固定資産売却益の勘定科目と仕訳|固定資産売却損・消費税・特別損益まで【2026年】

固定資産売却益は、売却価額が帳簿価額を上回った差額を計上する特別利益の勘定科目です。下回れば固定資産売却損。仕訳は減価償却→資産の消去→差額の振替という3ステップで固まります。消費税は差額ではなく売却価額そのものが課税標準で、売却損が出ても課税売上は立ちます。

この記事でわかること

  • 売却損益の計算式「売却価額 −(取得価額 − 減価償却累計額)」と、帳簿価額の作り方
  • 間接法と直接法で仕訳の見え方がどう変わるかを、同じ取引の数字入り仕訳で対比
  • 期首から売却日までの当期分の減価償却を入れるかどうかで答えが変わる理由(法人と個人の違い)
  • 消費税の課税標準は売却価額そのもので、売却損益は関係しないという要点
  • 特別損益と営業外損益の使い分け、個人事業主は事業所得ではなく譲渡所得になること

公的情報源: 国税庁 No.6301 課税標準国税庁 法人税基本通達 第2款 固定資産の譲渡等に係る収益国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法

固定資産の売却は、減価償却・資産の消去・消費税区分が同時に動く数少ない仕訳です。台帳の残高と帳簿を突き合わせる手間を減らしたいなら、固定資産台帳が本体と連動する会計ソフトも選択肢になります。

結論を先に書きます

固定資産を売ったときの損益は、売却価額 −(取得価額 − 減価償却累計額)という1本の式で決まります。プラスなら固定資産売却益、マイナスなら固定資産売却損。どちらも損益計算書では特別損益に置くのが原則です。

迷いどころは3つに絞られます。①期首から売却日までの減価償却を入れるか、②直接法と間接法のどちらで資産を落とすか、③消費税をどう乗せるか。とくに③は誤解が多く、課税されるのは売却「益」ではなく売却「価額」そのものです。

この記事の要点

  • 売却損益は売却価額と帳簿価額の差額。帳簿価額=取得価額−減価償却累計額
  • 仕訳は①当期分の減価償却→②資産と累計額の消去→③差額を売却益・売却損への3ステップ
  • 消費税の課税標準は対価の額(売却価額)。売却損が出ていても課税売上は立つ(土地の譲渡は非課税)
  • 表示は特別利益・特別損失が原則。金額が小さく反復的なら営業外に含める実務もある
  • 個人事業主は事業所得ではなく譲渡所得。帳簿は事業主貸・事業主借で抜き、申告書側で計算する

目次

固定資産売却益・固定資産売却損とは?売却損益は帳簿価額との差額で決まる

固定資産売却益とは、建物・車両・機械などの固定資産を売った価額が、そのときの帳簿価額を上回った場合の差額を計上する勘定科目です。下回った場合は固定資産売却損になります。

計算式は1本だけです。

売却損益 = 売却価額 −(取得価額 − 減価償却累計額)

カッコの中が「帳簿価額(簿価)」。その資産が帳簿にいくら残っているかを表す数字です。売った金額と、帳簿に残っていた金額。この2つを比べるだけで科目は決まります。

売却益か売却損かは2つの数字の大小で決まる

  • 順に確かめる
  • STEP1帳簿価額を出す取得価額 − 減価償却累計額
  • STEP2売却価額(税抜)と比べる消費税は含めずに比較する
  • STEP3差額の符号で科目が決まる上回る→固定資産売却益/下回る→固定資産売却損

比べるのは税抜の売却価額。税込金額のまま比べると損益がずれる

図:帳簿価額を出す→税抜の売却価額と比べる→差額の符号で売却益か売却損かが決まる

帳簿価額は「取得価額 − 減価償却累計額」で出す

帳簿価額は、買ったときの金額から、それまでに費用にしてきた減価償却の累計を差し引いた残りです。間接法で記帳している会社なら、減価償却累計額の残高がそのまま差引額になります。

たとえば取得価額100万円の車両で、減価償却累計額が75万円なら帳簿価額は25万円。この25万円より高く売れれば益、安ければ損。それだけの話です。

減価償却累計額そのものの性質や、なぜ資産のマイナスとして並ぶのかは減価償却累計額の勘定科目と仕訳で詳しく整理しています。減価償却の考え方そのものが不安なら減価償却とは何かの基礎から確認してください。

