仕入(仕入高)の勘定科目と仕訳|三分法・売上原価・値引返品の処理【2026年】

この記事でわかること

  • 仕入(仕入高)は「費用」の勘定科目で、決算では売上原価を構成する仕組み
  • 実務で最も多い三分法の仕訳(仕入時・掛け/現金)と、分記法・総記法との違い
  • 期末に必ず必要な棚卸と売上原価の計算(期首+当期仕入−期末)の決算整理仕訳
  • 取得原価に含める仕入諸掛(送料・関税)の扱い
  • まぎらわしい仕入値引・返品(仕入戻し)・割戻・割引の違いと仕訳
  • 見落としやすい仕入割引の「会計=営業外収益」と「消費税=課税仕入の減額」の分岐

公的情報源: 国税庁 タックスアンサー No.6363(仕入れに係る対価の返還等)No.6451(仕入税額控除の対象となるもの)No.6401(仕入控除税額の計算方法)

仕入・棚卸・売上原価の仕訳は、取引量が増えるほど手作業では抜け漏れが起きやすい部分です。仕入の入力から在庫・売上原価の計算までまとめて扱いたい場合は、会計ソフトの活用も選択肢になります。

結論を先に書きます

仕入(損益計算書上の表記は「仕入高」)の勘定科目は、「費用」に分類される勘定科目です。商品を仕入れたときに使い、決算では売れ残りを在庫(繰越商品)に振り替えることで、その期に売れた分だけが「売上原価」として費用に残る仕組みになっています。

実務でいちばん多い記帳方法は三分法です。仕入は費用、売上は収益、繰越商品は資産の3つで管理します。仕入れた時点では全額を「仕入」に計上し、期末の棚卸で在庫分を差し引いて売上原価を確定させる流れが基本です。

この記事の要点
  • 仕入(仕入高)は費用の科目。決算で売上原価に組み替わる(売上原価=期首棚卸+当期仕入−期末棚卸
  • 三分法では仕入時に全額を「仕入」で計上し、期末に繰越商品との振替(決算整理仕訳)を行う
  • 送料・関税などの仕入諸掛は原則として取得原価(仕入)に含める
  • 値引・返品・割戻は「仕入」のマイナス、割引だけは「仕入割引(営業外収益)」と扱いが分かれる
  • 消費税では仕入割引も「対価の返還等」=課税仕入の減額国税庁 No.6363)。会計処理とズレる点に注意

目次

結論:仕入(仕入高)は「費用」の勘定科目

仕入は、商品や原材料を購入したときに使う費用の勘定科目です。損益計算書では「仕入高」という科目名で表示され、売上高のすぐ下に並びます。まずは全体像を押さえてください。

項目内容
勘定科目の分類費用(損益計算書の科目)
損益計算書での表記仕入高
仕訳での表記仕入
決算での役割期末棚卸を差し引いて「売上原価」を構成
対になる科目買掛金(負債)=仕入代金の未払い

ポイントは、仕入=そのまま費用ではないという点です。仕入れても期末に売れ残っていれば、その分は「繰越商品」という資産に振り替わります。費用として残るのは、あくまで「その期に売れた分(売上原価)」だけです。

仕入と買掛金は「費用」と「負債」の対

仕入とセットでよく出てくるのが買掛金です。混同しやすいので、性質の違いを整理しておきます。

科目分類意味使うタイミング
仕入(仕入高)費用商品を仕入れたコスト仕入れたとき
買掛金負債仕入代金の未払い分代金を後払いにするとき

掛けで仕入れた場合は「仕入(費用)」と「買掛金(負債)」を同時に計上します。後日代金を支払ったときに買掛金を減らす、という2段階の流れになります。買掛金そのものの詳しい処理は、買掛金の勘定科目と仕訳で整理しています。

三分法での仕入の仕訳(基本)

三分法は、商品売買を「仕入(費用)」「売上(収益)」「繰越商品(資産)」の3科目で記帳する方法で、実務で最も広く使われています。仕入れた時点では、代金の払い方にかかわらず全額を「仕入」で計上するのが基本です。

