完成工事高の勘定科目は、建設業の売上高にあたる収益(P/L)で、一般会計の「売上高」に相当します。計上基準は工事完成基準と工事進行基準の2つがあり、上場企業などは2021年4月以降「収益認識に関する会計基準」で進捗度に応じて計上します。中小企業は従来の工事完成基準も継続できます。
「完成工事高はいつ計上するのか」「完成基準と進行基準はどちらを使うのか」という迷いを、建設業会計の仕組みと仕訳例で、判断できる基準に整理します。
この記事でわかること
- 完成工事高は建設業の売上高(収益)で、一般会計の「売上高」に相当するという結論
- 計上のタイミングを決める工事完成基準と工事進行基準の違い
- 2021年4月以降の収益認識会計基準と、中小企業の継続適用
- 完成・引渡し時の仕訳の具体例(完成工事未収入金・未成工事受入金の充当つき)
- 完成工事原価・完成工事未収入金など対応する建設業科目との関係
公的情報源: 国土交通省「建設業法施行規則別記様式第十五号及び第十六号の勘定科目の分類」(参照)/企業会計基準委員会「収益認識に関する会計基準」(参照)
結論を先に書きます
完成工事高とは、建設業における売上高を表す勘定科目です。分類は損益計算書の収益で、一般の会社でいう「売上高」とまったく同じ役割を持ちます。
迷いやすいのは計上のタイミングです。工事が完成して引き渡したときにまとめて計上する工事完成基準と、工事の進み具合に応じて少しずつ計上する工事進行基準の2つがあります。
- 完成工事高は建設業の売上高(収益)。一般会計の「売上高」に相当する
- 計上基準は工事完成基準(引渡し時に一括)と工事進行基準(進捗度に応じて)の2つ
- 上場企業などは2021年4月以降、収益認識会計基準で進捗度に応じて計上
- 中小企業は従来の工事完成基準も継続できる
- 対応する原価は「完成工事原価」、未回収代金は「完成工事未収入金」
完成工事高とは|建設業の売上高(一般会計の売上高)
完成工事高とは、建設業で計上する売上高を表す勘定科目です。分類は損益計算書の収益(営業収益)で、費用ではありません。
建設業では、財務諸表の様式が法律で決まっているため、通常の「売上高」ではなく「完成工事高」という科目名を使います。中身は一般の会社の売上高と同じです。
一般会計との対応は、次のとおりです。売上まわりの科目が、ひとまとまりで置き換わります。
| 一般会計の科目 | 建設業会計の科目 | 分類 |
|---|---|---|
| 売上高 | 完成工事高 | 収益 |
| 売上原価 | 完成工事原価 | 費用 |
| 売掛金 | 完成工事未収入金 | 資産 |
| 仕掛品 | 未成工事支出金 | 資産 |
| 前受金 | 未成工事受入金 | 負債 |
この科目名は、建設業法施行規則の財務諸表様式(別記様式第十五号・十六号)で定められています(参考: 国土交通省「勘定科目の分類」)。建設業許可業者は、この様式で完成工事高を報告します。
売上の考え方そのものは、一般の会社と共通です。売上と手数料収入などの違いは受取手数料の勘定科目と仕訳|売上との違い・消費税で整理しています。
完成工事高の計上基準|工事完成基準と工事進行基準の違い

完成工事高で最も重要なのが、いつ売上を計上するかという計上基準です。大きく2つの考え方があります。
工事完成基準は、工事が完成して発注者に引き渡した時点で、請負金額の全額を完成工事高に計上します。シンプルで、中小企業の多くが採用しています。
工事進行基準は、工事の進捗度(進み具合)に応じて、期をまたいで少しずつ完成工事高を計上します。長期の大規模工事で、期ごとの損益を実態に合わせるための方法です。
| 区分 | 工事完成基準 | 工事進行基準 |
|---|---|---|
| 計上タイミング | 完成・引渡し時に一括 | 進捗度に応じて各期 |
| 向くケース | 短期・中小の工事 | 長期・大規模の工事 |
| 損益の平準化 | されにくい | されやすい |
| 見積りの必要性 | 低い | 高い(総原価・進捗度) |
税務では、長期大規模工事(工期1年以上・請負金額10億円以上)は工事進行基準が強制されます(参考: 国税庁「工事進行基準を用いているとき」)。それ以外の工事は、完成基準と進行基準を選べます。
