固定資産台帳の書き方は、減価償却資産を1件1行で、取得日・供用日・取得価額・耐用年数・償却方法・当期の償却額・期末の帳簿価額まで記入する形です。取得価額には運賃や設置費を含め、償却は使い始めた月から月割で計算します。台帳の合計は決算書の数字と一致させます。
この記事でわかること
- 固定資産台帳の列ごとに何を書くかと、取り違えやすい取得日・供用日の違い
- 取得から3年分を通した記入例(定額法・定率法)
- 10万円未満・一括償却資産・中小企業者の40万円未満特例を台帳にどう載せるか
- 台帳の合計を貸借対照表・減価償却費・別表16・償却資産申告と照合する手順
- Excelで作るときの列の並べ方と、除却・売却の記入のしかた
公的情報源: e-Gov法令検索 法人税法施行令(参照)/国税庁 No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(参照)/No.2106 定額法と定率法による減価償却(参照)/No.5930 帳簿書類等の保存期間(参照)
先に答え
固定資産台帳に決まった様式はありません。ただ、減価償却の計算と申告に使う項目は決まっているので、列はどの会社でもほぼ同じになります。
書き方で差が出るのは3か所です。取得価額に付随費用を入れること、償却を事業に使い始めた日から数えること、そして少額の資産を台帳に残すかどうかの判断です。
この記事の要点
- 取得価額は購入代価に引取運賃・購入手数料・据付費などを足した額(法人税法施行令54条)
- 期の途中で使い始めた資産は月割。1か月未満の端数は1か月に切り上げる(同59条2項)
- 10万円未満と一括償却資産は償却資産申告の対象外。40万円未満特例の資産は対象なので台帳に残す
- 台帳の期末帳簿価額の合計は、貸借対照表の資産から減価償却累計額を引いた額と一致させる
- 台帳は保存義務のある帳簿。法人は7年、欠損金が出た期は10年(国税庁 No.5930)
固定資産台帳とは|載せる資産と載せない資産
固定資産台帳とは、事業に使う減価償却資産を1件ずつ管理し、毎期の償却額と残高を記録する帳簿です。国税庁は、法人が保存しなければならない帳簿の例に固定資産台帳を挙げています(No.5930)。
台帳に載せるかどうかは、取得価額と、その資産に使った税務の扱いで決まります。償却資産申告の対象かどうかも、同じ区分で分かれます。
取得価額別の処理と台帳・償却資産申告の扱い(法人)
| 取得価額の区分 | 税務の処理 | 台帳 | 償却資産申告 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満、または使用期間1年未満 | 使った期に全額損金(令133条) | 載せなくてよい | 対象外 |
| 20万円未満で一括償却を選んだもの | 3年で均等に損金(令133条の2) | 年度ごとの一括管理表へ | 対象外 |
| 40万円未満で中小企業者等の特例を使ったもの | 使った期に全額損金(措法67条の5) | 載せる | 対象 |
| 上記以外 | 耐用年数で減価償却 | 載せる | 対象(種類による例外あり) |
償却資産申告で対象から外れるのは、施行令133条と133条の2を使った資産です(地方税法施行令49条)。中小企業者等の特例で全額を損金にした資産は外れないので、台帳から消すと翌年1月の申告から漏れます。
中小企業者等の特例は令和8年4月から40万円未満
中小企業者等が青色申告をしている場合、取得価額40万円未満の資産を使った期に全額損金にできます。国税庁 No.5408 によると、令和8年4月1日以後に取得した資産から基準が40万円未満に上がりました(改正前は30万円未満)。
1事業年度の合計は300万円までで、適用期限は令和11年3月31日です。申告書には別表16(7)を添付します。常時使用する従業員の数の基準も、令和8年4月1日以後の取得分から400人以下に下がっています。
固定資産台帳の項目|列ごとに何を書くか
台帳の列は、償却の計算に使う列と、資産を探すための列に分かれます。どちらが欠けても、決算や実査で手が止まります。
固定資産台帳の列と書く内容
| 列 | 書く内容 | 書き方の決まり・注意 |
|---|---|---|
| 資産番号 | 会社で付ける通し番号 | 現物に貼るラベルと同じ番号にする |
