役員借入金の仕訳|借入・返済・債務免除・資本金振替

役員借入金の仕訳は、借りたとき「現金預金/役員借入金」、返すとき「役員借入金/現金預金」です。役員に免除してもらうと「役員借入金/債務免除益」、資本金に振り替えると「役員借入金/資本金」。場面は6つに分けると迷いません。

この記事でわかること

  • 役員借入金とは何か、6つの場面別の仕訳の一覧
  • 役員が個人のカードで払った経費を役員借入金で受ける仕訳
  • 利息を払うときと、返済するときの仕訳
  • 免除してもらうときの債務免除益と、同族会社で気をつける点
  • 資本金に振り替えるDESの仕訳と、決算書での見せ方

一次資料: 国税庁 相続税法基本通達「第9条《その他の利益の享受》関係」(参照)/e-Gov法令検索「法人税法」(参照)

先に結論から

役員借入金は、会社が役員から借りているお金の残高を表す負債の科目です。お金が入ったら貸方、減ったら借方に書きます。

迷いやすいのは、返さずに消えるときです。免除なら債務免除益という収益、資本金への振替なら純資産に移ります。どちらも役員借入金を借方に書いて残高を減らす点は同じです。

この記事が扱う範囲

目次

役員借入金とは何か、場面別の仕訳一覧

役員借入金とは、会社が社長などの役員から借りて、まだ返していないお金です。貸借対照表の負債に入ります。

中小企業では、資金が足りない月に社長が個人のお金を入れたり、会社の経費を個人で立て替えたりすることがよくあります。そのお金を記録する受け皿が役員借入金です。

役員借入金の場面別の仕訳(借方/貸方)

場面借方貸方
役員からお金を借りた現金預金役員借入金
役員が会社の経費を個人で払った該当する経費の科目役員借入金
役員に返済した役員借入金現金預金
利息を払った支払利息現金預金
役員が返済を免除した役員借入金債務免除益
資本金に振り替えた(DES)役員借入金資本金(資本準備金)

出所: 債務免除益が収益になるのはe-Gov法令検索「法人税法」第22条第2項(資本等取引以外の取引に係る収益の額を益金の額に算入)による。

役員借入金は「増える場面」と「減る場面」で貸方・借方が分かれる

  • 役員借入金
    • 増える=貸方役員からお金を借りた/役員が経費を個人で立て替えた
    • 減る(お金が出る)=借方役員に返済した
    • 減る(お金が出ない)=借方免除してもらった→債務免除益/資本金に振り替えた→資本金

図:役員借入金の6場面の仕訳を、残高が増えるか減るかで整理。

借りたとき・立て替えたときの仕訳

役員からお金が入ったら、借方に現金預金、貸方に役員借入金を書きます。役員が会社の経費を個人で払ったときも、貸方は役員借入金です。

仕訳例1:社長から運転資金300万円を借りて普通預金に入れた

借方金額貸方金額
普通預金3,000,000役員借入金3,000,000

借りたお金は売上ではないので、収益の科目は使いません。入金の摘要に「代表者より借入」と書いておくと、あとで残高を確かめるときに通帳と照らせます。

個人のカードで払った経費も役員借入金で受ける

社長が出張の新幹線代2万2,000円を個人のクレジットカードで払い、会社がまだ精算していない場面です。会社の経費が発生し、その分を社長に借りている形になります。

仕訳例2:社長が出張の交通費を個人のカードで立て替えた

借方金額貸方金額
旅費交通費22,000役員借入金22,000

月末にまとめて精算するなら、精算のときに「役員借入金/普通預金」で残高を消します。立て替えのたびに領収書と利用明細を残しておくと、期末の残高の根拠になるはずです。

金額と返し方は書面に残す

役員と会社のあいだの貸し借りは、口約束で済ませがちです。借りた日・金額・返す時期・利息の有無を金銭消費貸借契約書に書き、取締役会や株主総会の議事録とあわせて残しておくと、第三者に説明しやすくなります。

返済するときと利息を払うときの仕訳

返済するときは、借方に役員借入金、貸方に現金預金を書きます。利息を払う約束なら、元本と分けて支払利息で処理するのが基本です。

仕訳例3:社長に元本50万円と利息5,000円を返した

借方金額貸方金額
役員借入金500,000普通預金505,000
支払利息5,000

利息は費用、元本の返済は負債が減るだけです。元本を経費にしないよう、1回の振込でも仕訳は2行に分けます。銀行借入の元利均等返済の分け方は借入金の勘定科目と仕訳を参考にしてください。

