収支内訳書(一般用)へは、帳簿の勘定科目を年間合計のまま決まった欄へ移します。給料賃金から利子割引料までは⑪〜⑯、ほかの経費は「その他の経費」㋑〜㋹へ入れ、印刷されていない科目は雑費の上にある空欄5行へ科目名を書いて記入します。
この記事でわかること
- 収支内訳書(一般用)1ページの欄番号(①〜㉑・㋑〜㋹)と計算式の読み方
- 帳簿の勘定科目が入る欄の対応表(収入・売上原価・⑪〜⑯・その他の経費)
- 法定福利費・諸会費・支払手数料など印刷されていない科目を寄せるか、空欄㋾〜㋟に起こすかの決め方
- 事業主貸・元入金など転記しない科目と、転記の前に帳簿で済ませる決算整理
- 1ページと2ページの「計」を突き合わせる検算の手順と、帳簿の利益が⑲と合わないときの探し方
公的情報源: 国税庁「収支内訳書(一般用)【令和5年分以降用】」(PDF)/「令和7年分収支内訳書(一般用)の書き方」(PDF)/「白色申告者の決算の手引き(一般用)」(PDF)/確定申告書等の様式・手引き等(令和7年分)(参照)
先に答え
収支内訳書(一般用)は、帳簿の損益の科目を「⑪〜⑯の6科目」と「その他の経費」の2段で受ける様式です。給料賃金・外注工賃・減価償却費・貸倒金・地代家賃・利子割引料は⑪〜⑯へ入れます。租税公課から福利厚生費までの11科目と雑費は「その他の経費」の欄です。
印刷されていない科目は、国税庁の「具体例」に載っている欄があればそこへ寄せます。毎年まとまった金額が出る科目なら、雑費の上にある空欄5行(㋾〜㋟)に科目名を書いて記入してください。事業主貸・事業主借・元入金や資産・負債の科目は、収支内訳書のどこにも転記しません。
この記事の要点
- 経費は⑪〜⑯(6科目)+その他の経費㋑〜㋹。その他の経費の合計が小計⑰、⑪〜⑯と⑰の合計が経費計⑱
- 印刷されていない科目は、国税庁の具体例にある欄へ寄せる(諸会費の一部→租税公課、ガソリン→消耗品費、事業主負担の社会保険料→福利厚生費)か、空欄㋾〜㋟に科目名を書く
- 雑費㋹は「他の経費に当てはまらない経費」の欄。空欄5行は雑費の上にあり、雑費は一番下に印刷されている
- 転記の前に、棚卸表・未払と前払・未使用の消耗品・家事分の除外を帳簿で済ませておく
- 検算は2ページの計と1ページの欄(①・⑥・⑬)、給料賃金の内訳の合計と⑪、帳簿の利益と⑲を突き合わせる
収支内訳書(一般用)の欄の構成と勘定科目の入り方
収支内訳書(一般用)の1ページは、上から「収入金額」「売上原価」「経費」「所得金額」の順に並びます。帳簿の損益の科目は、どれもこのどこかの欄に入ります。欄番号は丸数字が①〜㉑、その他の経費だけ丸カタカナの㋑〜㋹です。
収支内訳書(一般用)1ページの組み立て
- 所得金額㉑は「収入金額④−差引原価⑨−経費計⑱−専従者控除⑳」で決まる
- 収入金額 ①〜④①売上(収入)金額+②家事消費+③その他の収入=④計
- 売上原価 ⑤〜⑨⑤期首商品棚卸高+⑥仕入金額=⑦小計、⑦−⑧期末商品棚卸高=⑨差引原価
- 経費 ⑪〜⑯給料賃金・外注工賃・減価償却費・貸倒金・地代家賃・利子割引料の6科目
- その他の経費 ㋑〜㋹印刷11科目+空欄5行(㋾〜㋟)+雑費㋹。合計が小計⑰
- 所得 ⑱〜㉑⑱経費計=⑪〜⑯+⑰、⑲=⑩−⑱、⑳専従者控除、㉑=⑲−⑳
図:帳簿の売上・仕入・棚卸は①〜⑨、費用の科目は⑪〜⑯か㋑〜㋹に入る。⑩・⑰〜㉑は計算で出す欄で、帳簿から直接写す科目はない。
1ページの欄番号と計算式(令和7年分の様式で確認)
| 欄 | 名前 | 中身・計算 |
|---|---|---|
| ①〜③ | 売上(収入)金額・家事消費・その他の収入 | 帳簿の収益の科目から転記 |
