通勤手当の消費税は、通常必要と認められる金額の全額が課税仕入れ(10%)です。所得税で非課税でも、消費税では従業員に渡した電車代やガソリン代を会社が負担した扱いになり、仕入税額控除ができます。インボイス後も適格請求書は不要で、帳簿のみの保存で控除できます(国税庁 No.6496 ⑩)。
この記事でわかること
- 通勤手当が給与扱いなのに消費税では課税仕入れになる理由を、消費税法基本通達 11-6-5 の本文で確認
- 所得税は非課税・消費税は課税仕入れという2つの判定を1枚の対照表で整理。非課税限度額を超えた部分の扱いも
- 現金支給・定期券の現物支給・マイカー通勤のガソリン代相当で変わる消費税区分と帳簿要件の早見表
- インボイス後の出張旅費等特例(帳簿のみ保存)と、会社が定期券を直接買うときの適格簡易請求書の扱い
- 原則課税・簡易課税・2割特例・免税事業者の課税方式別の控除可否と、税抜経理の仕訳例3本
公的情報源: 国税庁タックスアンサー No.6496「仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存」(参照)/No.2582「電車・バス通勤者の通勤手当」(参照)/No.2585「マイカー・自転車通勤者の通勤手当」(参照)/消費税法基本通達 第11章第6節「仕入税額の控除に係る帳簿及び請求書等の記載事項の特例」(参照)
先に答え
通勤手当の消費税区分は課税仕入れ(10%)です。給与と一緒に払うので不課税に見えますが、中身は従業員が使う電車代・バス代・ガソリン代の負担です。
所得税の非課税限度額(公共交通機関は月15万円)は、消費税の判定に関係ありません。限度額を超えて給与課税された部分も、通勤に通常必要な金額なら課税仕入れのままです。
この記事の要点
- 通勤手当は通常必要と認められる全額が課税仕入れ(10%)。所得税の非課税限度額を超えているかどうかは関係ない(消費税法基本通達 11-6-5)
- インボイス後も適格請求書は不要。従業員名・日付・内容・金額を帳簿に書けば控除できる(国税庁 No.6496 ⑩「出張旅費等」)
- 会社が定期券を買って渡す現物支給も課税仕入れ。ただし3万円以上の定期券は鉄道会社の適格簡易請求書を保存する
- 簡易課税・2割特例の事業者は個別の控除計算をしないので、通勤手当の区分を分けても納税額は変わらない
通勤手当の消費税が課税仕入れになる理由
通勤手当の消費税とは、会社が従業員に払う通勤費用のうち、仕入税額控除の対象になる部分の判定です。結論は通常必要な金額の全額が課税仕入れで、会社が電車代やガソリン代を負担した取引として扱います。
給与や賞与は、労働の対価であって物やサービスの購入ではありません。国税庁 No.6157「課税の対象とならないもの(不課税)の具体例」(令和8年4月1日現在法令等)は、(1)に「給与・賃金」を挙げています。通勤手当だけがこの例外になる理由は、お金の使い道が決まっているからです。
通勤手当の消費税区分を決める判定フロー
- 支給する通勤手当を上から順に確認する
- STEP1通勤の交通機関・交通用具の費用に充てるものか通勤実態のない定額手当・通勤しない人への支給 → 給与=不課税
- STEP2その通勤に通常必要な金額か経路・距離から見て通常必要な範囲 → 課税仕入れ(10%)
- STEP3支給の形はどれか現金支給 → 帳簿のみで控除/会社が定期券を購入 → 3万円以上は適格簡易請求書を保存
- STEP4所得税の限度額を超えているか超過分は給与課税。消費税は STEP2 の結果のまま変わらない
図:通勤手当の消費税は「使い道」と「通常必要な金額か」で決まり、所得税の非課税限度額は判定に入らない。
「通常必要と認められる通勤手当」の範囲|通達 11-6-5
判定の根拠は消費税法基本通達 11-6-5(通常必要であると認められる通勤手当・令和5年課消2-9により追加)です。通達は、通勤者につき通常必要であると認められる部分を次のように定めています。
「事業者が通勤者に支給する通勤手当が、当該通勤者がその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとした場合に、その通勤に通常必要であると認められるもの」
続けて「所法令第20条の2各号《非課税とされる通勤手当》に定める金額を超えているかどうかにかかわらないことに留意する」と書いています。所得税の非課税限度額と、消費税の課税仕入れの範囲は別物だと、通達自身が明記している形です。
なお、この通達は令和5年(2023年)10月のインボイス制度開始にあわせて第6節へ追加されました。改正前は第2節の 11-2-2 に置かれていたため、古い解説では番号が違います。現行の 11-2-2 は「使用人等の発明等に係る報償金等の支給」で、通勤手当の定めではありません。