完成工事高と収益認識会計基準(2021年以降の変化)
計上基準は、2021年に大きな変更がありました。会社の規模によって、適用するルールが変わります。
上場企業など会計監査を受ける会社は、2021年4月以降に始まる事業年度から、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号・2018年公表)が強制適用されました(参考: 企業会計基準委員会)。
この基準では、「工事進行基準」「工事完成基準」という用語自体がなくなりました。代わりに、一定の期間にわたり充足される履行義務(進捗度に応じて計上)と、一時点で充足される履行義務(引渡し時に計上)という考え方に置き換わっています。
一方、中小企業(会計監査の対象外)は、この新基準の強制適用を受けません。「中小企業の会計に関する指針」に基づき、従来どおり工事完成基準・工事進行基準を継続して使えます。
つまり、多くの中小建設業者にとっては、実務上これまでの完成工事高の計上方法を変える必要はありません。呼び名や整理の仕方が上場企業で変わった、と理解しておけば十分です。
完成工事高の仕訳例|完成・引渡し時の計上

具体的な数字で、完成工事高の計上を見ていきます。請負金額150万円の工事が完成し、発注者へ引き渡したケース(工事完成基準)です。
ケース1:完成・引渡しで完成工事高を計上する
代金150万円はまだ受け取っていません。売掛金にあたる「完成工事未収入金」を借方に立てます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 完成工事未収入金 | 1,500,000 | 完成工事高 | 1,500,000 | A工事 完成・引渡し |
同時に、集計してきた未成工事支出金を完成工事原価へ振り替えます(別掲)。これで売上(完成工事高)と原価(完成工事原価)が対応します。
ケース2:前受金(未成工事受入金)がある場合
着工時に発注者から前受金50万円を受け取っていたケースです。前受金は「未成工事受入金」という負債で計上されています。完成時に、これを完成工事高へ充当します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 未成工事受入金 | 500,000 | 完成工事高 | 1,500,000 | A工事 完成 |
| 完成工事未収入金 | 1,000,000 | 残代金 |
前受けした50万円を負債から取り崩し、残りの100万円を未収入金にします。売上は全額150万円を完成工事高で計上します。売上の未回収代金の考え方は未収収益の勘定科目と仕訳|未収入金との違いもあわせてご覧ください。
ケース3:代金を回収したとき
後日、完成工事未収入金100万円を普通預金で回収したケースです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 1,000,000 | 完成工事未収入金 | 1,000,000 | A工事 入金 |
完成工事高と対応する建設業科目の関係

完成工事高は、単独ではなく、いくつかの科目とセットで動きます。売上・原価・債権・前受けが、それぞれ建設業の科目に置き換わります。
| 場面 | 建設業の科目 | 一般会計の科目 |
|---|---|---|
| 売上を計上 | 完成工事高 | 売上高 |
| 対応する原価 | 完成工事原価 | 売上原価 |
| 未回収の代金 | 完成工事未収入金 | 売掛金 |
| 完成前の前受金 | 未成工事受入金 | 前受金 |
ポイントは、完成工事高(収益)と完成工事原価(費用)を同じ時期に対応させることです。この対応があるからこそ、工事ごとの利益が正しく計算できます。
原価側の集計と振替は、この後のクラスタ記事(未成工事支出金)で扱います。
完成工事高の消費税
完成工事高は、工事という役務の提供の対価なので、消費税は課税売上(10%)です。完成・引渡しの時点で、売上とともに仮受消費税が発生します。
