受け取った保険金の勘定科目は、法人なら「受取保険金」か「雑収入」、資産の帳簿価額を超えた分は「保険差益」です。消費税は不課税(消費税法基本通達5-2-4・国税庁 No.6157)。保険金で修理した費用の消費税は、ふだんどおり仕入税額控除できます。
この記事でわかること
- 受取保険金・雑収入・保険差益・火災未決算・未収入金の使い分け
- 保険金が不課税になる根拠(通達5-2-4)と、非課税の保険料との違い
- 保険金で修理・買い替えた費用は課税仕入れ(通達11-2-8)、焼失した商品の控除は取り消さない(通達11-2-9)
- 車両保険・免責金額・保険会社からの直接払い・火災・商品の焼失・法人契約の死亡保険金の仕訳例6本
- 個人事業主が受け取る保険金の扱い(商品は収入・建物や車は損失から差し引く)
公的情報源: 国税庁 消費税法基本通達 第5章第2節 5-2-4(参照)/第11章第2節 11-2-8・11-2-9(参照)/タックスアンサー No.6157「課税の対象とならないもの(不課税)の具体例」(参照)
先に答え
保険金を受け取ったときの科目は、法人なら「受取保険金」または「雑収入」(営業外収益)。火災などで失った資産の帳簿価額より保険金が多いときは、その差額を「保険差益」として特別利益に出します。
消費税は、どの保険金でも不課税です。会計ソフトの税区分は「対象外」を選びます。一方で、保険金を使って払った修理代や買い替え費用は課税仕入れなので、受け取った保険金と相殺せずに両建てで記帳します。
この記事の要点
- 勘定科目は受取保険金か雑収入。資産の帳簿価額を超えた分は保険差益(特別利益)
- 保険金の消費税は不課税。保険事故の発生に伴い受けるもので対価でない(通達5-2-4・No.6157(4)・令和8年4月1日現在法令等)
- 払う側の保険料は非課税(No.6201(4))。受け取る保険金は不課税で、課税売上割合の分母にも入れない(No.6209)
- 保険金で払った修理代は課税仕入れ(通達11-2-8)。焼失・盗難した商品の仕入税額控除も取り消さない(通達11-2-9)
- 個人事業主は、商品の保険金は事業所得の収入(No.2200)、建物や車の保険金は損失の額から差し引く(所得税法51条1項)
保険金を受け取ったときの勘定科目
保険金の勘定科目とは、保険会社から受け取ったお金を帳簿に記録するときの科目名です。本業の売上ではないため、法人は営業外収益か特別利益に入れます。どれを使うかは、何の保険金か、失った資産があるかで決まります。
保険金の受取りで使う勘定科目(法人・2026年10月時点)
| 勘定科目 | 区分 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 受取保険金 | 営業外収益 | 車両保険・休業補償・商品の損害など、繰り返し起こりうる保険金 |
| 雑収入 | 営業外収益 | 金額が小さく、独立した科目を作るほどでない保険金 |
| 保険差益 | 特別利益 | 火災・災害で失った固定資産の帳簿価額を保険金が上回った差額 |
| 火災未決算(災害未決算) | 仮勘定(資産) | 被災した資産の帳簿価額を、保険金額が確定するまで一時的に置く |
| 未収入金 | 流動資産 | 支払額が確定し、入金がまだの保険金 |
| 保険積立金(取崩し) | 資産の減少 | 積立型の生命保険で、資産計上していた保険料を保険金と相殺する |
受取保険金と雑収入の使い分け
受取保険金と雑収入は、どちらも営業外収益です。違いは見やすさだけで、税金の計算は変わりません。保険金の受取りが毎年のようにあるなら「受取保険金」を立て、年に1回あるかないかなら「雑収入」でまとめるのが一般的です。
一度決めた科目は、翌期以降も同じものを使います。期ごとに科目が変わると、決算書を比べたときに保険金の増減が追えなくなるためです。雑収入の使い方は雑収入の勘定科目と仕訳で整理しています。
保険差益は特別利益に出す
火災や災害で建物・機械を失い、保険金がその帳簿価額を上回ったとき、差額が保険差益です。臨時の利益なので、表示するのは経常利益の下の特別利益です。被災した資産の帳簿価額は、保険金が確定するまで「火災未決算」に置いておくと、損失と利益を同じ時点でまとめて確定できます。
特別利益・特別損失の区分は特別損益の勘定科目と仕訳で確認できます。
保険金の消費税区分と通達5-2-4
保険金の消費税区分は、受け取る側では不課税(対象外)です。消費税法基本通達5-2-4の本文は次のとおりです。
保険金又は共済金(これらに準ずるものを含む。)は、保険事故の発生に伴い受けるものであるから、資産の譲渡等の対価に該当しないことに留意する。
国税庁 No.6157「課税の対象とならないもの(不課税)の具体例」(令和8年4月1日現在法令等)も、(4)に「保険金や共済金」を挙げ、理由を「資産の譲渡や貸付け、役務の提供等の取引ではないから」としています。車両保険・火災保険・休業補償・生命保険の死亡保険金で、扱いは変わりません。