現物支給(定期券)も課税仕入れ|通達 11-2-1
会社が定期券を買って従業員に渡す場合は、鉄道会社から役務の提供を受ける取引そのものです。消費税法基本通達 11-2-1(現物給付する資産の取得)は、金銭以外の資産を使用人等に給付する場合の課税仕入れ判定を「事業としての資産の譲受けであるかどうか」を基礎に行うとしています。
同じ通達は「その給付が使用人等の給与として所得税の課税の対象とされるかどうかにかかわらない」とも定めています。定期券が給与課税されるかどうかと、課税仕入れになるかどうかは無関係です。
所得税の「非課税」と消費税の「課税仕入れ」は別の判定
「通勤手当 課税 非課税」で調べると、所得税の話と消費税の話が混ざって出てきます。所得税の非課税は従業員の給与として源泉徴収するかどうかの判定で、会社の消費税の計算には影響しません。
通勤手当の所得税と消費税の対照(2026年9月時点)
| 項目 | 所得税(従業員側) | 消費税(会社側) |
|---|---|---|
| 判定の中身 | 給与として課税するか | 会社の課税仕入れになるか |
| 公共交通機関の通勤手当 | 月15万円まで非課税(No.2582) | 通常必要な全額が課税仕入れ(10%) |
| マイカー・自転車の通勤手当 | 片道距離別の限度額まで非課税(No.2585) | 通常必要な全額が課税仕入れ(10%) |
| 限度額を超えた部分 | 超過分は給与として課税 | 通常必要な範囲なら課税仕入れのまま |
| 通勤実態のない定額手当 | 給与として課税 | 不課税(給与・賃金) |
| 根拠 | 所得税法施行令20条の2・No.2508 | 消費税法基本通達 11-6-5・No.6496 ⑩ |
所得税の非課税限度額|公共交通機関は月15万円・マイカーは距離別
国税庁 No.2582「電車・バス通勤者の通勤手当」(令和8年4月1日現在法令等)によると、電車やバスの通勤手当は「最も経済的かつ合理的な経路および方法」の金額が非課税です。1か月当たり15万円を超える場合は15万円が限度額で、新幹線の特急料金は含まれますが、グリーン料金は含まれません。
マイカー・自転車は国税庁 No.2585 が片道距離別に限度額を定めています。片道2キロメートル未満は全額課税、2キロメートル以上10キロメートル未満は月4,200円、95キロメートル以上は月66,400円です。距離区分の全表と社会保険の算定基礎の扱いは通勤手当の勘定科目と仕訳で整理しています。
限度額を超えて支給した部分は、No.2582 のとおり「給与として課税」されます。ここで止まると、消費税でも超過分を不課税にしてしまう間違いが起きます。
限度額を超えた通勤手当の消費税|通常必要な範囲なら課税仕入れのまま
片道8キロメートルのマイカー通勤者に月8,000円を支給した場合、所得税では限度額4,200円を超える3,800円が給与課税です。消費税では8,000円全額が課税仕入れで、通達 11-6-5 が「金額を超えているかどうかにかかわらない」と書いているとおりです。
例外は、通勤の費用に充てる実態がない支給です。通勤していない在宅勤務者への定額支給や、実費とかけ離れた金額は「通常必要」に当たらず、給与そのものとして不課税になります。会計ソフトでは超過分も同じ「課税仕入 10%」で入力し、所得税の源泉計算だけを分けます。
支給形態別の消費税区分と帳簿要件|現金・定期券・マイカー
通勤手当の消費税区分は3形態とも課税仕入れです。違いが出るのは控除に必要な書類で、現金で渡すか、会社が定期券を直接買うかで変わります。
支給形態別 消費税区分・税率・控除に必要な書類(2026年9月時点)
| 支給形態 | 消費税区分 | 税率 | 控除に必要な書類 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 現金で通勤手当を支給(公共交通機関の定期代相当) | 課税仕入れ | 10% | 帳簿のみ(出張旅費等特例) | No.6496 ⑩・通達 11-6-5 |
| 現金で通勤手当を支給(マイカーのガソリン代相当) | 課税仕入れ | 10% | 帳簿のみ(出張旅費等特例) | 同上 |
| 会社が定期券を購入して現物支給(税込3万円未満) | 課税仕入れ | 10% | 帳簿のみ(公共交通機関特例) | No.6496 ①・通達 11-2-1 |
| 会社が定期券を購入して現物支給(税込3万円以上) | 課税仕入れ | 10% | 鉄道会社の適格簡易請求書+帳簿 | No.6496・通達 11-2-1 |
