この記事でわかること
- 「法人税、住民税及び事業税」は、英語ではまとめて「Income taxes」と表記するのが一般的
- 法人税・住民税・事業税を個別に分解した英訳(Corporate / Inhabitant / Enterprise tax)と、税引前利益などの周辺用語の対訳
- 経費の「租税公課(Taxes and Dues)」とP/L上の表示場所が違う理由
- 事業税の外形標準課税だけが租税公課(販管費)に入る、実務でつまずきやすい例外
結論を先に書きます
「法人税、住民税及び事業税」は、英語決算書ではまとめて「Income taxes」と表記するのが最もスマートです。海外親会社へのレポートでも、これ1語でほぼ通じます。
直訳して “Corporate tax, Inhabitant tax and Enterprise tax” と並べることもできますが、P/Lの科目名としては冗長になりがちです。内訳の説明を求められたときだけ、3つに分解して伝えれば十分でしょう。
- P/Lの総称(科目名)はIncome taxes。会社の「利益(所得)」に課される税金をまとめた呼び方
- 内訳は法人税=Corporate tax/住民税=Inhabitant tax/事業税=Enterprise tax
- 経費の「租税公課(Taxes and Dues)」とは、課税対象もP/L上の表示場所も別物
損益計算書(P/L)を作るとき、売上や経費の計算が終わった一番最後に出てくるのが「法人税、住民税及び事業税」です。これらは会社の利益(所得)に対して課される税金で、経費として処理される「租税公課」とは明確に区別されます。
この記事では、法人税等の英語表記と、実務でつまずきやすい注意点を整理します。
「法人税、住民税及び事業税」の英語表記一覧
日本の税制独自の区分である「3つの税金」について、それぞれの標準的な英訳を整理しました。結論は、総称なら「Income taxes」の一択です。
| 日本語(Japanese) | 英語(English) | 解説 |
|---|---|---|
| 法人税、住民税及び事業税(P/L科目名) | Income taxes / Provision for income taxes | 最も一般的な表現。「所得(Income)に対する税金」という意味 |
| 法人税(国税) | Corporate tax / Corporate income tax | 会社の所得に対して国に納める税金 |
| 法人住民税(地方税) | Inhabitant tax / Resident tax | 都道府県と市町村に納める税金。「住民=Inhabitant/Resident」 |
| 事業税(地方税) | Enterprise tax / Business tax | 事業を行うことに対して都道府県に納める税金 |
「Provision for income taxes」は、当期の負担として引き当てる(provision)ニュアンスを含む書き方です。どちらを使っても意味は通じます。
その他の関連用語
P/Lの末尾は、この税金まわりの用語が連なります。あわせて覚えておくと便利な周辺ワードを挙げておきます。
| 日本語 | 英語表記 |
|---|---|
| 法人税等調整額 | Income taxes – deferred(または Deferred income taxes) |
| 税引前当期純利益 | Income before income taxes |
| 当期純利益 | Net income |
「法人税等調整額」は税効果会計に関わる調整項目で、deferred(繰延)という語がポイントです。Net income(当期純利益)が、P/Lの一番下に来る着地点になります。
実務のポイント:租税公課との違い
英訳で最も重要なのは、その税金が「利益にかかる税金かどうか」という1点です。ここを取り違えると、P/L上の置き場所ごと間違えてしまいます。
両者の違いは、大きく2つに分けて押さえると整理しやすくなります。
1. P/Lの「場所」が違う
同じ「税金」でも、P/L上で出てくる位置はまったく別です。経費なのか、利益からの分配なのかで分かれます。
| 区分 | 英語表記 | 中身 | P/L上の場所 |
|---|---|---|---|
| 租税公課 | Taxes and Dues | 固定資産税・印紙税など | 販売費及び一般管理費(利益を計算するための『経費』) |
| 法人税等 | Income taxes | 法人税・住民税・事業税 | 税引前当期純利益の下(利益から差し引かれる『分配』) |
租税公課は利益を出す前の「経費」、法人税等は利益が出たあとの「分配」。この立ち位置の違いが、英訳と表示場所の両方を決めます。租税公課側の英訳は租税公課(Taxes and Dues)の英語表記一覧で詳しくまとめています。
2. 事業税の「外形標準課税」に注意
ここが実務で一番つまずきやすいポイントです。資本金1億円を超える大企業などに適用される「外形標準課税」は、扱いが少し特殊になります。
事業税のうち、利益に関係なく資本金や給与総額などにかかる部分(資本割・付加価値割)は、会計上「租税公課」として販管費に計上されます。つまり同じ事業税でも、所得割と外形標準課税で置き場所が分かれます。
| 事業税の種類 | 英語表記の例 | P/Lの場所 |
|---|---|---|
| 所得割(利益にかかる部分) | Income levy / Income portion | 法人税等(Income taxes) |
| 外形標準課税(資本割・付加価値割) | Size-based business tax / Value added portion・Capital portion | 租税公課(Taxes and Dues) |
海外親会社から「なぜEnterprise taxがSG&A(販管費)に入っているのか?」と聞かれたら、「これはSize-based tax(外形標準課税)だから経費扱いなんだ」と説明できるようにしておくと安心です。法人税と租税公課の線引きは、法人税は経費にならない?租税公課で落とせる税金との違いもあわせてご覧ください。
よくある質問
英文決算や英訳の現場で実際に迷いやすい質問を整理しました。
Q1:「法人税等」は英語で必ず Income taxes と書くべきですか?
総称としては「Income taxes」で問題ありません。引当のニュアンスを出すなら「Provision for income taxes」も使えます。どちらも広く通じる表現です。内訳の明細を求められたときだけ、Corporate / Inhabitant / Enterprise tax の3つに分解して示せば十分でしょう。
Q2:住民税は Inhabitant tax と Resident tax のどちらが正しいですか?
どちらも使われます。「Inhabitant tax」は日本の地方税を説明する際の定訳に近く、「Resident tax」もほぼ同義で通じます。相手や社内ルールに合わせて統一すれば問題ありません。大切なのは、地方税であることが伝わる訳語を選ぶことです。
Q3:事業税の外形標準課税は、なぜ租税公課に入るのですか?
外形標準課税の資本割・付加価値割は、利益(所得)ではなく資本金や付加価値に課されるためです。利益に対する税金ではないので、会計上は「経費(租税公課)」として販管費に計上されます。一方、所得割は利益に対する課税なので法人税等(Income taxes)に含まれます。
まとめ
日本の決算書における「法人税、住民税及び事業税」は、英語ではシンプルに “Income taxes” と表現するのがスマートです。
- 総称はIncome taxes(または Provision for income taxes)でほぼ通じる
- 内訳は Corporate tax(国)/Inhabitant tax(地方・住民)/Enterprise tax(地方・事業)の3つに分解できる
- 経費の租税公課(Taxes and Dues)とは、課税対象もP/L上の表示場所も別物
- 事業税の外形標準課税だけは租税公課(販管費)に入る例外に注意
詳細な内訳を求められたら、Corporate tax・Inhabitant tax・Enterprise tax の3つに分けて説明できるようにしておくと安心です。
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免責事項
※本記事は一般的な会計・税務の情報を整理したものであり、個別の会計処理・英文表記の最終判断は、顧問税理士や監修者へご相談のうえご対応ください。