保険にまつわるお金の消費税区分(受け取る側・払う側)
- 消費税
- 非課税
- 根拠
- No.6201(4)
- 税区分
- 非課税仕入
- 消費税
- 不課税
- 根拠
- 通達5-2-4・No.6157(4)
- 税区分
- 対象外
- 消費税
- 課税仕入れ10%
- 根拠
- 通達11-2-8
- 税区分
- 課税仕入10%
図:保険料は非課税、保険金は不課税、保険金で払う修理代は課税仕入れ。3つは別々に判定する。
保険料は非課税・保険金は不課税|課税売上割合で差が出る
払う保険料は、国税庁 No.6201(4)で非課税とされています。受け取る保険金は不課税です。どちらも消費税はかかりませんが、課税売上割合の計算で扱いが分かれます。No.6209によれば「不課税取引は…分母にも分子にも算入しません」。
保険金を「非課税売上」で入力すると、課税売上割合の分母が増えて割合が下がります。課税売上割合が95%前後の会社では、仕入税額控除の計算方法が変わるおそれがあるため、税区分は「対象外」で入力してください。
保険金で修理・買い替えた費用は課税仕入れ(通達11-2-8)
保険金で修理した費用の消費税は、仕入税額控除できます。通達11-2-8は、課税仕入れかどうかは「資産の譲受け等のために支出した金銭の源泉を問わない」とし、「保険金、補助金、損害賠償金等を資産の譲受け等に充てた場合であっても」控除できると定めています。
免責金額(自己負担分)も、修理代の一部として課税仕入れです。保険会社が修理工場へ直接払った場合でも、修理を受けたのは自分です。修繕費と仮払消費税を立て、保険金は受取保険金として両建てで記帳します。
なお、修理工場から見ると、保険会社から受け取る修理代は修理という役務の代金です。保険金ではないので、修理工場の側では課税売上になります。
焼失・盗難した商品の仕入税額控除は取り消さない(通達11-2-9)
火災や盗難で商品を失っても、仕入れたときに控除した消費税を戻す必要はありません。通達11-2-9は、課税仕入れ等に係る資産が「事故等により滅失し、若しくは亡失した場合又は盗難にあった場合など」でも、控除が適用されると定めています。
商品を失ったこと自体は、No.6157(6)の「資産について廃棄をしたり、盗難や滅失があった場合」に当たり不課税です。受け取る保険金も不課税なので、消費税の申告に追加で書くものはありません。
公益法人等は保険金も特定収入
公益法人等・NPO法人などは、保険金が「特定収入」に当たります。国税庁 No.6495は特定収入の例示に「保険金」と「損害賠償金」を挙げています。特定収入割合が5%を超えると、保険金で賄った課税仕入れの消費税を仕入控除税額から差し引く調整が必要です。株式会社・個人事業主には、この調整はありません。
保険金の仕訳例6本|車両・火災・商品・生命保険
仕訳は税抜経理・原則課税の法人を前提にします。税区分の列が消費税の申告に効くので、会計ソフトでは「対象外」と「課税仕入10%」の選び分けを確認してください。
仕訳例1|社用車の修理代330,000円(税込)を支払った
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 修繕費 | 300,000 | 普通預金 | 330,000 | 課税仕入10% |
| 仮払消費税 | 30,000 | - |
仕訳例2|車両保険の保険金280,000円が入金された(免責金額50,000円)
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 280,000 | 受取保険金 | 280,000 | 対象外 |
修理代の消費税30,000円は、保険金で賄ったかどうかに関係なく控除できます。免責金額50,000円の自己負担分も、仕訳例1の修繕費に含まれています。
仕訳例3|保険会社が修理工場へ280,000円を直接払い、免責分50,000円を自社が払った
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 修繕費 | 300,000 | 受取保険金 | 280,000 | 課税仕入10%/対象外 |
| 仮払消費税 | 30,000 | 普通預金 | 50,000 | - |
お金が自社を通らなくても、修理を受けたのは自社です。修繕費と受取保険金を両建てにし、相殺して50,000円だけを記帳する形にはしません。修理代の請求書(適格請求書)も自社宛てで受け取ってください。相手の保険で直してもらう場合の考え方は損害賠償金の消費税は不課税が原則で詳しく扱っています。
仕訳例4|倉庫(帳簿価額4,000,000円)が火災で焼失し、保険金6,000,000円が後日確定した
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 火災未決算 | 4,000,000 | 建物 | 4,000,000 | 対象外 |
