海外出張の消費税は、国際線の航空券が免税、海外のホテル・食事・タクシー・日当が不課税、国内区間の移動と国内空港の施設使用料だけが課税仕入れ、という3区分で処理します。海外出張のために支給した旅費・宿泊費・日当は原則として課税仕入れになりません(国税庁 No.6459・2026年4月1日現在)。仕入税額控除が取れるのは支出全体のうち国内で受けた役務の分だけです。
この記事でわかること
- 海外出張の支出が不課税・免税・課税のどれになるかを、消費税法4条3項・7条1項3号・施行令6条2項の本文で判定する順番
- 航空券・燃油サーチャージ・空港使用料・海外ホテル・現地交通・通訳・日当・支度金・海外保険・クレカ手数料など支出項目22行の早見表(区分×仕入税額控除×根拠)
- 迷いやすい境界4つ=国内区間の乗継(24時間ルール)・海外パック旅行・自宅⇔空港の交通費・海外で買った備品の輸入消費税
- 海外出張の日当・支度金が課税仕入れにならない理由と、国内出張の日当(課税仕入れ)との対比。所得税の非課税限度(所基通9-3)との違い
- 税抜経理の仕訳例と出張精算書の書き方、原則課税・簡易課税・2割特例での違い、インボイスで要る書類・要らない書類、業務委託先の出張費の扱い
公的情報源: 国税庁タックスアンサー No.6459「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」(参照)/No.6210「国外取引」(参照)/消費税法基本通達 第7章第2節「輸出免税等の範囲」7-2-4・7-2-6(参照)/同 第11章第6節 11-6-4(参照)
先に答え
海外出張の消費税は、支出ごとに「その役務を国内で受けたか」を見て、国内なら課税・国境をまたぐ輸送なら免税・国外なら不課税に分けます。1枚の精算書の中でも、自宅から空港までのタクシーは課税、国際線は免税、現地のホテルは不課税、と行ごとに区分が変わります。
仕入税額控除を取れるのは課税の行だけです。免税と不課税の行は、支払った側から見るとどちらも「控除できない支出」で、会計ソフトの税区分は「対象外」になります。日当と支度金も海外出張の分は課税仕入れになりません。
この記事の要点
- 判定の軸は役務の提供が行われた場所(消法4条3項2号・No.6210)。国内なら課税、国外なら不課税。国内と国外にまたがる旅客輸送は出発地か到着地が国内なら国内取引で、そのうえで免税(消令6条2項1号・消法7条1項3号)
- 国際線の航空券・燃油サーチャージ=免税、海外のホテル・食事・タクシー・通訳・展示会出展料=不課税、国内区間の交通・国内空港の施設使用料・国内前泊=課税。控除できるのは課税の行だけ
- 国際線チケットに含まれる国内区間は、契約上国際輸送の一環で国内乗継地での待ち時間が24時間以内なら全体が免税(消基通7-2-4)。別に買った国内線は課税
- 海外出張の日当・支度金は不課税で控除なし(No.6459)。国内出張の日当は通常必要な範囲が課税仕入れ=ここが国内と海外の一番の違い
- 簡易課税・2割特例でも区分は付ける。納税額には効かないが、原則課税に戻った期に同じ帳簿の付け方で控除を計算するため
海外出張の消費税は「役務を受けた場所」で決まる|不課税・免税・課税の3区分
海外出張の消費税とは、出張に伴う支出を国内取引か国外取引かで分け、国内取引の課税仕入れだけ仕入税額控除の対象にする処理です。消費税の課税対象は「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等」に限られます(消法4条1項)。国外で受けた役務は、そもそも消費税の世界の外側です。
役務の提供が国内で行われたかは、原則としてその役務の提供が行われた場所で判定します(消法4条3項2号・国税庁 No.6210)。海外のホテルに泊まる、現地でタクシーに乗る、現地の通訳を雇う。これらは全部、役務の提供場所が国外なので不課税です。
海外出張の支出1行ごとに消費税区分を決める判定フロー
- 精算書の行ごとに「誰から・どこで受けた役務か」を上から確認する
