立替金のインボイスは、立替払をした取引先宛ての適格請求書だけでは足りません。国税庁Q&A問94は、その適格請求書と「立替金精算書」をあわせて保存すれば仕入税額控除できるとしています。立替えた側が免税事業者でも、支払先が登録事業者なら控除できます。
この記事でわかること
- 立替金とインボイスの保存要件(問94・通達11-6-2)と、立替えた側が免税事業者の場合
- 立替金精算書の記載事項と記載例(支払先・登録番号・税率ごとの区分・按分した消費税額)
- 複数社分をまとめて立替えたとき、適格請求書のコピーが無くても精算書だけで足りる条件
- 立替える側の請求書の書き方(自社の売上と立替金を分ける・混在させない)
- 交通費の立替は3万円未満の公共交通機関なら帳簿のみで控除でき、精算書も要らない理由
- 立替える側・立替えてもらう側それぞれの仕訳例
公的情報源: 国税庁 適格請求書等保存方式に関するQ&A 問94「立替金」(参照)/同Q&A「帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合」(参照)/タックスアンサー No.6496「仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存」(参照)
先に答え
取引先に経費を立て替えてもらったとき、仕入税額控除に必要なのは支払先の適格請求書+立替金精算書の2点です。適格請求書の宛名が立替えた取引先になっていても、精算書で「この経費は自社のもの」と分かれば足ります。
立替えた側が自分の請求書に立替金を載せるときは、自社の売上と立替金を分けて書きます。立替金は自社の売上ではないので、消費税をかけません。
この記事の要点
- 取引先宛ての適格請求書をそのまま受け取るだけでは不可。精算書とあわせて保存する(問94・通達11-6-2)
- 立替えた側が免税事業者でも控除できる。見るのは実際の支払先が登録事業者かどうか(問94)
- 複数社分の一括立替でコピーが大量になるときは、精算書だけで控除できる(問94参考1)
- 精算書には支払先・登録事業者かどうか・税率ごとの区分・負担割合で按分した消費税額を書く
- 3万円未満の電車・バスなど帳簿のみ保存で足りる立替は、精算書も適格請求書も不要(問94なお書き・問105)
立替金とインボイスの保存要件(問94)
立替金のインボイスとは、取引先が代わりに払った経費について、自社が仕入税額控除を受けるために保存する書類の組み合わせです。立替えの取引では、お金の流れと請求書の宛名がずれます。このずれを立替金精算書で埋める形を示したのが、国税庁のQ&A問94です。
立替金の取引で登場する3者(国税庁Q&A問94の図)
| 立場 | 例 | やること |
|---|---|---|
| 立替えを受ける者(A社) | 自社 | 適格請求書(または写し)と立替金精算書を保存し、仕入税額控除を受ける |
| 立替払を行う者(B社) | 取引先・管理会社・司法書士 | 支払先へ代金を払い、A社へ精算書を渡して立替金を回収する |
| 課税資産の譲渡等を行う者(C社) | 駐車場・修理業者・運送会社 | B社宛ての適格請求書を交付する |
問94の答えは「B社宛に交付された適格請求書をB社からそのまま受領したとしても、これをもって、C社から貴社に交付された適格請求書とすることはできません」から始まります。そのうえで、立替金精算書等で課税仕入れがA社のものと明らかなら、適格請求書と精算書の保存で要件を満たすとしています(消費税法基本通達11-6-2)。
立替えた側が免税事業者でも控除できる
問94は「立替払を行うB社が適格請求書発行事業者以外の事業者であっても、C社が適格請求書発行事業者であれば、仕入税額控除を行うことができます」と書いています。立替えた側は代金を中継しているだけで、売り手ではないからです。
反対に、実際の支払先(C社)が登録事業者でなければ、立替えた側が登録事業者でも全額は控除できません。経過措置の割合(80%・7・5・3割と段階的に縮小)だけが控除の対象になります(No.6498)。
立替えてもらった経費で仕入税額控除するまでの判定フロー
- 取引先(B社)が自社の経費を代わりに払った
- STEP13万円未満の電車・バスなど、帳簿のみ保存で足りる経費か当たる → 帳簿に記載するだけで控除できる。精算書も不要(問94なお書き・問105)