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 未収入金 | 6,000,000 | 火災未決算 | 4,000,000 | 対象外 |
| 保険差益 | 2,000,000 | 対象外 |
焼失の時点では損益を確定させず、帳簿価額を火災未決算に移します。保険金額の通知を受けた段階で、差額2,000,000円が保険差益になる流れです。保険金が帳簿価額より少なければ、差額は「火災損失」(特別損失)です。
保険金6,000,000円が確定したときの仕訳(帳簿価額4,000,000円の倉庫)
借方
未収入金 6,000,000
貸方
火災未決算 4,000,000
保険差益 2,000,000
図:帳簿価額を超えた2,000,000円が保険差益(特別利益)。消費税はすべて対象外。
仕訳例5|商品(原価500,000円)が水害で全損し、保険金450,000円が確定した
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 災害損失 | 500,000 | 仕入 | 500,000 | 対象外 |
| 未収入金 | 450,000 | 受取保険金 | 450,000 | 対象外 |
商品を仕入れたときに控除した消費税は、そのまま残します(通達11-2-9)。損失の振替も保険金も対象外で入力するため、仕入の課税仕入れの金額を減らす処理にはしません。
仕訳例6|法人契約の終身保険で死亡保険金10,000,000円を受け取った(保険積立金6,000,000円)
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 10,000,000 | 保険積立金 | 6,000,000 | 対象外 |
| 雑収入 | 4,000,000 | 対象外 |
資産に積んでいた保険料を取り崩し、超えた分を雑収入にします。保険金が積立金より少なければ、差額は雑損失です。保険料を全額経費にしていた掛捨ての保険なら、保険金の全額が雑収入になります。
保険金を計上する時期と未収入金
保険金は、保険会社から支払額の通知を受けて金額が確定した時点で、未収入金を立てて計上するのが一般的です。入金日まで待つと、決算日をまたいだときに損失だけが先に計上されてしまいます。
決算日をまたぐ保険金の処理(法人・2026年10月時点)
| 決算日時点の状態 | 処理 |
|---|---|
| 事故は起きたが、保険金額が未定 | 被災資産の帳簿価額は火災未決算へ。損失・利益はまだ確定させない |
| 保険金額の通知を受けた・入金はまだ | 未収入金で保険金を計上し、火災未決算を精算する |
| 入金済み | 普通預金で計上する |
| 保険金が出ないと決まった | 火災未決算を火災損失(特別損失)へ振り替える |
未収入金の扱いは未収入金の勘定科目と仕訳で整理しています。
保険差益は圧縮記帳で課税を先送りできる
火災で失った建物の代わりに同じ種類の建物を買うときは、保険差益に一度に法人税がかからないようにする仕組みがあります。法人税法47条「保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入」で、保険金の支払を受けた事業年度の終了の時までに代替資産を取得していることが条件です。
圧縮記帳は課税の先送りで、免除ではありません。新しい建物の取得価額が下がる分、のちの減価償却費が小さくなります。
個人事業主が保険金を受け取ったとき
個人事業主は、保険金が何の損害を補うものかで扱いが分かれます。帳簿で使う科目より先に、所得税の計算でどちらに入るかを決めると迷いません。
個人事業主が受け取る保険金の扱い(所得税・2026年10月時点)
| 保険金の対象 | 所得税の扱い | 帳簿の科目の例 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 商品・原材料など棚卸資産の損害 | 事業所得の収入金額に入れる | 雑収入 | No.2200・No.1350 |
| 店舗・車両など事業用の固定資産の損害 | 損失の額から保険金を差し引き、残りを必要経費に | 受取保険金(損失と相殺) | 所得税法51条1項 |
| 本人の生命保険・入院給付金 | 事業と関係しない | 事業口座に入金されたら事業主借 | - |
国税庁 No.2200は、商品について災害や盗難で損害を受けたときに受け取る保険金を、事業所得の収入金額に含めるものとして挙げています。建物や車の損害は、所得税法51条1項が損失の金額から「保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額」を除くと定めています。
消費税はどちらも不課税です。所得税の区分が違っても、消費税の申告には保険金を書きません。
よくある質問
保険金の勘定科目と消費税でよく検索される6問です。
Q1:保険金を受け取ったときの勘定科目は何ですか?