| ④ | 計 | ①+②+③ |
| ⑤・⑥・⑧ | 期首商品棚卸高・仕入金額・期末商品棚卸高 | 棚卸表と仕入の帳簿から転記 |
| ⑦・⑨ | 小計・差引原価 | ⑦=⑤+⑥、⑨=⑦−⑧ |
| ⑩ | 差引金額 | ④−⑨ |
| ⑪〜⑯ | 給料賃金〜利子割引料 | 帳簿の費用の科目から転記 |
| ㋑〜㋹ | その他の経費 | 印刷11科目・空欄5行・雑費 |
| ⑰ | 小計 | ㋑〜㋹の合計 |
| ⑱ | 経費計 | ⑪〜⑯の合計+⑰ |
| ⑲ | 専従者控除前の所得金額 | ⑩−⑱ |
| ⑳・㉑ | 専従者控除・所得金額 | ㉑=⑲−⑳ |
様式の左上にある「区分」は、事業所得なら1(営業等)、業務に係る雑所得なら2(雑(業務))を書きます。書き方(令和7年分 p.1)によると、雑所得で収支内訳書の提出が要るのは、前々年の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える方です。
青色申告決算書の並びとは経費の順番が違う
会計ソフトの科目の並びが青色申告決算書の順になっていても、収支内訳書では⑪〜⑯の6科目を先に拾うのがコツです。収支内訳書は給料賃金から利子割引料までを別枠にし、残りを「その他の経費」にまとめています。上から順に写すと、減価償却費や地代家賃を「その他の経費」の側に書いてしまいがちです。
この記事が扱うのは一般用(事業所得・業務に係る雑所得)です。不動産所得用・農業所得用は欄の構成が違うので、それぞれの書き方を見てください。
勘定科目と収支内訳書の対応表(収入・売上原価・⑪〜⑯)
収入と売上原価、⑪〜⑯の6科目は、帳簿の科目名と欄名がほぼ一致します。迷いやすいのは、値引・返品や仕入割引のように差し引く科目と、家族への給与の扱いです。
帳簿の勘定科目と収支内訳書の欄(収入・売上原価・経費⑪〜⑯)
| 帳簿の勘定科目 | 欄 | 転記のしかた |
|---|---|---|
| 売上高(掛け売りの未入金分を含む) | ① | 売上値引・返品を別科目にしていれば差し引いた純額 |
| 家事消費・自家消費 | ② | 商品を家事に使った・贈与した分(通常の販売価額) |
| 雑収入(空箱・作業くずの売却代、リベート、仕入割引) | ③ | 事業に伴って生じた収入をまとめる |
| 期首商品(製品)棚卸高 | ⑤ | 前年の⑧と同じ金額 |
| 仕入高(未払の掛け買いを含む) | ⑥ | 仕入値引・返品を差し引いた純額。製造業は製品製造原価 |
| 期末商品(製品)棚卸高 | ⑧ | 12月31日の棚卸表の金額 |
| 給料手当・給料賃金・賞与・雑給・退職金 | ⑪ | 右上「給料賃金の内訳」の合計と一致させる |
| 外注費・外注工賃 | ⑫ | 外部に注文した加工賃など |
| 減価償却費(繰延資産の償却・一括償却資産を含む) | ⑬ | 2ページ「減価償却費の計算」の計⑬を写す |
| 貸倒損失・貸倒金 | ⑭ | 売掛金・受取手形・貸付金などの貸倒れ |
| 地代家賃・支払家賃 | ⑮ | 店舗・工場・倉庫などの地代・家賃 |
| 支払利息・利子割引料 | ⑯ | 事業用の借入金の利子、受取手形の割引料 |
各欄の中身は、国税庁「令和7年分収支内訳書(一般用)の書き方」p.2 の「必要経費の各科目の具体例」と、収入金額欄の説明に沿って並べています。仕入割引とリベートが③に入るのは、白色申告者の決算の手引き(一般用)が雑収入の例に挙げているためです。
家族に払った給与は⑪に入れない
白色申告では、生計を一にする配偶者や親族に払った給与は必要経費になりません(国税庁 No.2075)。帳簿で給料賃金に入れていたら⑪から除き、事業専従者の要件に当たる人がいれば⑳の専従者控除で差し引きます。
