市県民税(個人住民税)の勘定科目・仕訳|租税公課と事業主貸の使い分け

市県民税(個人住民税)の勘定科目は、個人事業主なら必要経費にならない「事業主貸」が原則です。事業ではなく個人にかかる税金だからです。法人が負担する住民税は「法人税、住民税及び事業税」で処理し、損金にはできません。所得割の標準税率は10%、消費税は不課税で、均等割・所得割とも扱いは同じです。

「市県民税」「市町村民税・道府県民税」「個人住民税」という呼び名の関係から、従業員の給与から天引きした分の科目、法人と個人の違いまで、迷わない基準で整理します。

この記事でわかること

  • 個人事業主の市県民税の勘定科目は「事業主貸」で、必要経費にはならないという結論と根拠
  • 納付方法別(普通徴収・口座振替・私用口座)の仕訳の具体例
  • 従業員の給与から特別徴収で天引きした市県民税は「預り金」という別ルール
  • 法人が負担する住民税は「法人税、住民税及び事業税」で損金不算入という違い
  • 消費税は不課税、租税公課で処理してしまう誤りなど注意点

公的情報源: 国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」(参照)/総務省「個人住民税」(参照

結論を先に書きます

市県民税とは、市町村民税と道府県民税を合わせた個人住民税の通称です。個人事業主が自分の分を納めても、勘定科目は「事業主貸」で、必要経費にはできません。所得税と同じ扱いになります。

一方、従業員の給与から天引きして預かった市県民税は「預り金」、法人が負担する住民税は「法人税、住民税及び事業税」です。「誰の・どの住民税か」で科目が変わります。

この記事の要点
  • 個人事業主自身の市県民税は「事業主貸」で経費にならない(所得税・住民税は必要経費不算入)
  • 事業用口座から納付したら「事業主貸/普通預金」、私用口座払いは帳簿に載せなくてよい
  • 従業員から特別徴収した分は「預り金」。事業主の費用ではなく、納付までの負債
  • 法人の住民税は「法人税、住民税及び事業税」で損金不算入。租税公課ではない
  • 消費税区分は「不課税」で、均等割・所得割とも扱いは同じ

目次

市県民税(個人住民税)とは|均等割と所得割の2本立て

市県民税とは、住んでいる市区町村と都道府県に納める個人住民税の通称です。市町村民税(東京23区は特別区民税)と道府県民税(東京都は都民税)を、市区町村がまとめて課税・徴収します。

納税通知書に「市県民税」「市民税・県民税」と印字されるため、この呼び名が広く使われています。中身は個人住民税そのものです。

住民税は、次の2つを合算して計算します。

区分内容標準税額・税率
均等割所得に関係なく定額で負担年5,000円(市町村民税3,500円+道府県民税1,500円)
所得割前年の所得に応じて負担標準税率10%(市町村民税6%+道府県民税4%)

均等割は、2024年度から復興財源分の上乗せが終わり、代わりに森林環境税(国税)1,000円が住民税と一緒に徴収されています(参考: 総務省「個人住民税」)。金額の細部は自治体や年度で変わるため、通知書の内訳を基準にしてください。

ポイントは、均等割でも所得割でも、勘定科目の考え方は同じという点です。個人事業主にとっては、どちらも「個人にかかる税金」として扱います。

個人事業主の市県民税は「事業主貸」で経費にならない

個人事業主自身の市県民税は事業主貸で経費にならず、従業員から特別徴収した分は預り金、法人が負担する住民税は法人税等で損金不算入となる判定フロー図
図:市県民税は「誰の・どの住民税か」で勘定科目が事業主貸・預り金・法人税等に分かれる

個人事業主が自分の市県民税を納めても、勘定科目は「事業主貸」です。事業の必要経費にはなりません。所得税とまったく同じ扱いになります。

理由はシンプルで、住民税は事業から生まれた所得に対して個人にかかる税金だからです。所得税法でも、所得税・住民税は必要経費に算入しないと定められています(参考: 国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」)。

一方、同じ税金でも事業に必要な税金は「租税公課」で経費にできます。混同しやすいので、代表例を整理します。

税金経費算入勘定科目
市県民税(個人住民税)不可事業主貸
所得税不可事業主貸
個人事業税租税公課
固定資産税(事業用部分)租税公課
自動車税(事業用部分)租税公課

