ファクタリングの仕訳は、売掛金を「譲渡(売却)」する取引として処理します。手数料の勘定科目は「売上債権売却損」が原則で、支払利息や支払手数料は誤りです。消費税は非課税、負債にも計上しません。手数料相場は3社間で1〜9%、2社間で10〜20%が目安です。
「借入金なのか」「手数料は何費か」「2社間と3社間で仕訳が違うのか」という3つのつまずきを、迷わない基準で整理します。
この記事でわかること
- ファクタリングの手数料は「売上債権売却損」で、支払利息・支払手数料は誤りという結論と根拠
- 3社間ファクタリングの仕訳の具体例(譲渡時・入金時)
- 2社間ファクタリングは「預り金」の計上が必須という別ルール
- 売掛金か未収入金か、債権の種類で科目を分ける考え方
- 消費税は非課税、借入(貸金業)とは何が違うかまで
公的情報源: 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」(参照)/国税庁「No.6201 非課税となる取引」(参照)
結論を先に書きます
ファクタリングとは、売掛金(売上債権)をファクタリング会社に売却して、期日前に現金化する資金調達です。お金を借りる「借入」ではなく、資産を売る「譲渡」なので、負債(借入金)にはなりません。
支払った手数料は、額面と入金額の差額です。この差額の勘定科目は「売上債権売却損」を使います。消費税は非課税で、仮払消費税は発生しません。
- ファクタリングは売掛金の売却。借入ではないので「借入金」で処理しない
- 手数料(額面と入金額の差)は「売上債権売却損」。支払利息・支払手数料は誤り
- 3社間は仕訳がシンプル、2社間は「預り金」で回収金の一時預かりを処理する
- ファクタリング会社への未回収額は「未収入金」で管理してもよい
- 消費税は非課税(金銭債権の譲渡)。均等な手数料でも課税されない
ファクタリングの仕訳とは|売掛金の「譲渡」で借入ではない
ファクタリングの仕訳とは、売掛金を売却して現金化する取引を、債権の譲渡として記録する会計処理です。ポイントは「借入ではない」という一点に尽きます。
銀行融資は、お金を借りて「借入金」という負債を計上します。返済義務が残ります。一方ファクタリングは、手元の売掛金という資産を売るだけなので、負債は増えません。売った分だけ売掛金が減り、現金が入ります。

買取型ファクタリングには、契約の当事者の数で2社間と3社間の2種類があります。どちらも「売掛金の売却」という本質は同じですが、回収の流れが違うため仕訳の手数が変わります。
| 区分 | 契約の当事者 | 売掛先への通知 | 手数料の目安 |
|---|---|---|---|
| 3社間ファクタリング | 利用者・ファクタリング会社・売掛先 | あり(承諾が必要) | 1〜9%程度 |
| 2社間ファクタリング | 利用者・ファクタリング会社 | なし | 10〜20%程度 |
手数料は業者や債権の信用度で変わります。上表は一般的な目安なので、実際の契約書の金額を基準にしてください。
手数料の勘定科目は「売上債権売却損」|支払利息・支払手数料は誤り
ファクタリングで支払う手数料の勘定科目は、「売上債権売却損」です。額面(売掛金の金額)と実際の入金額の差が、この売却損にあたります。
なぜ「売上債権売却損」なのか。ファクタリングは金銭債権を額面より安く売る取引だからです。100万円の売掛金を95万円で売れば、5万円は債権を安売りした「売却による損失」になります。利息でも役務提供の対価でもありません。
誤りやすい勘定科目
| 勘定科目 | 使えるか | 理由 |
|---|---|---|
| 売上債権売却損 | ○(原則) | 債権を額面より安く売った差損 |
| 債権売却損・売掛金売却損 | ○(同義) | 「売上債権売却損」と同じ扱いでよい |
| 支払手数料 | △ | 少額なら容認されるが、原則は売却損 |
| 支払利息 | ✕ | 借入ではないため利息ではない |
| 雑損失 | △ | 金額が僅少なときのみ。原則は売却損 |
「支払利息」で処理すると、ファクタリングを借入とみなしていることになり、税務調査で指摘される可能性があります。原則どおり「売上債権売却損」を使いましょう。勘定科目に迷ったときは勘定科目一覧【B/S・P/L全網羅】もあわせてご確認ください。
3社間ファクタリングの仕訳例|売掛金と売却損
3社間ファクタリングは、売掛先もファクタリング会社に直接支払うため、仕訳がシンプルです。売掛金100万円を、手数料5万円(5%)で3社間ファクタリングし、95万円が入金されたケースで見ていきます。