- STEP1国内と国外にまたがる旅客輸送か(国際線・国際フェリー)Yesなら国内取引のうえで免税(消法7条1項3号)。燃油サーチャージも運賃の一部。控除なし・税区分は対象外
- STEP2役務の提供場所は国外か(海外ホテル・現地交通・通訳・出展料)Yesなら不課税(消法4条3項2号・No.6210)。控除なし・税区分は対象外
- STEP3従業員に渡す日当・支度金か海外出張分は課税仕入れにならない(No.6459)。国内出張分は通常必要な範囲が課税仕入れ
- STEP4残りは国内で受けた役務=課税仕入れ自宅⇔空港の交通費・国内空港の施設使用料・国内前泊・国内で借りたWi-Fi。適格請求書か帳簿特例で控除。保険料・行政手数料は非課税
図:STEP1〜3に当たる行は控除なし。STEP4に残った国内の役務だけが仕入税額控除の対象になる。
国外取引=不課税|海外のホテル・食事・タクシー・通訳・展示会
海外で受けた役務は不課税です。国税庁 No.6157 は課税の対象とならない取引の具体例を挙げていますが、根拠はもっと手前にあります。消費税法4条1項が「国内において」と限定している以上、国外で完結する取引は課税の要件を満たしません。
不課税の支出には日本の消費税が1円も含まれていません。現地で払った付加価値税(VAT・GST)は外国の税金で、日本の仕入税額控除には使えません。領収書に「TAX 10%」とあっても、日本の消費税10%と混同しないことが第一歩です。
会計ソフトでは税区分「対象外」や「不課税仕入」を選びます。金額は現地通貨を支払日のレートで円換算し、全額を旅費交通費などの費用にします。科目の選び方はホテル代・宿泊費の勘定科目と仕訳で扱っています。
国際輸送=免税|航空券と燃油サーチャージは「国内取引だが税率0%」
国際線の航空券は不課税ではなく免税です。国内と国外にまたがる旅客輸送は、出発地または到着地が国内にあれば国内取引と判定します(消令6条2項1号・消基通5-7-13)。そのうえで消費税法7条1項3号が、この国際輸送を免税にしています。
免税は「課税対象だが税率0%」なので、航空会社側は課税売上割合の分子にも分母にも入れます(No.6209)。一方、買う側の会社にとっては消費税がゼロの支出で、控除できないという結果は不課税と同じです。会計ソフトに「免税仕入」の区分が無ければ「対象外」で構いません。
燃油サーチャージは国際運賃の一部として航空会社が免税で請求します。逆に国内空港の旅客サービス施設使用料や旅客保安サービス料は、国内の空港施設を使う役務なので課税です。航空会社の領収書はこの区分を分けて表示しているので、行ごとに読み取ります。
国内で受けた役務=課税|自宅から空港まで・国内空港の施設使用料・前泊
海外出張でも国内で受けた役務は通常の課税仕入れです。自宅や会社から空港までの電車・タクシー、空港の駐車場、前泊した国内ホテル、国内業者から借りたWi-Fiルーター。これらは適格請求書または帳簿特例で仕入税額控除を取ります。
公共交通機関の3万円未満特例(税込)は、船舶・バス・鉄道が対象で航空機は含まれません(No.6496 ①・消令70条の9第2項1号)。国内線を別に買ったときは航空会社の電子領収書を適格請求書として保存します。鉄道やバスは3万円未満なら帳簿のみで足ります。
海外出張の支出項目別 消費税区分と仕入税額控除の早見表
海外出張の精算書に載る支出は、同じ「旅費交通費」の科目でも税区分が4種類に割れます。課税・非課税・免税・不課税の4つを1行ずつ判定し、控除を取れるのは課税だけと押さえておけば、精算書のチェックは機械的に進みます。
海外出張の支出項目別 消費税区分・仕入税額控除・根拠の早見表(買手が国内の課税事業者・2026年9月時点)
| 支出項目 | 消費税区分 | 仕入税額控除 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 国際線の航空運賃(往復) | 免税 | できない | 消法7条1項3号・消令6条2項1号 |
