この記事でわかること
- 貸付金は、お金を貸して後で返してもらう権利(資産=債権)の勘定科目であること
- 貸付時・回収時・受取利息の仕訳の型と、決算での短期/長期の分け方(1年基準)
- 混同しやすい「借入金」「立替金」「仮払金」との切り分け(お金の向きと性質で判断)
- 役員貸付金の認定利息(無利息で貸すと課税される仕組み)と利率の決め方・銀行評価への影響
- 貸付金の消費税の扱い(元本は不課税・受取利息は非課税)
参考: 国税庁タックスアンサー(No.2606 金銭を貸し付けたとき)
結論を先に書きます
貸付金は、取引先や役員・従業員などにお金を貸して、あとで返してもらう権利を表す資産(債権)の勘定科目です。
会社が借りた側なら「借入金」、貸した側なら「貸付金」。判断の起点はシンプルで、お金が出ていって「返してもらう権利」が残るかです。経費ではないので、貸した時点では損益に影響しません。
- 貸付金は資産(債権)。貸した時に計上し、回収で消し込む。元本のやり取りは損益に影響しない
- 決算では1年基準で「短期貸付金(1年以内回収)」と「長期貸付金(1年超)」に分ける
- 借入金(負債・反対の向き)・立替金(相手負担を一時肩代わり)・仮払金(用途未確定の前渡し)と性質で区別する
- 受け取った利息は「受取利息」で収益計上。役員・従業員への貸付は適正利率での利息計上が必要
- 役員に無利息・低利で貸すと認定利息が課税され、長期残高は銀行評価も下げる。元本は不課税・利息は非課税
貸付金とは「お金を貸して返してもらう権利」の資産
貸付金の本質は、自社からお金が出ていく代わりに「返してもらう権利(債権)」が手元に残る資産だという点です。
会社が銀行などから借りたお金は「借入金」という負債で処理します。逆に、会社が誰かにお金を貸したときに使うのが、この貸付金です。向きが正反対なので、まず「貸したのか・借りたのか」を最初に確認しましょう。
貸付金を使う代表的な場面は次のとおりです。
貸付金を使う代表的な場面
| 場面 | 内容 |
|---|---|
| 取引先の資金繰り援助 | 関係会社や得意先へ資金を融通する |
| 役員への貸付(役員貸付金) | 社長など役員個人に会社のお金を貸す |
| 従業員への貸付(従業員貸付金) | 社員への生活資金・住宅資金などの貸付 |
| 子会社・関連会社への融資 | グループ内で資金を回す |
ポイントは、貸付金は「対価をともなう取引のための支払い」ではなく、返済を前提にしたお金の貸し借りだという点です。商品代金の前払いやお金の立て替えとは性質が異なります。区別の基準は、後ほど比較表で整理します。
短期貸付金と長期貸付金(1年基準で分ける)
貸付金は、決算で「1年基準(ワン・イヤー・ルール)」にもとづいて2つに分けて表示します。
- 短期貸付金:決算日の翌日から1年以内に回収予定のもの(流動資産)
- 長期貸付金:回収予定が1年を超えるもの(固定資産)
期中の仕訳は単に「貸付金」で処理しても問題ありませんが、決算書(貸借対照表)に載せるときは短期と長期に振り分けます。この区分は、会社の支払能力をみる流動比率などの財務指標にも影響するため、決算時に必ず見直します。
貸付金の仕訳例(貸付時・回収時・受取利息)
貸付金の仕訳は、「貸した時に資産計上 → 回収で消し込み、利息は受取利息で収益計上」の流れで考えると迷いません。
取引先へ100万円を貸し付けるケースを起点に、基本の3パターンを確認します。
- 貸付時(100万円を普通預金から貸し付け)
- 回収時(元本100万円が返済された)
- 受取利息(利息を受け取った)
① 貸付時:100万円を普通預金から貸し付け
手元の預金が減る代わりに、「返してもらう権利」という資産(貸付金)が増えます。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 短期貸付金 1,000,000円 | 普通預金 1,000,000円 |
この段階では費用も収益も発生しません。元本の貸し借りは損益に影響しないのが基本です。1年超の貸付なら、勘定科目を「長期貸付金」にします。
② 回収時:元本100万円が返済された
貸したお金が返ってきたら、貸付金(資産)を減らして消し込みます。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金 1,000,000円 | 短期貸付金 1,000,000円 |