同じ「税金」でも、市県民税と個人事業税は正反対の扱いです。個人事業税が経費になる仕組みは個人事業税の勘定科目は「租税公課」!仕訳と必要経費への算入方法で解説しています。

なお、私用の口座やお財布から市県民税を払った場合は、そもそも事業のお金が動いていません。この場合は事業の帳簿に記載する必要はありません。事業用口座から払ったときだけ「事業主貸」で記録します。

仕訳例|納付方法別の具体ケース

個人事業主が事業用の普通預金から市県民税5万円を納付した場合、借方に事業主貸5万円・貸方に普通預金5万円を計上するT字勘定図
図:個人事業主自身の市県民税は経費にならず「事業主貸/普通預金」で処理する

個人事業主の市県民税は、どの財布から払ったかで仕訳が決まります。普通徴収(自分で納付書で払う方式)は、年4回(多くは6月・8月・10月・翌1月)に分けて納めます。

ケース1:事業用の普通預金から納付した場合

事業用口座から口座振替またはコンビニ・窓口で納付したケースです。貸方は「普通預金」にします。

借方金額貸方金額摘要
事業主貸50,000普通預金50,000市県民税 第1期分

ケース2:事業用の現金で納付した場合

小口現金・レジから支払ったときは、貸方を「現金」にします。

借方金額貸方金額摘要
事業主貸50,000現金50,000市県民税 第2期分

ケース3:私用の口座・財布から納付した場合

生活用の口座や個人の現金から払ったケースです。事業のお金は動いていないため、仕訳は不要です。無理に「事業主貸/事業主借」で両建てする必要はありません。

「事業主貸」は事業のお金を私的な支払いに充てたときの科目です。事業主貸・事業主借の考え方は事業主貸・事業主借とは?仕訳例と期末の元入金振替で整理しています。

従業員から特別徴収した市県民税は「預り金」

  • 自分の市県民税を払う → 「事業主貸」(経費にならない)
  • 従業員の市県民税を給与天引き(特別徴収)で預かる → 「預り金」(負債)

従業員を雇っている個人事業主・法人は、給与から住民税を天引きして市区町村へ納める特別徴収の義務があります。この天引きした市県民税は、事業主の費用ではありません。

天引き分は一時的に預かっているお金なので、勘定科目は「預り金」です。給与支払時に預り金として計上し、翌月10日までに納付するときに取り崩します。

給与25万円から市県民税1万円を天引きした場合の仕訳は、次のようになります。

借方金額貸方金額
給料手当250,000普通預金240,000
預り金(住民税)10,000

翌月、預かった1万円を市区町村へ納付するときに預り金を消し込みます。

借方金額貸方金額
預り金(住民税)10,000普通預金10,000

源泉所得税や社会保険料の預りと同じ流れです。詳しくは預り金の勘定科目と仕訳|源泉所得税・住民税・社会保険料の預りから納付までもあわせてご覧ください。

法人の住民税は「法人税、住民税及び事業税」=租税公課ではない

法人が負担する住民税(法人住民税)は、個人とは科目が違います。勘定科目は「法人税、住民税及び事業税」(略して「法人税等」)を使い、租税公課では処理しません

さらに重要なのが、法人住民税は損金不算入という点です。会計上は費用に計上しますが、税務上は経費として認められず、いくら払っても課税所得は減りません。法人税と同じ扱いです。

区分勘定科目損金算入
法人税・法人住民税法人税、住民税及び事業税不可(損金不算入)
法人事業税法人税、住民税及び事業税可(例外的に損金算入)
固定資産税・印紙税など租税公課

同じ「住民税」でも、個人は事業主貸・法人は法人税等と、まったく別の科目になります。法人税等が損金にならない理由は法人税は経費にならない?「租税公課」で落とせる税金と「法人税等」の違いで詳しく整理しています。

消費税の区分は「不課税」

市県民税は税金そのものであり、モノやサービスの対価ではありません。そのため消費税は不課税(対象外)です。会計ソフトの消費税区分欄では「不課税」または「対象外」を選びます。

これは個人・法人、均等割・所得割を問わず共通です。仮払消費税が発生することはありません。

よくある間違いと注意点

実務で見かける誤りを整理します。いずれも決算・申告に影響するため、最初に押さえておくと安心です。

  1. 個人の市県民税を「租税公課」で経費にしてしまう
  2. 私用口座払いなのに「事業主貸/事業主借」で両建てする
  3. 従業員の特別徴収分を「租税公課」や費用で処理する
  4. 法人住民税を「租税公課」で損金算入してしまう

