インボイス制度では登録番号のない請求書は原則として仕入税額控除ができませんが、経過措置として当面は消費税相当額の80%まで控除できます。控除割合は時期で段階的に下がり、税抜・税込どちらの経理かで仕訳の書き方も変わります。
この記事でわかること
- 登録番号(T番号)がない請求書でも、当面は消費税の80%を控除できる「経過措置」の中身
- 80%控除になったときの仕訳の書き方(税抜経理・税込経理それぞれ)
- 番号がなくても100%控除できる3つの特例(公共交通・自販機・出張旅費)
- 現場で起こりやすい2つのミスと、その防ぎ方
結論を先に書きます
インボイス制度では、登録番号のない請求書(免税事業者など)への支払いは、原則として消費税の仕入税額控除ができません。
ただし急な負担増を避けるための「経過措置」があり、当面は消費税相当額の80%まで控除できます。控除できる割合は時期で段階的に下がり、最終的にゼロになる仕組みです。
実務で迷うのは「いくら控除できるか」よりも、控除できなかった分をどう仕訳に乗せるか。ここを押さえれば、会計ソフトの税区分選びも仕訳もブレません。
- 番号がない請求書は80%控除(2026年9月末まで)→50%→0%と段階的に縮小
- 税抜経理では、控除できない分を本体の経費に上乗せして仕訳する
- 電車・自販機・出張旅費など3つの特例は番号なしでも100%控除
- 「個人店だから番号なし」と決めつけず、T番号を目視で確認するのが鉄則
経過措置とは?控除できる割合は時期で変わる
インボイス制度が始まってから、経理担当者の手元には2種類の請求書が届くようになりました。「T」から始まる登録番号がある請求書と、登録番号がない請求書(免税事業者など)です。
「番号がない請求書は、消費税の経費(仕入税額控除)として認められない」。これは原則として正しい説明です。ただし急激な変化を避けるため、「今のうちは8割だけ経費にしていい」という経過措置が用意されています。
番号がない相手への支払いは、次のスケジュールで控除できる割合が下がっていきます。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月〜2026年9月30日 | 消費税相当額の 80% |
| 2026年10月〜2029年9月30日 | 消費税相当額の 50% |
| 2029年10月1日以降 | 0%(控除不可=全額が経費) |
会計ソフトに入力する際は、T番号がない相手には「控除80%(経過措置)」という専用の税区分を選びます。区分の選択を間違えると消費税の計算がずれるため、最初の設定がいちばん大事なポイントです。
80%控除になると仕訳はどう変わる?
通常(100%控除)と経過措置(80%控除)では、控除しきれない消費税の扱いが変わります。例として、T番号のない個人タクシーに税込11,000円(うち消費税1,000円)を支払ったケースで比較します。
税抜経理方式の場合(多くの会社)
消費税1,000円のうち、80%にあたる800円だけが仮払消費税として認められます。控除できない残り200円は、経費(旅費交通費)に上乗せします。
| 借方科目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 旅費交通費 | 10,200 | 本体10,000円+控除できない税200円 |
| 仮払消費税 | 800 | 本来の税1,000円×80% |
貸方は現金11,000円です。会計ソフトで「課税仕入(控80)」などを選べば、この計算は自動でしてくれる場合がほとんどです。
税込経理方式の場合
税込経理では、仕訳そのものは変わりません。
借方の旅費交通費11,000円/貸方の現金11,000円で計上し、消費税の申告書を作る段階で80%制限がかかります。日々の仕訳はシンプルなぶん、申告時の集計で区分を取り違えないよう注意してください。
番号がなくても「100%経費」にできる特例
インボイス制度には、領収書(インボイス)そのものがなくても、帳簿への記載だけで100%控除が認められる例外があります。相手がT番号を持っていなくても全額控除できる、現場で覚えておきたい3つです。