控除額は、配偶者86万円(配偶者以外の親族は50万円)と「⑲÷(事業専従者の数+1)」の少ない方です(書き方 p.3)。青色事業専従者給与との違いは青色事業専従者給与の勘定科目と要件、給料賃金の仕訳の流れは給料手当の勘定科目と仕訳で扱っています。
減価償却費⑬は2ページで計算した額を写す
⑬は帳簿の減価償却費をそのまま書く欄に見えますが、正は2ページ「減価償却費の計算」の計です。この表の「本年分の必要経費算入額」の合計欄に⑬と印刷されています。開業費などの繰延資産の償却費、10万円以上20万円未満の一括償却資産(償却率欄に「1/3」)も同じ表で計算します(書き方 p.2・p.6)。
10万円未満の器具備品は減価償却をせず、使った年の消耗品費㋦に入ります(書き方 p.2・p.6)。資産の科目と償却の仕訳は減価償却費・減価償却累計額の勘定科目と仕訳にまとめています。
「その他の経費」㋑〜㋹に入れる勘定科目の一覧
「その他の経費」には11科目が印刷され、その下に空欄5行と雑費が続く構成です。帳簿の科目名が欄名と同じならそのまま写し、似た科目は国税庁の具体例にある欄へ寄せます。
その他の経費の欄と、寄せる帳簿の科目(国税庁の具体例・令和7年分)
| 欄 | 印刷科目 | 国税庁の具体例・寄せる帳簿の科目 |
|---|---|---|
| ㋑ | 租税公課 | 事業税・固定資産税・自動車税・印紙税など。商工会議所・商工会・同業者組合・商店会などの会費や組合費も含む |
| ㋺ | 荷造運賃 | 販売商品の包装材料費・荷造りの賃金・運賃。発送費・梱包資材費 |
| ㋩ | 水道光熱費 | 水道料・電気料・ガス代・灯油やプロパンガスの購入費 |
| ㋥ | 旅費交通費 | 電車賃・バス代・タクシー代・宿泊代 |
| ㋭ | 通信費 | 電話料・切手代・電報料 |
| ㋬ | 広告宣伝費 | 広告費用・チラシ・名入りカレンダー・陳列装飾の費用 |
| ㋣ | 接待交際費 | 取引先の接待飲食・招待旅行・中元歳暮 |
| ㋠ | 損害保険料 | 火災保険料・自動車の損害保険料 |
| ㋷ | 修繕費 | 店舗・自動車・機械・器具備品の修理代 |
| ㋦ | 消耗品費 | 帳簿・文房具・用紙・包装紙・ガソリン、10万円未満の器具備品。事務用品費 |
| ㋸ | 福利厚生費 | 従業員の慰安・医療・保健の費用、事業主が負担する従業員の健康保険・厚生年金・雇用保険などの保険料 |
| ㋾〜㋟ | (空欄5行) | 印刷されていない科目を、科目名を書いて記入 |
| ㋹ | 雑費 | 事業上の費用で他の経費に当てはまらないもの |
具体例の列は、書き方(令和7年分)p.2 の表から写しています。所得税・住民税・国民健康保険税、国税の延滞税・加算税、罰金や交通反則金は必要経費にならないため、租税公課㋑に入れません(同 p.2)。帳簿で租税公課に入っていたら、事業主貸へ振り替えてから転記してください。
国税庁の具体例で寄せ先が決まる科目
印刷されていなくても、書き方の具体例に名前が出ている支出があります。たとえば帳簿で「法定福利費」としている事業主負担の社会保険料は、具体例のとおり福利厚生費㋸に入れられます。「諸会費」のうち商工会議所・商工会・同業者組合などの会費は租税公課㋑、「車両費」のガソリン代は消耗品費㋦が例示の欄です。
寄せた場合も、帳簿の科目名は変えなくてかまいません。収支内訳書に写すときだけ、欄をまとめます。迷ったら前年の収支内訳書と同じ欄にそろえると、年ごとの比較が崩れません。
印刷されていない勘定科目を空欄に書く方法