売却益と売却損は同じ式の裏表

科目名は違っても、計算の中身は同じです。符号が変わるだけと考えると混乱しません。

売却価額(税抜)と帳簿価額計上する勘定科目損益計算書の区分借方・貸方
売却価額 > 帳簿価額固定資産売却益特別利益貸方(収益)
売却価額 < 帳簿価額固定資産売却損特別損失借方(損失)
売却価額 = 帳簿価額計上なし

なお、売却益と売却損を1つの科目にまとめて「固定資産売却損益」とし、貸方残なら利益・借方残なら損失として表示する会社もあります。年に何度も資産を入れ替える業種で使われる整理の仕方です。

固定資産を売却したときの仕訳3ステップ(間接法・直接法)

売却の仕訳は、①当期分の減価償却を計上 → ②資産と減価償却累計額を帳簿から消す → ③差額を売却益・売却損に振るという3ステップで固まります。

以下、この設例で通します。3月決算の法人が、9月30日に営業車を売却したケースです。

項目金額
取得価額(車両運搬具)1,000,000円
前期末までの減価償却累計額700,000円
当期分(4月〜9月)の減価償却費50,000円
売却価額330,000円(税抜300,000円・消費税30,000円)

STEP1:売却日までの減価償却を計上する

まず当期分の減価償却を入れます。4月から9月までの6か月分50,000円です。

借方科目金額貸方科目金額
減価償却費50,000減価償却累計額50,000

これで減価償却累計額は750,000円になり、帳簿価額は1,000,000 − 750,000 = 250,000円に確定します。この一手間を飛ばすと、売却損益が当期の償却分だけずれます。

STEP2:資産と減価償却累計額を帳簿から消す

次に、売った資産を帳簿から取り除きます。間接法では、資産(車両運搬具)を貸方で消すと同時に、その資産に紐づく減価償却累計額も借方で取り崩します。

間接法・売却益が出たときのT字

借方

減価償却累計額 750,000
現金預金 330,000

貸方

車両運搬具 1,000,000
仮受消費税等 30,000
固定資産売却益 50,000

図:資産は取得価額のまま貸方で消し、累計額は借方で取り崩す。残った差額が固定資産売却益

STEP3:差額を固定資産売却益・固定資産売却損に振り替える

STEP2の借方合計と貸方合計を一致させるために入れる差額が、そのまま売却損益になります。設例では税抜300,000円で売れて帳簿価額が250,000円なので、差額50,000円が固定資産売却益です。

借方科目金額貸方科目金額
減価償却累計額750,000車両運搬具1,000,000
現金預金330,000仮受消費税等30,000
固定資産売却益50,000

もし同じ車両が165,000円(税抜150,000円)でしか売れなかったら、差額は借方に立ちます。

借方科目金額貸方科目金額
減価償却累計額750,000車両運搬具1,000,000
現金預金165,000仮受消費税等15,000
固定資産売却損100,000

ここで注目したいのが消費税です。100,000円の売却損が出ているのに、仮受消費税等15,000円は発生している。この非対称は後の章で扱います。

直接法だと仕訳の見え方が変わる

直接法は、減価償却のたびに資産の金額を直接減らす方法です。累計額の科目を使わないため、売却の仕訳から「減価償却累計額」の行が消えます。

同じ売却を2つの方法で書くと

間接法
資産の消し方
取得価額1,000,000をそのまま貸方へ
累計額
750,000を借方で取り崩す
行数
多いが取得価額が見える
直接法
資産の消し方
帳簿価額250,000を貸方へ
累計額
科目を使わない
行数
少ないが取得価額が見えない

図:売却損益の金額はどちらでも同じ。違うのは資産をいくらで落とすかという見せ方だけ

直接法での売却仕訳は次のとおりです。当期分の減価償却も、累計額ではなく車両運搬具を直接減らします。

借方科目金額貸方科目金額
現金預金330,000車両運搬具250,000
仮受消費税等30,000
固定資産売却益50,000

売却益50,000円という結論はどちらでも同じ。違いは、貸借対照表に取得価額と償却の履歴を残すかどうかだけです。

傾向としては法人が間接法、個人事業主が直接法。ただし法令で片方に決められているわけではありません。両者の使い分けは減価償却費・減価償却累計額の勘定科目と仕訳で整理しています。

固定資産の売却は、台帳の除却処理・当期分の償却・消費税区分の3つを同時に間違いなく動かす必要があります。台帳と仕訳帳が別管理だと、売却したはずの資産が償却され続ける事故が起きがちです。台帳と帳簿を1つにまとめたい経理担当の方は、無料プランで自社の資産数に耐えるかを確かめてみてください。