| 燃油サーチャージ(国際線) | 免税(運賃の一部) | できない | 消法7条1項3号 |
| 国際線チケットに含まれる国内区間(乗継24時間以内) | 免税(国際輸送の一環) | できない | 消基通7-2-4 |
| 別に買った国内線・新幹線(自宅⇔国際空港) | 課税10% | できる | 消法2条1項12号・No.6496 |
| 国内空港の旅客サービス施設使用料・保安サービス料 | 課税10% | できる | 国内の役務(消法4条3項2号) |
| 海外空港の空港税・出国税・入国税 | 不課税(外国の税・国外の役務) | できない | 消法4条1項・No.6210 |
| 国際観光旅客税(日本出国時1,000円) | 不課税(租税) | できない | 国際観光旅客税法 |
| 海外のホテル宿泊費 | 不課税(国外取引) | できない | 消法4条3項2号・消基通7-2-6(2) |
| 国内での前泊・後泊ホテル | 課税10% | できる | 消法4条3項2号 |
| 現地のタクシー・鉄道・レンタカー | 不課税 | できない | 消法4条3項2号・No.6210 |
| 現地の通訳・ガイド・展示会出展料 | 不課税 | できない | 消法4条3項2号・消基通7-2-6(2) |
| 現地の食事・接待 | 不課税 | できない | 消法4条3項2号 |
| 海外出張の日当 | 不課税(課税仕入れに該当しない) | できない | No.6459 |
| 海外出張の支度金・渡航手当 | 不課税(同上) | できない | No.6459 |
| 国内出張の日当(対比) | 課税10%(通常必要な範囲) | できる(帳簿のみ) | No.6459・消基通11-6-4 |
| 海外旅行保険の保険料(国内保険会社) | 非課税 | できない | 消法別表第二第3号 |
| パスポート発給手数料(都道府県) | 非課税(行政手数料) | できない | 消基通6-5-1 |
| 外国大使館へのビザ申請手数料 | 不課税 | できない | 消法4条1項 |
| クレジットカードの海外事務手数料(外貨換算手数料) | 非課税(外国為替業務) | できない | 消法別表第二第5号ニ・消基通6-5-3 |
| 国内業者から借りた海外用Wi-Fiルーター | 課税10% | できる | 消法4条3項2号 |
| 海外で買った備品の現地代金 | 不課税 | できない | 消法4条3項1号(引渡し場所が国外) |
| 税関で納めた輸入消費税(免税範囲を超える持ち帰り) | 課税貨物の引取り | できる | 消法30条1項・No.6563 |
国内区間の航空券|国際線の一環なら免税・別切りなら課税(24時間ルール)
地方空港から羽田や成田で乗り継いで海外へ行く場合、国内区間の扱いが分かれます。消費税法基本通達7-2-4 は、契約上国際輸送の一環であることが明らかで、国内乗継地での到着から出発までが時刻表上24時間以内なら、その国内区間も国際輸送として免税にすると定めています。
つまり1枚の国際線チケットとして買った「福岡→羽田→ロンドン」は、福岡→羽田の分も免税です。反対に、福岡→羽田を別のチケットで買った場合や、乗継地で1泊以上して24時間を超える場合は、国内区間が通常の国内輸送=課税10%になります。
判定は航空会社の領収書の内訳で確認します。同じ会社のチケットでも、国内区間が「課税」で表示されていれば別切り扱いです。精算書ではこの行だけ課税に分けます。
海外パック旅行|国内旅行会社の手配でも国外部分は不課税(消基通7-2-6)
国内の旅行会社に海外出張のパッケージ(航空券+ホテル+送迎)を頼んだ場合も、旅行会社が国内法人だから全部課税、とはなりません。消費税法基本通達7-2-6 は海外パック旅行を国内における役務の提供と国外における役務の提供に区分すると定めています。
- 国内の役務=課税: 国内輸送、パスポート交付申請などの事務代行。輸出免税は受けられない(7-2-6(1))
- 国外の役務=不課税: 国内から国外・国外から国外・国外から国内への移動に伴う輸送、国外のホテル宿泊、国外での旅行案内(7-2-6(2))