| 特例名 | 主な対象 |
|---|---|
| 公共交通機関特例 | 3万円未満の電車・バス・船舶(※タクシー・飛行機は対象外) |
| 自動販売機特例 | 3万円未満の自販機・コインロッカー・コインランドリー・ATM手数料など |
| 出張旅費特例 | 従業員に支給する出張日当・宿泊費・交通費など(※社内規定に基づくもの) |
これらに該当する場合は、会計ソフトで「経過措置(80%)」ではなく、通常の「課税仕入(100%)」を選んで問題ありません。特例の対象か経過措置かで税区分が変わるため、ここが判断の分かれ目です。
旅費交通費まわりの課税・非課税の整理は、旅費交通費の勘定科目と課税・非課税の区別もあわせて確認すると、3万円特例の扱いがつかみやすくなります。
よくあるミスと対策
経過措置の処理でつまずきやすいのは、判定の入口にあたる2点です。どちらも「思い込み」が原因で起きます。
ミス1:個人の店だからと勝手に「経過措置」にする
個人事業主でも、T番号を取得している人はたくさんいます。「株式会社じゃないから番号はないだろう」と決めつけるのは危険です。
必ず領収書のT番号の有無を目視で確認する。番号があるのに経過措置で処理すると、本来100%控除できたはずの消費税を取りこぼします。
ミス2:3万円未満なら全部OKだと思い込む
以前の制度(〜2023年9月)には「3万円未満なら領収書なしでOK」というルールがありましたが、現在は廃止されています。
前章の特例(電車・自販機など)に当てはまらない限り、たとえ100円のボールペンでも、T番号がなければ「原則インボイス保存が必要(なければ経過措置)」です。少額だから自動でOK、ではありません。
なお「2期前の売上が1億円以下」の中小企業なら、1万円未満の支払いはインボイスの有無に関わらず100%控除できる少額特例が使えます。自社が対象かどうかは顧問税理士に確認すると、事務負担を大きく減らせます。
よくある質問
Q1:経過措置の80%控除は、いつまで使えますか?
2026年9月30日までは80%、2026年10月から2029年9月30日までは50%、2029年10月1日以降は0%(控除不可)です。割合が段階的に下がるため、いつの取引かで控除額が変わります。
Q2:会計ソフトの税区分は何を選べばよいですか?
T番号がない相手への課税仕入れには「課税仕入(控80)」「経過措置80%」といった専用区分を選びます。区分を選べば、控除できない分を自動で経費に振り替えてくれるソフトがほとんどです。
Q3:タクシー代は公共交通機関特例で100%控除できますか?
できません。公共交通機関特例の対象は電車・バス・船舶で、タクシーと飛行機は対象外です。タクシー代はインボイス(T番号付き領収書)が必要で、番号がなければ経過措置(80%)での処理になります。
Q4:設定を間違えると、どんな影響がありますか?
税区分を取り違えると、消費税を納めすぎたり、逆に少なく納めてペナルティを受けたりする原因になります。80%控除の期間は2026年9月まで続くので、今のうちに処理フローを定着させておくのが安全です。
まとめ:迷ったら「T番号の有無」から確認する
インボイス制度の経過措置(現在は80%控除)における実務ポイントを整理します。
- 領収書に「T番号」があるか必ずチェックする
- 番号がない場合は、会計ソフトで「80%控除」の区分を選ぶ
- 控除できない分は、税抜経理なら本体の経費に上乗せして仕訳する
- 電車・バス・自販機(3万円未満)など特例は番号なしでも100%控除
- 「個人店だから番号なし」と決めつけず、目視確認を徹底する
控除割合は2026年10月から50%へ下がります。区分の選び方と仕訳の型を今のうちに固めておくことが、納税額のミスを防ぐ一番の近道です。
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免責事項
※本記事は公開情報をもとにした一般的な解説です。個別の税区分・控除判定は取引内容により異なるため、最終的な判断は国税庁の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて税理士へご相談ください。