| 通勤実態のない定額手当・在宅勤務者への一律支給 | 不課税 | — | — | No.6157(1)給与・賃金 |
| 有料道路代・駐車場代を実費精算 | 課税仕入れ | 10% | 領収書(適格簡易請求書)+帳簿。税込1万円未満は少額特例の対象 | No.6496 |
現金支給は「出張旅費等特例」で帳簿のみ保存
国税庁 No.6496「仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存」(令和8年4月1日現在法令等)は、請求書等の交付を受けることが困難な取引を10種類挙げています。その⑩が「従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当および通勤手当)」です。
従業員は事業者ではないので、適格請求書を発行できません。そこで帳簿のみの保存で仕入税額控除を認める特例が置かれています。金額の上限はなく、少額特例のような税込1万円未満・2029年9月30日までという条件もありません。
帳簿には国税庁 No.6497 の記載事項に沿って、次の4点を書きます。
- 課税仕入れの相手方の氏名(従業員名)
- 課税仕入れを行った年月日(支給日)
- 資産または役務の内容(「通勤手当」と、出張旅費等特例に当たる旨)
- 支払対価の額(税込の支給額)
給与台帳と会計ソフトの摘要に「通勤手当(出張旅費等特例)」と入れておけば、帳簿要件を満たします。
会社が定期券を直接買う場合は公共交通機関特例か適格簡易請求書
会社が鉄道会社から定期券を買って渡す形は、出張旅費等特例の対象ではありません。会社と鉄道会社の間の取引で、従業員への金銭の支給に当たらないからです。
No.6496 の①「適格請求書の交付義務が免除される税込価額3万円未満の公共交通機関による旅客の運送」に当たれば帳簿のみで控除できます。税込3万円以上の定期券は、鉄道会社が交付する適格簡易請求書(領収書)を保存します。6か月定期は3万円を超えることが多く、券売機やオンライン購入の領収書に登録番号があるかを確認しておきます。
マイカー通勤のガソリン代相当も課税仕入れ
マイカー通勤者に距離に応じて支給する通勤手当は、ガソリン代や有料道路代という課税仕入れに充てるお金です。通達 11-6-5 は「交通用具の使用のために支出する費用」を明記しており、電車代と同じく帳簿のみで控除できます。
ガソリンの購入自体は従業員が行うため、会社がレシートを集める必要はありません。会社の車で通勤させる場合は、会社が給油代を直接払う取引になり、ガソリンスタンドの適格簡易請求書を保存します。
課税方式別の扱い|原則課税・簡易課税・2割特例・免税事業者
通勤手当を課税仕入れにする意味があるのは原則課税の事業者だけです。簡易課税と2割特例は売上税額から控除額を計算するため、通勤手当の区分を分けても納税額は変わりません。
課税方式別 通勤手当の仕入税額控除(2026年9月時点)
| 自社の課税方式 | 通勤手当の控除 | 必要な処理 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 原則課税(本則課税) | 全額控除できる | 帳簿に従業員名・日付・内容・金額を記載(適格請求書は不要) | No.6496 ⑩ |
| 簡易課税 | 個別の控除計算なし | 売上税額×みなし仕入率で計算。通勤手当の区分は納税額に影響しない | No.6505 |
| 2割特例(納付税額=売上税額の2割) | 個別の控除計算なし | 2026年9月30日の属する課税期間まで。区分は納税額に影響しない | No.6498 |
| 免税事業者 | 控除なし | 税込の支給額をそのまま経費に計上 | — |
原則課税では課税売上割合と個別対応方式にも関係する
原則課税で課税売上割合が95%未満の事業者は、課税仕入れを「課税売上にのみ対応」「非課税売上にのみ対応」「共通対応」に分けます。通勤手当は従業員全員に払うため、多くの会社で共通対応の課税仕入れになります。
不動産賃貸や保険代理など非課税売上の多い会社では、この区分けで控除額が変わります。区分の全体像は課税仕入れの勘定科目と消費税区分で確認できます。
経過措置(80%・70%控除)は通勤手当に関係ない
適格請求書発行事業者以外からの仕入れは、2026年9月30日までが仕入税額相当額の80%、2026年10月1日からは70%しか控除できません(国税庁 No.6498・令和8年度税制改正後)。この経過措置は通勤手当には適用されません。
従業員はそもそも適格請求書発行事業者になれる立場ではなく、出張旅費等特例で全額控除が認められているからです。切り替え日をまたぐ他の取引の確認手順は2026年10月1日のインボイス経過措置の切り替えで整理しています。