旅行会社の請求書には、通常この区分に沿った内訳が載っています。内訳が無ければ旅行会社に区分の明細を求めます。合計額だけの請求書を「国内法人だから全額課税」で処理すると、控除の取り過ぎになります。
自宅⇔空港の交通費と前泊は課税|海外出張の中で一番見落とす控除
海外出張の精算書で控除漏れが出やすいのは、国内部分です。自宅から成田までの特急、空港の駐車場、早朝便のための前泊ホテル。金額は小さくても、これらは全部国内で受けた課税仕入れで、控除を取れます。
出張全体を「海外だから対象外」と一括りにして、国内部分まで不課税で切ってしまう処理が実務では多く見られます。精算書のフォーマットを「国内区間」と「海外区間」で分けておくと、この漏れを防げます。
海外で買った備品を持ち帰った|現地代金は不課税・税関で納めた消費税は控除できる
現地で買った備品やサンプルの代金は、資産の譲渡場所が国外なので不課税です(消法4条3項1号)。ただし日本に持ち帰るときは別の話になります。保税地域から引き取る外国貨物には輸入消費税がかかり、携帯品も免税範囲を超えれば税関で納めます(No.6563)。
税関で納めた消費税は「課税貨物の引取りに係る消費税」として仕入税額控除の対象になります(消法30条1項)。控除には税関が発行する輸入許可書や賦課決定通知書の保存が要ります。現地の店の領収書では控除できません。関税の科目と処理は関税の勘定科目・仕訳と輸入消費税の処理で扱っています。
海外出張の日当・支度金の消費税|課税仕入れにならない理由と国内出張との対比
海外出張の日当と支度金は、課税仕入れになりません。国税庁 No.6459(2026年4月1日現在)は、国内の出張について「通常必要であると認められる部分の金額は課税仕入れになります」としたうえで、「海外への出張または転勤のために支給した出張旅費、宿泊費、日当等は原則として課税仕入れになりません」と明記しています。
国内出張と海外出張の日当・旅費 消費税と所得税の扱いの対比(2026年9月時点)
| 比較項目 | 国内出張の日当・旅費 | 海外出張の日当・旅費 |
|---|---|---|
| 消費税の区分 | 通常必要な範囲=課税仕入れ10% | 課税仕入れにならない(不課税) |
| 仕入税額控除 | できる(帳簿のみで可) | できない |
| 控除に要る書類 | 帳簿に法定事項を記載(出張旅費特例) | 不要(そもそも控除しない) |
| 所得税(受け取る従業員) | 通常必要な範囲は非課税(所法9条1項4号・所基通9-3) | 同じ(所基通9-3で判定) |
| 通常必要な範囲を超えた分 | 消費税は課税仕入れにならず、所得税は給与 | 消費税は変わらず不課税、所得税は給与(所基通9-4) |
| 根拠 | No.6459・消基通11-6-4 | No.6459 |
国内日当が課税仕入れで海外日当が不課税になる理由
日当は従業員に渡す金銭で、会社がどこかから役務を買っているわけではありません。それでも国内出張の日当が課税仕入れになるのは、従業員が国内で交通機関や飲食などの課税仕入れをする費用に充てる金銭だからです。消費税法基本通達11-6-4 は「その旅行に必要な支出に充てるために支給する金品」として、この考え方を帳簿特例の対象範囲に書いています。
海外出張の日当は、充てる先が国外の役務です。従業員が現地で使う食事代や交通費は不課税なので、その原資となる日当も課税仕入れの性格を持ちません。国税庁が No.6459 で海外出張を除外しているのは、この理屈からです。
なお、以前は消費税法基本通達11-2-1 の注書きに海外出張旅費の記載がありましたが、令和5年の改正で通達の構成が変わり、現行の11-2-1は「使用人等に金銭以外の資産を給付する場合」という別の項目になっています。現行の根拠として引くなら No.6459 と、国外取引の判定(消法4条3項2号)です。
支度金・渡航手当も同じ扱い