譲渡(売却)契約をしたとき
売掛金をファクタリング会社へ譲渡した時点で、売掛金を「未収入金」に振り替え、差額を売却損で計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未収入金 | 950,000 | 売掛金 | 1,000,000 |
| 売上債権売却損 | 50,000 |
入金があったとき
ファクタリング会社から95万円が振り込まれたら、未収入金を消し込みます。

| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 950,000 | 未収入金 | 950,000 |
譲渡と入金が同日なら、2つの仕訳をまとめて「普通預金950,000・売上債権売却損50,000/売掛金1,000,000」と1本で切っても構いません。ファクタリング会社への債権を分けて管理したいときは、上記のように「未収入金」を経由させます。
2社間ファクタリングの仕訳例|「預り金」の計上が必須
2社間ファクタリングは、売掛先が従来どおり利用者に支払い、利用者がその回収金をファクタリング会社へ送金します。ここで「預り金」を使うのが最大のポイントです。
売掛金の売却時と入金時は、3社間と同じく「未収入金・売上債権売却損/売掛金」「普通預金/未収入金」で処理します。違うのは、その後に売掛先から入金があったときです。
売掛先から売掛金を回収したとき
この100万円は、すでにファクタリング会社へ売った債権の回収金です。自社の売上ではなく、ファクタリング会社へ渡すために一時的に預かるお金なので「預り金」で受けます。

| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 1,000,000 | 預り金 | 1,000,000 |
ファクタリング会社へ送金したとき
預かった100万円をファクタリング会社へ振り込み、預り金を消し込みます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金 | 1,000,000 | 普通預金 | 1,000,000 |
回収金を「売上」や「雑収入」で受けると、同じ売上を二重計上してしまいます。すでに売却済みの債権なので、必ず「預り金」で受けて送金時に消す、と覚えてください。預り金の考え方は預り金の勘定科目と仕訳|源泉所得税・住民税・社会保険料の預りでも整理しています。
売掛金か未収入金か|債権の種類で科目を分ける
譲渡から入金までの間、ファクタリング会社に対する未回収額をどの科目で持つかは、「未収入金」が無難です。
売掛金は「本業の商品・サービスの掛け売り」で生じた債権を指します。ファクタリング会社に対する債権は、本業の取引で生じたものではなく「売掛金を売った代金の未回収分」です。そのため、本業の売掛金とは区別して「未収入金」で持つのが整理として自然です。
| 場面 | 使う科目 | 理由 |
|---|---|---|
| 通常の掛け売りで生じた債権 | 売掛金 | 本業の商品・サービスの対価 |
| ファクタリング会社への未回収額 | 未収入金 | 債権売却代金の未収分(本業外) |
| 譲渡と入金が同日 | (経由せず直接処理) | 未収入金を立てなくてよい |
売掛金と未収入金の違いは売掛金の勘定科目と仕訳は?買掛金・未収入金との違いと回収・貸倒の処理で詳しく解説しています。
消費税の区分は「非課税」
ファクタリングは金銭債権の譲渡にあたるため、消費税は非課税です。手数料(売上債権売却損)にも消費税はかかりません。会計ソフトの消費税区分では「非課税」を選びます。
これは国税庁の定める非課税取引の一つで、有価証券や金銭債権の譲渡は消費税の対象外とされています(参考: 国税庁「No.6201 非課税となる取引」)。仮払消費税を計上したり、課税仕入れとして処理したりしないよう注意してください。
なお、消費税の課税売上割合の計算では、非課税売上として扱う論点もあります。金額が大きい場合は顧問税理士に確認すると安心です。
借入(貸金業)との違い|負債計上ではない
ファクタリングと融資は、資金が入る点は同じでも会計上はまったく別物です。ファクタリングは「資産(売掛金)の売却」、融資は「負債(借入金)の発生」です。
ファクタリングと借入の違い
| 項目 | ファクタリング | 借入(融資) |
|---|---|---|
| 取引の性質 | 売掛金の売却(譲渡) | お金を借りる |
| 負債計上 | なし | あり(借入金) |