預金が増え、貸付金がゼロになります。分割返済の場合は、返済を受けた金額だけ貸付金を減らしていきます。
③ 受取利息:利息を受け取った
貸付金には利息を付けるのが原則です。受け取った利息は元本とは別に、「受取利息」という収益で処理します。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金 20,000円 | 受取利息 20,000円 |
利息は会社の収益になるため、法人税の課税対象です。なお、決算をまたいで利息が未入金の場合は、その期に対応する利息を「未収利息(未収収益)」として収益に計上します。受取利息側のくわしい処理は、受取利息の勘定科目と仕訳でまとめています。仕訳の借方・貸方が不安な方は、仕訳とは(借方・貸方の基本)もあわせてご確認ください。
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貸付金の処理の手順(貸付→回収までの流れ)
貸付金は、契約から回収までの流れを社内で固定しておくと、利息の計上漏れや回収忘れを防げます。基本の4ステップで整理します。
- 契約書を交わす:金額・返済期日・利率・返済方法を金銭消費貸借契約書で明確にする
- 貸付時に計上:お金を渡したら「短期貸付金」または「長期貸付金」で資産計上する
- 利息を計上・受領:約定した利率で受取利息を計上し、実際に受け取る(未入金なら未収利息)
- 回収・消し込み:元本の返済を受けたら貸付金を減らし、完済で残高をゼロにする
最初の契約書の作成が最大のポイントです。とくに役員や従業員への貸付では、契約書がないと「返すあてのないお金(給与・賞与)」とみなされやすくなります。利率・期日・返済方法を書面に残すことが、後々の税務リスク回避につながります。
貸付金と借入金・立替金・仮払金の違い
貸付金と紛らわしい科目に「借入金」「立替金」「仮払金」があります。混同しやすいので、お金の向き・最終負担者・確定度の観点で区別します。
| 勘定科目 | 分類 | お金の向き | 性質・典型例 |
|---|---|---|---|
| 貸付金 | 資産 | 出ていく | 返済を前提に貸したお金。利息を受け取る(取引先・役員への貸付) |
| 借入金 | 負債 | 入ってくる | 返済義務を負って借りたお金。利息を支払う(銀行融資) |
| 立替金 | 資産 | 出ていく | 本来は他人が負担すべき費用を一時的に支払い、後で回収する(取引先の送料) |
| 仮払金 | 資産 | 出ていく | 用途・金額が未確定のまま先に渡したお金(出張旅費の概算前渡し) |
切り分けのコツは次の3点です。
- 貸付金と借入金は向きが反対。貸付金は「貸して返してもらう(資産)」、借入金は「借りて返す(負債)」
- 貸付金と立替金は趣旨が違う。貸付金=返済前提の融通/立替金=相手が負担すべき費用の一時肩代わり(原則として利息は付けない)
- 貸付金と仮払金は確定度が違う。貸付金=金額・返済条件が確定/仮払金=用途・金額が未確定の前渡し
とくに迷いやすいのが立替金との区別です。返してもらう約束で「貸した」なら貸付金、相手の費用を一時的に「肩代わりした」なら立替金。利息を取る前提かどうかも判断材料になります。立替金側のくわしい仕訳は、立替金の勘定科目と仕訳(仮払金・預り金との違い)で整理しています。用途未確定の前渡しである仮払金との違いは、仮払金の勘定科目と仕訳もあわせてご確認ください。
役員貸付金の税務リスクと認定利息
ここが、貸付金でいちばん注意したいポイントです。役員貸付金は、利息の付け方ひとつで余計な税負担や銀行評価の低下を招きます。
役員貸付金とは、社長など役員個人に会社のお金を貸したものです。通常の貸付金と仕訳は同じですが、税務上は厳しく見られます。会社と役員は「身内」の関係なので、利息をきちんと取らないと、本来取るべき利息を取ったものとみなされて課税されるためです。
認定利息とは(無利息・低利で貸すとどうなるか)
会社が役員に無利息や低すぎる利率でお金を貸すと、本来受け取るべき利息(適正利息)を受け取ったものとみなされて、その分が会社の収益(受取利息)として課税されます。これを認定利息といいます。
つまり、利息を取っていなくても、「取ったことにして法人税がかかる」という扱いです。さらに、適正利息との差額分は役員給与(役員賞与)とみなされ、損金不算入や源泉所得税の問題につながることもあります。