- STEP2実際の支払先(C社)は登録事業者か登録事業者 → 全額控除の対象/登録なし → 経過措置の割合だけ(No.6498)
- STEP3C社の適格請求書(写し)と、B社の立替金精算書がそろったかそろった → 控除できる(問94・通達11-6-2)。B社が免税事業者でもよい
- STEP4複数社分を一括で立替え、コピーが大量で渡せないB社が適格請求書を保存し、負担額を書いた精算書だけを交付 → 精算書の保存で控除(問94参考1)
図:見るのは「誰が払ったか」ではなく「実際の支払先が登録事業者か」と「精算書で自社の経費と分かるか」。
立替金精算書の書き方と記載事項
立替金精算書は、立替えた側(B社)が作り、立替えてもらった側(A社)へ渡す書類です。決まった様式はありませんが、問94の参考は、A社が控除を受けるのに必要な事項を書くよう求めています。
立替金精算書に書く事項(国税庁Q&A問94の参考をもとに整理・2026年10月時点)
| 記載事項 | 書き方 | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| 宛名(立替えを受ける者) | A社御中 | 課税仕入れがA社のものと示す |
| 作成者(立替払を行う者) | B社の名称 | 誰が立替えたかを示す |
| 支払先と内容 | C社・駐車場代9月分など | 課税仕入れの相手方の名称は帳簿にも要る |
| 支払先の登録番号 | T+13桁(または別途通知・契約書で明示) | 登録事業者からの仕入れか確認するため |
| 税込金額 | 支払先ごと・税率ごと | 税率ごとに区分する |
| 消費税額等 | 元の適格請求書の税額を負担割合で按分 | 合理的な方法なら合計が一致しなくてよい |
| 立替日・精算日 | 取引年月日 | 帳簿と照合するため |
登録番号は、継続的な取引の契約書などで別に明らかにしていれば、精算書に毎回書かなくてもかまいません(問94)。ただしA社の帳簿には、課税仕入れの相手方の名称を書く必要があるので、支払先の名前は精算書に残しておくのが安全です。
立替金精算書の記載例
立替金精算書の記載例(B社がA社の経費を立替えた場合・2026年10月分)
| 立替日 | 支払先(登録番号) | 内容 | 税率 | 金額(税込) | 消費税額等 |
|---|---|---|---|---|---|
| 10/3 | C駐車場(T1234567890123) | 月極駐車場代 10月分 | 10% | 22,000円 | 2,000円 |
| 10/15 | D運送(T9876543210987) | 発送料 | 10% | 3,300円 | 300円 |
| 10/20 | E商店(登録なし) | 作業用品 | 10% | 5,500円 | 500円 |
| 合計 | 30,800円 | 2,800円 |
E商店のように登録のない支払先は、そのことが分かるように書きます。A社が経過措置の割合で控除するのは、この行だけです。登録番号の欄は架空の番号で、実際の書類では支払先の適格請求書に書かれた番号を写します。
複数社分をまとめて立替えたとき
1つの支払いに複数社分の経費が入っているときは、原則としてB社が適格請求書をコピーし、精算書を添えて各社へ渡します(問94参考1)。コピーが大量になるなど交付が難しい場合は、B社が元の適格請求書を保存し、各社の負担額を書いた精算書だけを渡せば、各社は精算書の保存で控除できます。
この場合の消費税額等は、元の適格請求書の税額に各社の負担割合を掛けて按分した額です。各社分の合計が元の税額と1円ずれても、合理的な方法で計算していれば問題ないと問94は書いています。
立替える側の請求書の書き方|売上と立替金を分ける
立替えた側(B社)が、自社のサービス代と一緒に立替金を請求するときは、請求書の中で両者を分けます。立替金は自社の売上ではないので、自社の適格請求書の「課税資産の譲渡等の対価」に入れません。
サービス代と立替金を同じ請求書に載せる記載例(B社→A社)
| 区分 | 内容 | 金額 | 消費税 |
|---|---|---|---|
| 当社の売上(適格請求書) | 業務委託料 10月分 | 100,000円 | 10%対象 10,000円 |
| 立替金(当社の売上外) | C駐車場 駐車場代(別紙精算書のとおり) | 22,000円 | 消費税は別紙に記載 |
| 立替金(当社の売上外) | 登録免許税(実費) | 15,000円 | 対象外 |