通勤手当の消費税 仕訳例3本|現金支給・限度額超過・定期券の現物支給
仕訳は税抜経理を前提に、現金支給・マイカーで限度額超過あり・定期券の現物支給の3本を示します。税込経理なら仮払消費税の行を省き、合計額を給料手当に計上します。どちらの方式でも、会計ソフトの税区分は「課税仕入 10%」です。
勘定科目は給料手当(給与手当)が基本で、旅費交通費で処理する会社もあります。科目の選び方は本記事では扱わず、通勤手当の勘定科目と仕訳に任せます。
通勤手当 11,000円(税込・税抜経理)を現金で支給
借方
給料手当(通勤手当) 10,000
仮払消費税 1,000
貸方
普通預金 11,000
図:通勤手当は本体10,000円と仮払消費税1,000円を分けて計上し、仮払消費税が仕入税額控除の対象になる。適格請求書は不要。
仕訳例1|公共交通機関の定期代相当11,000円を給与と一緒に振込
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 給料手当(通勤手当) | 10,000 | 普通預金 | 11,000 | 課税仕入 10% |
| 仮払消費税 | 1,000 |
帳簿の摘要に「通勤手当(出張旅費等特例)」と従業員名を書きます。所得税は月15万円以内なので源泉徴収の対象になりません。
仕訳例2|マイカー通勤(片道8km)に月8,000円を支給・所得税の限度額4,200円を超過
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 給料手当(通勤手当・非課税分) | 3,818 | 普通預金 | 8,000 | 課税仕入 10% |
| 給料手当(通勤手当・課税分) | 3,455 | 課税仕入 10% | ||
| 仮払消費税 | 727 |
所得税では4,200円が非課税、3,800円が給与課税です。消費税では8,000円全額が課税仕入れなので、非課税分と課税分のどちらの行も税区分は「課税仕入 10%」になります。所得税の区分と消費税の区分を、別の列で管理するのがこの仕訳の要点です。
仕訳例3|会社が6か月定期券33,000円を購入して従業員に渡す
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 給料手当(通勤手当) | 30,000 | 普通預金 | 33,000 | 課税仕入 10% |
| 仮払消費税 | 3,000 |
税込3万円以上なので、鉄道会社の領収書(適格簡易請求書)を保存します。6か月分を一括で払っても、消費税は購入時の課税仕入れです。所得税は6か月分を1か月当たりに換算して限度額と比べます。
通勤手当を 現金で支給 と 会社が定期券を購入
- 消費税
- 課税仕入れ 10%
- 必要な書類
- 帳簿のみ(出張旅費等特例)
- 金額の上限
- なし
- 消費税
- 課税仕入れ 10%
- 必要な書類
- 適格簡易請求書+帳簿
- 3万円未満なら
- 帳簿のみ(公共交通機関特例)
図:区分はどちらも課税仕入れ。違いは書類で、現金支給は帳簿のみ、会社購入の定期券は3万円以上で適格簡易請求書が要る。
会計ソフトで選ぶ税区分
会計ソフトの税区分は、現金支給・定期券の現物支給・マイカーのガソリン代相当のすべてが「課税仕入 10%」です。給与計算ソフトから仕訳を連携すると、給与本体と同じ「対象外」で通勤手当が取り込まれることがあります。
通勤手当の行だけ「課税仕入 10%」に直すと覚えておくと、月次の確認が短く済みます。福利厚生費の内訳や法人カードの年会費など、他の科目の区分は福利厚生費の消費税区分と法人カード年会費の消費税区分で扱っています。
通勤手当を不課税にしてしまう3つの誤り
通勤手当の消費税で多い間違いは、給与と一緒に払う=不課税という思い込みです。実務で見かける形を3つ挙げます。
- 給与計算ソフトの連携仕訳で、通勤手当が給与本体と同じ「対象外」のまま取り込まれている
- 所得税の非課税限度額を超えた部分を「給与課税だから消費税も不課税」と処理している
- インボイス開始後に「従業員から適格請求書をもらえないので控除できない」と判断している
どれも通勤手当の消費税を過大に納めている状態です。原則課税の会社なら、通勤手当の合計額×10/110 の分だけ納税額が変わります。従業員20人に月平均1万円を払う会社で、年間約21万8,000円の仕入税額です。
逆に、通勤実態のない定額支給を課税仕入れにしている場合は控除の取りすぎになります。出張旅費との線引きは旅費交通費の勘定科目と課税・非課税の区別で確認できます。
よくある質問
通勤手当の消費税で実際によく検索される6問です。
Q1:通勤手当に消費税はかかりますか?