海外出張に先立って渡す支度金や渡航手当も、消費税では日当と同じで課税仕入れになりません。国内で買うスーツケースや衣類の購入に充てられたとしても、会社が渡した金銭そのものは従業員への支給で、会社の課税仕入れとは切り離して考えます。
例外は、会社が自分の名前で国内の店から備品を買って従業員に貸与する形です。この場合は会社の課税仕入れとして控除できます。「金銭で渡すか、会社が買って渡すか」で区分が変わるので、出張旅費規程で支度金の形を決めておくと精算がぶれません。
所得税側の非課税限度は別の基準(所基通9-3)
従業員が受け取る日当・支度金の所得税は、消費税と別に判定します。所得税法9条1項4号は旅費のうち通常必要な範囲を非課税とし、所得税基本通達9-3 は判定にあたって「役員・使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれた基準か」「同業種・同規模の他社と比べて相当か」の2点を勘案すると定めています。
海外出張の日当は、この2点を満たしていれば所得税は非課税で、消費税は不課税です。国内出張の日当は、同じく所得税は非課税ですが、消費税は課税仕入れになります。所得税で非課税かどうかと、消費税で課税仕入れかどうかは連動しません。この切り分けは通勤手当と同じ構造で、通勤手当の消費税が課税仕入れになる理由で詳しく書いています。日当の金額設定と規程は出張手当(日当)の勘定科目と節税メリットを参照してください。
業務委託先(フリーランス)の海外出張費を会社が負担したら
外部のフリーランスや業務委託先に海外出張を頼み、旅費を会社が負担する場合は、支払いの形で区分が決まります。
- 委託先が立て替え、報酬に上乗せして請求: 上乗せ分も委託先の報酬の一部。国内の委託先が行う役務の対価として、全額が課税仕入れ10%(適格請求書が要る)。委託先の側では国際線や海外ホテルの分も売上に含めて課税
- 会社が航空券やホテルを会社名義で直接手配: 会社自身の支出として、国際線は免税・海外ホテルは不課税・国内区間は課税で行ごとに区分
- 委託先が会社名義の領収書で立替精算(立替金精算書+領収書の写し): 会社の支出として本来の区分で処理。委託先の売上にはならない
一番多いのは1つ目で、報酬と旅費を合算した請求書が来ます。この場合、中身が海外ホテル代でも、会社が買っているのは「委託先の国内の役務」なので課税仕入れです。立替精算にするなら、委託先に会社宛の領収書を取ってもらい、立替金精算書を添えます。仮払金・立替金の科目は仮払金の勘定科目と精算の処理で整理しています。
海外出張の仕訳例と出張精算書の書き方|原則課税・簡易課税・2割特例の違い
仕訳は税抜経理を前提に、東京の会社の社員がドイツの展示会へ3泊5日で出張した例で示します。国際線チケットは1枚(成田発着)、自宅⇔成田は電車、現地はホテルとタクシー、日当は1日8,000円です。
海外出張3泊5日の精算(税抜経理)を区分ごとに分けた仕訳
借方
旅費交通費(免税・国際線) 180,000
旅費交通費(課税・国内) 6,000
仮払消費税 600
旅費交通費(不課税・現地) 95,000
旅費交通費(不課税・日当) 40,000
貸方
普通預金 321,600
図:合計321,600円のうち、仮払消費税が立つのは国内の課税分6,600円(税抜6,000円)だけ。国際線・現地費用・日当は対象外。
海外出張3泊5日の仕訳例(税抜経理・原則課税・2026年9月時点)
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 旅費交通費(国際線運賃+燃油サーチャージ) | 180,000 | 普通預金 | 180,000 | 対象外(免税仕入) |
| 旅費交通費(国内空港施設使用料・自宅⇔成田の電車) | 6,000 | 普通預金 | 6,600 | 課税仕入 10% |
| 仮払消費税 | 600 | |||
| 旅費交通費(現地ホテル・タクシー・食事) | 95,000 | 普通預金 | 95,000 | 対象外(不課税) |