| ご請求額 | 147,000円 |
消費税の計算は「当社の売上」の行だけで行います。立替金の行は精算書で内訳を示し、B社の課税売上には入れません。司法書士が預かる登録免許税や、不動産管理会社が払う修繕費の立替も同じ形です。
実費を報酬に含めて請求する場合は課税売上
交通費や送料を「立替金」でなく「報酬の一部」として請求する契約なら、その金額はB社の課税売上です。この場合は精算書でなく、B社の適格請求書に報酬と一緒に載せます。どちらの形かは契約書の書き方で決まるので、請求書を作る前に確認してください。
送料を自社の売上に含めるか立替えるかの科目の考え方は、荷造運賃の勘定科目と仕訳でも扱っています。
交通費の立替精算とインボイス
交通費の立替は帳簿のみの保存で控除できるものが多く、精算書や適格請求書がなくても済む場合があるのが特徴です。問94は「帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる課税仕入れに該当することが確認できた場合」、適格請求書と立替金精算書の保存は不要としています。
交通費の立替と必要な書類(2026年10月時点)
| 交通費の中身 | 必要な書類 | 根拠 |
|---|---|---|
| 電車・路線バスなど公共交通機関の運賃(税込3万円未満) | 帳簿への記載のみ | 問104①・問105 |
| 公共交通機関の運賃(税込3万円以上) | 適格請求書(乗車券が回収される場合は帳簿のみ) | 問105 |
| 社員に支給する出張旅費・日当(通常必要な範囲) | 帳簿への記載のみ | 問107(所基通9-3の範囲) |
| 取引先が立替えた高速代・駐車場代 | 支払先の適格請求書(写し)+立替金精算書 | 問94 |
| 外注先が報酬に含めて請求した交通費 | 外注先の適格請求書 | 外注先の課税売上 |
3万円未満かどうかは1回の取引ごとに判定します(問43参照・問105の参考)。出張旅費の範囲は所得税で非課税となる範囲と同じなので、規程で決めた金額が過大なときは帳簿のみの扱いになりません。旅費交通費の3万円特例と仕訳は旅費交通費の勘定科目と課税・非課税の区別で詳しく整理しています。
立替金の仕訳例|立替える側・立替えてもらう側
仕訳は税抜経理・原則課税を前提にします。立替金そのものは、どちらの側でも消費税の対象外です。
仕訳例1(B社)|A社の駐車場代22,000円(税込)を現金で立替えた
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 立替金 | 22,000 | 現金 | 22,000 | 対象外 |
B社自身の経費ではないので、仮払消費税は立てません。
仕訳例2(A社)|B社から精算書と適格請求書の写しを受け取った
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 地代家賃 | 20,000 | 未払金 | 22,000 | 課税仕入10% |
| 仮払消費税 | 2,000 | - |
仕訳例3(B社)|業務委託料と立替金をまとめて請求した(上の請求書の例)
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 売掛金 | 110,000 | 売上 | 100,000 | 課税売上10% |
| 仮受消費税 | 10,000 | - | ||
| 未収入金 | 37,000 | 立替金 | 37,000 | 対象外 |
立替金22,000円と登録免許税15,000円を回収する仕訳(B社・立替える側)
借方
未収入金 37,000(対象外)
貸方
立替金 37,000(対象外)
図:立替金はB社の売上にしない。消費税をかけるのは業務委託料100,000円の部分だけ。
仕訳例4(A社)|登録免許税15,000円の立替分を支払った
| 借方 | 金額(円) | 貸方 | 金額(円) | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 租税公課 | 15,000 | 普通預金 | 15,000 | 対象外 |
登録免許税は税金なので、立替えでも直接払いでも消費税の対象外です。課税仕入れの区分の決め方は課税仕入れの勘定科目と消費税区分で確認できます。
よくある質問
立替金とインボイスでよく検索される6問です。
Q1:立替払をした取引先宛ての適格請求書で仕入税額控除できますか?