役員報酬と相殺するときは2段に分ける

役員報酬の支払いと役員借入金の返済を相殺するときも、報酬の支払いと返済を別の行で書きます。報酬は報酬として計上し、返済分だけ役員借入金を減らす形です。

仕訳例4:役員報酬50万円のうち20万円を借入金の返済にあて、残りを振り込んだ(源泉所得税等は省略)

借方金額貸方金額
役員報酬500,000普通預金300,000
役員借入金200,000

実際の支払いでは、源泉所得税や社会保険料の預り金が貸方に加わります。相殺の金額と根拠は、議事録か社内の精算書に残しておいてください。

免除してもらうときは債務免除益を立てる

役員が「もう返さなくていい」と借入金を免除すると、会社は返す義務がなくなった分だけ得をします。借方に役員借入金、貸方に債務免除益を書き、収益として計上する仕訳です。

仕訳例5:社長が役員借入金のうち800万円を免除した

借方金額貸方金額
役員借入金8,000,000債務免除益8,000,000

債務免除益は、法人税法第22条第2項の「資本等取引以外の取引に係る収益」にあたり、益金の額に入ります。損益計算書では特別利益に置くことが多く、その期の所得が増える点には注意が要ります。

同族会社ではほかの株主へのみなし贈与が問題になる

同族会社で役員が借入金を免除すると、会社の財産が増え、株の値打ちが上がることがあります。国税庁の相続税法基本通達9-2は、対価を受けないで会社の債務の免除があり株の価額が増えたときは、増えた分をほかの株主が免除した人から贈与で得たものとして扱う、という定めです。

一方で9-3は、会社が資力を喪失している場合は、債務超過額に当たる部分は贈与として扱わないとしています。株主が社長1人の会社か、家族がほかに株を持っているかで話が変わるので、免除の前に株主名簿を確かめます。

免除の前に確かめること

  • 免除する金額と日付を、書面(債務免除通知書)に残す
  • 債務免除益でその期の所得がどれだけ増えるか
  • 役員本人以外に株主がいるか(同族会社のみなし贈与)
  • 会社が債務超過か(9-3の例外に当たるか)

出所: 国税庁 相続税法基本通達「第9条《その他の利益の享受》関係」9-2(3)対価を受けないで会社の債務の免除があった場合・9-3 会社が資力を喪失した場合における私財提供等。

資本金に振り替えるとき(DES)の仕訳

DES(デット・エクイティ・スワップ)は、役員借入金を返す代わりに株を渡し、負債を資本金に振り替える方法です。仕訳は借方に役員借入金、貸方に資本金を書きます。

仕訳例6:役員借入金500万円を資本金に振り替えた(一部を資本準備金にする場合)

借方金額貸方金額
役員借入金5,000,000資本金2,500,000
資本準備金2,500,000

全額を資本金にするなら、貸方は資本金500万円の1行です。免除と違って債務免除益は立たず、負債が純資産に移る形になります。

免除とDESの違い

免除とDESの比べ方(会計処理の違い)

比べる点免除(債務免除)資本金への振替(DES)
貸方の科目債務免除益(収益)資本金・資本準備金(純資産)
損益計算書特別利益が増える動かない
役員が得るものなし株
手続き免除の通知募集株式の発行と資本金の変更登記

DESでは新しく株を発行するので、株主総会などの決議と、資本金の額の変更登記が要ります。借入金の額面と、振り替える株の価値がずれる場合の税務の扱いは込み入るので、実行の前に顧問の税理士に相談すると安心です。

役員借入金を減らす3つの道

  • 役員借入金をどう減らす?
  • 1返済する役員借入金/現金預金。利息は支払利息で別の行に
  • 2免除してもらう役員借入金/債務免除益。その期の益金が増え、同族会社ではみなし贈与に注意
  • 3資本金に振り替える(DES)役員借入金/資本金。株の発行と変更登記が要る