| 旅費交通費(日当 8,000円×5日) | 40,000 | 普通預金 | 40,000 | 対象外(不課税) |
国内の課税分は、空港施設使用料が航空会社の領収書、電車が3万円未満の公共交通機関特例で帳簿のみです。仮払消費税600円がこの出張で控除できる全額で、残り315,000円は控除の対象になりません。
原則課税・簡易課税・2割特例・免税事業者でどう違うか
仕入側の区分が納税額に効くのは原則課税だけです。簡易課税と2割特例は売上の消費税から納税額を計算するため、海外出張の支出をどう区分しても納税額は変わりません。
課税方式別 海外出張の支出区分が納税額に与える影響(2026年9月時点)
| 自社の課税方式 | 国内の課税分(6,000円)の控除 | 免税・不課税分の扱い | 区分を付ける必要 |
|---|---|---|---|
| 原則課税(一般課税) | 仮払消費税600円を控除 | 控除なし。税区分は対象外 | あり(控除額に直結) |
| 簡易課税 | 控除計算なし(みなし仕入率で計算) | 影響なし | あり(原則課税に戻る期に備えて同じ付け方を維持) |
| 2割特例(2026年9月30日の属する課税期間まで) | 控除計算なし(売上税額の2割を納付) | 影響なし | あり(同上) |
| 免税事業者 | 申告なし | 申告なし | 税込経理で費用計上のみ |
簡易課税や2割特例の期でも区分を付ける理由は、基準期間の課税売上高が5,000万円を超えて原則課税に戻った期に、同じ帳簿の付け方で控除を計算するためです。区分の付け方は消費税の勘定科目と方式別の処理、課税仕入れの3区分は課税仕入れの勘定科目と消費税区分で扱っています。
出張精算書は「国内区間・海外区間・日当」の3ブロックに分ける
海外出張の精算書は、支出を時系列で並べるだけだと税区分の確認に時間がかかります。国内区間・海外区間・日当の3ブロックに分け、ブロックごとに税区分の列を固定しておくと、経理側は国内区間の行だけ適格請求書と照合すれば済みます。
海外出張の精算書 記載例(3泊5日・区分列を固定した形・2026年9月時点)
| ブロック | 日付 | 内容 | 金額(円) | 税区分 | 証憑 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内区間 | 3/10 | 自宅→成田(電車) | 3,200 | 課税10% | 帳簿のみ(3万円未満の公共交通機関) |
| 国内区間 | 3/10 | 成田空港 旅客サービス施設使用料 | 2,800 | 課税10% | 航空会社の電子領収書(適格請求書) |
| 国際線 | 3/10 | 成田⇔フランクフルト 運賃+燃油サーチャージ | 180,000 | 免税(対象外) | 航空会社の領収書 |
| 海外区間 | 3/10〜13 | ホテル3泊 | 60,000 | 不課税(対象外) | ホテルの領収書(現地通貨) |
| 海外区間 | 3/11〜13 | タクシー・食事 | 35,000 | 不課税(対象外) | 現地の領収書 |
| 日当 | 3/10〜14 | 海外日当 8,000円×5日 | 40,000 | 不課税(対象外) | 出張旅費規程・出張報告書 |
| 国内区間 | 3/14 | 成田→自宅(電車) | 3,200 | 課税10% | 帳簿のみ |
海外区間の行は、現地通貨の金額と換算レートも書いておきます。換算は支払日の電信売買相場の仲値(TTM)が原則で、社内で継続適用する方法を決めておけば足ります。航空券のキャンセル料が出た場合の区分はキャンセル料・解約違約金の消費税区分にまとめています。
海外出張とインボイス制度|国外取引に適格請求書は不要・国内区間だけ書類が要る
インボイス制度で海外出張の処理が変わったのは、国内で受けた課税仕入れの控除要件だけです。国際線・海外ホテル・現地交通・日当は、もともと仕入税額控除の対象ではないので、適格請求書があってもなくても結果は変わりません。
海外出張の支出 インボイス後に控除へ要る書類の違い
- 対象の例