それだけではできません。国税庁Q&A問94は、取引先宛ての適格請求書をそのまま受け取っても、自社に交付された適格請求書にはならないとしています。取引先が作った立替金精算書をあわせて保存し、経費が自社のものだと分かれば控除が認められる、という整理です。
Q2:立替えた取引先が免税事業者の場合、控除できますか?
できます。問94は、立替払を行う者が適格請求書発行事業者以外でも、実際の支払先が適格請求書発行事業者なら仕入税額控除を行えるとしています。見るのは立替えた人ではなく、支払先の登録の有無です。
Q3:立替金精算書に登録番号は必要ですか?
支払先が登録事業者かどうかを確認できるようにしておく必要があります。精算書に登録番号を書くのが確実ですが、継続的な取引の契約書や別の書面で明らかにしていれば、精算書に毎回書かなくてもかまいません(問94)。
Q4:交通費を立替えてもらった場合も精算書が要りますか?
電車や路線バスなど公共交通機関の税込3万円未満の運賃なら、帳簿に記載するだけで控除できるので、精算書も適格請求書も要りません(問94・問105)。高速代や駐車場代は帳簿のみの対象ではないため、支払先の適格請求書(写し)と精算書をそろえます。
Q5:請求書に立替金とサービス代を混在させてもいいですか?
1枚の請求書に載せてかまいませんが、自社の売上と立替金を行で分けてください。消費税をかけるのは自社の売上の部分だけで、立替金は売上外として別紙の精算書で内訳を示します。
Q6:立替金の消費税区分は何ですか?
立替えた側でも回収する側でも、立替金そのものは対象外です。消費税の区分は、立替えてもらった側が経費として記帳するときに、支払先との取引の中身(課税・非課税・不課税)で決めます。
まとめ
立替金とインボイスを1枚に整理します。
この記事のまとめ
- 控除に必要なのは支払先の適格請求書(写し)+立替金精算書(問94・通達11-6-2)
- 立替えた側が免税事業者でも控除できる。支払先が登録事業者でなければ経過措置の割合だけ
- 精算書には支払先・登録事業者かどうか・税率ごとの金額・負担割合で按分した消費税額を書く
- 複数社分の一括立替でコピーが難しければ、精算書だけで控除できる(問94参考1)
- 立替える側の請求書は自社の売上と立替金を分ける。実費を報酬に含める契約なら課税売上
- 3万円未満の公共交通機関・通常必要な出張旅費は帳簿のみで控除でき、精算書も要らない(問104・問105・問107)
- 立替金そのものは対象外。経費の税区分は支払先との取引の中身で決める
立替金とインボイス 早見表(2026年10月時点)
| 場面 | 保存・交付するもの | 立替金の税区分 |
|---|---|---|
| 取引先に経費を立替えてもらった | 適格請求書(写し)+立替金精算書 | 対象外(経費は中身で判定) |
| 立替えた取引先が免税事業者 | 同上(支払先が登録事業者なら全額控除) | 対象外 |
| 複数社分を一括で立替えた | 原則コピー+精算書・困難なら精算書のみ | 対象外 |
| 3万円未満の電車・バス代を立替えてもらった | 帳簿への記載のみ | 対象外 |
| サービス代と立替金をまとめて請求する | 自社の適格請求書+立替金の精算書 | 立替金は対象外・自社分は課税売上 |
| 実費を報酬に含めて請求する | 自社の適格請求書 | 報酬の一部として課税売上 |
免責事項
※本記事は立替金に係る消費税・インボイス制度の一般的な取扱いを国税庁の公開情報(2026年10月時点)に基づいて整理したものです。立替金と報酬の区分は契約書の内容により異なります。最新の法令をご確認のうえ、必要に応じて顧問税理士など有資格者へご相談ください。