| 資産名・数量 | 品名・型番・台数 | 「PC一式」でなく型番まで |
| 種類・勘定科目 | 建物附属設備・器具備品など | 耐用年数表の区分と合わせる |
| 設置場所 | 事業所・部署 | 償却資産申告は所在地の市町村ごと |
| 取得日・供用日 | 買った日・使い始めた日 | 償却の起点は供用日 |
| 取得価額 | 代価+付随費用 | 消費税は経理方式に合わせる |
| 耐用年数・償却方法・償却率 | 例:10年・定額法・0.100 | 届け出た方法で書く |
| 期首帳簿価額・当期償却額・期末帳簿価額 | 毎期の計算結果 | 期末=期首−当期償却額 |
| 償却累計額 | 取得からの償却額の合計 | 取得価額−期末帳簿価額 |
| 異動 | 除却・売却の日と理由 | 行は消さずに残す |
税抜経理の会社は、取得価額を税抜で書きます。税込経理の会社は税込です。帳簿の経理方式と台帳の金額がずれると、決算書との照合が合いません。
取得価額に入れる付随費用
購入した資産の取得価額は、購入の代価に引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・関税などを足した額です。さらに、事業に使うために直接かかった費用も加えます(法人税法施行令54条1項1号)。
据付工事の費用などは「事業に使うために直接かかった費用」に入ります。本体価格だけを台帳に書くと、償却費が少なく出て、償却資産申告の金額も小さくなります。
取得日と供用日を分けて書く
減価償却は、資産を買った日ではなく、事業に使い始めた日から数えます。期の途中で使い始めた資産は、その期の償却限度額を月数で按分します(法人税法施行令59条1項)。
月数は暦で数え、1か月に満たない端数は1か月に切り上げます(同条2項)。12月20日に使い始めた資産でも、12月決算なら1か月分を償却できます。
記入例|取得から3年分の台帳の動き
12月決算の法人が、2026年7月15日に資産を事業に使い始めた例です。本体950,000円に据付費50,000円がかかり、取得価額は1,000,000円になります。耐用年数は10年と仮定します。
償却率は国税庁 No.2106 の例と同じく、定額法0.100、定率法0.200です。2026年は7月15日から12月31日までで、端数を切り上げて6か月分になります。
定額法の場合(取得価額1,000,000円・償却率0.100)
| 年度 | 期首帳簿価額 | 当期償却額 | 期末帳簿価額 | 償却累計額 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年(6か月) | 1,000,000 | 50,000 | 950,000 | 50,000 |
| 2027年 | 950,000 | 100,000 | 850,000 | 150,000 |
| 2028年 | 850,000 | 100,000 | 750,000 | 250,000 |
定額法は、毎年 1,000,000×0.100=100,000円が償却額です。初年度は 100,000×6/12=50,000円 になります。
定率法の場合(同じ資産・償却率0.200)
| 年度 | 期首帳簿価額 | 当期償却額 | 期末帳簿価額 | 償却累計額 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年(6か月) | 1,000,000 | 100,000 | 900,000 | 100,000 |
| 2027年 | 900,000 | 180,000 | 720,000 | 280,000 |
| 2028年 | 720,000 | 144,000 | 576,000 | 424,000 |
定率法は、期首帳簿価額に償却率を掛けます。2027年は900,000×0.200=180,000円、2028年は720,000×0.200=144,000円です。償却額が償却保証額を下回った年からは、改定償却率に切り替わります(No.2106)。
同じ資産でも、償却方法で台帳の数字はこう変わる(取得価額100万円・耐用年数10年)
- 計算の元
- 取得価額
- 2026年(6か月)
- 50,000
- 2027年
- 100,000
- 2028年末の帳簿価額