かかります。通常必要と認められる通勤手当は、全額が課税仕入れ(10%)です。従業員に渡すお金でも、中身は電車代やガソリン代の負担なので、会社が交通機関の役務を仕入れた扱いになります。所得税で非課税かどうかは、消費税の判定に関係ありません。
Q2:通勤手当の消費税区分はなぜ課税仕入れになるのですか?
使い道が通勤の交通費に決まっているからです。給与や賞与は労働の対価なので不課税(国税庁 No.6157)ですが、消費税法基本通達 11-6-5 は「通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てる」通勤手当を課税仕入れの対象としています。通勤実態のない定額手当は給与そのものなので不課税です。
Q3:通勤手当の仕入税額控除にインボイス(適格請求書)は必要ですか?
不要です。国税庁 No.6496 は「従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当および通勤手当)」を帳簿のみの保存で控除できる取引に挙げています。帳簿に従業員名・支給日・「通勤手当(出張旅費等特例)」・金額を書けば足ります。金額の上限も期限もありません。
Q4:所得税の非課税限度額を超えた通勤手当は消費税でどう扱いますか?
超えた部分も課税仕入れです。通達 11-6-5 は「所法令第20条の2各号に定める金額を超えているかどうかにかかわらない」と定めています。片道8kmのマイカー通勤者に月8,000円を支給した場合、所得税は限度額4,200円との差額3,800円が給与課税ですが、消費税は8,000円全額を課税仕入れにします。
Q5:会社が定期券を買って渡す場合の消費税はどうなりますか?
課税仕入れです。消費税法基本通達 11-2-1 は、現物給付する資産の取得が課税仕入れになるかを「事業としての資産の譲受けかどうか」で判定し、給与課税されるかどうかは関係ないとしています。税込3万円未満なら公共交通機関特例で帳簿のみ、3万円以上なら鉄道会社の適格簡易請求書を保存します。
Q6:簡易課税や2割特例の会社でも通勤手当を課税仕入れに分ける必要がありますか?
納税額には影響しません。簡易課税は売上税額×みなし仕入率(No.6505)、2割特例は売上税額の2割(No.6498・2026年9月30日の属する課税期間まで)で納付税額を計算し、個別の課税仕入れを集計しないからです。ただし将来原則課税に戻る可能性があるなら、会計ソフトの税区分は「課税仕入 10%」で統一しておくと切り替え時に直す手間が省けます。
まとめ
通勤手当の消費税区分と控除の条件を、1枚に整理します。
この記事のまとめ
- 通勤手当は通常必要な全額が課税仕入れ(10%)。給与と一緒に払っても不課税にしない
- 所得税の非課税限度額(公共交通機関は月15万円・マイカーは距離別)は消費税の判定に関係ない。超過分も課税仕入れのまま(通達 11-6-5)
- インボイス後も適格請求書は不要。帳簿に従業員名・日付・内容・金額を書く(No.6496 ⑩ 出張旅費等特例)
- 会社が定期券を直接買う場合は、税込3万円以上で適格簡易請求書を保存(3万円未満は公共交通機関特例)
- 簡易課税・2割特例は個別の控除計算をしないので納税額は変わらない。免税事業者は控除なし
通勤手当の消費税 早見表(2026年9月時点)
| 場面 | 所得税 | 消費税 | 控除に必要な書類 |
|---|---|---|---|
| 電車・バスの定期代相当を現金支給(月15万円以内) | 非課税 | 課税仕入れ 10% | 帳簿のみ |
| 電車・バスの定期代相当を現金支給(月15万円超) | 超過分は給与課税 | 課税仕入れ 10% | 帳簿のみ |
| マイカー通勤の距離別支給(限度額内) | 非課税 | 課税仕入れ 10% | 帳簿のみ |
| マイカー通勤の距離別支給(限度額超) | 超過分は給与課税 | 課税仕入れ 10% | 帳簿のみ |
| 会社が定期券を購入して渡す(税込3万円以上) | 1か月換算で限度額と比較 | 課税仕入れ 10% | 適格簡易請求書+帳簿 |
| 通勤実態のない定額手当 | 給与課税 | 不課税 | — |
免責事項
※本記事は消費税・所得税の一般的な取扱いを国税庁の公開情報(2026年9月時点)に基づいて整理したものです。課税方式の選択や仕入税額控除の適用可否などの個別判断は、事業者の状況により異なります。最新の法令をご確認のうえ、必要に応じて顧問税理士など有資格者へご相談ください。