以下は、税抜経理・消費税率10%を前提とした仕訳例です(本体10万円・税込11万円の商品を仕入れたケース)。

掛けで仕入れた場合

借方科目金額貸方科目金額
仕入100,000買掛金110,000
仮払消費税10,000

摘要:商品仕入(○○商店・掛け・11月分)

現金で仕入れた場合

借方科目金額貸方科目金額
仕入100,000現金110,000
仮払消費税10,000

貸方が買掛金か現金(普通預金)かが変わるだけで、借方の「仕入」は変わらないのが三分法の分かりやすさです。

分記法・総記法との違い

記帳方法には三分法のほかに分記法・総記法があります。同じ取引でも使う科目が変わるため、違いを押さえておきましょう。

記帳方法使う科目特徴
三分法仕入・売上・繰越商品実務で主流。期末に棚卸で売上原価を算定
分記法商品・商品売買益販売のつど利益を把握。取引が多いと煩雑
総記法商品(1科目)商品勘定に一本化。決算調整が特殊で実務では少数

小売業・卸売業など仕入と販売を繰り返す事業では、三分法が現実的な選択肢になります。以降の仕訳例もすべて三分法で統一します。

期末棚卸と売上原価の計算(決算整理)

三分法では、期中は仕入を全額「仕入」に計上しているだけなので、このままでは売れ残り在庫まで費用になってしまいます。そこで決算で棚卸を行い、在庫分を「繰越商品」へ振り替えて売上原価を確定させます。

売上原価の計算式は次のとおりです。

売上原価の計算式

売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 − 期末商品棚卸高

期首在庫20万円・当期仕入100万円・期末在庫30万円なら、売上原価は「20万+100万−30万=90万円」です。この90万円だけが費用として損益計算書に残ります。

決算整理仕訳は「しいれ・くりしょう/くりしょう・しいれ」と覚えられる2本セットです。

借方科目金額貸方科目金額
仕入200,000繰越商品200,000
繰越商品300,000仕入300,000

上段が期首在庫を仕入に振り替える仕訳(前期末の在庫を当期の売上原価に含める)、下段が期末在庫を仕入から抜く仕訳です。この2本を切れば、「仕入」勘定の残高が自動的に売上原価(90万円)になります。

仕入諸掛(送料・関税)の扱い

仕入れの際にかかる引取運賃・荷役費・関税・保険料などを「仕入諸掛(しいれしょがかり)」といいます。原則は、これらを商品の取得原価(仕入)に含める処理です。商品を仕入れて販売できる状態にするための付随費用は、本体価格と一体で捉えます。

仕入諸掛の例原則の処理補足
引取運賃・送料仕入に含める取得原価に算入
関税・輸入諸費用仕入に含める輸入仕入で頻出
荷役費・保険料仕入に含める仕入に付随する費用
少額・重要性が低い費用支払手数料等で処理する余地継続適用が前提

たとえば本体10万円の商品に引取運賃5,000円がかかった場合、仕入は「100,000+5,000=105,000円」で計上します。運賃を「荷造運賃」など別科目にすると、売上原価が過小になり利益がぶれるため、原則は仕入に含めると覚えておくと安全です。

仕入値引・返品・割戻・割引の違い

仕入れた後の減額処理には、値引・返品(仕入戻し)・割戻・割引の4種類があります。名前が似ていますが、「仕入のマイナス」になるものと「営業外収益」になるものに分かれるのが最大のポイントです。

種類内容会計上の処理
仕入値引品質不良・破損などで代金を減額仕入のマイナス
仕入返品(仕入戻し高)商品そのものを返品仕入のマイナス
仕入割戻大量取引へのリベート(量が要因)仕入のマイナス
仕入割引買掛金の early payment に対する減額(期間・利息が要因)営業外収益(仕入割引)