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期中に売却したときの減価償却と計上タイミング|法人と個人で違う

「期の途中で売ったとき、当期分の減価償却は入れるのか」。ここでつまずく人がとても多い論点です。結論から言うと、法人は計上して差し支えなく、個人は計算上どうしても入るという非対称があります。

法人:譲渡時までの償却を計上して差し支えない

法人税では、償却費を損金にできるのは「各事業年度終了の時において有する減価償却資産」についてと定められています。文言だけ読むと、期中に手放した資産は当期の償却ができないようにも読めます。

この疑問に国税庁は答えを出しています。特定資産の圧縮記帳と譲渡資産の減価償却費という法令解釈情報です。

期首から譲渡時までの減価償却費を控除した後の金額を譲渡直前の帳簿価額としてよい、従前どおり取り扱って差し支えないという回答。理由として「会計上も譲渡資産については譲渡時までの減価償却を行うことの方が理論的」とも述べています。

つまり法人では、月次で償却している会社はそのまま6か月分を入れて売却すればよく、入れない処理も直ちに誤りとまでは言えない、という余地のある領域です。会社として扱いを固定し、期ごとにぶれさせないことが実務上の要点になります。

個人事業主:取得費から減価償却費相当額を控除する

個人の場合は事情が違います。事業用資産を売ったときの所得は譲渡所得になり、その取得費は国税庁 No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)のとおり、減価償却費相当額を控除した金額とされています。

さらに国税庁 No.2100 減価償却のあらましでは、減価償却は取得価額を各年分の必要経費として配分していく手続と定義されています。売った年の1月1日から売却日までの分は事業所得の必要経費に入り、その後の残高が譲渡所得の取得費になる。ここは選択の余地がありません。

なお、耐用年数経過時に残存簿価1円まで償却できる仕組みは国税庁 No.5410 減価償却資産の償却限度額の計算方法に定められています。1円まで落ちた資産を売ったときの扱いは後述します。

収益を計上するのは引渡日か契約効力発生日か

もう1つ、日付の問題があります。法人税基本通達2-1-14は、固定資産の譲渡による収益は原則として引渡しがあった日の属する事業年度に計上すると定めています。ただし土地・建物などについては、譲渡契約の効力発生日に収益計上しているときはその日でもよい、という取扱いも置かれています。

決算日をまたぐ売買では、契約日と引渡日のどちらで切るかで期がずれます。契約書の引渡条項を先に確認しておくと安全です。

固定資産売却の消費税|課税標準は「売却価額」そのもの

ここが本記事でいちばん誤解の多い論点です。消費税の課税標準は売却損益ではなく、売却価額(対価の額)そのもの国税庁 No.6301 課税標準は「課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額」と明記しています。

法人税や所得税は儲け(差額)に課税します。消費税は取引金額に課税します。この構造の違いを押さえると、以降の判断はほぼ自動的に決まります。

固定資産を売ったときの消費税の区分

  • 対価を受け取って資産を引き渡したか
    • 受け取った(売却)建物・車両・機械・備品=課税/土地・借地権=非課税
    • 受け取っていない(除却・廃棄)資産の譲渡に当たらず不課税。処分費用は課税仕入れ

図:課税か否かを決めるのは対価の有無と資産の種類。売却益が出たかどうかは判定に関係しない

売却損が出ても課税売上は立つ

先ほどの設例を思い出してください。165,000円で売って100,000円の損が出たケースでも、仮受消費税等15,000円は発生していました。損だから消費税もゼロ、とはなりません。

国税庁 No.6145 資産の譲渡の具体例でも、事業に用いている建物・機械・備品などの売却は資産の譲渡に該当すると示されています。課税されるのは「売った金額」であって「儲かった金額」ではない。この一点だけ覚えておけば、税区分の入力で迷いません。

土地は非課税・建物と一括で売ったときは区分する

例外もあります。国税庁 No.6201 非課税となる取引のとおり、土地および借地権などの譲渡は非課税取引です。土地を売って売却益が出ても、消費税は発生しません。

問題は、土地と建物をまとめて売る場合です。消費税法基本通達10-1-5は、異なる区分の資産を同時に譲渡したときはそれぞれの対価を合理的に区分しなければならないと定めています。