法人なら「受取保険金」か「雑収入」(営業外収益)です。火災などで失った固定資産の帳簿価額を保険金が上回った差額は「保険差益」(特別利益)にします。積立型の生命保険では、資産計上した保険積立金を取り崩し、超えた分を雑収入にします。
Q2:保険金に消費税はかかりますか?
かかりません。消費税法基本通達5-2-4は、保険金や共済金は「保険事故の発生に伴い受けるものであるから、資産の譲渡等の対価に該当しない」と定めています。国税庁 No.6157も不課税の例に保険金や共済金を挙げています。会計ソフトの税区分は「対象外」です。
Q3:保険金は非課税ですか、不課税ですか?
不課税です。非課税なのは払う側の保険料(No.6201(4))で、受け取る保険金は不課税になります。違いは課税売上割合で、不課税の保険金は分母にも分子にも入れません(No.6209)。
Q4:保険金で修理した場合、修理代の消費税は控除できますか?
できます。通達11-2-8が、課税仕入れかどうかは支払いの財源を問わず、保険金を充てた場合も控除できると定めているためです。保険会社が修理工場に直接払ったときも、修繕費と仮払消費税を立て、保険金は受取保険金として両建てで記帳します。
Q5:保険金に消費税がかかる場合はありますか?
受け取る保険金そのものに消費税がかかる場面はありません。課税になるのは、保険会社から修理代を受け取る修理工場の側です。修理という役務の代金なので、修理工場では課税売上として処理します。
Q6:個人事業主が受け取った保険金は売上になりますか?
商品などの棚卸資産の損害に対する保険金は、事業所得の収入金額に入ります(No.2200)。店舗や車など固定資産の損害に対する保険金は、損失の額から差し引きます(所得税法51条1項)。本人の生命保険や入院給付金は事業と関係しないため、事業用口座に入金されたら事業主借で処理します。
まとめ
保険金の勘定科目と消費税を1枚に整理します。
この記事のまとめ
- 勘定科目は受取保険金か雑収入。帳簿価額を超えた分は保険差益(特別利益)、確定前は火災未決算・入金前は未収入金
- 保険金の消費税は不課税(通達5-2-4・No.6157(4))。課税売上割合の分母にも入れない(No.6209)
- 払う保険料は非課税(No.6201(4))。受け取る保険金とは区分が違う
- 保険金で払った修理代・免責金額は課税仕入れ(通達11-2-8)。直接払いでも両建てで記帳する
- 焼失・盗難した商品の仕入税額控除は取り消さない(通達11-2-9)
- 保険差益は代替資産を期末までに取得すれば圧縮記帳できる(法人税法47条)
- 個人事業主は、商品の保険金は収入(No.2200)、固定資産の保険金は損失から差し引く(所得税法51条1項)
保険金の勘定科目と消費税区分 早見表(2026年10月時点)
| 場面 | 勘定科目(法人) | 消費税区分 | 会計ソフトの税区分 |
|---|---|---|---|
| 車両保険の保険金を受け取った | 受取保険金 | 不課税 | 対象外 |
| 保険金で修理代を払った(免責分を含む) | 修繕費 | 課税仕入れ | 課税仕入10% |
| 火災で建物を失い保険金が帳簿価額を超えた | 保険差益 | 不課税 | 対象外 |
| 商品が焼失・盗難にあった | 災害損失 | 不課税 | 対象外 |
| 法人契約の死亡保険金(積立型) | 保険積立金・雑収入 | 不課税 | 対象外 |
| 保険料を払った | 保険料 | 非課税 | 非課税仕入 |
| 修理工場が保険会社から修理代を受け取った | 売上高 | 課税 | 課税売上10% |
免責事項
※本記事は保険金の会計処理と消費税・法人税・所得税の一般的な取扱いを国税庁・e-Gov法令検索の公開情報(2026年10月時点)に基づいて整理したものです。保険金の性質は保険契約・約款の内容により異なります。最新の法令をご確認のうえ、必要に応じて顧問税理士など有資格者へご相談ください。