値引・返品・割戻の3つは、掛け取引なら「買掛金」と「仕入」を同時に減らします。品質不良で税込22,000円の値引きを受けた場合の仕訳は次のとおりです。

借方科目金額貸方科目金額
買掛金22,000仕入20,000
仮払消費税2,000

返品(仕入戻し高)・割戻も、金額が変わるだけで同じ形(買掛金を減らし、仕入を減らす)です。

仕入割引だけは「営業外収益」

仕入割引は、買掛金を支払期日より前に支払ったことへの見返りとして受け取る減額です。これは商品の価格そのものの修正ではなく、早期支払いによる利息相当(金融取引)とみなします。そのため会計上は仕入のマイナスではなく、「仕入割引」という営業外収益で処理します。

買掛金10万円を期日前に支払い、1,000円の割引を受けたケースです。

借方科目金額貸方科目金額
買掛金100,000現金99,000
仕入割引1,000

「割戻=量が要因(仕入のマイナス)」「割引=期間・利息が要因(営業外収益)」という違いを押さえると、迷いにくくなります。

消費税(課税仕入れ)での扱い

商品の仕入れは、原則として課税仕入れにあたり、支払った消費税は仕入税額控除の対象になります(国税庁 No.6451)。税抜経理なら、前述のとおり本体を「仕入」、消費税分を「仮払消費税」で分けて記帳します。

ここで実務のワナになるのが、値引・返品・割戻・割引を受けたときの消費税です。国税庁は、値引き・返品・割戻しに加えて「仕入割引」も、すべて「仕入れに係る対価の返還等」として扱うと示しています(国税庁 No.6363)。つまり消費税の計算では、これらの金額に対応する消費税額を課税仕入れの税額から差し引いて調整します。

種類会計上の分類消費税の扱い(No.6363)
仕入値引・返品・割戻仕入のマイナス仕入れに係る対価の返還等(課税仕入の減額)
仕入割引営業外収益仕入れに係る対価の返還等(課税仕入の減額)

注目すべきは仕入割引です。会計では「営業外収益」なのに、消費税では「課税仕入の減額」として調整します。会計処理と消費税の扱いが分かれるため、税抜経理では仕入割引にも仮払消費税の調整(対価の返還等)が必要になる点に注意してください。控除税額の具体的な計算方法は国税庁 No.6401で確認できます。

仕入の計上・棚卸による売上原価の算定・値引や割引に伴う消費税の調整は、取引が増えるほど手作業では負担が大きくなります。仕入入力から在庫・売上原価・消費税区分までまとめて扱えるのが会計ソフトの強みです。

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仕入・売上原価の仕訳を切る手順

仕入から決算での売上原価確定までを、実際に使う順番で整理します。

  1. 仕入時:全額を「仕入(費用)」で計上(貸方は買掛金/現金)。諸掛は仕入に含める
  2. 値引・返品・割戻を受けたら「仕入」を減額(掛けなら買掛金も減額)
  3. 買掛金を期日前支払で割引されたら「仕入割引(営業外収益)」で計上
  4. 期末に実地棚卸を行い、期末商品棚卸高を確定
  5. 決算整理仕訳(しいれ・くりしょう/くりしょう・しいれ)で在庫を振替
  6. 「売上原価=期首+当期仕入−期末」で売上原価を確認する

この流れを毎期繰り返せば、仕入勘定の残高がそのまま売上原価になり、利益計算が正しく収まります。勘定科目の一覧から関連科目を横断して調べたいときは、勘定科目の用語集もあわせて確認してください。

よくある質問

仕入の勘定科目について、実務で頻出する質問を整理します。

Q1:仕入と仕入高は違う勘定科目ですか?

同じものを指します。仕訳では「仕入」、損益計算書に表示するときは「仕入高」と表記するのが一般的です。どちらも費用の勘定科目で、商品や原材料を購入したコストを計上します。会計ソフトによっては科目名が「仕入高」で統一されている場合もありますが、意味は同じです。

Q2:仕入れても全部が費用にならないのはなぜですか?