合理的に区分されていない場合は、通常の取引価額を基礎に区分することになります。契約書に総額しか書かれていないと、後から区分の根拠を作る手間が生じます。

なお非課税と不課税は似て非なるものです。課税売上割合の計算で扱いが変わる点は国税庁 No.6209 非課税と不課税の違いが整理しています。土地の売却は金額が大きくなりやすく、課税売上割合を押し下げて仕入税額控除に影響することがあります。

資産別の消費税区分

売却した資産消費税の扱い補足
建物・構築物課税土地と一括譲渡なら対価を区分
車両運搬具・機械装置・工具器具備品課税損が出ても課税売上が立つ
土地・借地権非課税課税売上割合に影響しうる
有価証券非課税固定資産売却益ではなく別科目で処理
除却・廃棄(対価なし)不課税No.6157で「廃棄・盗難・滅失」は課税対象外

下取り価額と固定資産税の清算金は差し引けない

実務でつまずきやすい2つの落とし穴があります。どちらも「相殺してはいけない」という共通点を持っています。

1つ目は下取りです。国税庁 No.6305 商品の安売りや下取りがあるときは、対価の額を「譲渡価額から下取価額を控除した金額とすることはできません」と明記しています。

下取りは「課税資産の譲渡等」と「課税仕入れ」の2つの取引が同時に起きているだけで、値引きではありません。

2つ目は不動産売買の固定資産税清算金です。同通達10-1-6は、譲渡に伴って受け取る未経過分の固定資産税等に相当する金額は資産の譲渡の金額に含まれるとしています。

立替金の精算のように見えても、売買代金の一部として課税標準に入ります。固定資産税そのものの科目の扱いは固定資産税の勘定科目と仕訳で確認できます。

売却の消費税は「損益ではなく対価の額」「土地は非課税」「下取りは相殺不可」と、判断ポイントが仕訳と別に走ります。税区分の設定を資産ごとにテンプレート化して取りこぼしを減らしたいなら、クラウド会計の自動判定を試してみる価値があります。

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損益計算書のどこに載る?特別損益が原則、営業外もあり得る

固定資産売却益は特別利益、固定資産売却損は特別損失に表示するのが原則です。固定資産の売却は、本業の売上でも毎期繰り返される取引でもないためです。

サジェストに「固定資産売却損 費用」と出るように、販売費及び一般管理費だと思われがちですが違います。売却損は「費用」ではなく「損失」で、営業利益や経常利益より下の段に置かれます。営業利益を見て事業の調子を判断する読み手を惑わせないための位置づけです。

表示区分使う場面影響する利益
特別利益・特別損失臨時・多額の売却(原則)税引前当期純利益から
営業外収益・営業外費用金額が小さい、または反復的な売却経常利益から
販売費及び一般管理費使わない

営業外に入れる余地があるのは、企業会計原則の重要性の原則によるものです。リース満了車を毎期入れ替える会社のように、少額の売却が経常的に起きる場合は営業外損益に含める処理が採られることがあります。社内で基準を決めて毎期同じ扱いを続けることが、比較可能性を保つうえで大切です。

個人事業主の固定資産売却は「譲渡所得」になる

法人と個人でいちばん大きく分かれるのがここです。個人事業主が事業用の車両や機械を売っても、その所得は事業所得になりません。国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法のとおり、機械器具や車両の譲渡は譲渡所得として扱われます。

例外もあります。使用可能期間が1年未満のもの、取得価額が10万円未満のもの、一括償却資産として3年均等償却しているものの譲渡は、事業所得または雑所得になります。10万円・20万円・30万円といった金額の線引きは固定資産と消耗品の境界線少額減価償却資産の特例で整理しています。

総合課税・50万円の特別控除・5年超は2分の1

譲渡所得の計算式は国税庁 No.3152のとおりです。

譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)− 50万円

所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得となり、その金額の2分の1が総合課税の対象になります。特別控除50万円があるため、小規模な資産の売却では課税所得が出ないことも珍しくありません。

たとえば未償却残高50万円の営業車を80万円で売った場合。譲渡益は30万円ですが、特別控除50万円の範囲に収まるため譲渡所得は0円になります。

帳簿は事業主貸・事業主借で抜く

譲渡所得は事業の帳簿の外で計算します。そのため、青色申告の帳簿上では固定資産売却益という科目を使わず、資産と入金を事業主勘定で抜くのが一般的です。

借方科目金額貸方科目金額
事業主貸500,000車両運搬具500,000
現金800,000事業主借800,000

この処理により、損益計算書には売却損益が乗りません。譲渡所得は確定申告書の第三表・譲渡所得の内訳で別途計算します。個人事業の科目設定はfreee確定申告の勘定科目一覧も目安になります。