- 自宅⇔空港の交通・国内空港施設使用料・前泊ホテル・国内線
- 控除
- できる
- 要る書類
- 適格請求書。鉄道・バス3万円未満と従業員へ渡す出張旅費は帳簿のみ
- 航空機
- 公共交通機関特例の対象外=電子領収書を保存
- 対象の例
- 国際線・燃油サーチャージ・海外ホテル・現地交通・通訳・海外日当・支度金
- 控除
- できない
- 要る書類
- 適格請求書は不要。法人税・所得税の経費証憑として領収書を保存
- 登録番号
- 相手が海外事業者なら番号は無い。それで問題ない
図:インボイスの有無を確認する行は左側だけ。右側は控除の対象外なので登録番号を探さなくてよい。
国外取引・免税取引にインボイスは要らない
海外のホテルや現地のタクシーに適格請求書発行事業者の登録番号(T+13桁)はありません。それで正しい状態です。控除しない支出に控除の要件は掛かりません。国際線も同じで、航空会社の領収書に登録番号があっても、免税の運賃部分は控除に使いません。
法人税・所得税の経費としての証憑は別に要ります。現地の領収書、航空会社の領収書、出張報告書を通常どおり保存します。
国内区間・空港使用料は航空会社の適格請求書か帳簿特例
国内で受けた課税仕入れは、通常の控除要件に従います。ポイントは3つです。
- 航空機は公共交通機関特例の対象外: 3万円未満で帳簿のみとできるのは船舶・バス・鉄道(No.6496 ①)。国内線と空港施設使用料は航空会社の電子領収書を保存する
- 鉄道・バスは3万円未満なら帳簿のみ: 自宅⇔空港の電車は帳簿に「公共交通機関特例」と分かる記載で足りる
- 少額特例: 基準期間の課税売上高1億円以下などの事業者は、2029年9月30日まで税込1万円未満の課税仕入れを帳簿のみで控除できる(No.6496 2)
航空会社の電子領収書は、運賃(免税)と施設使用料(課税)を分けて表示しています。課税の行だけを控除に使い、ダウンロードしたPDFを電子帳簿保存法の要件で保存します。
出張旅費特例(帳簿のみ)は海外出張の分には使わない
従業員に支給する通常必要な出張旅費・宿泊費・日当は、適格請求書なしで帳簿のみの保存で控除できます(No.6496 ⑩・消基通11-6-4)。この特例は「課税仕入れになる出張旅費」を帳簿のみで控除するための仕組みです。
海外出張の旅費・日当は課税仕入れになりません(No.6459)。したがって出張旅費特例で海外日当を控除することはできません。特例が使えるのは、従業員が立て替えた国内区間の交通費や、国内出張の日当です。帳簿には出張旅費特例の対象である旨と、相手方(従業員名)を記載します。旅費規程と帳簿要件の全体像は旅費交通費の勘定科目と課税・非課税の区別で扱っています。
なお、海外の事業者からネット経由で受けるサービス(現地の配車アプリの手数料や海外SaaS)は、出張費とは別に電気通信利用役務の判定が入ります。国外事業者からの役務の扱いはリバースチャージ方式の対象取引と判定を参照してください。
よくある質問
海外出張の消費税で実際によく検索される6問です。
Q1:海外出張の費用に消費税はかかりますか?不課税と非課税のどちらですか?
海外で受けた役務(ホテル・食事・タクシー・通訳)は不課税、国際線の航空券は免税、国内区間の交通と国内空港の施設使用料は課税10%です。不課税は「消費税の対象外」、非課税は「対象だが政策的に課税しない」で、海外のホテル代は前者にあたります(消法4条1項・国税庁 No.6210)。支払う会社にとっては、不課税も免税も非課税も控除できない点は同じで、控除できるのは国内の課税分だけです。
Q2:海外出張の日当は消費税の課税仕入れになりますか?
なりません。国税庁 No.6459(2026年4月1日現在)は、海外への出張のために支給した出張旅費、宿泊費、日当等は原則として課税仕入れにならないとしています。国内出張の日当は通常必要な範囲が課税仕入れ(帳簿のみで控除可)なので、国内と海外で扱いが分かれます。会計ソフトの税区分は「対象外」を選びます。
Q3:国際線のチケットに含まれる国内線区間の消費税はどうなりますか?