無利息・低利で役員に貸した場合の主なリスク
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 認定利息の計上 | 適正利息分を受取利息として収益計上を求められ、法人税が増える |
| 役員給与とみなされる | 差額が役員賞与認定され、損金不算入・源泉所得税の対象になりうる |
| 銀行融資への影響 | 「回収見込みの薄い資産」とみられ、金融機関の評価が下がる |
| 相続時の評価 | 役員貸付金は会社の資産(債権)として、相続財産の評価対象になりうる |
認定利息の利率と計算(仕訳例)
認定利息の利率は、会社が自分で自由に決められるわけではありません。国税庁の取扱いでは、会社が他から借り入れて貸した場合はその借入利率、それ以外は所定の特例基準割合による利率で評価します。具体的な利率は年によって変わるため、最新の数値は国税庁の情報で確認します。
たとえば期末の役員貸付金残高が500万円、適正利率を年0.9%とすると、1年分の認定利息は次のように計算します。
- 500万円 × 0.9% = 年45,000円(期中の残高変動がある場合は月割りで按分)
- 月割りの目安=貸付残高 × 年利率 ÷ 12 × 月数
この認定利息を計上するときの仕訳は、受け取りが翌期以降になるなら「未収利息」を使います。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 未収利息 45,000円 | 受取利息 45,000円 |
実際に役員から利息を受け取ったときは、未収利息を消し込みます。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金 45,000円 | 未収利息 45,000円 |
「適正利率で利息を計上し、実際に受け取る」——これが認定利息の問題を防ぐ基本動作です。利率の判断や源泉徴収の要否は個別事情で変わるため、迷う場合は最新の国税庁情報を確認のうえ、必要に応じて顧問税理士へ相談すると安心です。
役員貸付金を残さないための実務
役員貸付金は、長く残すほどリスクが膨らみます。実務では次の方法で計画的に解消します。
- 役員報酬から返済:毎月の役員報酬から一定額を返済に充てる
- 退職金で清算:役員退職時に退職金と相殺して一括返済する
- 個人資産で返済:役員個人の資産売却などで原資を確保する
いずれの方法でも、契約書にもとづいて利息を計上しながら、計画的に残高を減らすのが基本です。「気づいたら役員貸付金が膨らんでいた」という状態を作らないことが、税務調査でも銀行融資でも有利に働きます。
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貸付金の消費税の扱い
貸付金まわりの消費税は、元本と利息で分けて考えると整理できます。
まず、貸付金そのもの(元本)の貸し借りは、消費税の課税対象外(不課税)です。お金そのものの移動には対価性がないため、貸付時・回収時のいずれも消費税はかかりません。
次に、受け取る利息です。受取利息は、消費税法上の「非課税取引」にあたります。課税対象外(不課税)ではなく「非課税」である点がポイントで、利息に消費税は乗りませんが、消費税の課税売上割合の計算では非課税売上として扱う必要があります。
元本は不課税、利息は非課税。会計ソフト上の税区分の設定を間違えると、課税売上割合の計算に影響することがあります。判断に迷う取引は、最新の国税庁の情報を確認のうえ、必要に応じて顧問税理士へ相談すると安心です。
貸付金が回収できないとき(貸倒れ)
貸付金は「返してもらう権利」ですが、相手の倒産などで回収できなくなることもあります。 回収不能が確定した貸付金は、要件を満たせば「貸倒損失」として費用処理します。
また、回収が不安な貸付金については、決算で将来の貸倒れに備えて「貸倒引当金」を見積もって計上することもあります。貸倒れの判定や引当金の繰入は税務上の要件が細かいため、貸倒引当金の基礎もあわせて確認しておくと安心です。
ここでも重要なのは、やはり契約書と返済記録を残しておくことです。書面がないと、そもそも「貸付金だったのか」を税務上説明できず、貸倒れの処理も認められにくくなります。
よくある質問
貸付金まわりで実務上よく聞かれる6問を整理します。
Q1:貸付金は資産ですか、それとも費用ですか?