なお所得税で譲渡所得になっても、消費税では事業用資産の譲渡=課税売上です。課税事業者であれば、所得区分にかかわらず売却価額を課税売上に含めて計算します。所得税と消費税で見え方が分かれる点は取りこぼしやすいので注意してください。

実務で迷う3つのケース|1円資産・車両の下取り・除却との線引き

最後に、設例だけでは処理しきれない典型3ケースを整理します。

売却・除却・廃棄はどこが違うか

売却
対価
ある
使う科目
固定資産売却益/固定資産売却損
消費税
課税(土地等は非課税)
除却
対価
ない(使用をやめる)
使う科目
固定資産除却損
消費税
不課税
廃棄
対価
ない(処分する)
使う科目
固定資産除却損(廃棄損)
消費税
不課税・処分費は課税仕入れ

図:分かれ目は対価の有無。お金を受け取ったかどうかで科目も消費税区分も変わる

除却・廃棄の手順と仕訳例は別記事で扱います。ここでは、売却との線引きだけ押さえてください。

1円まで償却済みの資産を売ったとき

耐用年数を過ぎて備忘価額1円まで償却した資産でも、値がつけば売れます。このとき帳簿価額は1円なので、売却価額のほぼ全額が固定資産売却益になります。

取得価額100万円・減価償却累計額999,999円の器具備品を55,000円(税抜50,000円)で売った場合の仕訳です。

借方科目金額貸方科目金額
減価償却累計額999,999工具器具備品1,000,000
現金預金55,000仮受消費税等5,000
固定資産売却益49,999

売却益が大きく見えますが、これは過去に費用処理を済ませた資産だからです。異常な儲けが出たわけではありません。

車両を下取りに出したとき

新車購入と旧車の下取りが同時に起きるケースです。差引の支払額だけで仕訳を切ると、消費税の計算が崩れます。

新車2,200,000円(税抜2,000,000円)を買い、旧車を330,000円(税抜300,000円)で下取りしてもらい、差額1,870,000円を支払ったとします。旧車は取得価額1,000,000円・減価償却累計額750,000円です。

借方科目金額貸方科目金額
車両運搬具(新)2,000,000車両運搬具(旧)1,000,000
仮払消費税等200,000仮受消費税等30,000
減価償却累計額750,000固定資産売却益50,000
現金預金1,870,000

課税仕入れ2,000,000円と課税売上300,000円を、それぞれ総額で認識します。差額の1,700,000円で処理してはいけない、というのがNo.6305の要点です。

売却か除却かで迷ったとき

判定は単純です。対価を受け取ったなら売却、受け取っていないなら除却または廃棄。スクラップ業者に引き取ってもらい、わずかでも売却代金を受け取ったなら売却として処理し、消費税も課税売上になります。

逆に、処分費用を払って引き取ってもらった場合は、資産の譲渡ではありません。国税庁 No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例でも、資産の廃棄は課税の対象とならない取引に挙げられています。

よくある質問

固定資産の売却について、実務で頻出する質問を整理します。

Q1:固定資産売却益は特別利益と営業外収益のどちらですか?

原則は特別利益です。固定資産の売却は本業の売上ではなく、毎期繰り返される取引でもないためです。ただし金額的な重要性が乏しく、車両の入れ替えのように反復して発生する場合には、重要性の原則により営業外収益に含める実務もあります。どちらを採るにしても、社内で基準を決めて毎期同じ扱いを続けることが大切です。期ごとに区分を変えると、経常利益の推移が比較できなくなります。

Q2:固定資産売却損が出た場合でも消費税はかかりますか?

かかります。消費税の課税標準は、国税庁No.6301のとおり課税資産の譲渡等の対価の額であり、売却によって儲かったかどうかは関係ありません。165,000円で売って100,000円の売却損が出たとしても、税抜150,000円が課税売上となり、仮受消費税等15,000円が発生します。ただし土地や借地権の譲渡は非課税取引なので、土地を売って損が出た場合には消費税は発生しません。

Q3:固定資産を期中に売却した場合、減価償却はどこまで計上しますか?

法人の場合、期首から譲渡日までの減価償却費を計上して帳簿価額を下げる処理は、国税庁の法令解釈情報で従前どおり取り扱って差し支えないとされています。月次で償却している会社はそのまま売却月までの分を入れる形になります。個人事業主の場合は、譲渡所得の取得費が減価償却費相当額を控除した金額とされているため、売却日までの償却が計算上どうしても入ります。会社としての扱いを固定し、期ごとにぶれさせないことが要点です。

Q4:直接法と間接法で固定資産売却の仕訳はどう違いますか?

