訳 早見表(2026年9月時点)

場面借方貸方納付書に書く欄
超過額を12月給与で還付預り金(源泉所得税)普通預金年末調整による超過税額
不足額を12月給与で徴収普通預金(差引支給が減る)預り金(源泉所得税)年末調整による不足税額
12月分の税額から差し引いて納付預り金(源泉所得税)普通預金本税=税額−超過税額
還付額が12月分の税額を超えた(12月決算)立替金預り金(源泉所得税)超過税額は充当した額まで。残りは翌月以降
翌月以降に相殺預り金(源泉所得税)立替金その月の超過税額欄
税務署へ還付請求未収入金預り金(源泉所得税)超過税額欄に含めない
税務署から入金普通預金未収入金—
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免責事項

※本記事は源泉所得税の年末調整に関する一般的な取扱いを国税庁の公開情報(2026年9月時点・令和8年4月1日現在法令等)に基づいて整理したものです。令和9年分以後は防衛特別所得税が加わるなど制度は変わります。会社ごとの精算方法や科目の選択は決算期・給与ソフトの設定により異なります。最新の法令をご確認のうえ、必要に応じて顧問税理士など有資格者へご相談ください。


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この記事を書いた人

会計事務所で10年以上、法人や個人事業主の帳簿づけと税務申告の手伝いをしてきたTanakaです。決算が近づくと、経営者から「この支払いはどの科目で処理すればいいですか」という電話を何度も受けました。答えは業種や会社の規模で変わります。そこを一つずつ、相手に合わせて説明してきました。

独立してからは、中小企業の経理担当者向けの研修や、freee・マネーフォワード・弥生の科目設定の相談にも応じています。教科書の説明は抽象的で、現場では「とりあえず雑費」で片づけてしまうことも少なくありません。このサイトでは、勘定科目の選び方の判断軸を、具体例をそえて整理しています。最終的な税務判断は、顧問税理士にご相談ください。

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