書き方(令和7年分 p.1)は「特殊な経費がある場合には空欄となっている箇所に経費科目を設けて記入」するよう案内しています。空欄は雑費㋹の上にある㋾・㋻・㋕・㋵・㋟の5行です。行の左に科目名を手書き(作成コーナーなら入力)し、右に年間合計を書きます。
印刷されていない科目の行き先を決める流れ
- 帳簿の科目名が、収支内訳書の印刷科目にない
- STEP1国税庁の具体例に載っている欄があるかある→その欄へ寄せる(事業主負担の社会保険料→福利厚生費㋸、商工会などの会費→租税公課㋑、ガソリン→消耗品費㋦)
- STEP2毎年出て、金額がまとまる科目かはい→空欄㋾〜㋟に科目名を書いて記入(支払手数料・新聞図書費・研修費など)
- STEP3単発で少額、ほかの欄にも当てはまらないかはい→雑費㋹へ
- STEP4決めた行き先を翌年も続ける前年の収支内訳書と欄を並べて確認する
図:寄せるか空欄に起こすかは「国税庁の具体例」「毎年の金額」で決める。雑費は他に当てはまらないものだけを入れる受け皿として残す。
印刷されていない主な科目の行き先(一般的な例)
| 帳簿の勘定科目 | 寄せる場合の欄 | 空欄に起こす場合の科目名 |
|---|---|---|
| 法定福利費(事業主負担分) | 福利厚生費㋸(国税庁の具体例あり) | 法定福利費 |
| 諸会費(商工会・同業者組合など) | 租税公課㋑(国税庁の具体例あり) | 諸会費 |
| 車両費(ガソリン代) | 消耗品費㋦(国税庁の具体例あり) | 車両費 |
| 事務用品費 | 消耗品費㋦ | — |
| 発送費・梱包資材費 | 荷造運賃㋺ | — |
| 支払手数料(振込・決済手数料) | 雑費㋹ | 支払手数料 |
| 新聞図書費 | 雑費㋹ | 新聞図書費 |
| 研修費・会議費 | 雑費㋹ | 研修費・会議費 |
| リース料(機器) | 雑費㋹ | リース料 |
| 支払報酬(税理士・弁護士など) | 雑費㋹ | 支払報酬 |
機器のリース料は、地代家賃⑮に入れません。⑮の具体例は店舗・工場・倉庫などの地代と家賃で、土地と建物の賃借に限られています。税理士・弁護士などへの報酬は、どの欄に入れても1ページ右側の「税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳」に支払先を書きます。
雑費㋹に入れるのは他に当てはまらないものだけ
雑費は国税庁の定義で「事業(業務)上の費用で他の経費に当てはまらない経費」です。金額の上限は書き方に定めがありません。ただ、雑費が経費全体の中で目立つと中身が読み取れない申告書になります。毎年出る支出は空欄に科目名を立てて、雑費は単発の少額だけに絞るのが一般的です。
支払手数料の範囲や他科目との分け方は支払手数料の勘定科目と仕訳で整理しています。
空欄の書き方の例と5行に収まらないとき
空欄の記入例(科目名は行の左、金額は右)
| 欄 | 科目(手書き・入力) | 金額(円) |
|---|---|---|
| ㋾ | 支払手数料 | 42,000 |
| ㋻ | 新聞図書費 | 15,000 |
| ㋕〜㋟ | (空欄のまま) | — |
| ㋹ | 雑費 | 8,000 |
空欄に書く科目が6つ以上あるときは、金額の小さい科目を近い印刷欄か雑費に寄せて5行に収めます。どの科目をどこへ寄せたかは帳簿側にメモを残してください。翌年に同じ寄せ方ができれば、前年比が正しく読めます。
収支内訳書に転記しない勘定科目
収支内訳書は損益の計算書で、青色申告決算書のような貸借対照表の欄がありません。そのため資産・負債・資本の科目は1つも転記しないことになります。白色申告でつまずきやすいのは、事業主貸と事業主借です。