工事進行基準を採用している場合も、進捗度に応じて計上した完成工事高が課税売上になります(参考: 国税庁「工事進行基準を用いているとき」)。
なお、着工時に受け取る前受金(未成工事受入金)は、受け取った時点では消費税が発生せず、完成工事高を計上するときに課税されるのが原則です。
よくある間違いと注意点
実務で見かける誤りを整理します。いずれも売上の期ずれや消費税に直結するため、先に押さえておくと安心です。
- 完成・引渡し前に、完成工事高を計上してしまう(完成基準の場合)
- 完成工事高だけ計上し、完成工事原価への振替を忘れる
- 前受金(未成工事受入金)を、受け取った時点で売上にしてしまう
- 長期大規模工事なのに、工事進行基準を適用していない
間違い1:引渡し前に売上を計上する
工事完成基準では、完成・引渡しが終わるまで完成工事高は計上できません。引渡しの事実を基準にしてください。
間違い2:原価の振替を忘れる
完成工事高だけ計上して未成工事支出金を放置すると、売上に対応する原価が抜け、利益が過大になります。売上と完成工事原価をセットで計上します。
間違い3:前受金を売上にしてしまう
着工時の前受金は、まだ工事が完成していないため売上ではありません。「未成工事受入金」(負債)で処理し、完成時に完成工事高へ充当します。
間違い4:長期大規模工事で進行基準を使っていない
工期1年以上・請負金額10億円以上の長期大規模工事は、税務上、工事進行基準が強制されます。該当する場合は、進捗度に応じた計上が必要です。判断に迷う場合は、顧問税理士に確認するのが安全です。
よくある質問
完成工事高でつまずきやすい5問を整理します。
Q1:完成工事高は一般会計のどの科目に相当しますか?
「売上高」に相当します。建設業では法定の財務諸表様式に合わせて「完成工事高」という科目名を使いますが、中身は一般の会社の売上高と同じ収益です。
Q2:完成工事高はいつ計上しますか?
計上基準によります。工事完成基準では完成・引渡し時に一括で、工事進行基準では工事の進捗度に応じて各期に計上します。中小企業は完成基準を選ぶことが多いです。
Q3:工事進行基準と工事完成基準はどちらを使いますか?
短期・中小の工事は工事完成基準が一般的です。ただし、工期1年以上・請負金額10億円以上の長期大規模工事は、税務上、工事進行基準が強制されます。それ以外は選択できます。
Q4:2021年の収益認識会計基準で完成工事高の処理は変わりましたか?
上場企業など会計監査を受ける会社は、進捗度に応じて計上する方式に整理されました。中小企業は従来の工事完成基準・工事進行基準を継続できるため、実務上の処理を変える必要は基本的にありません。
Q5:着工時に受け取った前受金は完成工事高ですか?
いいえ。まだ工事が完成していないため売上ではありません。「未成工事受入金」(負債)で処理し、工事の完成時に完成工事高へ充当します。
まとめ:完成工事高は「建設業の売上高」で計上基準がカギ
最後に、完成工事高の勘定科目のポイントを整理します。
- 完成工事高は建設業の売上高(収益)で、一般会計の「売上高」に相当する
- 計上基準は工事完成基準(引渡し時に一括)と工事進行基準(進捗度に応じて)
- 上場企業は2021年4月以降、収益認識会計基準で進捗度に応じて計上。中小企業は従来の完成基準も継続できる
- 完成時は完成工事高(売上)と完成工事原価(原価)をセットで計上する
- 前受金は「未成工事受入金」(負債)で処理し、完成時に充当する
完成工事高は、「建設業の売上高」と考えれば大枠を外しません。あとは、完成基準と進行基準のどちらで計上するかを、工事の規模と会社の状況に合わせて選ぶだけです。長期大規模工事や収益認識会計基準の適用など判断に迷うケースでは、最新の基準を確認のうえ税理士に相談すると確実です。
あわせて読みたい
免責事項
※本記事は2026年時点の公開情報をもとに勘定科目の一般的な考え方を整理したものです。会計基準・建設業会計の取扱いは改正や適用範囲(上場企業・中小企業)により異なります。個別の会計処理・税務判断は、最新の国土交通省・企業会計基準委員会・国税庁の公式情報をご確認のうえ、税理士など有資格者にご相談ください。
