工事未払金の勘定科目と仕訳|建設業の買掛金相当・未払金や支払手形との違い【2026年】

工事未払金の勘定科目は、建設業で材料費や外注費などの未払いを記録する負債で、一般会計の「買掛金」に相当します。工事の完成前後を問わず、営業取引で生じた手形以外の未払い分を計上します。手形を振り出せば「支払手形」、営業外の未払いは「未払金」と、3つの科目を使い分けます。

「工事未払金と買掛金は何が違うのか」「未払金や支払手形とどう使い分けるのか」という迷いを、建設業会計の仕組みと仕訳例で、判断できる基準に整理します。

この記事でわかること

  • 工事未払金は建設業の買掛金にあたる負債で、一般会計の「買掛金」に相当するという結論
  • 計上するのは材料費・外注費・労務費などの工事原価の未払い分
  • 未払金・支払手形との使い分けの基準(営業取引か・手形か)
  • 未成工事支出金とセットで動く仕訳の具体例(T字勘定つき)
  • 消費税は計上時の課税仕入れで完結、支払時は不課税という区分

公的情報源: 国土交通省「建設業法施行規則別記様式第十五号及び第十六号の勘定科目の分類」(参照

結論を先に書きます

工事未払金とは、建設業で材料費や外注費などの未払い分を記録する負債です。一般会計でいう「買掛金」とまったく同じ役割を持ちます。

使い分けの軸はシンプルです。工事に関わる営業取引の未払いは「工事未払金」、手形を振り出したら「支払手形」、営業に関係ない未払い(固定資産の購入など)は「未払金」になります。

この記事の要点
  • 工事未払金は建設業の買掛金にあたる負債。一般会計の「買掛金」に相当する
  • 計上するのは材料費・外注費・労務費など工事原価の未払い分
  • 手形を振り出したら「支払手形」で、工事未払金には含めない
  • 営業外の未払い(固定資産・事務用品など)は「未払金」で区別する
  • 消費税は計上時に課税仕入れ、支払時は不課税(対象外)

目次

工事未払金とは|建設業の買掛金相当(一般会計の買掛金)

工事未払金とは、建設業で工事の材料費・外注費などを、まだ支払っていないときに使う勘定科目です。分類は貸借対照表の流動負債で、一般会計の「買掛金」に相当します。

建設業では、財務諸表の様式が法律で決まっているため、通常の「買掛金」ではなく「工事未払金」という科目名を使います。中身は買掛金と同じ、営業取引で生じた債務です。

一般会計との対応は、次のとおりです。仕入・買掛まわりの科目が、建設業の科目に置き換わります。

一般会計の科目建設業会計の科目分類
買掛金工事未払金負債
仕掛品未成工事支出金資産
売掛金完成工事未収入金資産
売上高完成工事高収益

この科目名は、建設業法施行規則の財務諸表様式(別記様式第十五号・十六号)で定められています(参考: 国土交通省「勘定科目の分類」)。建設業許可業者は、この様式で工事未払金を報告します。

買掛金そのものの考え方は、一般の会社と共通です。買掛金・売掛金・未払金の違いは買掛金の勘定科目と仕訳は?売掛金・未払金との違いで整理しています。

工事未払金と買掛金・未払金・支払手形の違い

工事未払金は工事原価の未払い、未払金は営業外の未払い、支払手形は手形を振り出したときという建設業の負債科目の使い分けを対比した比較カード図
図:工事の未払いは営業取引か・手形かで科目を使い分ける

工事未払金でつまずきやすいのが、似た負債科目との使い分けです。3つの軸で整理すると迷いません。

1つ目は、営業取引かどうかです。工事に直接関わる材料費・外注費などの未払いは「工事未払金」、それ以外(固定資産・事務用品などの購入)の未払いは「未払金」で区別します。

2つ目は、手形を使ったかどうかです。約束手形を振り出して支払いを約束した場合は、工事未払金ではなく「支払手形」になります。

科目分類使う場面
工事未払金負債材料費・外注費など工事原価の未払い(手形以外)
未払金負債固定資産・事務用品など営業外の未払い
支払手形負債支払いに約束手形を振り出したとき
未成工事支出金資産未払いで計上した原価を集計する側(相手科目)

ポイントは、「工事に関わる営業取引の未払い」だけが工事未払金という点です。同じ未払いでも、パソコンや車両の購入代金の未払いは「未払金」になります。

手形を使う場合の処理は支払手形の勘定科目と仕訳は?受取手形・買掛金との違いで整理しています。

工事未払金の仕訳例|計上から支払いまで

借方に未成工事支出金40万円、貸方に工事未払金40万円を計上し外注費の未払いを記録するT字勘定図
図:外注費40万円を翌月払いで発注。原価を資産計上し未払いを負債で記録する

具体的な数字で、工事未払金の計上と支払いを見ていきます。下請業者へ外注費40万円を発注し、代金は翌月払いとしたケースからです。

ケース1:外注費を工事未払金で計上する

工事の外注費40万円を、翌月払いで計上します。工事中の原価なので、借方は資産の「未成工事支出金」、貸方が「工事未払金」です。

借方金額貸方金額摘要
未成工事支出金400,000工事未払金400,000A工事 外注費

このように、工事未払金は未成工事支出金とセットで動くのが基本です。原価を資産計上しつつ、未払いを負債で記録します。

ケース2:材料費を掛けで仕入れて計上する

工事材料30万円を掛けで購入したケースです。こちらも借方は未成工事支出金、貸方は工事未払金です。

借方金額貸方金額摘要
未成工事支出金300,000工事未払金300,000A工事 材料費

ケース3:工事未払金を支払う

借方に工事未払金40万円、貸方に普通預金40万円を計上し外注費の未払いを支払って負債を消し込むT字勘定図
図:工事未払金40万円を普通預金で支払い、負債を取り崩す