図:法人税法22条2項・相続税法基本通達9-2から、3つの減らし方の仕訳と注意点を整理。

決算書での見せ方と期末の確かめ方

期末には、役員借入金の残高を返す予定の時期で短期と長期に分けて表示します。決算日の翌日から1年以内に返す分は流動負債、それより先は固定負債です。

1年基準の考え方は短期借入金の勘定科目と仕訳で詳しく扱っています。返す時期の決まっていない役員借入金は、契約書で返済の予定を決めておくと区分に迷いません。

期末に確かめること

  1. 帳簿の役員借入金の残高と、役員ごとの貸し借りの記録が一致するか
  2. 立て替え経費の精算漏れが残っていないか
  3. 利息の約束があるなら、未払の利息を計上したか
  4. 1年以内に返す分と、それより先の分を分けたか
  5. 勘定科目内訳明細書の借入金の欄に、役員の名前と期末残高を書いたか

役員の側から見ると、役員借入金は会社への貸付金です。役員が亡くなったときは相続の対象になるので、残高が大きいまま長く置いておくより、返済・免除・DESのどれで減らすかを早めに決めておくと手続きが楽になります。

よくある質問

Q1:役員借入金とは何ですか?

会社が社長などの役員から借りて、まだ返していないお金を表す負債の科目です。借りたときは貸方、返したときは借方に書きます。役員が会社の経費を個人で立て替え、まだ精算していない分もここに入ります。

Q2:役員借入金を返済するときの仕訳は?

「役員借入金/現金預金」です。利息もあわせて払うなら、利息の分だけ「支払利息」を借方に別の行で書きます。元本の返済は費用にならないので、1回の振込でも元本と利息を分けて記帳します。

Q3:役員借入金を免除してもらったときの仕訳は?

「役員借入金/債務免除益」です。債務免除益は法人税法22条2項の収益として益金に入り、その期の所得が増えます。同族会社では、株の価額が増えた分をほかの株主が贈与で得たと扱われる場合があります(相続税法基本通達9-2)。

Q4:役員借入金を資本金に振り替える仕訳は?

「役員借入金/資本金」です。資本金と資本準備金に分けるなら、貸方を2行にします。株を新しく発行するので、決議と資本金の額の変更登記が要ります。免除と違い、債務免除益は立ちません。

Q5:社長が個人のカードで払った経費はどう仕訳しますか?

「該当する経費の科目/役員借入金」です。たとえば出張の交通費なら「旅費交通費/役員借入金」。会社が精算したときに「役員借入金/普通預金」で残高を消します。領収書と利用明細は会社で保管します。

Q6:役員借入金に利息は付けないといけませんか?

役員が会社に貸すお金の利息は、契約で決めます。付けると決めたなら「支払利息/現金預金」で費用にし、未払の分は期末に計上してください。利率と返し方は金銭消費貸借契約書に書いて残しておきます。

参考にした一次資料

まとめ:役員借入金は増える・減るの向きで仕訳を決める

役員借入金は、借りたら貸方、返したら借方です。役員が立て替えた経費も貸方の役員借入金で受けて、精算のときに消します。

返さずに減らすなら、免除は債務免除益、DESは資本金に振り替えます。免除は益金が増え、同族会社ではみなし贈与が問題になる場合があるので、株主の顔ぶれを確かめてから進めてください。

この記事のまとめ

  • 借りた:現金預金/役員借入金
  • 立て替えてもらった:経費の科目/役員借入金
  • 返した:役員借入金/現金預金(利息は支払利息で別の行)
  • 免除された:役員借入金/債務免除益(益金に入る)
  • 資本金に振り替えた:役員借入金/資本金(株の発行と変更登記)
  • 同族会社の免除は、ほかの株主へのみなし贈与に注意(相続税法基本通達9-2)

関連記事

免責事項

※本記事は、法人税法と国税庁の相続税法基本通達の公開情報をもとにした会計処理の整理です(2026年10月時点)。債務免除・DESの税務上の扱いは、会社の財務状況や株主の構成によって異なります。実際の処理は顧問の税理士にご確認ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

会計事務所で10年以上、法人や個人事業主の帳簿づけと税務申告の手伝いをしてきたTanakaです。決算が近づくと、経営者から「この支払いはどの科目で処理すればいいですか」という電話を何度も受けました。答えは業種や会社の規模で変わります。そこを一つずつ、相手に合わせて説明してきました。

独立してからは、中小企業の経理担当者向けの研修や、freee・マネーフォワード・弥生の科目設定の相談にも応じています。教科書の説明は抽象的で、現場では「とりあえず雑費」で片づけてしまうことも少なくありません。このサイトでは、勘定科目の選び方の判断軸を、具体例をそえて整理しています。最終的な税務判断は、顧問税理士にご相談ください。

目次