| コストの科目 | 売上債権売却損 | 支払利息 |
| 消費税 | 非課税 | 非課税(利息) |
| 返済義務 | なし | あり |
もう一つ注意したいのが「給与ファクタリング」です。個人が勤務先に対して持つ給料債権を買い取る取引は、金融庁が「貸金業に該当する」と明示しています。年率換算で数百%になる手数料や悪質な取り立ての被害も報告されています(参考: 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」)。事業者の売掛金ファクタリングとは別物であり、利用は避けるべきです。
よくある間違いと注意点
実務で見かける誤りを整理します。いずれも税務調査や決算で問題になりやすい論点です。
- 手数料を「支払利息」で処理してしまう
- ファクタリングを「借入金」で負債計上してしまう
- 2社間で回収金を「売上」に計上して二重計上する
- 手数料に消費税をかけて仮払消費税を立ててしまう
間違い1:手数料を支払利息にしてしまう
最も多い誤りです。ファクタリングは借入ではないため利息ではありません。手数料は「売上債権売却損」で処理します。
間違い2:借入金で負債計上してしまう
売掛金を売っただけなので、負債は増えません。「借入金」を計上すると貸借対照表が実態と合わなくなります。売掛金の減少と現金の増加で記録します。
間違い3:2社間で回収金を売上にする
売掛先からの入金を「売上」で受けると、すでに計上済みの売上と二重になります。回収金は「預り金」で受け、送金時に消し込みます。
間違い4:手数料に消費税をかける
ファクタリングは非課税取引です。売上債権売却損に仮払消費税は発生しません。課税仕入れとして入力しないよう注意してください。判断に迷う場合は、顧問税理士に確認するのが確実です。
よくある質問
ファクタリングの会計処理でつまずきやすい5問を整理します。
Q1:ファクタリングの手数料は何費で処理しますか?
「売上債権売却損」で処理します。売掛金の額面と入金額の差額が手数料にあたり、これは債権を安く売った損失です。支払利息や支払手数料ではありません。金額が僅少なときに限り「支払手数料」で容認される場合もありますが、原則は売却損です。
Q2:ファクタリングは借入金として計上しますか?
いいえ。ファクタリングは売掛金の売却であり、お金を借りる取引ではありません。負債(借入金)は計上しません。売掛金が減り、現金が増える処理になります。返済義務も生じません。
Q3:2社間ファクタリングで「預り金」を使う理由は?
売掛先からの回収金が、すでに売却済みの債権に対する入金だからです。自社の売上ではなくファクタリング会社へ渡すお金なので、一時的に「預り金」で受け、送金時に取り崩します。売上で受けると二重計上になります。
Q4:ファクタリングに消費税はかかりますか?
かかりません。ファクタリングは金銭債権の譲渡で非課税取引です。手数料(売上債権売却損)にも消費税は課されません。会計ソフトの消費税区分は「非課税」を選びます。
Q5:ファクタリング会社への未回収額はどの科目ですか?
「未収入金」が無難です。本業の掛け売りで生じた売掛金とは区別し、債権売却代金の未収分として未収入金で管理します。譲渡と入金が同日なら、未収入金を経由せず直接処理しても構いません。
まとめ:ファクタリングは「売却」・手数料は売上債権売却損
最後に、ファクタリングの仕訳のポイントを整理します。
- ファクタリングは売掛金の売却。借入金では処理しない
- 手数料(額面と入金額の差)は「売上債権売却損」。支払利息は誤り
- 3社間はシンプル、2社間は「預り金」で回収金の二重計上を防ぐ
- ファクタリング会社への未回収額は「未収入金」で管理する
- 消費税は非課税。給与ファクタリングは貸金業に該当し利用は避ける
ファクタリングは「売掛金を売って現金化する」取引だと押さえれば、仕訳の骨格は迷いません。手数料は売上債権売却損、2社間は預り金、消費税は非課税――この3点を軸に処理しましょう。契約条件や消費税の課税売上割合への影響など、金額が大きいケースでは税理士に確認すると確実です。
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免責事項
※本記事は2026年時点の公開情報をもとに勘定科目の一般的な考え方を整理したものです。会計処理・消費税の扱いは取引実態や契約内容により異なります。個別の会計処理・税務判断は、最新の国税庁・金融庁の公式情報をご確認のうえ、税理士など有資格者にご相談ください。