- 750,000
- 計算の元
- 期首帳簿価額
- 2026年(6か月)
- 100,000
- 2027年
- 180,000
- 2028年末の帳簿価額
- 576,000
図:定額法は毎年同じ額、定率法は初めに多く償却して年々減る。台帳の「計算の元」の列が取得価額か期首帳簿価額かで、方法を見分けられる。
決算で入れる仕訳
台帳の当期償却額が、そのまま決算の仕訳の金額になります。定額法の2026年なら、次の1行です。
台帳から入れる減価償却の仕訳(間接法)
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 減価償却費 50,000 | 減価償却累計額 50,000 |
減価償却の仕組みと、直接法・間接法の違いは減価償却とは?初心者でもわかる仕組みと計算方法で確認できます。
除却・売却したときの台帳の書き方
資産を捨てたり売ったりしたときは、台帳の行を消さずに「異動」の列へ日付と理由を書きます。除却した時点の帳簿価額が、除却損や売却損益の計算元になります。
行を消すと、前期の台帳の合計と当期の合計の差が説明できなくなります。異動の行には、除却の稟議書や売却の契約書の番号も書いておくと、後から追えます。
少額資産・一括償却資産の台帳への載せ方
少額の資産は、使った税務の扱いごとに、台帳の載せ方を変えます。全部を1つの台帳に混ぜると、償却資産申告で対象と対象外を分ける作業が増えます。
一括償却資産は年度ごとにまとめて管理する
一括償却資産は、1件ずつではなく、取得した年度の合計額で損金にします。損金にできる額は、一括償却対象額を36で割り、その期の月数を掛けた額です(法人税法施行令133条の2)。
一括償却資産の管理表(2026年に合計600,000円を取得・12月決算)
| 年度 | 一括償却対象額 | 当期の損金算入額 | 期末の残額 |
|---|---|---|---|
| 2026年 | 600,000 | 200,000 | 400,000 |
| 2027年 | 600,000 | 200,000 | 200,000 |
| 2028年 | 600,000 | 200,000 | 0 |
600,000÷36×12=200,000円が毎年の額です。計算に使うのはその事業年度の月数なので、期の途中で取得しても12か月の期なら12か月分を損金にできます。
40万円未満特例の資産は台帳に残す
中小企業者等の特例を使った資産は、使った期に取得価額の全額が損金になります。台帳では取得価額を書き、当期償却額にも同じ額を入れ、期末帳簿価額は0にします。
帳簿価額が0でも、行は消しません。償却資産申告では、この資産も取得価額と取得時期で申告します(地方税法施行令49条で除外されていないため)。
少額資産を台帳に載せるかの判定
- 取得価額(付随費用を含む)はいくらか
- 10万円未満全額損金(令133条)台帳は不要。償却資産申告の対象外
- 20万円未満一括償却を選ぶなら3年で均等(令133条の2)年度ごとの一括管理表へ。償却資産申告の対象外
- 40万円未満中小企業者等は全額損金も可(措法67条の5)台帳に残し帳簿価額は0。償却資産申告の対象。年300万円まで
- 上記以外耐用年数で減価償却台帳に1件1行で記入し、毎期の償却額を計算する
図:台帳から外してよいのは、令133条と133条の2を使った資産だけ。40万円未満特例の資産は帳簿価額が0でも台帳に残す。
台帳の合計を決算書・申告と照合する
台帳は、決算書と3つの申告書類の元になります。決算のたびに、台帳の合計と各書類の数字を突き合わせます。
台帳の数字と照合先
| 台帳の数字 | 照合先 | 一致させる関係 |
|---|---|---|
| 期末帳簿価額の合計 | 貸借対照表 | 有形固定資産の合計−減価償却累計額 |
| 当期償却額の合計 | 損益計算書 | 減価償却費 |
| 資産の種類・償却方法ごとの償却額 | 法人税の別表16 | 償却費の計算に関する明細書(令63条) |
| 1月1日に所有する資産 | 償却資産申告 | 所在地の市町村ごとの申告書 |
法人は、償却費として損金経理をした資産があれば、償却費の計算に関する明細書を確定申告書に添付します(法人税法施行令63条)。資産の種類・償却方法ごとの合計を書いた書類を添付し、明細書を保存する方法も認められています。