間違い1:個人の市県民税を租税公課にしてしまう

最も多い誤りです。市県民税は個人にかかる税金のため、経費にはできません。事業用口座払いは「事業主貸」で処理してください。

間違い2:私用払いを無理に両建てする

生活口座から払った市県民税を「事業主貸/事業主借」で両建てする必要はありません。事業のお金が動いていないなら仕訳不要です。

間違い3:特別徴収分を費用にしてしまう

従業員から天引きした住民税は、事業主の費用ではなく預り金(負債)です。費用計上すると人件費が過大になり、納付時に帳簿が合わなくなります。

間違い4:法人住民税を損金にしてしまう

法人住民税は損金不算入です。うっかり租税公課で処理して経費に含めると、法人税の申告で別表による調整(自己否認)が必要になります。判断に迷う場合は、顧問税理士に確認するのが安全です。

よくある質問

市県民税の処理でつまずきやすい5問を整理します。

Q1:市県民税と住民税は同じものですか?

はい、ほぼ同じ意味です。「市県民税」は市町村民税と道府県民税を合わせた個人住民税の通称で、納税通知書での呼び名です。中身は住民税そのものなので、勘定科目の扱いも同じです。

Q2:個人事業主の市県民税は経費になりますか?

なりません。市県民税は事業ではなく個人にかかる税金のため、必要経費に算入できません。事業用口座から払った場合は「事業主貸」で処理します。所得税と同じ扱いです。

Q3:私用の口座から市県民税を払いました。仕訳は必要ですか?

不要です。生活用の口座や個人の現金から払った場合、事業のお金が動いていないため、事業の帳簿に記載する必要はありません。事業用口座から払ったときだけ「事業主貸」で記録します。

Q4:従業員の給与から天引きした市県民税はどう処理しますか?

「預り金」で処理します。天引き分は事業主の費用ではなく、市区町村へ納めるまで一時的に預かっている負債です。給与支払時に預り金へ計上し、納付時に取り崩します。

Q5:法人が払う住民税も「事業主貸」ですか?

いいえ。法人の住民税は「法人税、住民税及び事業税」(法人税等)で処理し、損金には算入できません。個人の事業主貸とは科目も税務上の扱いも異なります。

まとめ:市県民税は「誰の・どの住民税か」で科目が決まる

最後に、市県民税の勘定科目のポイントを整理します。

この記事のまとめ
  • 個人事業主自身の市県民税は「事業主貸」で、必要経費にならない
  • 事業用口座払いは「事業主貸/普通預金」、私用払いは仕訳不要
  • 従業員から特別徴収した分は「預り金」(納付までの負債)
  • 法人の住民税は「法人税、住民税及び事業税」で損金不算入。租税公課ではない
  • 消費税は不課税で、均等割・所得割とも扱いは同じ

市県民税は、所得税と同じく「個人にかかる税金」として事業主貸で処理するのが基本です。ただし、従業員の特別徴収分や法人住民税は科目が変わるため、「誰の・どの住民税か」を確認してから仕訳しましょう。均等割の金額や特別徴収の実務など判断に迷うケースでは、最新の自治体情報を確認のうえ、税理士に相談すると確実です。

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免責事項

※本記事は2026年時点の公開情報をもとに勘定科目の一般的な考え方を整理したものです。税制・住民税額は改正や自治体・年度により異なります。個別の税務処理・申告判断は、最新の総務省・自治体・国税庁の公式情報をご確認のうえ、税理士など有資格者にご相談ください。


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この記事を書いた人

会計事務所で10年以上、法人や個人事業主の帳簿づけと税務申告の手伝いをしてきたTanakaです。決算が近づくと、経営者から「この支払いはどの科目で処理すればいいですか」という電話を何度も受けました。答えは業種や会社の規模で変わります。そこを一つずつ、相手に合わせて説明してきました。

独立してからは、中小企業の経理担当者向けの研修や、freee・マネーフォワード・弥生の科目設定の相談にも応じています。教科書の説明は抽象的で、現場では「とりあえず雑費」で片づけてしまうことも少なくありません。このサイトでは、勘定科目の選び方の判断軸を、具体例をそえて整理しています。最終的な税務判断は、顧問税理士にご相談ください。

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