売却損益の金額は変わりません。違うのは資産をいくらで落とすかという見せ方です。間接法では車両運搬具を取得価額のまま貸方で消し、減価償却累計額を借方で取り崩します。直接法では減価償却のたびに資産を直接減らしているため、帳簿価額をそのまま貸方で消すだけで済み、累計額の科目は登場しません。間接法は取得価額と償却の履歴が貸借対照表に残る点が特徴です。

Q5:個人事業主が事業用の車を売ったときの仕訳はどうなりますか?

事業用資産であっても、個人事業主の売却による所得は譲渡所得になります。そのため帳簿では固定資産売却益を使わず、資産の減少を事業主貸、入金を事業主借で処理して事業の損益から外すのが一般的です。譲渡所得は確定申告書で、譲渡価額から取得費と譲渡費用を引き、さらに50万円の特別控除を差し引いて計算します。所有期間が5年を超えていれば、その金額の2分の1が総合課税の対象です。なお消費税では事業用資産の譲渡は課税売上になるため、所得区分とは別に判定します。

Q6:固定資産売却損益とは何を指す勘定科目ですか?

固定資産売却益と固定資産売却損を1つの科目にまとめた呼び方です。期中は同じ科目に集計し、決算時に貸方残なら特別利益、借方残なら特別損失として表示します。車両や機器の入れ替えが多く、年に何度も売却が発生する会社で使われる整理の仕方です。個々の売却ごとに益と損を別科目で立てても、損益計算書で純額表示する運用でも、最終的な利益額は変わりません。会計ソフトの初期設定にどちらの科目が入っているかを確認してから運用を決めてください。

まとめ:固定資産売却は「差額で損益、総額で消費税」

固定資産を売ったときの判断ポイントを、最後に整理します。

この記事のまとめ

  • 売却損益は売却価額 −(取得価額 − 減価償却累計額)。プラスなら固定資産売却益、マイナスなら固定資産売却損
  • 仕訳は当期分の減価償却→資産と累計額の消去→差額の振替の3ステップ。直接法でも金額の結論は同じ
  • 消費税の課税標準は対価の額。売却損が出ても課税売上は立ち、土地の譲渡だけが非課税
  • 下取り価額と固定資産税の清算金は相殺できない。総額で課税売上・課税仕入れを認識する
  • 表示は特別損益が原則、個人事業主は譲渡所得として事業の帳簿の外で計算する

売却の処理でつまずく原因は、ほとんどが「損益は差額、消費税は総額」という2つのものさしの混同にあります。帳簿価額との差額を見るのは損益計算、対価の額を見るのは消費税計算。この2本立てを分けて考えれば、どの資産でも同じ手順で処理できます。

売買契約書の引渡日・対価の内訳・下取りの有無は、後から確認できるよう保存しておくと安全です。土地と建物の一括譲渡や高額な資産の売却など、金額が大きい取引の個別判断は、所轄税務署の事前照会または顧問税理士にご相談ください。

固定資産は取得から売却まで年単位で追いかける資産です。台帳の残高・当期の償却・売却時の消去がひとつながりになっていないと、決算のたびに突合作業が発生します。日々の記帳から固定資産台帳、決算書までを1つの流れにまとめたい方は、まず無料プランで自社の運用に合うかを確かめてみてください。

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※本記事は国税庁・企業会計原則等の公開情報をもとに整理した一般的な情報です。契約内容・資産の種類・課税区分など個別の会計税務判断は、所轄税務署の事前照会(書面照会・無料)または顧問税理士にご相談ください。


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この記事を書いた人

会計事務所で10年以上、法人や個人事業主の帳簿づけと税務申告の手伝いをしてきたTanakaです。決算が近づくと、経営者から「この支払いはどの科目で処理すればいいですか」という電話を何度も受けました。答えは業種や会社の規模で変わります。そこを一つずつ、相手に合わせて説明してきました。

独立してからは、中小企業の経理担当者向けの研修や、freee・マネーフォワード・弥生の科目設定の相談にも応じています。教科書の説明は抽象的で、現場では「とりあえず雑費」で片づけてしまうことも少なくありません。このサイトでは、勘定科目の選び方の判断軸を、具体例をそえて整理しています。最終的な税務判断は、顧問税理士にご相談ください。

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