帳簿の科目の行き先は3つに分かれる
- 収益
- 売上高・家事消費・雑収入→①〜③
- 売上原価
- 期首・期末棚卸高・仕入高→⑤⑥⑧
- 費用
- ⑪〜⑯と㋑〜㋹のどれか
- 計と一致
- 売上明細の計=①、仕入明細の計=⑥、減価償却の計=⑬
- 内訳
- 給料賃金の内訳の合計=⑪
- 内数
- 地代家賃の内訳・利子割引料の内訳(金融機関を除く)
- 資本
- 事業主貸・事業主借・元入金
- 資産
- 現金・預金・売掛金・器具備品など
- 負債
- 買掛金・未払金・借入金・預り金など
図:損益の科目はAかBに入り、資産・負債・資本の科目はCに残る。Cの科目が収支内訳書の数字に混ざっていたら転記の誤り。
転記しない勘定科目と、収支内訳書との関係
| 帳簿の勘定科目 | 転記しない理由・関係する欄 |
|---|---|
| 事業主貸 | 生活費の引き出しや家事分の振替先。経費ではないので書かない |
| 事業主借 | 事業用口座への私的な入金や、事業に関係ない受取利息など。収入ではないので書かない |
| 元入金 | 期首の資本。収支内訳書には欄がない |
| 現金・普通預金・売掛金 | 資産。売掛金の元になった売上は①に含まれている |
| 器具備品・車両運搬具などの固定資産 | 取得額は書かず、償却費を2ページで計算して⑬へ |
| 買掛金・未払金 | 負債。元になった仕入・経費は⑥や各経費欄に含まれている |
| 借入金 | 元本の返済は経費にならない。利子だけ⑯へ |
| 預り金・仮払金・仮受金 | 年末までに精算して本来の科目へ振り替えてから転記 |
事業主貸・事業主借の仕訳と期末の扱いは事業主貸・事業主借とは、翌年の期首に元入金をどう組み直すかは元入金とはで扱っています。
転記の前に帳簿で済ませておく決算整理
収支内訳書の数字は、帳簿の年間合計そのものではありません。年末の整理を済ませた後の金額です。白色申告者の決算の手引き(一般用)は、棚卸表の作成、帳簿と原始記録の照合と年間合計の計算、収入と経費の整理を済ませてから収支内訳書を作る順序で説明しています。
転記の前に済ませる整理と、影響する欄(白色申告者の決算の手引きの項目)
| 整理の項目 | 帳簿でやること | 影響する欄 |
|---|---|---|
| 原始記録との照合 | 納品書・請求書・領収書と帳簿を突き合わせ、誤りを訂正 | すべて |
| 年間合計の計算 | 科目ごとに1〜12月の合計を出す | すべて |
| 棚卸表の作成 | 12月31日の商品などを数えて評価する | ⑧(翌年の⑤) |
| 未収の売上・前受金 | 未入金の売上を加え、翌年分の前受けを除く | ① |
| 家事消費 | 家事に使った商品を収入に加える | ② |
| 未払経費・前払経費 | 年内に確定した未払分を加え、翌年分の前払いを除く | 各経費欄 |
| 未使用の消耗品 | 年末に残った消耗品を消耗品費から除く | ㋦ |
| 家事上の費用 | 店舗兼住宅の家賃・光熱費などの家事分を除く | ⑮・㋩ほか |
家事分の除外は、書き方(令和7年分 p.2)にある「家事上の費用について」のとおりです。家事分と事業分は、使用面積や点灯時間などの適切な基準で分けて計算します。区分の仕訳は事業主貸を使います。
前払経費は、その年中に払った金額が1年以内の期間のものなら、そのまま必要経費にしても差し支えないとされています(白色申告者の決算の手引き 16)。消耗品の棚卸しは、通常の年に比べて特に増えていなければ省略してかまいません(同 1・17)。
期首商品棚卸高⑤は前年の⑧から持ってくる