翌月、工事未払金40万円を普通預金から支払ったケースです。負債を取り崩します。

借方金額貸方金額摘要
工事未払金400,000普通預金400,000A工事 外注費 支払

原価の集計先である未成工事支出金の処理は、この後のクラスタ記事(未成工事支出金)で扱います。

工事未払金の消費税と決算での表示

消費税は、計上時に完結すると考えるとわかりやすくなります。

材料費や外注費を工事未払金で計上したとき、その内容に応じて課税仕入れとして処理します(仮払消費税を計上)。実際に工事未払金を支払う仕訳は、負債を減らして現預金を減らすだけなので、消費税は動かず不課税(対象外)です。

決算での表示は、貸借対照表の流動負債に、期末時点の工事未払金の残高を計上します。翌期に支払う予定の、工事原価の未払い分が負債として繰り越されます。

なお、決算をまたぐときは、当期の工事にかかった外注費・材料費が計上漏れになっていないかを確認します。請求書がまだ届いていない分も、当期の原価であれば工事未払金で計上します(未払計上)。

よくある間違いと注意点

実務で見かける誤りを整理します。いずれも原価の計上漏れや科目違いに直結するため、先に押さえておくと安心です。

  1. 工事に関わる外注費の未払いを「未払金」で処理してしまう
  2. 固定資産の購入代金の未払いを「工事未払金」で処理してしまう
  3. 手形を振り出したのに「工事未払金」のままにしてしまう
  4. 決算で、請求書未着の当期原価の未払計上を漏らす

間違い1:営業取引の未払いを未払金にしてしまう

材料費・外注費など工事原価の未払いは、「未払金」ではなく「工事未払金」です。営業取引かどうかで科目が分かれます。

間違い2:営業外の未払いを工事未払金にしてしまう

パソコン・車両・事務用品などの購入代金の未払いは、工事原価ではありません。「未払金」で処理し、工事未払金と区別します。

間違い3:手形を振り出したのに工事未払金のまま

約束手形を振り出して支払いを約束したら、工事未払金から「支払手形」へ振り替えます。手形は別管理が必要です。

間違い4:決算で未払計上を漏らす

請求書がまだ届いていなくても、当期の工事にかかった原価は当期の費用(未成工事支出金)です。工事未払金で未払計上しないと、原価が翌期にずれます。判断に迷う場合は、顧問税理士に確認するのが安全です。

よくある質問

工事未払金でつまずきやすい5問を整理します。

Q1:工事未払金と買掛金は何が違いますか?

役割は同じで、名称が違うだけです。工事未払金は建設業の財務諸表様式に合わせた科目名で、一般会計の「買掛金」に相当します。どちらも営業取引で生じた手形以外の未払い(債務)です。

Q2:工事未払金と未払金はどう使い分けますか?

営業取引かどうかで分けます。材料費・外注費など工事原価の未払いは「工事未払金」、固定資産や事務用品など営業に関係ない未払いは「未払金」です。

Q3:工事未払金には何を計上しますか?

材料費・外注費・労務費など、工事原価の未払い分を計上します。多くの場合、借方に「未成工事支出金」、貸方に「工事未払金」を立てる形で、原価の資産計上とセットで処理します。

Q4:手形で支払う場合も工事未払金ですか?

いいえ。約束手形を振り出して支払いを約束した場合は、工事未払金ではなく「支払手形」で処理します。手形は決済期日まで別管理が必要です。

Q5:消費税はどのタイミングで処理しますか?

計上時に、その内容に応じて課税仕入れとして処理します。実際に工事未払金を支払う仕訳は、負債と現預金を減らすだけなので不課税(対象外)です。仮払消費税は計上時に完結します。

まとめ:工事未払金は「建設業の買掛金」で使い分けがカギ

最後に、工事未払金の勘定科目のポイントを整理します。

この記事のまとめ
  • 工事未払金は建設業の買掛金にあたる負債で、一般会計の「買掛金」に相当する
  • 計上するのは材料費・外注費・労務費など工事原価の未払い分
  • 手形を振り出したら「支払手形」、営業外の未払いは「未払金」で区別する
  • 多くは未成工事支出金(資産)とセットで計上する
  • 消費税は計上時の課税仕入れで完結、支払時は不課税

工事未払金は、「建設業の買掛金」と考えれば大枠を外しません。あとは、営業取引か・手形か・営業外かで、支払手形や未払金と正しく使い分けるだけです。決算での未払計上や手形の取扱いなど判断に迷うケースでは、最新の情報を確認のうえ税理士に相談すると確実です。

あわせて読みたい


免責事項

※本記事は2026年時点の公開情報をもとに勘定科目の一般的な考え方を整理したものです。会計基準・建設業会計の取扱いは改正や適用範囲(上場企業・中小企業)により異なります。個別の会計処理・税務判断は、最新の国土交通省・国税庁の公式情報をご確認のうえ、税理士など有資格者にご相談ください。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

会計事務所で10年以上、法人や個人事業主の帳簿づけと税務申告の手伝いをしてきたTanakaです。決算が近づくと、経営者から「この支払いはどの科目で処理すればいいですか」という電話を何度も受けました。答えは業種や会社の規模で変わります。そこを一つずつ、相手に合わせて説明してきました。

独立してからは、中小企業の経理担当者向けの研修や、freee・マネーフォワード・弥生の科目設定の相談にも応じています。教科書の説明は抽象的で、現場では「とりあえず雑費」で片づけてしまうことも少なくありません。このサイトでは、勘定科目の選び方の判断軸を、具体例をそえて整理しています。最終的な税務判断は、顧問税理士にご相談ください。

目次