償却資産申告は1月1日に所有している資産が対象で、2027年は2月1日(月)が期限です。台帳の科目を申告書の資産の種類へ振り分ける手順は、別記事で扱います。期限の一覧は1月の経理業務一覧|2027年1〜3月の期限カレンダーにまとめています。
申告の後に市町村から届く固定資産税(償却資産)を納めたときの消費税の区分は、固定資産税の消費税は不課税で確認できます。
Excelで台帳を作るときの列の並べ方
会計ソフトに台帳の機能が無い会社は、Excelで作っても構いません。決まった様式は無く、必要な項目がそろっていれば足ります。
- 1行に1資産。同じ型番を複数台買ったら、数量の列で持つか、1台ずつ行を分けるかを決めて統一する
- 左から「番号・名前・種類・場所」、次に「取得日・供用日・取得価額・耐用年数・方法・率」、右端に年度ごとの「期首・償却額・期末」を置く
- 年度の列は右へ足していき、前年の期末=今年の期首になる式を入れる
- 除却・売却した行は灰色にして残し、異動の列に日付を書く
- 一括償却資産と、40万円未満特例の資産は別のシートで管理する
Excelでは、償却率の列を手で打ち替えたまま式が残らない誤りが起きがちです。耐用年数と償却方法から率を引く表を別シートに置き、参照する形にすると防げます。
よくある質問
固定資産台帳の書き方で迷いやすい6問です。
Q1:固定資産台帳に決まったフォーマットはありますか?
法令で決まった様式はありません。資産番号・名前・取得日・供用日・取得価額・耐用年数・償却方法・当期償却額・期末帳簿価額など、償却の計算と申告に使う項目がそろっていれば、会計ソフトでもExcelでも構いません。
Q2:10万円未満のパソコンも台帳に書くべきですか?
取得価額10万円未満で全額を損金にしたものは、台帳に載せなくても構いません。償却資産申告の対象からも外れます。社内で現物を管理したい場合は、台帳とは別の備品リストで持つと、照合の手間が増えません。
Q3:一括償却資産は固定資産台帳にどう書けばいいですか?
1件ずつではなく、取得した年度ごとの合計額で管理します。合計額を36で割り、その期の月数を掛けた額を毎年損金にします(法人税法施行令133条の2)。12か月の事業年度なら3年で終わります。
Q4:除却した資産は台帳から削除してよいですか?
行は削除せず、異動の列に除却の日と理由を書いて残します。削除すると、前期と当期の台帳の合計の差が説明できなくなります。除却時の帳簿価額は除却損の計算元になるため、その金額も一緒に書いておいてください。
Q5:固定資産台帳の保存期間は何年ですか?
法人は、確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。青色申告で欠損金が出た事業年度などは10年間になります(国税庁 No.5930)。台帳は資産を持っている間ずっと使うので、除却した資産の行も含めて保存します。
Q6:取得日と供用日のどちらから償却しますか?
事業に使い始めた供用日からです。期の途中で使い始めたら、その期の償却額を月数で按分し、1か月未満の端数は1か月に切り上げます(法人税法施行令59条)。買っただけで使っていない資産は、その期は償却しません。
まとめ
固定資産台帳の書き方の要点です。
この記事のまとめ
- 固定資産台帳は、減価償却資産を1件1行で管理し、毎期の償却額と残高を記録する帳簿
- 取得価額は代価に運賃・手数料・据付費などを足した額(令54条)
- 償却は供用日から月割。1か月未満の端数は1か月に切り上げ(令59条)
- 10万円未満と一括償却資産は償却資産申告の対象外。40万円未満特例の資産は対象なので帳簿価額0でも残す
- 期末帳簿価額の合計は貸借対照表、当期償却額の合計は減価償却費と一致させる
- 除却・売却した資産の行は消さずに異動の列で記録する
- 保存期間は7年、欠損金が出た期は10年(No.5930)
免責事項
※本記事は固定資産台帳の一般的な書き方を、e-Gov法令検索の条文と国税庁タックスアンサー(2026年10月時点)に基づいて整理したものです。記入例の耐用年数・金額は説明のための仮定です。資産ごとの耐用年数や償却方法、特例の適用の可否は会社の状況で変わります。必要に応じて顧問税理士など有資格者へご相談ください。