⑤は今年の帳簿から計算する欄ではありません。前年12月31日の棚卸表の金額で、前年の収支内訳書の⑧と同じになります。商品の棚卸しと評価の方法は棚卸資産の勘定科目と仕訳が詳しいです。
日々の経費の記帳は、科目ごとの欄を持つ経費帳で付けておくと集計が速くなります。帳簿の付け方は経費帳の書き方をご覧ください。
転記後の検算手順と数値例
転記が終わったら、1ページの欄を2ページや内訳欄の計と突き合わせます。収支内訳書には、同じ金額を2か所に書く欄があるためです。片方を直してもう片方を直し忘れても、ここで見つかるでしょう。
転記後の検算は5段で進める
- 1ページ・2ページの欄をすべて埋めた
- STEP1⑤が前年の⑧と同じ金額か前年の収支内訳書の期末商品棚卸高と並べる
- STEP22ページ・内訳の計と1ページの欄が一致するか売上明細の計=①、仕入明細の計=⑥、減価償却の計=⑬、給料賃金の内訳の合計=⑪
- STEP3計算の欄を電卓で引き直す④・⑦・⑨・⑩・⑰・⑱・⑲・㉑
- STEP4帳簿の利益と⑲が一致するか帳簿の収益合計−費用合計=⑲(専従者控除前)
- STEP5㉑と⑳を確定申告書第一表へ写す所得金額の欄と「専従者給与(控除)額の合計額」欄
図:STEP2は様式に印刷された「計(①)」「計(⑥)」「⑬」「⑪」の印で照合先がわかる。STEP4で帳簿の利益と合えば、転記漏れと二重計上はほぼ消える。
1ページの欄と照合先(様式に印刷された印で確認)
| 1ページの欄 | 照合先 | 合うべき関係 |
|---|---|---|
| ①売上(収入)金額 | 2ページ「売上(収入)金額の明細」の計(①) | 同じ金額 |
| ⑥仕入金額 | 2ページ「仕入金額の明細」の計(⑥) | 同じ金額 |
| ⑬減価償却費 | 2ページ「減価償却費の計算」の必要経費算入額の計⑬ | 同じ金額 |
| ⑪給料賃金 | 1ページ右「給料賃金の内訳」の計⑪ | 同じ金額 |
| ⑮地代家賃 | 2ページ「地代家賃の内訳」の必要経費算入額 | 内訳は⑮の内数(⑮を超えない) |
| ⑯利子割引料 | 2ページ「利子割引料の内訳(金融機関を除く)」 | 内訳は⑯の内数(⑯を超えない) |
| ⑤期首商品棚卸高 | 前年の収支内訳書の⑧ | 同じ金額 |
| ⑲専従者控除前の所得金額 | 帳簿の当期の利益(収益合計−費用合計) | 同じ金額 |
売上明細と仕入明細には、主な取引先を書いた残りを「上記以外の売上先の計」「上記以外の仕入先の計」にまとめる行があります。計(①)・計(⑥)は、この行を含めた合計です。
数値例で通して確かめる
雑貨を仕入れて売る白色申告の個人事業(パート1名)で、令和7年分の帳簿を転記した例です。帳簿は決算整理後、家事分は事業主貸へ振り替え済みとします。
数値例|帳簿の科目を1ページの欄へ転記した結果
| 欄 | 金額(円) | 帳簿の科目・計算 |
|---|---|---|
| ① | 6,000,000 | 売上高6,120,000−売上値引・返品120,000 |
| ② | 30,000 | 家事消費 |
| ③ | 20,000 | 雑収入(空箱の売却代・リベート) |
| ④ | 6,050,000 | ①+②+③ |
| ⑤ | 400,000 | 期首商品棚卸高(前年の⑧) |
| ⑥ | 3,500,000 | 仕入高3,600,000−仕入値引・返品100,000 |
| ⑦ | 3,900,000 | ⑤+⑥ |
| ⑧ | 450,000 | 期末商品棚卸高 |
| ⑨ | 3,450,000 | ⑦−⑧ |
| ⑩ | 2,600,000 | ④−⑨ |