期末に売れ残った在庫は、費用ではなく資産(繰越商品)だからです。三分法では期中に全額を「仕入」で計上しますが、決算で売れ残り分を繰越商品へ振り替えます。費用として残るのは「その期に売れた分=売上原価」だけで、計算式は「期首棚卸+当期仕入−期末棚卸」です。

Q3:送料や関税は仕入に含めますか?別科目ですか?

原則として仕入(取得原価)に含めます。引取運賃・関税・荷役費など、商品を仕入れて販売できる状態にするための付随費用(仕入諸掛)は本体価格と一体で捉えるためです。別科目に分けると売上原価が過小になり利益がぶれます。少額で重要性が低い費用のみ、継続適用を前提に別処理とする余地があります。

Q4:仕入値引と仕入割引はどう違いますか?

要因と会計処理が異なります。仕入値引は品質不良などで代金を減額するもので「仕入のマイナス」です。仕入割引は買掛金を期日前に支払ったことへの利息相当(金融取引)で、「仕入割引」という営業外収益で処理します。「割戻=量が要因(仕入のマイナス)」「割引=期間が要因(営業外収益)」と整理すると迷いにくくなります。

Q5:仕入割引は消費税ではどう扱いますか?

会計では営業外収益ですが、消費税では「仕入れに係る対価の返還等」として課税仕入の減額に含めて調整します(国税庁 No.6363)。値引・返品・割戻と同じ扱いです。会計処理と消費税の扱いが分かれる代表例なので、税抜経理では仕入割引にも消費税の調整(対価の返還等)が必要になる点に注意してください。

Q6:個人事業主(青色申告)の仕入も同じ処理ですか?

基本的な考え方は同じです。仕入は費用、期末棚卸を差し引いて売上原価を算定する流れは法人・個人で変わりません。青色申告決算書でも「売上原価=期首商品棚卸高+仕入金額−期末商品棚卸高」で計算します。期末の実地棚卸を必ず行い、棚卸表を保存しておくことが正しい所得計算の前提になります。

まとめ:仕入の勘定科目の要点

仕入(仕入高)の勘定科目と仕訳のポイントを、最後に整理します。

この記事のまとめ
  • 仕入(仕入高)は費用の科目。決算で売上原価に組み替わる(期首棚卸+当期仕入−期末棚卸
  • 三分法では仕入時に全額を「仕入」で計上し、期末に繰越商品との振替(しいれ・くりしょう)を行う
  • 送料・関税などの仕入諸掛は原則として取得原価(仕入)に含める
  • 値引・返品・割戻は仕入のマイナス、割引だけは仕入割引(営業外収益)
  • 消費税では仕入割引も「対価の返還等」=課税仕入の減額。会計とズレる点に注意

仕入は、「費用として計上→期末に在庫を差し引いて売上原価を確定」という一連の流れで捉えると、決算整理までスムーズに理解できます。値引・返品・割戻・割引の違いと、割引の会計と消費税のズレを押さえておけば、実務でつまずくポイントの大半はカバーできます。

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免責事項

※本記事は国税庁の公開情報をもとに整理した一般的な情報です。仕入の記帳方法・消費税の課否・棚卸資産の評価方法など、個別の税務判断は所轄税務署の事前照会(書面照会・無料)または顧問税理士にご相談ください。


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この記事を書いた人

会計・経理アドバイザー / 中小企業支援コンサルタント

経歴
大学卒業後、会計事務所で10年以上勤務し、法人・個人事業主の会計処理、税務申告、経理業務改善を多数経験。特に「勘定科目の設定・運用」に関して、企業規模や業種ごとに最適化したアドバイスを提供してきた。現在は独立し、経理の効率化や会計初心者向けの研修も実施。

専門分野
・勘定科目の選定・運用ルール作り
・会計ソフト導入と科目設定支援
・経理担当者の教育・研修
・中小企業の経営数字可視化サポート

サイトの目的
「勘定科目は難しい…」という声をなくし、初心者でも迷わず正しい科目選択ができるようにすること。具体例・図解・テンプレートを用いて、経理や会計業務の現場で即使える情報を発信しています。

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