契約上国際輸送の一環であることが明らかで、国内乗継地での到着から出発までが時刻表上24時間以内なら、国内区間も国際輸送として免税です(消費税法基本通達7-2-4)。国内線を別のチケットで買った場合や乗継で24時間を超える場合は、国内区間が課税10%の課税仕入れになり、航空会社の電子領収書を適格請求書として保存します。
Q4:海外出張の仕訳はどう切りますか?税区分は何を選びますか?
支出を行ごとに分けて仕訳します。国際線180,000円は「旅費交通費/普通預金・対象外(免税)」、国内の課税分6,600円は「旅費交通費6,000+仮払消費税600/普通預金6,600・課税仕入10%」、海外ホテルや日当は「旅費交通費/普通預金・対象外(不課税)」です。勘定科目は全部旅費交通費で構いませんが、税区分だけ4種類に分かれます。
Q5:海外出張の支度金に消費税はかかりますか?
かかりません。支度金や渡航手当は従業員への金銭の支給で、海外出張のための旅費等として課税仕入れになりません(国税庁 No.6459)。会社が自分の名義で国内の店からスーツケースなどを買って従業員に貸与する形なら、会社の課税仕入れとして控除できます。所得税では、所得税基本通達9-3の「通常必要な範囲」に収まっていれば非課税です。
Q6:海外出張の費用にインボイス(適格請求書)は必要ですか?
国内で受けた課税仕入れ(自宅⇔空港の交通・国内空港の施設使用料・前泊ホテル・国内線)だけ必要です。鉄道・バスは3万円未満なら帳簿のみで足りますが、航空機は公共交通機関特例の対象外なので航空会社の電子領収書を保存します(国税庁 No.6496)。国際線・海外ホテル・現地交通・日当は控除の対象外なので、適格請求書も登録番号も要りません。
まとめ
海外出張の消費税区分と処理を1枚に整理します。
この記事のまとめ
- 判定は役務の提供が行われた場所(消法4条3項2号・No.6210)。国外なら不課税、国内なら課税。国境をまたぐ旅客輸送は国内取引のうえで免税(消令6条2項1号・消法7条1項3号)
- 国際線・燃油サーチャージ=免税/海外ホテル・現地交通・通訳・出展料=不課税/自宅⇔空港・国内空港施設使用料・前泊=課税。仕入税額控除は課税の行だけ
- 国際線に含まれる国内区間は乗継24時間以内なら免税(消基通7-2-4)。海外パック旅行は国内の手配=課税・国外部分=不課税(7-2-6)
- 海外出張の日当・支度金は課税仕入れにならない(No.6459)。国内出張の日当は課税仕入れ。所得税の非課税(所基通9-3)とは別判定
- 簡易課税・2割特例でも区分は付ける。原則課税に戻る期に同じ帳簿で控除を計算するため
- インボイスが要るのは国内の課税仕入れだけ。航空機は公共交通機関特例の対象外=電子領収書を保存。出張旅費特例で海外日当は控除できない
海外出張の消費税 区分と処理の早見表(2026年9月時点)
| 区分 | 該当する支出 | 仕入税額控除 | 会計ソフトの税区分 | 控除に要る書類 |
|---|---|---|---|---|
| 課税 | 自宅⇔空港の交通・国内空港施設使用料・前泊ホテル・別切りの国内線・国内で借りたWi-Fi | できる | 課税仕入 10% | 適格請求書(鉄道・バス3万円未満と出張旅費特例は帳簿のみ) |
| 免税 | 国際線運賃・燃油サーチャージ・乗継24時間以内の国内区間 | できない | 対象外(免税仕入) | 不要(経費証憑として領収書) |
| 不課税 | 海外ホテル・現地交通・食事・通訳・出展料・海外空港税・海外日当・支度金 | できない | 対象外(不課税) | 不要(同上) |
| 非課税 | 海外旅行保険料・パスポート発給手数料・クレカ海外事務手数料 | できない | 非課税仕入 | 不要(同上) |
免責事項
※本記事は消費税の一般的な取扱いを国税庁の公開情報(2026年9月時点)に基づいて整理したものです。航空券や旅行会社の請求書の区分表示は会社により異なります。最新の法令をご確認のうえ、必要に応じて顧問税理士など有資格者へご相談ください。