| ⑪〜⑯ | 1,440,000 | 給料賃金480,000・外注工賃60,000・減価償却費150,000・貸倒金0・地代家賃720,000・利子割引料30,000 |
| ⑰ | 581,000 | その他の経費(下の表) |
| ⑱ | 2,021,000 | 1,440,000+581,000 |
| ⑲ | 579,000 | ⑩−⑱ |
| ⑳ | 0 | 事業専従者なし |
| ㉑ | 579,000 | ⑲−⑳ |
数値例|その他の経費の内訳(合計=⑰)
| 欄 | 金額(円) | 帳簿の科目 |
|---|---|---|
| ㋑租税公課 | 50,000 | 租税公課38,000+諸会費(商工会)12,000 |
| ㋺荷造運賃 | 40,000 | 荷造運賃 |
| ㋩水道光熱費 | 96,000 | 水道光熱費(家事分除外後) |
| ㋥旅費交通費 | 24,000 | 旅費交通費 |
| ㋭通信費 | 60,000 | 通信費 |
| ㋬広告宣伝費 | 80,000 | 広告宣伝費 |
| ㋣接待交際費 | 30,000 | 接待交際費 |
| ㋠損害保険料 | 36,000 | 損害保険料 |
| ㋷修繕費 | 20,000 | 修繕費 |
| ㋦消耗品費 | 70,000 | 消耗品費52,000+事務用品費18,000 |
| ㋸福利厚生費 | 10,000 | 福利厚生費 |
| ㋾(空欄) | 42,000 | 支払手数料 |
| ㋻(空欄) | 15,000 | 新聞図書費 |
| ㋹雑費 | 8,000 | 雑費 |
帳簿側の損益は、収益6,050,000円(売上の純額・家事消費・雑収入)から、売上原価3,450,000円と経費2,021,000円を引いて579,000円です。⑲の579,000円と一致するので、STEP4は通ります。事業主貸に振り替えた生活費や家事分は、帳簿の損益にも収支内訳書にも出てきません。
帳簿の利益と⑲が合わないときの探し方
差額の形を見ると、どこを疑えばよいか当たりがつきます。
差額の特徴と、先に見る箇所
| 差額の特徴 | 先に見る箇所 |
|---|---|
| ある科目の年間合計と同じ | その科目の転記漏れか、空欄と雑費への二重記入 |
| 値引・返品の2倍 | 差し引く科目を足してしまった(①・⑥) |
| 9で割り切れる | 数字の並び違い(例 42,000を24,000と記入) |
| 前年の⑧と今年の⑤の差と同じ | 期首商品棚卸高の取り違え |
| 家族に払った給与と同じ | 帳簿では給料賃金、収支内訳書では⑪から除いた |
| 税金・罰金と同じ | 必要経費にならない税金を租税公課㋑から除いたが、帳簿では費用のまま |
最後の2行は、収支内訳書の側が正しく、帳簿の側を直す差額です。家族への給与や所得税・住民税を帳簿でも事業主貸に振り替えれば、帳簿の利益と⑲がそろいます。
確定申告書第一表へ写す欄
令和7年分の確定申告の手引き(p.8)は、事業所得の収入金額を第一表㋐欄、所得金額を①欄へ、収支内訳書から転記するよう説明しています。㉑所得金額が第一表の①になり、⑳専従者控除は第一表の「専従者給与(控除)額の合計額」欄に写します(同 p.30)。
本記事の欄番号と具体例は、令和7年分の様式と書き方で確かめたものです。様式は「令和5年分以降用」として令和7年分にも使われています。令和8年分の様式と書き方は2026年10月14日時点で国税庁に掲載されていないため、公開された時点で照合し、変更があれば更新します。
よくある質問
収支内訳書と勘定科目の対応で、実際によく検索される6問です。
Q1:収支内訳書に印刷されていない科目は追加できますか?