資産です。貸付金は「お金を貸して、あとで返してもらう権利(債権)」を表す資産の勘定科目で、貸した時点では費用になりません。元本の貸し借りは損益に影響せず、受け取った利息だけが「受取利息」として収益になります。
Q2:貸付金と借入金の違いは何ですか?
お金の向きが正反対です。貸付金は「会社が貸して返してもらう権利(資産)」、借入金は「会社が借りて返す義務(負債)」です。利息も、貸付金は受け取る(受取利息)、借入金は支払う(支払利息)という違いがあります。
Q3:役員貸付金とは何ですか?
社長など役員個人に、会社のお金を貸したものです。仕訳は通常の貸付金と同じですが、税務上は厳しく見られます。無利息や低利で貸すと「認定利息」が課税されたり、銀行融資の評価が下がったりするため、適正利率で利息を計上し、計画的に返済するのが原則です。
Q4:役員に無利息でお金を貸してもよいですか?
おすすめできません。会社と役員の間で無利息・低利の貸付を行うと、本来受け取るべき利息を受け取ったものとみなされ、その分(認定利息)が会社の収益として課税されます。差額が役員給与とみなされることもあるため、適正な利率を設定して利息を計上・受領するのが安全です。
Q5:貸付金の利息に消費税はかかりますか?
かかりません。受取利息は消費税法上の「非課税取引」にあたるため、利息に消費税は乗りません。貸付金の元本のやり取りも対価性がないため不課税です。ただし利息は非課税売上として課税売上割合の計算に影響するため、会計ソフトの税区分の設定に注意します。
Q6:貸付金は短期と長期でどう分けますか?
決算日の翌日から1年以内に回収予定のものを「短期貸付金(流動資産)」、回収予定が1年を超えるものを「長期貸付金(固定資産)」として、決算書で分けて表示します。期中は単に「貸付金」で処理し、決算時に振り分ける運用でも問題ありません。
まとめ:貸付金の勘定科目チェックリスト
貸付金の判断と処理を、最後に1枚で整理します。
- 貸付金は「お金を貸して返してもらう権利」で、資産(債権)の科目。元本の貸し借りは損益に影響しない
- 決算では1年基準で短期貸付金(流動資産)と長期貸付金(固定資産)に分ける
- 貸付時に計上、回収で消し込み、受け取った利息は「受取利息」で収益計上する
- 借入金(負債・反対の向き)・立替金(相手負担の肩代わり)・仮払金(用途未確定の前渡し)と性質で区別する
- 役員貸付金は適正利率で利息を計上しないと認定利息が課税され、長期残高は銀行評価も下げる
- 元本は不課税・受取利息は非課税。契約書と返済記録を必ず残す
貸付金は「貸したお金が返ってくるまで管理し続ける」科目です。とくに役員貸付金は、契約書を交わし、適正利率で利息を計上し、計画的に回収する——この3点を守るだけで、余計な税負担と銀行評価の低下を大きく避けられます。
利率の判断や認定利息の要否、貸倒れの処理など迷いやすいケースは、最新の法令・国税庁の情報を確認のうえ、必要に応じて顧問税理士へ相談しておくと安心です。
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免責事項
※本記事は会計・税務の一般的な情報を整理したものです。個別の取引の判定や申告に関わる判断は、最新の法令・国税庁の情報をご確認のうえ、必要に応じて税理士など有資格者へご相談ください。