追加できます。書き方(令和7年分 p.1)は、特殊な経費がある場合には空欄となっている箇所に経費科目を設けて記入するよう案内しています。空欄は「その他の経費」で雑費㋹の上にある㋾〜㋟の5行です。行の左に科目名、右に年間合計を書いてください。国税庁の具体例に載っている支出(商工会の会費→租税公課、ガソリン→消耗品費など)は、空欄を使わずその欄へ寄せる方法もあります。
Q2:収支内訳書の雑費とは何を入れる欄ですか?
国税庁の定義では「事業(業務)上の費用で他の経費に当てはまらない経費」を入れる欄です。金額の上限は書き方に定めがありません。毎年出る支出や金額がまとまる支出は、空欄に科目名を立てた方が中身の読める申告書になります。雑費は単発の少額だけに絞るのが一般的です。
Q3:法定福利費や支払手数料は収支内訳書のどこに書きますか?
事業主が負担する従業員の健康保険・厚生年金・雇用保険などの保険料は、国税庁の具体例のとおり福利厚生費㋸に入れられます。支払手数料は印刷科目にないので、金額がまとまるなら空欄㋾〜㋟に「支払手数料」と書いて記入し、少額なら雑費㋹に含めます。どちらにしても、翌年も同じ欄にそろえてください。
Q4:収支内訳書の売上先名・仕入先名は空欄でもいいですか?
2ページの明細で、登録番号(インボイスの番号)か法人番号を書いた売上先・仕入先は、名称と所在地の記入を省略しても差し支えないとされています(書き方 令和7年分 p.4)。明細の行に書かない取引先は「上記以外の売上先の計」「上記以外の仕入先の計」にまとめ、計(①)・計(⑥)が1ページの①・⑥と一致するか確かめます。
Q5:事業主貸や事業主借は収支内訳書のどこに書きますか?
どこにも書きません。収支内訳書は損益の計算書で、資産・負債・資本の欄がないためです。事業主貸は生活費の引き出しや家事分の振替先、事業主借は事業用口座への私的な入金などに使う科目で、どちらも収入や経費ではありません。帳簿で経費に入っている家事分を事業主貸へ振り替えてから転記すると、帳簿の利益と⑲がそろいます。
Q6:期首商品棚卸高⑤はどこから持ってきますか?
前年12月31日の棚卸表の金額です。前年の収支内訳書の期末商品棚卸高⑧と同じになります。今年の帳簿の仕入高から計算する欄ではありません。開業した年は前年の棚卸しがないので、開業時に持っていた商品がなければ0円です。
まとめ
収支内訳書と勘定科目の対応を1枚に整理します。
この記事のまとめ
- 経費は⑪〜⑯の6科目(給料賃金・外注工賃・減価償却費・貸倒金・地代家賃・利子割引料)とその他の経費㋑〜㋹の2段。会計ソフトの並びが青色申告決算書の順でも、⑪〜⑯を先に拾う
- 売上値引・返品は①、仕入値引・返品は⑥から差し引く。仕入割引とリベートは③その他の収入
- 印刷されていない科目は、国税庁の具体例の欄へ寄せる(事業主負担の社会保険料→㋸、商工会などの会費→㋑、ガソリン→㋦)か、雑費の上の空欄5行㋾〜㋟に科目名を書く
- 事業主貸・事業主借・元入金と資産・負債の科目は転記しない。家族への給与は⑪に入れず、要件に当たれば⑳の専従者控除
- 検算は①・⑥・⑬・⑪を2ページや内訳の計と照合し、⑤=前年の⑧、帳簿の利益=⑲を確かめる
- 欄番号は令和7年分の様式(令和5年分以降用)と書き方で確認。令和8年分の様式が公開されたら照合して更新する
免責事項
※本記事は収支内訳書(一般用)の欄と帳簿の勘定科目の対応を、国税庁の様式・書き方・手引き(令和7年分・2026年10月時点の掲載版)に基づいて整理しています。科目の寄せ先は事業の内容や帳簿の付け方により異なり、令和8年分以後は様式が変わる場合もあります。最新の様式をご確認のうえ、必要に応じて顧問税理士など有資格者へご相談ください。
